未必の恋

ほそあき

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「あ、ぃ、イくっ、あぁっ」
「いいぞ、イけ」

 俺の奥深くまで入り込んだ原賀の攻め立てに耐えきれず、腹の上を白濁が流れる。
 もう何度抱かれたのか分からない。初めて抱かれてから一ヶ月以上が過ぎた。一週間に最低一回、多い時には二回も三回もこの不毛な行為を繰り返した。
 原賀の部屋の構造も覚えた。何度も来た。原賀も俺の部屋の構造を覚えてるだろう。何度も招いた。
 何度も抱かれて、原賀は俺がどこで感じるのか、どうすれば高まるのかを熟知してる。初めての時から気持ち良かったのに、行為を重ねるごとに快感が増す。

「ひっ……」

 俺の中で達した原賀のものが抜かれる。そのまま体を反転させられ、ベッドの上にうつ伏せにされる。

「腕で支えておけよ」

 原賀の声が聞こえたと同時に腰を引っ張り上げられて、さっきまで原賀を咥えてた穴に熱いものが当てられる。呑み込むことに慣れた穴は難なく原賀を根元まで迎え入れ、容赦なく快感を与えてくる。

「無理……っぁ、あ」

 腕に力が入らない。
 何度も腕を立てて上半身を持ち上げようとしては失敗する俺を見て、背後で笑う声が聞こえる。

「仕方ない。支えておいてやるから、力を抜いて気持ち良さだけ追え」

 原賀は両手で俺の腰を掴んで、激しく抜き挿しを始めた。
 力を抜けと言われてもそれすら無理だ。駆け巡る快感を逃す術がなくて、無意識に手元にあった枕を握りしめる。

「は、ぁ、あ、あ」

 一定のリズムで中を突き上げられ、それに合わせて声が出る。自分の声とは思いたくない甘い声。
 もはや自分の体のはずなのに、全てが自分の制御下にはない。原賀の言葉に、動きに翻弄されて、全ての主導権を奪われてしまった。

「倉光」

 呼ばれたところで、返事すらできない。壊れた蛇口のように、ひたすら喘ぎ声だけが漏れる。
 原賀は時々、こうして呼びかけるように俺の名前を口にする。その後に続く言葉はなく、返事をしてもしなくても変わらない。それがまるで、確かめるような響きで嫌になる。
 そして何より、その声で呼ばれる名前が、「ルカ」ではなくて「倉光」であることに落胆する自分自身がいちばん嫌だ。兄弟であることよりも、「倉光修」として「原賀優哉」と接することを選んだのは自分なのに。決して戻れない過去に執着する自分に嫌気が差す。

「ひっ、ん、あ……」

 それでも、体は快感だけを素直に伝えてくる。内心の葛藤なんて知らないように。
 原賀が上手すぎるのが悪いんだ。俺の感じるところを的確に突いて、奥まで押し込んだかと思えば引き抜いて浅いところで動かし、また深く挿してくる。緩急を使い分けて、俺を絶頂へ誘う。
 俺の腰を支える必要がなければ、胸も弄られてるだろう。

「そろそろ限界か?」

 もう無理だ、と思った矢先に声がかけられる。相変わらず、俺のことをよく知ってる。

「イ、きたい……っ」

 イくことしか考えられない。
 こうして素直に懇願すれば、原賀は俺のお願いを聞いてくれる。だから、この時ばかりは意地も張れない。

「ずっと、その素直さならいいのにな」
「はぁ、ぁっ、イっ……!」

 俺の体を知り尽くした原賀が、当然のように俺を絶頂へと導く。たとえ抗っても無意味なほどに、確実にイかされる。
 中に入ったままのものが脈打つ。ゴム越しに熱を感じる。そのまま芯を失ったものを抜かれ、腰の両手を離され、支えが一切なくなった俺の体は、自分自身が吐き出した液体で濡れたベッドに力なく沈む。

 素直になどなれはしないのに。俺のことをよく知ってるくせに。だからこそか。そうやって口に出して、俺を苛むのは。

 体を動かすのも億劫で、それでも顔を上げると、原賀が俺を見下ろしてた。一体何を考えてるのか全く分からない顔で。
 分かったことなんてないんだけど。こうして抱かれ始めてから一度も。
 何を思って俺を抱くのか。きっと成瀬先輩のことが好きなのに。相手が親衛隊員であれば、きっとそういう風潮なんだろうとは思える。実際、生徒会の中でも会計の人の親衛隊はおおっぴらに夜の相手として扱われてる。
 でも、俺は違う。恨んでるから。嫌がらせのためだ。原賀はそれでいいんだろうか。成瀬先輩がいるのに。

 性欲の処理に都合良く使われるだけなのかと思えば、俺が気持ち良くなれるように動いてくれる。でも、嫌だと拒否しても強引に抱かれるし、行為が終わればすぐ解散する。
 そもそも転校してきて間もない頃から、昼飯を食べてる俺にちょっかいをかけに来た理由も分からない。弟だとバレてるのかすらも。俺が原賀の言動から勝手にバレてると推測してるだけで、確かめたことはない。だから、本当はどうなのかは知らない。
 何もかもが分からない相手と、それも実の兄と、体を重ねること自体がおかしいんだとは分かってる。それでも、やめられない俺自身もおかしいんだということも。

 原賀が寝室を出て行く。シャワーを浴びに行ったんだろう。
 いつも、動けなくなった俺が体力を回復する間に、原賀が先にシャワーを浴びる。原賀が戻ると、俺が抱き潰されたことに悪態を吐いてシャワーを浴びに行く。シャワーを浴び終えたら、もうそれ以上原賀の部屋にはいない。自室に戻るためには役員専用エレベーターに乗らないといけないので、カードキーを持つ原賀と一緒に部屋を出て、エレベーターを動かしてもらってそこで解散する。そこからは俺一人で一階へ向かい、そこで一般生徒の使うエレベーターに乗り換える。
 外を歩くときはいつも私服のフードを深く被って、顔が見られないように注意してる。誰かに見られると厄介なのは、親衛隊の一件でよく分かったし。
 原賀が俺の部屋に来る時も同じだ。誰だか分からないように俺の部屋に来て、抱くだけ抱いて部屋を出る。中途半端な時期に編入してきたせいで、本来なら二人部屋なのに同室者がいない俺の部屋は、原賀にとっても都合がいい。
 中途半端で曖昧な距離感を、一体いつまで続けるつもりなんだろう。
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