侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん

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確信

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青年が1人で酒蔵にいる時に、マイセンと俺は話を聞きに行った。

「蔵の湿度や温度はどうかな?」
「ここで働いて1年ほどなので、まだ解りません。」
「そうだな。それが普通だ。」

真面目そうな青年だが、俺と目を合わせようとしない。

「去年、俺の父親がここに来た時、君は既にここにいた。違うか?」
「……」

俺が言うと、青年の顔が真っ青になって震えだした。

「…すみません…。…侯爵は…俺のせいで死んだかもしれません。」
「それは、どういう事だ?」
「俺、辺境出身で…、ここへは出稼ぎに来てたんです…。」

見ていると、青年の目から涙が溢れてきた。

「税が高すぎて…やっていけなくて…。」

辺境伯が税を高くしてるとは聞いていないし、税収が上がったという報告もない。
税率を上げるなら、申告が必要になる。
もし民が暮らせないほどなら、国が規制するか、援助をしなければいけないからだ。

「ここから帰りたくないと思いました。でも、俺は出稼ぎに来ているだけなので、ここに永住するには許可がいります。だから、侯爵に頼んだんです。秘密を教えるから、この土地に家族を住まわせてほしいって…」
「秘密?」
「辺境伯は最近あり得ないほど軍事に力をいれてます。隣国から武器を仕入れたり、領内で作ったり。まるで戦の前みたいだって皆言ってるんです。」
「いくらなんでも、そんな不穏な動きをしていれば気がつかれる…」
「数メートル積もる雪の壁をこえてまで、都から人は来ません。」

冬なら何をしていても気がつかれない…。
パーティーの日に俺が思った事は、当たってたんだ。

「領も一部だけは綺麗で潤ってるように見えますが、そこを離れれば飢えて死人が出てる所もあるくらいです。ここで暮らしたくて、助けてほしくて、領内の様子を相談したんです…。そしたら…侯爵が…」

そんな話を聞かなければ、父は死ぬ事はなかった。だが、聞いても知らぬふりも出来たのに、そうしなかった。
父の意思だ。

「深読みしなくても、あれはただの事故だ。君はこれからもこの地でワイン作りに勤しんでくれ。」
「はい……ありがとうございます…。」


帰りの馬車の中、俺とマイセンに会話はない。
1時間程して、先に口を開いたのはマイセンだった。

「トーマ様、あの青年の話が嘘でも本当でも、辺境伯を問いただすような事はせぬようお願いします。」
「……解っている。」

怒りでマイセンが軽く震えているのには気が付かないふりをした。
俺もマイセンも不満しかない。だが、これはラッセン家の為の決断だ。

今の俺にはどうにも出来ない。両親の死を『殺人だ』と訴えた所で、握りつぶされるだけだし、ラッセンの印象を悪くしてしまうだけ。

辺境伯に深入りすれば、次に殺されるの俺になる。
俺にはまだ子もいない。殺されてしまえば領内のバランスだって崩れる。

悔しいが何も知らなかった事にしよう。


そう、何も知らないふりをしていたのに、知っている奴の口は軽かった。
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