侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん

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敵と味方

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「…正論だな。」
「そうよ。だから、今すぐに叔父様と2人で話してきて。私とマイセンさんはここで待ってるから。」

そのままトーマの背を押して、部屋から押し出した。

「叔父様は頭の良い人よ。貴方が迷ってたと言えば解ってくれるわ。」

バタン

言うだけ言って、私はドアを閉めた。

「マイセンさん、トーマはちゃんと伝えられるかしら?」
「大丈夫でしょう。トーマ様は奥様に言われると弱いですから。」
「……殴ったりしないわよ。」
「そういう事ではございません。」

マイセンさんが珍しく笑顔だわ。何か嬉しい事でもあったのかしら。

「奥様は男性を好きになった事はございますか?」

マイセンさんが急に変な質問をしてきた。

私の初恋の人がトーマだと知っているのに聞くんだから、それは数にいれるなって事だよね。

「ないわ。」
「トーマ様もございません。」
「そうなの?意外ね。女性に人気があるって、ミランダが言っていたのに。」
「そうですね、言い寄られる事は多々ありますが、トーマ様から興味を持つ事はございませんでした。」
「それは良い事よね。」

簡単に異性に『好きだ』って言うような男は信用できないもの。
ん……、ちょっと待って。男色という可能性はないかしら?エミリーを引き取った事でトーマには後継ぎが出来たわけだし、好きな男性とお付き合いしてても大丈夫よね。
そういえば、『再婚はしない』って言ってたわ。
好きな人と出来ないなら『再婚したくない』って事かしら。
ありえるわ!

「……奥様、言っておきますがトーマ様は男色ではありませんよ。」
「えっ!?…あ、うん。誰にも言わないから大丈夫よ。」
「はぁ…、思考と行動が飛び抜けてるのは、子供の頃からお変わりありませんね。」

言われても仕方がないわね。
マイセンさんは、私が侯爵邸で走り回ってた事も、パイを全部食べた事も知ってるはずだもの。

「マイセンさんは、私みたいな女とトーマを結婚させるのは嫌だったでしょう?こんな事件に巻き込まれていなければ、トーマはアイリス様とだって結婚出来るもの。」
「アイリス様には幼少の頃から仲の良い婚約者がいますので、それは無理です。」
「…そうなの?」
「はい。」

アイリス様と子供の頃から仲が良いなら、私とアイリス様の接点を知ってる可能性があるわ。

「マイセンさん、その婚約者がどこの誰だか解るかしら?」
「アーロ様ですが。」
「……え?……アーロ?」
「はい、辺境伯の件で奥様が呼び出されると知って、トーマ様に詫びの手紙が届きましたよ。」

…灯台もと暗しとはこの事だわ。
辺境伯と口喧嘩した日、アイリス様はアーロと会っていたんだわ。それなら、あの近辺にいたのも理解出来る。

「トーマはアーロにアイリス様との事を聞いたりしなかったのかしら。」
「奥様がアイリス様の事を忘れていると伝わる可能性がありますから、アーロ様には何も聞いていません。」
「そう。」

舞踏会の日、アーロとトーマの仲が良さそうに見えたのは、手紙でやり取りしていたからなのね。私にもおしえなさいよ!あの自己完結男!

「マイセンさん、今度アーロをうちに招待してもいいかしら?」
「手配致します。」
「ありがとう。」

アーロから情報を引き出して、絶対にカリオン公爵夫人をこちらの味方につけてみせるわ。
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