未必の恋

ほそあき

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 どれくらい時間が経ったのかはわからない。ただひたすら中を広げられ、いつの間にか指も増やされ、今はおそらく三本の指が俺の中に入ってる。
 こんなところに物を入れて気持ちいいなんて嘘だろ、と思ってた。でも、俺の体は確かに快感を得て、中の指を締め付ける。特に、内側にあるしこりのような場所を刺激されると、目の前がチカチカするほどの快感に襲われる。

「あぁ、あ……も、むり……」
「無理じゃない。気持ちいいだけだとさっきも言っただろ? とは言っても、随分柔らかくなったし、そろそろいいか。挿れるぞ、倉光。深呼吸しろ」

 俺の中から指が全部抜ける。
 足を持ち上げる手も離され、力が入らない下半身がベッドに沈む。
 今まで着衣を乱さなかった原賀先輩が、ベルトを抜き去ってスラックスの前を開く。

「いやだ」
「は? おい、倉光!」

 俺だけ何も着てないのに。この人は挿入に必要な部分だけ露出するつもりでいるんだ。
 そう思うと我慢できなくて、ぐったりと沈む体を必死に起こして、原賀先輩のネクタイを掴んで引き寄せる。震える指をかけると、俺がしたいことを察した原賀先輩が、スラックスから手を離してネクタイを緩める。緩めたネクタイを床に落とし、ワイシャツのボタンを外す。
 そうして最後には俺と同じく全ての服を脱ぎ去った原賀先輩に、満足げな顔を向ける。

「これでよし、みたいな顔をしやがって。いやだなんて言うから、ここまで来て抱かれることに拒否を示したのかと思っただろ」
「ん、別に……」

 それはいい。
 好きな人との行為が嫌なわけがない。それがたとえ抱かれる側であっても。失恋が確定していても。

「だったら、挿れるからな。苦しくても息は止めるな」
「ぐ、っ……」

 息は止めるなと言われても、腹の底から襲い来る圧迫感にまともに息ができない。
 ゆっくり、ゆっくりと原賀先輩が腰を進める。動かされるたびに、圧迫感も迫り上がる。

「さすがにきつい……。あれだけほぐしたのに。倉光、大丈夫か?」
「ぅ、ぁ……」

 痛みはない。ただただ苦しい。
 快感を拾うどころの段階じゃない。苦痛を逃すので精一杯だ。

「ひっ!?」

 突然の刺激に悲鳴をあげる。
 苦痛に萎えかけたものに、原賀先輩が触れた。おもむろに握り込んで上下に動かされる手に、強制的に快感を与えられる。

「こっちに集中しろ。気持ちいいことだけ考えろ」
「は、あ、ぁ」

 苦痛を快感で上書きされる。
 その間にも中を押し進む存在感は増し、指で散々快感を与えられた中は、貪欲に飲み込もうと動く。

「そろそろか。ここ、お前の気持ちいいところだ」
「あっ! あ、あ……!」

 ゆっくりと、でも確実に押し挿れられたものは、ついに先端がしこりに届くまで埋まった。

「まだ苦しいか?」
「きもち、い……」

 虚勢を張ることもできない。
 好きな人が中にいて、苦痛を取り除くように快感を与えられて、気遣われて、俺だけを見てくれる。
 幸せだと思う。
 何も知られてはいけないのに。
 弟であることも、兄に恋心を抱いてることも。

「それならいい。まだ全部入ってないから、もう少しだけ我慢してくれ」

 存在感が増す。
 快感が苦痛を上回って、早く奥まで来てほしいという気持ちが湧く。最後まで入ったら、一体どれだけ気持ちがいいんだろう。

「はぁっ、あ……ぜんぶ……」
「ああ、入った。よく頑張ったな」

 原賀先輩の腰が当たってる。
 労るように頭を撫でる手に、全てを委ねたくなってしまう。

「原賀、先輩……」
「わざわざ先輩って呼ばなくていい。呼び捨てにでもすればいい。敬語もいらない。お前は、そんな言葉遣いをする必要はない」

 残酷だ。
 髪を梳く手は優しいままなのに、酷いことを言う。
 呼べはしないのに。先輩と後輩という関係を保っていれば、この人と一緒にいられるのに。

「っ、原賀……」

 だから、兄とも呼ばないし、名前でも呼ばない。
 頼むから、他人の距離を保たせてくれ。

「は、いいよ、それでも……」
「ん、ぁ!」

 答えながらゆるゆると動かされた中のものに意識を奪われる。
 だから、「それでも」の後に口を動かした原賀先輩──いや、原賀が何て言ったのか聞き取れなかった。
 俺が弟であると暴露することを狙いとしてたのなら、目論見が外れて悪態をついたのかもしれない。

 俺には、兄に恨まれるような過去しかないんだから。
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