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舞踏会というもの
しおりを挟む外出してから今日で3日、怪我はほぼ治った。少しだけ切り傷がある程度、前髪で隠れるからもう問題なし!
「アイリーン!」
ダンスの練習中にニコルお兄様がきた。
「ニコルお兄様、どうしたのですか?」
「執務室へ来てくれって父上が。」
「はい!わかりました!」
お兄様、ありがとう!!堂々とダンスのレッスンから逃げ出せる!!
コンコン
「ニコルです。アイリーンを連れてきました。」
「入りなさい」
「失礼します」
「しつれいします。」
執務室にはいるのは初めてだったから、キョロキョロ見てしまう。特に派手な飾り付けとかはなく、必要なものだけが置いてある部屋だった。
「言われた通りアイリーンを連れてきました」
「ああ…」
侯爵様は深刻そうな顔をしている。そして私を見た。
「アイリーン、明日ひらかれる国王主催の舞踏会に出席してもらう事になった。」
「…?…はい…」
ぶとうかい?
「今回アイリーンは体調不良で欠席と伝えていたのではないのですか?」
「ああ、そう伝えてある。だが今日の朝もう一通招待状が届いて、国王様から直々に、『アイリーンを連れてくるように』と一筆添えられていてね」
「直々に…ですか?理由は…?」
「何も書いてない……」
まさか、バレたのかな…。3日前に王太子様と街で出会った事を思い出した。
「アイリーン、何か心当たりはあるかい?」
私は大きくクビを横にふった。今ここで話してしまったら、黙っていたニコルお兄様にも迷惑をかける。実際、どんな理由で呼び出されたのかわからないんだから、黙ってるほうがいいよね。
「そうか…」
私が招待されてるのが何故なのかが問題になってるみたいだし、だったら聞くべきかな…。どうしよう…でもわからないままだと困るし…。
「あ、あの、1つ質問してもいいですか?」
「ああ、何かな」
「ぶとうかい、って何ですか…?」
執務室はしばらくの間、音一つしなかった。
「では、失礼します。」
「失礼します…」
「アイリーン、今の話は深く考えなくていいから。」
「でも…」
もしバレてたら…大変な事になるをじゃないのかな…。
「大丈夫だって。ほら、舞踏会で踊れなかったら恥ずかしいぞ。ダンスの練習、行ってきなさい。」
「うん…」
…すごく行きたくないけど。
「頑張れよ。」
そう言ってクスクス笑っている。
「何で笑うんですか。」
「わかりやすいな…と思って。」
行きたくないのが顔に出てたのか…。
「さ、頑張ってきなさい。」
私の頭をポンポンとして、優しく笑った。
「はい!いってきます!」
ニコルお兄様は優しい。貴族ってみんな怖いものだと思ってたけど、そうじゃない人もいるのかな。私が身代わりだから…って事でもあるんだろうけど。
さて、ダンスという名の戦いに行こう!
「アイリーン様、もっとしなやかに、女性らしく、背筋はのばして、相手の顔をみて!」
「はい…」
うぅ…足が、おもにかかとがいたい。
「運動神経はよさそうなので、後はダンスを全て覚える事と、その大雑把な動きを修正するのがしばらくの課題になります。聞いてますか、アイリーン様。」
「は…い…」
「では、今日はここまでとしましょう。」
「ありがとうございました…。」
靴をはきかえても、かかとの皮が破れてるから、痛いのにはかわりなかった。これも1年続くんだよね…。むり…。
疲れていたのもあって、部屋に戻ってすぐにね寝てしまった。
ただそれだけで、翌朝、怒られた。寝る前はきちんとしないと駄目らしい。
・・・・
「明日、アイリーン・アルフォートが城へ来る。グレアム殿下の話によれば、禁書を読む前と何ら変わりないそうだ。」
顔が見えないほど深くフードをかぶった男3人が集まり話をしている。
「それは良かった。あの化け物女に出て来てもらわねば話にならない。」
「だが問題はあの息子の方もだ。揃わなければ意味がない。」
「どちらかが出てくれば、自ずと出てくるだろう。我々もやるべき事がある。まずはそれからの話。」
「そうだな…血も手に入れた事だ。既に1歩先を進んでいる。」
そう言った男の手には、杖と、血が大量に滴る剣が握られていた。
ほの暗いその場所は、お世辞にもきれいだとは言えない。血の似合う場所だった。
「どんなに抗った所で、我々には敵わない。あの一族は…」
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