私はただの身代わりで、婚約者ではありません

シンさん

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婚約回避したかった4

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まず顔を見られないようにして……髪はブラウンのウィッグをつけているし、赤い目を見られなければ大丈夫なはず!!
 
「…ニコル様、お迎えに来てくださったのに申し訳ありません。この怪我ではアイリーン様に会う事は難しいと思います。また今度伺いますと、お伝え頂けますか?」

私はニコルお兄様の胸に顔を埋めた。
その意図に気がついたようで、そのお芝居を続けてくれた。

「いえ、このままにしてはおけませんので、まずは私の屋敷へ。リチャード、馬車をここへ」
「畏まりました。」
「殿下、妹の大切な友人を助けて下さって、ありがとうございます。」
「…今度から目をはなさないほうがいい。…しかし、女の飛び蹴りなんて見た事がない。」

殿下はクスクス笑っている。
見られてたっっ!!

「飛び蹴り…ですか…」

侯爵令嬢の友人としてあるまじき行為…

「ああ、けれど子供をかばってやった事だ。そういうのは嫌いではない。では、俺は帰る。その娘を早く医師にみせるんだな」
「畏まりました。殿下のお心遣いに感謝いたします。」

ニコルお兄様は殿下に頭をさげた。
するとすぐに、バタバタとこちらに駆け寄ってくる足音がした。

「っっ殿下!!やっと見つけましたよ…勝手に行動されてはこまりますっ!!」
「うるさい」
「うるさいではありません!何かあったらどうするんですか!!」
「さぁ?飛び蹴りでもしてみるか。」
「何を訳のわからない事を!!早く馬車に乗ってください。」

黒い髪をした騎士とグレアム殿下は馬車にのり、去っていった

ちょうどその時、アルフォート家の馬車もすぐそばまできた。

「乗って」
「はい。」

できる限り顔を隠して、馬車にのりこんだ。

「では、私達もさがらせていただきます。またお会いしましょう。レキシントン伯爵」

ニコルお兄様はそれだけ言うと、馬車にのり、進むようにと合図をした。


馬車の中で、ニコルお兄様が傷にハンカチをあててくれた。ウィッグをつけていたので、傷は深くないけど、こめかみ辺りが少し切れたのか血が出ている。

「ごめんなさい……」

それしか言うことができなかった。折角連れてきてくれたのに。身代わりがばれれば、爵位を剥奪される…ううん、それだけではすまないかもしれない…王族をだましたんだから…。

「リチャード、この事は父上には報告しなくていい」
「畏まりました。」
「……お兄様…」
「大丈夫、少なくとも殿下は気に入ってくれてたようだしな。」
「っっ……ごめっなさいっ」

もしバレて疑われたりしたらどうしよう…泣いてる私の背中を、ニコルお兄様が優しくさすってくれた。

「それにしても…飛び蹴りか。俺も見たかったな。」

そんな事を真面目に言う姿がおもしろかった。

「ふふ…1年後であれば、いつでも披露します」


・・・・

残された伯爵はその場から動くことができなかった。
侯爵家の客人を杖でなぐり怪我をさせ、それを仲裁したのが王太子だったのだから。だからといって、殺される程の罪でもない。
しかし伯爵はこの夜、何者かに惨殺された。2人がそれを知るのは、しばらくたってからだ。
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