未必の恋

ほそあき

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 終業式が終わった。明日からは夏休みで、教室内はそわそわする生徒ばっかりだ。
 担任からの、夏休みだからといって気を抜くなよという注意事項を最後に、俺たちは夏休みに突入した。
 三上や他の生徒たちとまた二学期に会おうと別れの言葉を言い合い、俺も寮に戻るために荷物を手に取った。そこでスマホが音を立てて、メッセージの受信を知らせてきた。

「成瀬先輩?」

 送り主は成瀬先輩だった。内容は「夏休み前に伝えておきたいことがあるから、第二家庭科室まで来てほしい」というものだったから、寮に向かう予定だったけど切り替える。

 以前来たまま変わりのない第二家庭科室の扉をノックして、扉を開いた。

「急に呼び出してすまないね」
「……は?」

 デジャヴだ。
 申し訳なさそうな成瀬先輩の横にいるのは。

「どうした、倉光。また変な顔をしているな」
「原賀……先輩」

 危ない。思わずいつものように呼び捨てしかけたけど、ここには成瀬先輩もいるんだ。
 そうだ、成瀬先輩に呼び出されたのに、何でここに原賀がいるんだ。

「なんで、と言いたいんだろうが。それはこっちの台詞だな。お前がこの一週間、俺からの電話もメッセージも全部無視して、食堂には現れず、かと言って教室に行くわけにもいかないから弥鶴がお前に会うのに同席した。それだけだ」

 俺は原賀が部屋に泊まった日から、電話を全て無視して、メッセージは未読のまま放置、食事は自炊か購買で出来合いのものを買うことで、寮の部屋と教室以外を極力避けた。原賀は事前連絡なしで部屋に来ることはないし、万が一来ても居留守を使うつもりでいた。

「倉光くん、原賀会長がどうしても君と話がしたいと言って聞かなくて。申し訳ないんだけど、入って座ってもらってもいいかな?」
「……わかりました」

 怖い。正直なところ、話したくない。
 でも、俺を呼んだのは成瀬先輩だから。用件があるなら聞かなきゃいけない。
 原賀も、さすがに成瀬先輩のいる前で不用意な話はしないだろう。

「倉光くんは、夏休みはどうするつもり?」
「少しだけ家に帰って、あとはここに残るつもりですけど」

 成瀬先輩の問いに答えると、親衛隊の中で俺を疎んでいて、夏休み中も寮に残る予定の人物の写真を見せてくれた。

「寮に残るなら気をつけて。僕は家に帰る予定なんだ。目を光らせておくことができないから。原賀会長は生徒会の仕事があるからしばらくは学園に残るだろうし、何かあったらそっちに連絡して。きっと君の役に立ってくれるから。僕が何もできなくて本当に申し訳ない」

 連絡してと言われても。
 成瀬先輩は何も悪くない。でも、何も知らないからそう言うんだ。むしろ俺は、親衛隊をけしかけられてもおかしくない立場だ。

「弥鶴。こいつが俺に頼ることなんてないと思うぞ」
「原賀先輩は俺のために行動してくれないと思いますよ」

 本当に俺のことをよく分かってる。俺が、俺を恨んでる原賀を頼れないってことを。
 原賀が、俺を助けてくれるなんて思えない。

「どうして?」

 成瀬先輩が不思議そうに問う。
 何も知らないんなら仕方がないよな。
 口にするのは怖いけど、このまま曖昧なのも怖い。なら、成瀬先輩という第三者がいる今、いっそはっきりさせてしまうチャンスなのかもしれない。

「倉光は俺のことが嫌いだろ」
「原賀先輩は俺のこと恨んでますから」

 ん?

「は?」
「え?」

 原賀のほうを見ると、向こうも俺のことを見ていたらしく、ばっちり目が合った。
 待て、何で、俺が原賀を嫌いって話になるんだ? 原賀が俺を嫌いなんじゃないのか?

「あー……弥鶴」
「僕の用件は終わったからこれで。あとは二人でゆっくり話し合って。倉光くん、気になることがあったらいつでも連絡してきていいからね」

 成瀬先輩は颯爽と第二家庭科室を去っていった。
 頭が疑問符でいっぱいの俺と、思い違いをしてる原賀が二人っきりで残された。
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