【完結】前世は魔王の妻でしたが転生したら人間の王子になったので元旦那と戦います

ほしふり

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(2)第二の人生

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私は王宮の隅に設えられた小さな小屋でほそぼそと生活しながら一七歳になるまで過ごした。
王族とはいえ最低限度の教育しか受けていなかったが、前世の記憶があるので人間の作法は知っている。
特に生活の不便もなかった。
他の人間とは必要以上の関わりはない。
メイドのリシャは数少ない交友関係の一人だった。

「リグレット王子はすごいですね~」

私の世話をする彼女は黒髪を見ても恐れなくなった。
それどころか、今は椅子に座る私の髪に串を通しながら世間話を続けている。

「すごいって…何が?」
「年齢のわりに落ち着いているというか、凛としているところが大人っぽくてかっこいいです」
「…そうなのか?」
「はい。今年で二十歳になる第二王子のガレット王子なんて、いつも癇癪を起こしているほどですよ?リグレット王子を見習って欲しいぐらいです」

ガレット王子は私の兄であり、母も同じ。
実際に会ったことは今までないのだが、リシャがよく愚痴をこぼす人物である。

この小屋にいない時は第二王子の召使いをしているらしいのだが評判自体が悪いとかなんとか。
女癖が悪くて何人ものメイドに手を出したとか。
気に入らない貴族を没落させたとか、王族の面汚しとか。

最初のうちは私の実の兄の話なのだからと愚痴を控えていたのだが、小屋の外の話を私が聞きたがっているのを知ると色々と話してくれるようになった。

「第一王子のレゼル王子は度重なる魔族の襲来によりお疲れのようでしたが、リグレット王子はお会いになりましたか?」
「レゼル兄様は僕のところにもよく顔を出してくれているよ。気を使わせているようだから少し申し訳ないけれど…」
「レゼル王子にとっては良い息抜きになっていると思うので、そこまで謙遜しなくてもいいですよ。帰ってきた時は仕事が捗っているようですから」
「そうなのか?」
「はい」

第一王子のレゼル兄様は私達とは腹違いの兄だ。
レゼル兄様は亡くなった正妻の子供であり、私とガレット王子は後妻の子供。
レゼル兄様はガレット王子とは違い、品行方正で文句のつけようもない聖人と名高い人物だ。
王位継承も彼なら問題ないと諸侯が太鼓判を押しているとか。

実際、忌み子としてこの小屋で暮らす私を家族の一人として気遣ってくれるほど身分や差別に対して隔たりのない思考の持ち主である。
人間の母からはろくな愛情を受けることはなかったが、レゼル兄様には恩がある。

「レゼル王子はしばらく内務で忙しくなるらしいのですが、リグレット王子にはなるべく息抜きに付き合って欲しいと執事たちがこぼしていましたね。とても助かるとか」
「まぁ…話し相手ぐらいでよければいつでもいいけれど…」
「ふふっ、レゼル王子と仲が良くて微笑ましいです」

リシャは朗らかに笑うと鼻歌交じりに話を続けた。
その後、兄たちの話以外にも様々な話を聞かせてくれた。
最近は魔族の襲撃が多いとか、乱戦続きで兵や騎士たちが出払っているとか。
こうしていつも繰り返される話の中で外の世界の情報を集めながら私は暮らしている。
私が転生するまでに五百年かかってしまったわけだが、その間に何が起こったのか…知らない事が多すぎた。

例えば、魔王ベルグラが五百年前に妻リアーネを殺されたことに怒り、人間を滅ぼすために立ち上がったとか。


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