111 / 187
本編後の小話 全19話
脱走
しおりを挟む
クリフとマーガレット様の間には、女の子がいる。
「クリフにこんなに可愛い子がいるなんて、想像つかないわ。」
私の指をキュっと握りしめてくるのが、なんとも言えず可愛らしいわ。
エドワードだっていておかしくないんだよね。ううん、王様だったならいるはずなのよ。25才なんだもの。
「ニーナ様」
「はい、何でしょうか?」
「くっついてみた?」
「はい…。けれど恥ずかしくて…。」
何だか女性扱いされるのは恥ずかしいというか…。今まで『好きじゃない』とか言い張ってたんだもの。
そうだ!出掛ければ何か変わるかも知れないじゃない!距離が近くなるかもしれないわ。
・・・・
「エドワード!明日午後はお休みだよね?脱走しましょう!」
「……」
「嫌なら別に…」
「うん、嫌じゃないよ。」
「本当っ!?じゃあ着ていく服を決めましょう!エドワードは青が好きだし青っぽいお洋服で、私は…何でもいいわ。」
「何でも良くはない。」
「ボナースに行く時のような服でいいわよ。」
「…そうだね、じゃあいつもと似た感じで、これを着たらいい。」
「うん、そうね。」
明日がんばろう!
次の日
「あんな所に抜け穴があるだなんて。」
「昔見つけたんだ。脱走して怒られたけど。」
「王子がいなくなったら大問題よ。」
「けど、今日はいいだろ。」
「ええ。」
歩いていると見た事のない物もいくつかあるんだよね。その中でも気になるのが1つ。
「ねぇ、あれは何?」
黒くて三角形の物が沢山並んでいるけど、私の国には無かったわ。
「あれは帽子だ。」
「帽子?あれが?」
「最近、魔法使いの絵本が流行ってるから、子供達に人気があるんだよ。」
「そんな絵本があるのね。ボナースにはないから知らなかったわ。」
どんな人でも入館できる図書館が幾つかあれば、本を買えない人でも読めるよね。もし学校に行けない子でも、本があれば…
「ニーナ、何を考えてるんだ?」
「…べつに、何でもないわ。」
折角脱走して楽しもうと思ってるのに、考えるなら後にしないと。
「ゆっくり城下を見て回った事が無かったけど、綺麗なところね。」
「気に入った?」
「ええ。」
「そう、嬉しいよ。」
「ねぇエドワード、これを2人で買わない?」
私が指差したのは硝子玉のついた指輪。
「…欲しければ本物を」
「そういう事じゃなくて、脱走記念によ。高い物ならいらないわ。」
「おっ!お二人さん何にする?うち店のは硝子だけど細工がいいから綺麗だよ。」
「そうね、エドワードはどれがいい?私はあの水色のにするわ。」
「俺はあの青いのがいいかな。」
城に着くと、クリフが恐ろしい形相で抜け穴の前に立っていた。
「どこ行ってたんだっ…、2人とも。」
私達がいないのを知って、クリフが呼ばれたんだよね…。お休みなのに申し訳無い事をしてしまったわ。
「今度行くなら、俺には言っていけ。」
そう言って、私達を放って城の方へ歩いていった。
「…許してくれるのね。もっと怒られるかと思ったけど、意外だわ。」
「あれはマーガレットといる時間を減らされたくなくて言ってる。俺達に気を使っている訳でもなんでもない。」
「素敵な事だわ。家族といるのは大切な時間よ。」
「君も俺と一緒にいたい?」
「楽しかったらね。」
「今日は楽しくなかった?」
「…楽しかったけど。」
…何だか答えるように誘導されてるわ。
「さて、クリフにも怒られた事だし、部屋まで送るよ。」
「ふふ、クリフに怒られる所までが脱走なのね。」
「あいつは昔から俺を怒るのが癖なんだ。」
「何それ。」
ムスっとしている顔は何だか可愛い。
「今日はありがとう。」
当分2人だけで出かけるのは無理だよね。まぁ、無理を言っては駄目ね。エドワードは忙しいんだもの。
「ニーナ。顔を上げて。」
ん?
「…っ!?」
何気無く言われた通りにすると、口付けされた。
「夕食は、逃げずに食べにくる事。それから、これは2人きりの時に渡すから。」
そう耳元で言ってから、2人で買った指輪を持って行ってしまった。
「……」
恥ずかしい!!
夕食なんて絶対無理よ!!
恥ずかしいけど、逃げてばかりもいられないよね…。う~ん…。
今頃部屋にこもって…
『夕食なんて絶対無理!』
とか思ってるにちがいない。
いろいろ強いるつもりはないが、いい加減あれでは困る。進展するように仕向けていこう。
エドワードは指輪を見ながら思った。
「クリフにこんなに可愛い子がいるなんて、想像つかないわ。」
私の指をキュっと握りしめてくるのが、なんとも言えず可愛らしいわ。
エドワードだっていておかしくないんだよね。ううん、王様だったならいるはずなのよ。25才なんだもの。
「ニーナ様」
「はい、何でしょうか?」
「くっついてみた?」
「はい…。けれど恥ずかしくて…。」
何だか女性扱いされるのは恥ずかしいというか…。今まで『好きじゃない』とか言い張ってたんだもの。
そうだ!出掛ければ何か変わるかも知れないじゃない!距離が近くなるかもしれないわ。
・・・・
「エドワード!明日午後はお休みだよね?脱走しましょう!」
「……」
「嫌なら別に…」
「うん、嫌じゃないよ。」
「本当っ!?じゃあ着ていく服を決めましょう!エドワードは青が好きだし青っぽいお洋服で、私は…何でもいいわ。」
「何でも良くはない。」
「ボナースに行く時のような服でいいわよ。」
「…そうだね、じゃあいつもと似た感じで、これを着たらいい。」
「うん、そうね。」
明日がんばろう!
次の日
「あんな所に抜け穴があるだなんて。」
「昔見つけたんだ。脱走して怒られたけど。」
「王子がいなくなったら大問題よ。」
「けど、今日はいいだろ。」
「ええ。」
歩いていると見た事のない物もいくつかあるんだよね。その中でも気になるのが1つ。
「ねぇ、あれは何?」
黒くて三角形の物が沢山並んでいるけど、私の国には無かったわ。
「あれは帽子だ。」
「帽子?あれが?」
「最近、魔法使いの絵本が流行ってるから、子供達に人気があるんだよ。」
「そんな絵本があるのね。ボナースにはないから知らなかったわ。」
どんな人でも入館できる図書館が幾つかあれば、本を買えない人でも読めるよね。もし学校に行けない子でも、本があれば…
「ニーナ、何を考えてるんだ?」
「…べつに、何でもないわ。」
折角脱走して楽しもうと思ってるのに、考えるなら後にしないと。
「ゆっくり城下を見て回った事が無かったけど、綺麗なところね。」
「気に入った?」
「ええ。」
「そう、嬉しいよ。」
「ねぇエドワード、これを2人で買わない?」
私が指差したのは硝子玉のついた指輪。
「…欲しければ本物を」
「そういう事じゃなくて、脱走記念によ。高い物ならいらないわ。」
「おっ!お二人さん何にする?うち店のは硝子だけど細工がいいから綺麗だよ。」
「そうね、エドワードはどれがいい?私はあの水色のにするわ。」
「俺はあの青いのがいいかな。」
城に着くと、クリフが恐ろしい形相で抜け穴の前に立っていた。
「どこ行ってたんだっ…、2人とも。」
私達がいないのを知って、クリフが呼ばれたんだよね…。お休みなのに申し訳無い事をしてしまったわ。
「今度行くなら、俺には言っていけ。」
そう言って、私達を放って城の方へ歩いていった。
「…許してくれるのね。もっと怒られるかと思ったけど、意外だわ。」
「あれはマーガレットといる時間を減らされたくなくて言ってる。俺達に気を使っている訳でもなんでもない。」
「素敵な事だわ。家族といるのは大切な時間よ。」
「君も俺と一緒にいたい?」
「楽しかったらね。」
「今日は楽しくなかった?」
「…楽しかったけど。」
…何だか答えるように誘導されてるわ。
「さて、クリフにも怒られた事だし、部屋まで送るよ。」
「ふふ、クリフに怒られる所までが脱走なのね。」
「あいつは昔から俺を怒るのが癖なんだ。」
「何それ。」
ムスっとしている顔は何だか可愛い。
「今日はありがとう。」
当分2人だけで出かけるのは無理だよね。まぁ、無理を言っては駄目ね。エドワードは忙しいんだもの。
「ニーナ。顔を上げて。」
ん?
「…っ!?」
何気無く言われた通りにすると、口付けされた。
「夕食は、逃げずに食べにくる事。それから、これは2人きりの時に渡すから。」
そう耳元で言ってから、2人で買った指輪を持って行ってしまった。
「……」
恥ずかしい!!
夕食なんて絶対無理よ!!
恥ずかしいけど、逃げてばかりもいられないよね…。う~ん…。
今頃部屋にこもって…
『夕食なんて絶対無理!』
とか思ってるにちがいない。
いろいろ強いるつもりはないが、いい加減あれでは困る。進展するように仕向けていこう。
エドワードは指輪を見ながら思った。
434
あなたにおすすめの小説
必要ないと言われたので、私は旅にでます。
黒蜜きな粉
ファンタジー
「必要ない」
墓守のリリアはある日突然その職を失う。
そう命令を下したのはかつての友で初恋相手。
社会的な立場、淡い恋心、たった一言ですべてが崩れ去ってしまった。
自分の存在意義を見失ったリリアに声をかけてきたのは旅芸人のカイだった。
「来る?」
そうカイに声をかけられたリリアは、旅の一座と共に世界を巡る選択をする。
────────────────
2025/10/31
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞をいただきました
お話に目を通していただき、投票をしてくださった皆さま
本当に本当にありがとうございました
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
お言葉ですが今さらです
MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。
次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。
しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。
アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。
失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。
そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。
お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。
内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。
他社サイト様投稿済み。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる