10 / 14
10
しおりを挟む
目が覚めるとベッドにいた。
昨日の夜のことは覚えてる。ソファで兄に抱きついたまま眠った。
ということは、兄がここまで運んでくれたんだろう。重かっただろうな。
のそりとベッドから出る。朝のホームルームまではまだ一時間ある。ゆっくり支度しても間に合う時間だ。
朝飯は何にしようかな、と思いながら寝室からリビングへと続く扉を開く。
「おはよう、倉光」
「……は?」
兄がいた。
「ソファを借りて寝たぞ。汗はかいていないから心配はいらない」
「いやそんな心配はしてねぇけど」
よく俺の部屋に来るわりには、俺の部屋に泊まったのは初めてだよな。
そんなことはどうでもいいか。問題は兄が──原賀が昨夜、明らかに俺のことを弟だと分かってないとしない行動をして、それで、今。
目の前に、原賀がいる。
どう接すればいい?
今までは、もしかしたら知られてるかもしれない、くらいの曖昧さを持ってた。知らないかもしれないっていう可能性があった。
でも昨夜の一件は違う。
原賀は、俺が弟だということに気づいてる。
「朝食、できているぞ。冷蔵庫の食材を借りた。意外と揃っているな」
「たまに料理するし……。そっちこそ、料理できたんだ」
「生徒会の仕事が忙しければ、食堂に行くのも面倒で自炊するからな。簡単なものしか作れないが。ほら、先に顔を洗ってこい」
俺の部屋の簡易キッチンで料理する生徒会長って何なんだ。
そんな現実逃避をしてる場合じゃない。なんで、何も言わないんだ。知ってるくせに。
洗面所で顔を洗い、歯磨きをしてからリビングに戻っても、やっぱり原賀がいる。寝ぼけて見た幻じゃない。
テーブルには朝飯が並べられてる。簡単なものしか作れないと言ったわりには、朝から白米を炊いて味噌汁を作るという本格的なメニューだ。何時に起きたんだろう。
「いただきます」
「いただきます」
原賀と向かい合って食事するのはいつ以来だろうか。
成瀬先輩と初めて話した日以来だ。あれから、原賀とは人前で顔を合わせてない。
お互いに何も話さない。いつ何を言われるのか、そればっかりが気になる。料理は美味しいけど、ぼんやりと集中できないままに口に運ぶ作業と化した。
「ごちそうさま」
「食器、置いてっていいからな。作ってもらったし」
「だったらそれに甘えようか。俺は部屋に帰るが、遅刻するなよ」
「しねぇよ。まだ余裕あるし」
一足先に朝飯を終えた原賀が俺の部屋を出て行く。
何も、言われなかった。
どうして。昨夜だってあんなにも優しかった。まるで過去の、仲が良かった時の兄のように。
原賀が何を考えてるのか分からない。ずっと分からなかったけど、さらに分からなくなった。
恨み言をぶつけられても仕方がない。バレたからには受け止める覚悟はあった。どれだけ嫌われてることを突きつけられても、それは俺が逃げちゃいけないことだと思ってる。
でも、何も言われなかったんだ。
この生温い距離感がつらい。
届かないのに手を伸ばし続けて、もう少しで届くかもしれないという夢を見せられ続ける。
怖い。
知らないから俺と一緒に過ごすんだ、っていう可能性はもうない。
それなのに、今までと変わらない態度で。どうして何も言ってこないんだ。何を考えてるんだ。何も分からない。分からないことが怖い。
原賀が怖い。
俺を恨んでるはずなのに、優しくする原賀が怖い。
俺を恨んでるはずなのに、明言しない原賀が怖い。
分からない。頭が混乱する。どうして、という言葉が脳内を飛び交う。
その日から一週間、俺は徹底的に原賀を避けた。
昨日の夜のことは覚えてる。ソファで兄に抱きついたまま眠った。
ということは、兄がここまで運んでくれたんだろう。重かっただろうな。
のそりとベッドから出る。朝のホームルームまではまだ一時間ある。ゆっくり支度しても間に合う時間だ。
朝飯は何にしようかな、と思いながら寝室からリビングへと続く扉を開く。
「おはよう、倉光」
「……は?」
兄がいた。
「ソファを借りて寝たぞ。汗はかいていないから心配はいらない」
「いやそんな心配はしてねぇけど」
よく俺の部屋に来るわりには、俺の部屋に泊まったのは初めてだよな。
そんなことはどうでもいいか。問題は兄が──原賀が昨夜、明らかに俺のことを弟だと分かってないとしない行動をして、それで、今。
目の前に、原賀がいる。
どう接すればいい?
今までは、もしかしたら知られてるかもしれない、くらいの曖昧さを持ってた。知らないかもしれないっていう可能性があった。
でも昨夜の一件は違う。
原賀は、俺が弟だということに気づいてる。
「朝食、できているぞ。冷蔵庫の食材を借りた。意外と揃っているな」
「たまに料理するし……。そっちこそ、料理できたんだ」
「生徒会の仕事が忙しければ、食堂に行くのも面倒で自炊するからな。簡単なものしか作れないが。ほら、先に顔を洗ってこい」
俺の部屋の簡易キッチンで料理する生徒会長って何なんだ。
そんな現実逃避をしてる場合じゃない。なんで、何も言わないんだ。知ってるくせに。
洗面所で顔を洗い、歯磨きをしてからリビングに戻っても、やっぱり原賀がいる。寝ぼけて見た幻じゃない。
テーブルには朝飯が並べられてる。簡単なものしか作れないと言ったわりには、朝から白米を炊いて味噌汁を作るという本格的なメニューだ。何時に起きたんだろう。
「いただきます」
「いただきます」
原賀と向かい合って食事するのはいつ以来だろうか。
成瀬先輩と初めて話した日以来だ。あれから、原賀とは人前で顔を合わせてない。
お互いに何も話さない。いつ何を言われるのか、そればっかりが気になる。料理は美味しいけど、ぼんやりと集中できないままに口に運ぶ作業と化した。
「ごちそうさま」
「食器、置いてっていいからな。作ってもらったし」
「だったらそれに甘えようか。俺は部屋に帰るが、遅刻するなよ」
「しねぇよ。まだ余裕あるし」
一足先に朝飯を終えた原賀が俺の部屋を出て行く。
何も、言われなかった。
どうして。昨夜だってあんなにも優しかった。まるで過去の、仲が良かった時の兄のように。
原賀が何を考えてるのか分からない。ずっと分からなかったけど、さらに分からなくなった。
恨み言をぶつけられても仕方がない。バレたからには受け止める覚悟はあった。どれだけ嫌われてることを突きつけられても、それは俺が逃げちゃいけないことだと思ってる。
でも、何も言われなかったんだ。
この生温い距離感がつらい。
届かないのに手を伸ばし続けて、もう少しで届くかもしれないという夢を見せられ続ける。
怖い。
知らないから俺と一緒に過ごすんだ、っていう可能性はもうない。
それなのに、今までと変わらない態度で。どうして何も言ってこないんだ。何を考えてるんだ。何も分からない。分からないことが怖い。
原賀が怖い。
俺を恨んでるはずなのに、優しくする原賀が怖い。
俺を恨んでるはずなのに、明言しない原賀が怖い。
分からない。頭が混乱する。どうして、という言葉が脳内を飛び交う。
その日から一週間、俺は徹底的に原賀を避けた。
43
あなたにおすすめの小説
罰ゲームって楽しいね♪
あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」
おれ七海 直也(ななみ なおや)は
告白された。
クールでかっこいいと言われている
鈴木 海(すずき かい)に、告白、
さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。
なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの
告白の答えを待つ…。
おれは、わかっていた────これは
罰ゲームだ。
きっと罰ゲームで『男に告白しろ』
とでも言われたのだろう…。
いいよ、なら──楽しんでやろう!!
てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が
こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ!
ひょんなことで海とつき合ったおれ…。
だが、それが…とんでもないことになる。
────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪
この作品はpixivにも記載されています。
記憶の代償
槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」
ーダウト。
彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。
そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。
だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。
昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。
いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。
こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる