ひまわりの王様 ~友達を作りに行ってきます!~

Ignidax

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第一章:四百年、追いつく時間

二話:最初の出会いと力の見せしめ

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 ちゃんとしてよぉ、ロストォ……。

 三人組は彼の間抜けなで強張った声を聞いてアホを見るような目で彼を見ていた。
 何でこんな奴に警戒してたんだろう。
 情けない、くだらないと。

 私のロストをそんな風に評価されるのは屈辱で耐えられないけど、本当に仕方ない。
 私ですら恥ずかしさのあまり両手で顔を隠しているんだから。
 どうして、私、こんなロストの事好きになったんだろう。

「お前は何者だ?」

「あ、ああそうでしたね。自己紹介が先ず最初、ですよね?」

 おどおどする彼の態度を見て皆、マリアですら膨大な溜息を吐いてしまう。
 彼女はロストが頼りになると思うなんてバカみたいと考えている。
 期待してた私がバカだったわ、と。

「えっと、私は亡き主の【組織】に所属した失われた世代ロスト・ジェネレーション。【ひまわりの騎士】部、【ひまわりの王様】の称号を授かったロスト、と言います。よろしくお願いし―」

「テメェ、バカにしているのか?」

「ぬぅおうっ?!」

 途中で阻まれてロストはたじろいてしまう。
 お陰で皆はますます嫌な顔をする。
 ロスト、四百年も闘ってきたんだからこれぐらい威嚇で同様しないでよ……。

「ひまわりの騎士だぁ?王様?ふざけやがって」

「い、いえ、ふざけていません。私は真面目に―」

「だったら騎士とか王様みてぇになんか証拠を見せろよ!」
 
 さっきから喧嘩腰で言葉使いの荒い男が我慢しきれず、剣を強く握りしめて襲い掛かる。
 ロストの体が大きくても、彼の腰抜けな反応を見て大した敵じゃないと見ている。
 だから速やかに排除して片付けると。

 その男はロストを見下しているけど決して攻撃の手は緩めていない。
 傷を負っていながらもしっかりとした足取りで駆け抜き、カウンターを受け止められるように走りながら剣を構えている。
 そして彼はタバードによって隠れていると思われる胴体の継ぎ目に狙いを定めて迫る。

 でも彼がロストの所へ届くよりも早く、ロストは詠唱を唱えた。

「“Come forth my servants. Grant them your blessing”」
(来たれ我がしもべ達よ。彼らに祝福を)

「うわっ?!」

『?!』

 ロストのマントがはためいて内側から無数の光の小鳥が飛び出る。
 それは襲って来る男性を止めて、皆を包むように舞う。
 三人組は必死に舞う鳥を振り払うように腕を動かし、女性は深い傷を負っている所為で身動きができないから少年と同じようにそのまま鳥に包まれる。

 やがて光の鳥は皆から離れてロストのマントへと戻った。

「貴様ァ!一体何をしやがった!?」

「何も、皆さんが手傷を負っていたようなので治療させてもらいました」

「んなっ?!」

 彼の言う通り、皆が負っていた傷はいつの間にか治療されている。
 意識を失って深い傷を負っていた少年も綺麗さっぱり傷が治っていた。
 そして悪かった顔色も健康的なものへと。

「余計な事を!」

 喧嘩腰の男性を含めて今度は三人組が一斉にロストへ襲いかかる。
 それはロストが未知なる力を使って危険な存在だと警戒を改めて。
 よって三人ともまっすぐ彼に襲い掛からず、陣形を整えて慎重に攻めに掛かる。

「これはいい機会です。遠慮なく掛かって来てください。皆さんの力を試させてもらいます」

 けれどそんな三人相手にロストは今までとは違った雰囲気を出していた。
 おどおどとした腰抜けではなく、歴戦の戦士如く自信たっぷりな態度。
 三人に襲われていながらも全く怯えていない。

 最初に届いた男性の一撃をロストは容易く躱す。
 その身のこなしは巨体に似合わない程敏感で、攻撃を躱された男性は驚く。
 次に攻撃してくる一撃までも躱して、次から次へと攻撃されてもすべて受け止めず躱した。

「良い剣使いに素早い動き。皆さん、かなりの手慣れですね?」

 呑気にコメントする彼を無視して三人組は攻撃の手を緩まず次々と彼に攻撃を仕掛ける。

 そして徐々に三人の顔に焦りと緊張が浮かぶ。
 攻撃が当たらない事で焦りを。
 ロストがまだ攻撃してこない事で緊張を。

「ふむ。もう皆さんの能力を見極めたのでそろそろ隠し技とか持っていませんか?これ以上続きますと終わりませんので、こちらから終わらせますよ?」

「くそったれがぁ!だったらとっておきのを見せてやるよ!」

「ま、待て、ホゼー!ここであれ放つのはまずい!」

「『古より司る火の|理(ことわり)よ、烈火の如く燃える炎で敵を滅せよ!【爆熱憤然弾レイジング・エクスプローション】!!』

「ホゼー!!」

 ホゼーは詠唱を唱えた直後、莫大な爆発がロストに放たれた。
 その威力は凄まじく、彼の周りの木々は爆発に巻き込まれて焼き滅びる。
 そして爆発によって生じた炎はあまりにも熱く、皆は喉を焼けられないよう空気管を防いでいた。

「ホゼー!!一体何を考えているんだ!?」

「あのふざけたデカ物を仕留めたから別に良いだろ、カイル」

「周りを見ろ!このままだと俺達は森の中で焼き死んでしまうんだぞ!」

 カイルの言う通り、ホゼーが放った爆発魔法によって周りは酷い火事になっていた。
 見たたけでもやばく、炎から感じる熱はこのままだと皆を焼き殺してしまう。
 ここから離れたとしても、火事は森林に広がって皆に追いついて飲み込んでしまう。

「うぐ……すまねぇ。俺が悪か―」

「でしたら手伝ってあげましょうか?」

『!?』

 とある方向から皆へ声が掛けられる。
 その方向は決してありえないと、皆困惑で炎の熱を浴びながらも目を大きく開く。
 何故決してありえないかと言えば、彼はホゼーの魔法を受けて消し炭にされた筈だから。

「ば、バカな……」

 炎の中から無傷のロストがゆっくりと現れた。
 まるで世界の法則を無視するように炎は彼から離れ、マントやタバートですら燃えていない。
 むしろ風によってはためくように、燃え上がる炎と一緒に踊っている。

「私のような鎧を着ていなければこのまま皆さん熱傷で死んでしまいます。ですが安心してください。私が今すぐこの炎を吹き飛ばします。来てくれるか、【収穫の偉大剣ハーベスター】?」

 彼は右手を前に差し出し、彼の呼び出しを応えてマントの内側からまた無数の光の小鳥がまた飛び出て彼の右手に集まり始めた。

 パズルを組合すように小鳥は細長い形をとっていく。
 徐々に形は個体として形成していき、細長い剣が現れ始める。
 でも形がはっきりと見えるころ、彼の右手に握られたのはただの細長い剣じゃなかった。

 金色の花と蔓の模様で豪華に飾られて施された、四メートル長いグレートソード。
 紅色の四角いケースに覆われ、片側には獣のような歯が無数に並べられて剥き出ている。
 刃とハンドルの間にはエンジンが搭載。

 彼が手にしているのは剣の形を取ったチェーンソー。所謂チェーンソード。
 命を刈り取る、収穫する意味で名付けられた彼がイナイカとして昇格して与えられた武器。
 ただ昔と違って彼が握っている剣は彼が最初に与えられたショートソード型とは違う。

「Servants, your faith is your shield. Protect them from harm」
しもべ達よ、汝らの信念こそ盾。彼らを守れ)

 彼は詠唱、というよりも命じて光の鳥が応える。
 またマントから飛び出た無数の光の小鳥は、今度は皆の所へバリアを張るように舞う。
 三人組は困惑のあまり鳥達を振り払おうとするけど、ロストは彼らに忠告する。

「ああ、彼らに害はないのでそのままでいてください。今から火を消します。なので皆さん大人しくしてください。でないと酷いケガを負いますよ」

 と、彼が忠告しても三人組は彼を信用せず続けて鳥達を振り払おうとする。
 一方マリアは意識を失って横になっているライルを腕に抱えて死んでも守るとばかりに彼の体を自らの体で守るように包める。
 皆それぞれの違った対応を見てロストは誰にも気付かない程小さな溜息を漏らしてから、カチっと、ハンドルに付いてあるトリガーを引いて剣を起動させた。

ガアアァァァァァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!

『?!!』

 獣の如く、起動した剣はこの世に存在を知らしめるかのように大きな雄叫びを上げた。
 無数に並んでいる刃が急速回転して、それが音速を遥かに超えたことによって衝撃波が生じられる。
 周囲は鼓膜が破れるほどの音と衝撃に包まれ、もしもロストが展開した光の鳥のバリアが無ければ皆ただじゃ済まなかっただろう。

 周囲に燃え上がっていた炎は剣に生じられた衝撃波に消化された、周囲にあった木々もろとも吹き飛ばして。

 今森林の中で唯一皆の周りが異様に開けた空間ができていた。
 でもそれだけで終わらない。
 【収穫の偉大剣】は留まる事を知らず更に強い咆哮を上げるかのようにエンジンを熱く動かして刃の回転速度をもっと上げて威力を増す。

 やがてプラズマが剣から生じて雷が起こる。
 そして空気を食い散らかす様に、空気が燃えた。
 剣の周りに炎が膨れ上がり、天へ突き刺すように大きな火の柱が生み出された。

「ぬぅおうっ?!相棒、駄目だぞ!せっかく辺りの炎を消したのにこのままではまた森を燃えてしまう。ハウス、ハウス!!」

ググルルゥ……。

 興奮する愛犬を宥めるようにロストは引き金を離して剣を落ち着かせる。
 したがって剣はロストの言う事を聞くように起動を停止して放出してた火の柱が消える。
 ただ、剣は止められてとても残念そうで落ち込んでいるように見えた。

「久しぶり出てきて興奮したんだな。ならば小さくなってくれるか?そしたら好きなだけ動いても良いぞ」

グググ!?

 エンジンから鳴る音がまるで「本当に!?」とでも言うように剣は光の鳥となって分解する。
 分解した鳥はまた形をとっていくけど、今度は二メートル程のショートチェーンソードへと変わった。
 その形こそ昔ロストが与えられた剣と同じで私には見覚えがある。

ガアァァァ☆!!

「機嫌が直って何よりだ。さて、皆さんご迷惑をお掛けしました。私も武器を取り出したので宜しければお手合わせお願いでき―」

ぴゅぅー!

 と、彼が三人組にお手合わせをお願いする前に三人組は黙ったまましっぽを巻いて逃げた。
 それが健全な判断だろう。
 あんな凄い物を見せられたら勝ち目が無いと思うのは当たり前。

 むしろあんな怯えた顔で逃げる姿を見れば、彼らはロストの敵でもない。

「……えっと、大丈夫です―」

ダッ!

 ロストは今度はマリアに声を掛けても、彼女はびくっと体を跳ね上がらせて何も言わずライルを腕の中に抱えて、三人組と同じように風となって逃げていった。

「あ、あれ?」

 よって森林の中で異様に開けた空間の中で体の大きいロストがぽつんと残された。

 いきなり皆に逃げられて呆気にとられてしまうロスト。
 手に持っていたショートソードをマントの中に仕舞って、地面に腰を下ろす。
 そのまま両腕で脚を抱えて、体育座りを取る。

「逃げられた……。怖がられたんだ」

 皆が怯えられて逃げられたと、彼は深く落ち込んでしまう。

 でもあれは皆ロストの姿を見て怯えていたよりも、アナタの武器を見て怯えたと言った方が正しい。
 マリアの場合、彼が剣を取り出してあんな特大な力を見せられて表情が恐怖へと変わった。
 三人組も、剣の絶大な力を目の辺りにして絶望の色が出ていた。

 でもそれを知らないロストはどうしようもない程ブツブツいじけていた。

「好きでこんなに大きくなりたくなかったのに……。話ぐらい、最後まで聞いてくれても良かったのに……。少しぐらい付き合っても良かったのに……」
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