侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん

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上手くいかない

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「伯爵、どうしてこんな事になったかは聞かないが、ルーナは間違った事は言ってなかっただろう?だから怒りに任せて手を上げようとした。」
「……」
「これからも辺境伯からエリーゼとエミリーを守る手伝いはする。だが、婚約破棄までは出来ない。これが最初からの契約だ。冷たいと言われればそれまでだが、世の中そう上手くはいかない。」

エミリー以外を助けてあげる必要なんてないのに…って思う私は酷い女かしら。
辺境伯に両親が殺されていなければ、トーマはこんな事に手は貸さなかったはずだし、本当に世の中上手くいかないわね。

「ルーナ、行こう。」
「え?もう帰るの?」
「ああ、用は済んだから。」
「エリーゼに会いに来たんでしょう?もっと居たらいいのに。私は先に帰るから安心していいわよ。」
「俺はルーナを迎えに来たんだ。」
「私を?」
「この前エリーゼが来た日に俺の予定を確認していたから、何かあると思ってここに来たら案の定だった。」

トーマに行動を予測されるなんて、私も落ちぶれたものだわ。

「アーチャーはどうする?1度公爵邸に報告に帰るなら、ルーナが乗ってきた馬車を使うといい。」

アーチャーは公爵側の人間だし、あのタヌキジジィに『エミリーの父親をルーナに知られた』って報告するわよね。
既に目をつけられてるのに、更に睨まれる…。

「……いえ、侯爵邸へ帰ります。特に報告する事はございませんので。」
「え!?報告しないのっ?」
「はい、ただし条件がございます。」
「何かしら?」
「私は辺境に行く気はございませんので、その辺りは考えて行動をお願いします。」
「解ったわ。」

心底辺境へは行きたくないのね…。

アーチャーと私の話が終わったのを見て、トーマが伯爵に言った。

「伯爵、私からすれば貴方は幸せだと思う。守りたい人が生きているんだから。私もルーナも両親を亡くしている。どんなに努力しても、もう会う事すら叶わない。」

その通りね…。
私とトーマは両親に2度と会えない。会いたくても会えない。『助ける』というのは、自分も相手も両方が生きていなければ出来ないのよ。

「ルーナ、帰るよ。」

そう言って、トーマに肩を抱き寄せられた。

「ねぇ、契約…忘れてないよね。」
「ルーナも忘れてないか?」

外では夫婦のふりをする…という約束よね。簡単に言わなければよかった。

「ふふ、ルーナは難しいな。」
「何故笑うのよ…。」

かなり単純だと思うけど…。トーマのプロポーズの言葉を信じて、浮かれて結婚してしまうレベルなんだから。
今では伯爵に殴られそうになるくらい性格が悪くなってしまったけど。

「…トーマと結婚してから私の純粋さが失くなってしまったんだわ。」
「わざとヘンリーのに虫をくっつけた狡猾なルーナに、純粋さを感じないが。」

その通りだけど…。
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