侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん

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命の重さ2

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公爵邸から王都にあるラッセン邸はそんなに遠くないので、30分ほどで帰ってこれた。


いつもならミランダと過ごすけれど、朝まで1人にしてもらった。

次の日、朝食の席にトーマはいなかった。早朝から王城に行ったらしい。帰って来たのは深夜で、その日は顔を会わせる事はなかった。

・・・・

公爵邸から帰って来てすぐ、トーマとレオンとマイセンは執務室で話をしている。
ミランダはレオンが部屋から出てくるのをずっと待っていた。


「レオン、ちょっといい?」
「ミランダ…、視線だけで俺を殺す気?」
「ええ、死んでくれると助かるわ。」
「酷いね、まぁ、何に怒っているかは解るけどさ。」

まわりに聞こえると困るので、私に割り当てられている部屋にレオンを連れていった。

「レオン…、何故あの場でシリウスに子がいる事を言わなきゃいけなかったの。ルーナは知らないままの方がよかったのに。侯爵だってルーナには知られたくなかったはずよ。」
「子供が殺される前に知るか、後に知るかの話だよ。なら、前に知ってた方がいいと思ってね。」

ルーナとトーマの結婚の意味も、これからの事も、馬車での話に違和感を抱いていなかったって事は、レオンは全て知ってたはずよ。

「これから農園で暮らすルーナに、わざわざ重荷を背負わせる必要なんてなかったのに。」
「それは卑怯だよ、ミランダ。」
「卑怯でもいいのよ。」
「駄目だね。自分のした事の責任は、知っておかないと。」
「ルーナに何の責任があるの?」
「ミランダもルーナちゃんには甘いね。まぁ、それは侯爵もだけどさ。」
「……」
「貴族である以上、産まれた時から責任は付きまとうんだよ。だから、シリウスの子は殺される。何もしていないのに殺される子がいる、それを『知らなかった』で済ませるのは卑怯だよ。」

レオンの言う事は正しい。けど、自分達で公爵の悪事をあばけず、ラッセン侯爵夫妻にやらせるように仕向けたのは癪に障る。

「あまり怒らないでよ。もしシリウスの子を助ける事が出来るなら、それは侯爵の力に頼るしかない。その侯爵はルーナちゃんが悲しまないなら、結構何でもやる。」
「侯爵を馬鹿にしてるの…?上手く利用しておいて。」
「正確には、侯爵は利用されているふりをしてただけ。」

それをさせるきっかけは、護衛長にある事にイラついてるのよ。

「俺は2人に離縁されたくないから、これでも必死なんだよ。」
「………は?」

何を言ってるの…。

「侯爵はさ、頭がいいし仕事も早い。けど天才型かと言われればそうじゃない。努力型、そこが重要なんだよ。」
「…何が言いたいの?」
「天才は問題に対して、一般人じゃ解らない方法で答えを持ってくる。それって、政治じゃ何の役にも立たない。筋道を立てて導かなければ、皆は答えに納得しない。」
「努力型にはそれが出来ると言いたいの?」

私の質問に、レオンが笑顔で頷いた。

「これからも努力し続けてもらうには、それなりに達成感を得られないと。ミランダも努力型だから解るよね。」
「侯爵の達成感は、ルーナが喜ぶ事だと?」
「安上がりだよね。」

悪びれる事なく笑う顔が護衛長とかぶるわ。

「ルーナは離縁する気満々だから、今さら無理よ。」
「ルーナちゃんは今弱ってるから、侯爵がそこに付け入れば好きになるよ。」
「そんな簡単なわけないでしょ。」
「人間なんて意外と簡単だよ。弱った兵は看病してくれる子に弱い。それと一緒。」
「残念だけど、侯爵は自分がルーナを好きになってるって事に、あまり自覚がないわよ。」
「だろうね。」

ルーナの農家弟子入りの邪魔をする男が、離縁数日前に現れるなんて…。しかも手強いわ。

「『シリウスの子を助けられるかもしれない』と言われれば、結果がわかるまでルーナは離縁しないと踏んだわけね。何が貴族の責任よ。全部あんたの打算じゃない。」
「さて、どうだろう?」

結局は、2人を利用したいだけじゃない。
レオン、護衛長に似て、食えない男だわ。
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