侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん

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悲しい思い出3

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会場に戻り、何人かに挨拶をして、その流れで俺は辺境伯にも挨拶をする。いつもならわざわざ相手をしたりしないが、何かわかるかもしれない。

「お久しぶりです、ボルディア辺境伯。」
「ああ、久しぶり。両親が亡くなったおかげで、その若さで侯爵になったそうだね。おめでとう。」

…。
俺を怒らせて『侯爵の器じゃない』と馬鹿にでもしたいのだろうけど、それくらいの嫌味などなれている。

「まだ私には荷が重いですが、皆さんのお力添えで何とか。ボルディア様もで見守っていて下さい。」
「…っ」

何をムスッとしてるんだ、この男は。言い返されないと思っていたのか?想像以上に馬鹿だな。まぁ、だからこそ怖い。感情だけで行動しそうだ。

「そういえば、父が事故にあった日『辺境伯と会う』と言って出て行ったのですが、何の要件でしたか?引き継ぎますよ。」

父は何も言ってはいかなかったが、辺境伯の反応を見たかった。

「会ってなどいない。」
「そうでしたか。」

一瞬だが表情が強張った。喜怒哀楽の『怒』だけは解りやすい男だ。

「実は去年出荷したワインの件で話をしてたのかと思ったんです。味はいかがでしたか?」
「まだ口をつけていない。君の所のワインは好みではないのでね。」
「そうでしたか。いま手にしているワインほど美味しくはありませんか…。」
「ああ、雲泥の差だ。」

ここにあるのは全てうちの酒だという事も知らないのか。軽く嫌味を言ったつもりが、解らないんじゃ話にならない。

「これ以上の物を作れるようにします。では、私はこれで。」

この男とこれ以上話していても、事件の真相がわかる事はないな。手がかりは他で探そう。



パーティーから1週間。
視察を兼ねて、俺とマイセンでワイン貯蔵庫に行ってみた。
何かを知ったとしたなら、やはりここだとしか思えない。

「侯爵…この度は心よりお悔やみ申し上げます。」
「ありがとう。父には及ばないが出来る限りの事はする。困った事があれば気を使わず、いつでも言ってくれ。」
「はい。ありがとうございます。」

醸造家と話していると、後ろで作業していた青年がチラチラと俺を見ている。

「あの子は、いつからここに?」
「1年くらい前です。何故でしょう?」
「いや、見かけない顔だったから。」

ワイン蔵で働いてる男にしては色が焼けているな。夏も来てないのに、室内で肌がボロボロになるほど焼けるだろうか。

「辺境出身?」
「はい、去年は出稼ぎで来て、今年から家族でこっちに引っ越してきました。よく働く良い奴ですよ。」
「なら、この冬は実家へ?」
「はい。」

なるほど、雪焼けか。

あの青年に話を聞こう。父がここに来た時には既にここにいたはずだ。
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