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もう戻らない、戻れない
燃える世界
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粗末な離れで、佳香は筆を取り続けている。
佳香は密かに執筆を続けていたのだ。
夫は妾の元に入り浸りで、自分は離れ住まい。使用人も寄り付かないならば、とその状況を逆手に取った。
皆が寝静まった頃を見計らい、夜更けてからこっそり物語を綴り続けた。
誰に見せる事もない。唯一の読者であった奏子に見せる事も出来ない。正真正銘、自分だけの物語であり世界。
それでも幸せだった。自分だけの閉じた世界であっても、夢を抱き続けられるだけで。
だが、それもある日破綻する。
その夜、佳香は離れから引きずり出された。
何事かと震えていたならば、目の前には、あろうことか書きためた大事な物語の冊子たちが無造作に積み上げられていく。
顔色失くして座り込む佳香を、忌々しげに見つめている男は彼女の夫だろう。
佳香が何時も酷く眠そうな理由を不審に思った夫はまず身辺を探らせた、他に男でもありはしないかと。
妻を押し込めてある離れに向う世にも稀な程美しい男を見たという報告があった。
更には、佳香がほぼ毎晩のように夜更けても起きている事を知り、部屋を家探しさせたのだという。
男の尻尾こそ掴む事はできなかったが、佳香が書き溜めていた小説が見つかったというわけだ。
人目に触れさせず、大事に隠していた佳香の世界が其処にぶちまけられていた。
夫は、蔑むような眼差しを佳香に向ける使用人達に怒りのままに命じる。
「下らない、全部焼き捨ててしまえ!」
「あの、それだけは……!」
命を受けた使用人達が、佳香の物語たちを世から葬りさるべく動き出す。
佳香は震える声で、怯えた表情のまま懇願するけれど。
「うるさい! これ以上怒らせたいのか!」
「っ……! も、申し訳ありません……」
返ってきたのは激しい怒号。
佳香の肩は鞭で打たれたように跳ねあがり、咄嗟に頭を下げながら只管に謝罪を繰り返す。
夫は酔った時に容易く佳香に手を上げる。繰り返され続けた痛みを思い出せば、頭を低くして謝罪を紡ぐ事しかできなくなってしまう。
怯えて縮こまる妻を見下ろしながら、夫の怒りは尚も収まらない。
「女房が小説なんぞ書き散らかしていたなど、世間にばれたら儂はいい笑いものだ! 夫に恥をかかせるところだったんだぞ!」
油がまかれる。火が放たれる。
燃えていく。佳香が紡ぎ続けた世界が焔をあげて燃えていく。
平伏する佳香を前に、ひとつ、またひとつと物語が煙となって消えて行く……。
「なまじ女学校なんぞに通っていたからこんな面倒な……。没落した家を救ってやった恩義も忘れおって」
救われてなどいない。佳香はむしろ、地獄に落された。
苦しみだけの生活の中、唯一の光は自分だけの世界だったのに。その世界は今、消え行こうとしている。
気が付けば、夫は何処かに消え去っていた。恐らく、今宵も妾の処に行ったのだろう。
佳香を罰として敷地の隅にある小屋に閉じ込めろと夫は命じたらしい。
下男に引きずられるように連れていかれる佳香の目に、筆や帳面が焔に投じられ、硯が打ち壊される様が映る。
それだけではない。
佳香が嫁ぐ時に持ってきた思い出の品なども、全て焔の中に消えて行く。
恐らく、佳香を罰する為に彼女から大事に思うものを全て奪おうと言うのだろう。見せしめでもあり、立場を思い知らせるためでもある、残酷な仕打ちだ。
最早言葉もなくされるがままの佳香を引きずりながら、下男は佳香に聞かせるように殊更大声で嘲る。
「女なのに文学者気取り、なんてねえ」
「これだから女が学をつけると碌な事がないって言うんだよな」
嗤う、嗤う、声を潜める事すらない悪意が身体に絡みついてくる。
全てが黒い澱みとなり、黒山のような塊となり膨張し、佳香を取り囲み責め立てる。
罪深い咎人と、言葉の礫を投げつけ打ち続ける。
燃える、燃える。
火の粉が宙を舞い、焔が揺らめく。
燃えているのは何?
身を焦がしているのは、誰――?
いけないことだったのだろうか。
好きなものを好きでいたかった、日の目を浴びなくてもせめてそれだけはと。
自分だけの閉じた世界でも、愛する事が出来たなら。
けれど、それすらも許されない。願いを抱く事すら、夢を見る事すら。
何故、それすらも許されないのか。罪悪として扱われ、罰を受けるのだろうか。
女であるから、だ。
縁談が持ち上がった時、佳香は嫌だと訴えたかった。
けれども言わなかった。言っても無駄だと知っていたからだ。
家の為、親に尽くすは娘の務めと繰り返し続ける父親が、考えを翻すとは思わないから。
恐らく、拒絶したとしても妹が犠牲になるか、はたまた揃って遊郭に売られるかだったろう。
どれ程嘆いたとしても、女に生まれた事をどれだけ呪ったとしても、世は理不尽に満ちている。
それは奏子とて同じ筈だった。
学び舎で出会い心通わせた彼女もまた、家の都合で己の意思を示す事すら許されぬ立場だった。
同じ場所に同じように居た筈の彼女は、同じく意に染まぬ結婚をした筈だったのに。
夫に愛され仲睦まじいだけでなく、伴侶の理解を得て今も好きな事を望むように続けている。
世に認められ、求められ、人々の心を震わせ続けている。眩い程に輝き続けている。
自分は独り、隠れてこそこそと閉じた世界に綴る事しか出来なくて。しかもそれすらも禁じられ、貶められ、奪われた。
同じ筈だったのに、一緒の筈だったのに。
奏子だけが、幸せに。奏子だけが、許されて。奏子だけが、望むものを全て手にして。奏子だけが何も諦める事なく。
環境に恵まれただけで、彼女は微笑み続ける。
理不尽の闇など知らぬ顔で、我が世の春を謳歌し続けるだろう。
「狡いですよね?」
柔らかな声音の言葉が耳を打つ。ふわりと抱き締められたのを感じる。
それはとても聞き慣れた声であり、佳香が慕わしいと思う存在が其処に居た。
顔は見えないけれど、麗人は慈愛に満ちた微笑みを浮かべているのだろうと思う。
周囲を取り巻いていた黒い影が、その人を包む光に圧されるように、一つ又一つと消えて行く。
花の香りと共に、何もかも失われた佳香の心を何かが満たしていく。
その人は首を傾げながら歌うように囁く。
「彼女だけ、幸せに。彼女だけ何も諦めずに望むままに生きて」
狡い。
佳香は気付けばその言葉だけを呪詛のように繰り返していた。
何で奏子だけが。
何で私がこんな思いを。
美しいひとは、佳香を更に抱き締めながら更に囁いた。
「許せないと思うわよね……?」
問いかけられて頷く。
抱き締めてくれる腕に力が籠る。けれども少しも苦しくない。
空虚になって形を留める事すら危うかった自分を留めてくれる。
自分を熱いもので満たして、新たな自分を開いてくれる。
「許せないと、思うよね……?」
何処から聞こえているのか、違う声音が同じ事を問いかける。
何も違和感を覚えず、佳香は更に頷いた。
許せない、許せない、許せない。
妬ましい、狡い、憎い。
奏子が好きだったのも、彼女の紡ぐ物語が好きだったのも本当。
物語が世に出て、人々がそれを読んで夢中になったのが嬉しかったのも本当。
けれども、彼女が憎いのも本当。
自分と奏子は同じ場所に居た。
どんどん先へ進み輝いていく彼女を見て、自分も負けないと笑えたならきっと良かった。
自分もそれに続くのだと思えたなら、まだ祝福したままでいられただろう。
けれどそれが無い人間には、眩すぎる。
歩き出せない人間にとって、歩き出して新しい場所に至れた人間がどれだけ眩く映るだろうか。
何時か終わると思っていたからこそ許せた、それなのに終わらず、続いて生き続ける。
先を望む事すら叶わない者にとっては、夢を見る事すら許されない人間には、それはあまりに眩しすぎて、あまりに憎い。
ああ、そうかと気付く。
友人として応援するふりをしながら、自分はどんどん先へ進み輝く恵まれた友を憎んでいたのだと。
祝いを口にしながら、心で呪いを叫んでいたのだと。
自分と同じところに堕ちてこいと、何時も願い続けていたのだと。
なら手伝ってあげると、その声はわらって……――。
「奏子!」
「……今の、一体……」
叫ぶように名を呼ばれて、目の前で何かが弾けた。
心配そうに覗き込む朔がいて、離れた場所には血の痕のある刃を手にする佳香が居る。
先程までと、変わる事のない光景があった。
幻だったのかを怪訝に思ったけれど、すぐにそれは違うと思い直す。
先までの光景は、思いは、過ぎし日の佳香のものだ。彼女が見た光景であり、体験した事であり、感じた思い……。
あの声の主は一体誰だったのだろうか。
聞き覚えがあるような気がする。そしてもう一つ聞こえた声は、奥に眠る深い何かを呼び起こそうとするかのように、恐ろしくて。
あれが、全てを惑わしたのだと。奏子の裡に眠る何かが警告する。
「奏子……?」
「ごめんなさい、もう大丈夫……」
ぼんやりと考え込みかけた奏子に、朔が気遣うように声をかける。
頭を左右にふり、今度こそ確かに現へと戻る。
そして、そこにある動かせない事実と、真っ向から向き合あった。
佳香は密かに執筆を続けていたのだ。
夫は妾の元に入り浸りで、自分は離れ住まい。使用人も寄り付かないならば、とその状況を逆手に取った。
皆が寝静まった頃を見計らい、夜更けてからこっそり物語を綴り続けた。
誰に見せる事もない。唯一の読者であった奏子に見せる事も出来ない。正真正銘、自分だけの物語であり世界。
それでも幸せだった。自分だけの閉じた世界であっても、夢を抱き続けられるだけで。
だが、それもある日破綻する。
その夜、佳香は離れから引きずり出された。
何事かと震えていたならば、目の前には、あろうことか書きためた大事な物語の冊子たちが無造作に積み上げられていく。
顔色失くして座り込む佳香を、忌々しげに見つめている男は彼女の夫だろう。
佳香が何時も酷く眠そうな理由を不審に思った夫はまず身辺を探らせた、他に男でもありはしないかと。
妻を押し込めてある離れに向う世にも稀な程美しい男を見たという報告があった。
更には、佳香がほぼ毎晩のように夜更けても起きている事を知り、部屋を家探しさせたのだという。
男の尻尾こそ掴む事はできなかったが、佳香が書き溜めていた小説が見つかったというわけだ。
人目に触れさせず、大事に隠していた佳香の世界が其処にぶちまけられていた。
夫は、蔑むような眼差しを佳香に向ける使用人達に怒りのままに命じる。
「下らない、全部焼き捨ててしまえ!」
「あの、それだけは……!」
命を受けた使用人達が、佳香の物語たちを世から葬りさるべく動き出す。
佳香は震える声で、怯えた表情のまま懇願するけれど。
「うるさい! これ以上怒らせたいのか!」
「っ……! も、申し訳ありません……」
返ってきたのは激しい怒号。
佳香の肩は鞭で打たれたように跳ねあがり、咄嗟に頭を下げながら只管に謝罪を繰り返す。
夫は酔った時に容易く佳香に手を上げる。繰り返され続けた痛みを思い出せば、頭を低くして謝罪を紡ぐ事しかできなくなってしまう。
怯えて縮こまる妻を見下ろしながら、夫の怒りは尚も収まらない。
「女房が小説なんぞ書き散らかしていたなど、世間にばれたら儂はいい笑いものだ! 夫に恥をかかせるところだったんだぞ!」
油がまかれる。火が放たれる。
燃えていく。佳香が紡ぎ続けた世界が焔をあげて燃えていく。
平伏する佳香を前に、ひとつ、またひとつと物語が煙となって消えて行く……。
「なまじ女学校なんぞに通っていたからこんな面倒な……。没落した家を救ってやった恩義も忘れおって」
救われてなどいない。佳香はむしろ、地獄に落された。
苦しみだけの生活の中、唯一の光は自分だけの世界だったのに。その世界は今、消え行こうとしている。
気が付けば、夫は何処かに消え去っていた。恐らく、今宵も妾の処に行ったのだろう。
佳香を罰として敷地の隅にある小屋に閉じ込めろと夫は命じたらしい。
下男に引きずられるように連れていかれる佳香の目に、筆や帳面が焔に投じられ、硯が打ち壊される様が映る。
それだけではない。
佳香が嫁ぐ時に持ってきた思い出の品なども、全て焔の中に消えて行く。
恐らく、佳香を罰する為に彼女から大事に思うものを全て奪おうと言うのだろう。見せしめでもあり、立場を思い知らせるためでもある、残酷な仕打ちだ。
最早言葉もなくされるがままの佳香を引きずりながら、下男は佳香に聞かせるように殊更大声で嘲る。
「女なのに文学者気取り、なんてねえ」
「これだから女が学をつけると碌な事がないって言うんだよな」
嗤う、嗤う、声を潜める事すらない悪意が身体に絡みついてくる。
全てが黒い澱みとなり、黒山のような塊となり膨張し、佳香を取り囲み責め立てる。
罪深い咎人と、言葉の礫を投げつけ打ち続ける。
燃える、燃える。
火の粉が宙を舞い、焔が揺らめく。
燃えているのは何?
身を焦がしているのは、誰――?
いけないことだったのだろうか。
好きなものを好きでいたかった、日の目を浴びなくてもせめてそれだけはと。
自分だけの閉じた世界でも、愛する事が出来たなら。
けれど、それすらも許されない。願いを抱く事すら、夢を見る事すら。
何故、それすらも許されないのか。罪悪として扱われ、罰を受けるのだろうか。
女であるから、だ。
縁談が持ち上がった時、佳香は嫌だと訴えたかった。
けれども言わなかった。言っても無駄だと知っていたからだ。
家の為、親に尽くすは娘の務めと繰り返し続ける父親が、考えを翻すとは思わないから。
恐らく、拒絶したとしても妹が犠牲になるか、はたまた揃って遊郭に売られるかだったろう。
どれ程嘆いたとしても、女に生まれた事をどれだけ呪ったとしても、世は理不尽に満ちている。
それは奏子とて同じ筈だった。
学び舎で出会い心通わせた彼女もまた、家の都合で己の意思を示す事すら許されぬ立場だった。
同じ場所に同じように居た筈の彼女は、同じく意に染まぬ結婚をした筈だったのに。
夫に愛され仲睦まじいだけでなく、伴侶の理解を得て今も好きな事を望むように続けている。
世に認められ、求められ、人々の心を震わせ続けている。眩い程に輝き続けている。
自分は独り、隠れてこそこそと閉じた世界に綴る事しか出来なくて。しかもそれすらも禁じられ、貶められ、奪われた。
同じ筈だったのに、一緒の筈だったのに。
奏子だけが、幸せに。奏子だけが、許されて。奏子だけが、望むものを全て手にして。奏子だけが何も諦める事なく。
環境に恵まれただけで、彼女は微笑み続ける。
理不尽の闇など知らぬ顔で、我が世の春を謳歌し続けるだろう。
「狡いですよね?」
柔らかな声音の言葉が耳を打つ。ふわりと抱き締められたのを感じる。
それはとても聞き慣れた声であり、佳香が慕わしいと思う存在が其処に居た。
顔は見えないけれど、麗人は慈愛に満ちた微笑みを浮かべているのだろうと思う。
周囲を取り巻いていた黒い影が、その人を包む光に圧されるように、一つ又一つと消えて行く。
花の香りと共に、何もかも失われた佳香の心を何かが満たしていく。
その人は首を傾げながら歌うように囁く。
「彼女だけ、幸せに。彼女だけ何も諦めずに望むままに生きて」
狡い。
佳香は気付けばその言葉だけを呪詛のように繰り返していた。
何で奏子だけが。
何で私がこんな思いを。
美しいひとは、佳香を更に抱き締めながら更に囁いた。
「許せないと思うわよね……?」
問いかけられて頷く。
抱き締めてくれる腕に力が籠る。けれども少しも苦しくない。
空虚になって形を留める事すら危うかった自分を留めてくれる。
自分を熱いもので満たして、新たな自分を開いてくれる。
「許せないと、思うよね……?」
何処から聞こえているのか、違う声音が同じ事を問いかける。
何も違和感を覚えず、佳香は更に頷いた。
許せない、許せない、許せない。
妬ましい、狡い、憎い。
奏子が好きだったのも、彼女の紡ぐ物語が好きだったのも本当。
物語が世に出て、人々がそれを読んで夢中になったのが嬉しかったのも本当。
けれども、彼女が憎いのも本当。
自分と奏子は同じ場所に居た。
どんどん先へ進み輝いていく彼女を見て、自分も負けないと笑えたならきっと良かった。
自分もそれに続くのだと思えたなら、まだ祝福したままでいられただろう。
けれどそれが無い人間には、眩すぎる。
歩き出せない人間にとって、歩き出して新しい場所に至れた人間がどれだけ眩く映るだろうか。
何時か終わると思っていたからこそ許せた、それなのに終わらず、続いて生き続ける。
先を望む事すら叶わない者にとっては、夢を見る事すら許されない人間には、それはあまりに眩しすぎて、あまりに憎い。
ああ、そうかと気付く。
友人として応援するふりをしながら、自分はどんどん先へ進み輝く恵まれた友を憎んでいたのだと。
祝いを口にしながら、心で呪いを叫んでいたのだと。
自分と同じところに堕ちてこいと、何時も願い続けていたのだと。
なら手伝ってあげると、その声はわらって……――。
「奏子!」
「……今の、一体……」
叫ぶように名を呼ばれて、目の前で何かが弾けた。
心配そうに覗き込む朔がいて、離れた場所には血の痕のある刃を手にする佳香が居る。
先程までと、変わる事のない光景があった。
幻だったのかを怪訝に思ったけれど、すぐにそれは違うと思い直す。
先までの光景は、思いは、過ぎし日の佳香のものだ。彼女が見た光景であり、体験した事であり、感じた思い……。
あの声の主は一体誰だったのだろうか。
聞き覚えがあるような気がする。そしてもう一つ聞こえた声は、奥に眠る深い何かを呼び起こそうとするかのように、恐ろしくて。
あれが、全てを惑わしたのだと。奏子の裡に眠る何かが警告する。
「奏子……?」
「ごめんなさい、もう大丈夫……」
ぼんやりと考え込みかけた奏子に、朔が気遣うように声をかける。
頭を左右にふり、今度こそ確かに現へと戻る。
そして、そこにある動かせない事実と、真っ向から向き合あった。
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