侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん

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命の重さ

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「ルーナを公爵邸に向かわせた理由はまだある。公爵を油断させるのと、居留守を使わせないのが目的だった。」

たしかに、私が公爵邸にいるのに、招待した側が邸にいないなんて言い訳は通用しないよね。

「理由があるにしても、ルーナを危険な目にあわせていいという事にはならないし、結局言い訳にしかならない。」

危険だと解っていても、今なんとかしないといけないと判断したのよね。離縁後の私は、本当に危なかったという事よ。トーマが焦るくらいに…。

「…離縁を少し先延ばしにすればよかったのに。そうすれば、トーマは責任を感じなくて済んだわ。」
「俺もそれは考えたけど…離縁のチャンスはおそらくこの一度きりだ。どうにか叔父に同意のサインを貰った。もし延期すると言えば、今度は親族総動員で止めにかかると思う。」
「私、ラッセンの皆さんに嫌われてるんじゃないの?結婚の時もあまり良く思われてるようには見えなかったわ。」
「結婚した時と今は状況が違う。舞踏会の後、『ルーナの度胸は侯爵夫人として申し分ない』と皆が喜んでいた。ラッセンが当主の妻に求める物は強さなんだ。初代侯爵夫人が強い人だったとかで、その流れがある。」
「…私の事は『病弱なルーナ』だと説明をしてるはずよね。」
「悪いが、どう見ても元気にしか見えない。か弱い演技を完璧に忘れてるだろ。」
「……」

たしかに…シュート君が来た日から、演技を忘れている気がするわ。
演習場でミランダに剣術指導までされてるしね…。

「とりあえず、次を逃せば同意を得られない可能性がある。」

上級貴族が離縁する場合、この国では親族の同意のサインが必要になる。同意して貰えないなんて考えてなかったわ。

「1人くらいサインをしてくれる人がいるわよ。私の親族でもいいわけだし。」
「うちが反対してるのに、その度胸があるのか?今のスコット伯爵に。」
「…ないわね。」

今のスコット家は全面的にラッセンに助けてもらってるんだから。
それに、度胸があるなら私を邸から連れ出してくれたはずだもの。面倒に巻き込まれたくないから、それもしなかったのよ。

「カーテン、開けてもいいか?」
「うん。」

トーマが車窓から、眩しそうに外を見ている。
都はいつも通り、何も変わらない。けれど、それは誰かが守らなければ続かないものなのだと、私は初めて実感した。

「『自分が公爵邸に行かなければ、シリウスの子が殺される事はなかったかもしれない』…そんな風にルーナは思ってるんだろう?」
「……」
「ルーナがいてもいなくても、マディソン公爵家の行く末は変わらない。」
「そうね…」

どうしようもない事だって解ってるし、我が儘が通用する状況でないのも解る。
助けた所で、それが子供の幸せな未来へ繋がるのかも解らない。

「…年はいくつなの?シリウスの子は。」
「もうすぐ1才だ。」
「…そう。」

善悪も解らない子まで、同じ様に罪を背負わなければいけない現実。

「少し疲れたから寝るわ…。」

このまま喋っていたら、泣いてしまいそう。正しい事をしても、子供まで殺める結果になった。
同じ血を引いていても、エミリーは生きていられるのに、シリウスの子は殺さなければいけないという矛盾。
それに気が付いていても、見て見ぬふりをするしかないのが嫌になる。
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