10 / 10
第二章:聖剣との付き合い
八話:才能無しの踊り
しおりを挟む
≪アンタねぇ!!これ以上私のロストに近付くかないでよ!! ≫
≪モチモチすべすべな肌にサラサラな髪。実に心地が良かったのだぞ≫
≪シャァッ!!≫
かれこれ数分間掛けて私は駄目剣からロストを引き離した。
私のロストをよくも汚してくれちゃって。
ロストもほら。
いきなり変態に抱かれたからぶるぶる震えているじゃない。
≪おおよしよし、大丈夫だよ~ロスト。怖くないよぉ~≫
≪まあ、いきなりそなたに触れた事を詫びよう。しかし、お主に伝えたいことがあるのじゃ≫
彼女を鋭く睨む私をほっといて、彼女は真面目な表情でそれを告げた。
≪少年よ、残念ながら、全くの才能がないんじゃ≫
≪……は?何いきなり失礼な事を言うのよ?それに才能が無い?何を言っているの?どうしてそんな事がわかるのよ?≫
≪ああそう怖い顔をするでない。それに妾には長い経験でわかるんじゃよ。今まで妾に触れた者、握られた者にどんな才能が秘めてあるか、どれだけ頑張れば強くなれるかわかるんじゃ。しかしだな、妾が少年に触れたらなんも感じなかった≫
≪ちょっと待って。才能ってどういう才能よ?≫
才能と言ってもいろんな事がある。
例えば剣の才能、勉学の才能、その他。
≪全部じゃ。所謂、なんも才能や能力を秘めていないただの人間でしかない。本当に残念じゃ。こやつはこれからどれだけ頑張っても、一生才能が開花する事は無い≫
≪それっておかしいよ≫
≪おかしくはない。事実じゃ。もしも少年に永遠と自らの才能を追及する時間があれば才能や特殊な能力が見つかるかもしれないが、人間の寿命は我ら永遠に生きられる精霊と違ってとても短い。しかし、その短い時間で終わりまで、彼は人生を注げる好きな事を探せば良い≫
そう言って、彼女はロストの所までしゃがんで彼の頭を優しく撫でた。
普通ならロストを彼女から遠ざけるけど、彼女は真面目に、本当に申し訳ない顔でロストを撫でていたから私はロストの事を考えている彼女からうかつに遠ざけなかった。
むしろ、ロストの事を思っているから少しだけ共感する。
ロストも、彼女に撫でられてもあまり怯える様子は見せなかった。
≪すまなかった。お主らへ無理に妾の我儘を言って。素直にお主らをダンジョンの入り口まで転移させようぞ≫
「まって、です?」
でも人見知りのロストは珍しく前に出て、彼女を止める。
「とりぎが、たたかう、です」
≪……お主、本気なのか?≫
強く頷く彼を見て彼女は何やら罪悪感で顔を顰めた。
≪お主、妾の話を聞いておらなかったのか?お主が戦っても、なんも意味も無く、ただ痛い目に合うんだぞ?≫
「だいじょうぶ、です。たたかう、です」
≪……はぁ≫
彼女には強い決意の色を見せる彼の瞳を見て、これ以上言っても無駄だと知って猛大な溜息を吐き出したんだろう。
それに吊られて辛そうな顔で、それでも笑顔を見せて、彼女は決めた。
≪わかった。暫くここで待っておれ。直ぐに連れてくる≫
そうして彼女は門番のトリギガを連れて来る為に、ここからいったん離れる。
≪ねぇ、ロスト。大丈夫なの?≫
「だいじょうぶ、です。いっぱい、ためしたい、です」
試したい?ああ、なるほど。
彼は子供の姿でどれぐらい戦えるのか知りたいんだ。
けどあの聖剣アロンダイト、物凄く辛そうな顔だったな
まるで今までロストのような人達を見て来て、彼らにどれほど理不尽な人生が待っているのかを知っていた。
そしてロストに才能が無いとはっきり言って、希望を壊してしまった罪悪感。
でもそれは彼女なりの優しさかもしれない。
私にも、その辛い優しさがわかる。
初めからはっきり言わないと、ただ待っているのは絶望だけだから。
ロストは前世では本当に何も才能を持っていなくて、それに悩んでずっと苦しんでいた。この世界へ生まれ変わっても、彼にはなんも特殊な能力や、才能なんてなかった。
イナイカに転生しても同じ。
しかも実は彼が成人イナイカになるまで、他の皆よりも十年掛かったと、里親に言われた。ある意味ロストがイナイカの転生手術を乗り越えて、成人イナイカまで成れたの奇跡だって。
でも納得がいかない部分がいろいろとある。
彼は【ひまわりの騎士】部、【ひまわりの王様】、部のトップ。
もしもロストに才能が無ければ本当に上まで登りつめただろうか?
それに彼には戦闘の才能がある。
その証拠は彼が一週間前初めて出会った人達と戦って。
……私はロストの事を初めから知っている筈なのに、彼の事が全く知らない。
この四百年、本当に彼に何が起こったのか。
やっぱりそれは私がこれからの旅で謎を解かないといけないんだね。
◇
≪ほれ、連れて来たぞ≫
暫くするアロンダイトはトリギガを連れて戻ってきたんだけど……。
≪何で三体もゴーレムがいるの?≫
彼女が連れて来たトリギガとは全長二メートル、白と黒で混じった岩石で集結された人型、紫色に淡く輝くモノアイをしたゴーレム。
そして、それは三体もいた。
≪その理由はもちろん、三体のギガントゴーレム、略してトリギガだからじゃよ。フッフッフ、ここへ挑む者はたった一体の門番が待ち受けていると思うが、実際は三体おった!というとんでもサプライズが待っておるのじゃ。どうじゃ、巧妙じゃろ?これならば相応しい者にしか妾のダンジョンを乗り越えないのじゃぁ!ワーハッハッハ!≫
≪巧妙よりもインチキでしょ!≫
≪さてと、連れて来たのは良いが、少年よ。お主は本当にこやつらを見ても闘いと考えておるのか?≫
「はい、です」
彼女は得意げな顔から真面目な表情でロストに問いかけるけど、ロストの応えは同じだった。
彼女はしばらく沈黙を保った後、覚悟を決める。
≪よかろう。しかしお主、武器は持っておるか?見るからには手ぶらのようなのじゃが?≫
ロストは顔を横に振って武器を持っていない事を彼女に教える。
いや、実際はあるんだけど、子供の姿で【収穫の偉大剣】を使うのは無理がある。あれはかなり重くて、剣のエンジンを起動すればかなりの腕力が無ければ振動を抑えきれない。それは一回ロストが子供の姿で仮面を付けたまま試しても、剣の振動を抑えきれず、扱えなかった。
しかも子供の姿のロスト、伸長百二十センチと【収穫の偉大剣】、片手型でも二メートル三十センチのあまりにもの体格差があるからバランスが悪い。だから今の所ロストは子供の姿で武器は持っていない。
≪そうか。ならばこの剣を使うと良い≫
と、彼女がロストに渡したのは長さ八十センチの細長いショートソード。
でもロストがそれを手にするとロングソード並みだった。
見た目はただの剣だけど、特殊な能力でもあるのかな?
≪お主はその剣に特殊な能力があると期待しているようだが残念じゃがそれはただの鉄製の剣じゃ。しかしよく聞け。その剣ではゴーレムの硬い体を斬る事はできないが目にある紫色のコアを破壊することはできる。今まで妾を握ったものはその剣でゴーレムの体を斬れなかったものの、全員目のコアを破壊して勝てた。お主もトリギガに勝ちたければ目のコアを狙うのじゃ≫
つまりこれは剣の性能に頼らず、使い手の能力を見極める試練。
この試練を乗り越える事ができなければアロンダイトの所有者として相応しくないと。
ロストはアロンダイトから説明を聞いた後、剣を両手に握りしめてゴーレムの所まで向かう。けど子供の姿でも剣が重かったのか、彼はよろよろしながら剣を抱えてゴーレムの所まで向かった。
そんな彼を見てハラハラする私。
一方、三体の内たった一体のゴーレムが彼の前に出て、ロストに目掛けて腕を振り下ろした。
ロストはよろよろしながらもゴーレムの攻撃を避けたけど、ゴーレムの腕は地面に届くととんでもない威力を生み出した。
ドォン!
「きゃぅ!?」
数トンもするゴーレムが地面を叩くとその威力に大地が激しく揺れて、衝撃波を生む。
そしてロストは衝撃はに呑まれて飛ばされてしまった。
「きゅぅ~……」
≪ロスト、大丈夫!?≫
彼の所まで駆けつけた私は彼の容体を調べて、彼がどこにもケガを負っていなくてほっとする。
≪予想通りじゃな≫
そんな私達の所へアロンダイトがやって来た。
≪これで満足したか、少年よ?まあ、そなたはまだ子供である故、少々大人げなかったな。しかしこれで理解するが良い。お主がどれだけ頑張っても、このゴーレムを倒すことはできない。ここでこれ以上時間を無駄にすることも無い。今転移してや―≫
「まだ、です。マスク、オン、です!」
彼は途中で彼女を阻んで立ち上がり、再度挑戦する為に彼はゴーレムの所へと向かった。
仮面を付けて。
≪……どうやらまだ諦めたくないようじゃな。その根性は認めるが、諦めるのも肝心なのじゃぞ?お主が何度やっても結果は同じじゃ。しかしそなたが満足するまで必死に戦うが良い。トリギガ達よ、少々荒くなっても構わん。そやつに痛い思いをさせろ≫
彼女の命令に応じて同じ一体がまたロストに攻撃してくる。
その動きはさっきと同じで、また彼を吹き飛ばすつもりでいた。
結果が見えてアロンダイトは目を瞑るけど、彼女は本当の結果を知らない。
これから起こる事に彼女は、ゴーレムも予想できるだろうか?
私の場合、ロストが早く皆にギャフンと言わせたくてハラハラ待っていた。
「“Waltz of the Lonely Knight”」
(孤独な騎士のワルツ)
そしてそれは起こった。
ゴーレムの一撃を容易く避けてロストは、ぶれる速度でゴーレムの懐に入って硬い腕を、綺麗な線を描いて斬り落した。
ドォン!
斬り落された腕は地面に落下して先ほどと同じように衝撃波が生じるけど、ロストは涼風にあたるように気にせずゴーレムに告げた。
「掛かって来い、です」
片手でクルリと剣を回して彼は肩上に剣を構えた。
目を瞑っていたアロンダイトは目玉が飛び出そうな程開いてて、あんぐりと口も大きく開いていた。
そんな彼女を見て、自慢で私の胸がいっぱいになる。
腕を斬り落されたゴーレムは速やかに残ってる腕でロストを攻める。
何度もロストに目掛けて振るう一撃はどれもこれも重い。
一回でもロストゴーレムの重い一撃を喰らえばただじゃ済まないだろう。
でもゴーレムの攻撃は一度もロストにあたる事は無かった。
ロストは踊るようにゴーレムの攻撃を次々と避けては隙を見つけて攻撃を入れる。
そしてさっきまで攻めていたゴーレムは攻撃を止め、防御へ移った。
しかしゴーレムが防御に移ってもロストの攻撃を防げる事はできず、また懐に入られた今度は脚を斬り落された。
脚を失って体勢を崩したゴーレムは苦し紛れに地面をバンバン何度も強く叩く。
地面は激しく揺れて衝撃波が何度も生じる。
それはロストの身動きを封じる為にしたことだが、生憎通用しなかった。
ロストは衝撃波を利用して宙に飛び上がり、空中でアクロバットをこなしてからゴーレムの真上で落下し始める。
ゴーレムは斬り落された脚を地面から広い上げて真上にいるロストへ投げた。
彼が空中にいるから避けられないと考えていたんだろう。
でも、これも残念ながらゴーレムの思惑通りにはいかなかい。
空中にいながらもロストは回転して投げられた腕を避け、そのまま剣を逆手に、ゴーレムのモノアイを狙って一気に降下する。
「あうっ?!」
けれど剣がゴーレムのコアに突き刺さる寸前横からもう一体のゴーレムの拳に殴られて、彼は直撃を喰らって遠ざけられた。
新たに乱入したゴーレムはそのままロストへ追撃を入れるべく突進していくが、直撃を喰らいながらも平然としていたロストは体勢を立て直して二体を迎えるべくまた攻めに入った。
踊り子のように、ロストは身軽にゴーレムの攻撃を全て躱して、バトンを振り回すように、剣を回してゴーレム二体を攻撃する。
新に乱入したゴーレムもロストに圧倒されて徐々に肢体を失い、最初のゴーレムと同じように体勢を崩して、最初のゴーレムと肩を並べる。
そんな二体にロストは止めに入った。
肩を並べたゴーレム二体の肩に乗り、最初のコアを剣で突き刺した後、もう一体のにも直ぐに突き刺して、二体を同時に倒した。
そして倒された二体のゴーレムは後ろに倒れ、ロストは反対側に飛んで地面に着地する。
≪な、なんと言う事……なのじゃ≫
アロンダイトはやっと現実に追いついたのかあんぐりと開けてた口を動かせた。
≪へっへ~ん!これが私のロストよ!私のロストは本当は強いんだよ。才能が無いなん―≫
≪凄いのじゃ!!≫
≪うわっ?!≫
≪何なのじゃ、あの少年の動きは?!今までに見たことが無いぞ!まるで聖夜に踊る、そう、愛しい人と踊っていたように美しかったぞ。クソォッ!!彼に握られているあの剣が羨ましい、羨ましすぎるんじゃぁ!妾も握られてあのように振り回されたいぃ!≫
私の服の襟を掴みながらぶんぶん振り回さないでもらえる?
そ、それに、なんか卑猥っぽく聞こえるんですけど。
危なくなってきてない、この人?
≪ぐえっ、ちょ、ちょっと、落ち着いてもらえ―≫
≪おい、お主よ!今度は妾を使ってくれ!≫
≪きゃぁ?!≫
彼女は私を放り投げて、台座に差し込んであった剣を……彼女は引き抜いてロスト所へと向かった。
≪アンタ何してんのよ!?誰かに抜いてもらうのが普通でしょ?!それに自由に剣ごと動けるんなら勝手に外へ出掛ければ良いじゃない!≫
≪いちいち細かい事を気にするな。別に良いじゃろ、そんなの。それに妾が自由に動けるのもこの聖域とダンジョンの中だけなのじゃ。それより、お主ぃ!!≫
≪モチモチすべすべな肌にサラサラな髪。実に心地が良かったのだぞ≫
≪シャァッ!!≫
かれこれ数分間掛けて私は駄目剣からロストを引き離した。
私のロストをよくも汚してくれちゃって。
ロストもほら。
いきなり変態に抱かれたからぶるぶる震えているじゃない。
≪おおよしよし、大丈夫だよ~ロスト。怖くないよぉ~≫
≪まあ、いきなりそなたに触れた事を詫びよう。しかし、お主に伝えたいことがあるのじゃ≫
彼女を鋭く睨む私をほっといて、彼女は真面目な表情でそれを告げた。
≪少年よ、残念ながら、全くの才能がないんじゃ≫
≪……は?何いきなり失礼な事を言うのよ?それに才能が無い?何を言っているの?どうしてそんな事がわかるのよ?≫
≪ああそう怖い顔をするでない。それに妾には長い経験でわかるんじゃよ。今まで妾に触れた者、握られた者にどんな才能が秘めてあるか、どれだけ頑張れば強くなれるかわかるんじゃ。しかしだな、妾が少年に触れたらなんも感じなかった≫
≪ちょっと待って。才能ってどういう才能よ?≫
才能と言ってもいろんな事がある。
例えば剣の才能、勉学の才能、その他。
≪全部じゃ。所謂、なんも才能や能力を秘めていないただの人間でしかない。本当に残念じゃ。こやつはこれからどれだけ頑張っても、一生才能が開花する事は無い≫
≪それっておかしいよ≫
≪おかしくはない。事実じゃ。もしも少年に永遠と自らの才能を追及する時間があれば才能や特殊な能力が見つかるかもしれないが、人間の寿命は我ら永遠に生きられる精霊と違ってとても短い。しかし、その短い時間で終わりまで、彼は人生を注げる好きな事を探せば良い≫
そう言って、彼女はロストの所までしゃがんで彼の頭を優しく撫でた。
普通ならロストを彼女から遠ざけるけど、彼女は真面目に、本当に申し訳ない顔でロストを撫でていたから私はロストの事を考えている彼女からうかつに遠ざけなかった。
むしろ、ロストの事を思っているから少しだけ共感する。
ロストも、彼女に撫でられてもあまり怯える様子は見せなかった。
≪すまなかった。お主らへ無理に妾の我儘を言って。素直にお主らをダンジョンの入り口まで転移させようぞ≫
「まって、です?」
でも人見知りのロストは珍しく前に出て、彼女を止める。
「とりぎが、たたかう、です」
≪……お主、本気なのか?≫
強く頷く彼を見て彼女は何やら罪悪感で顔を顰めた。
≪お主、妾の話を聞いておらなかったのか?お主が戦っても、なんも意味も無く、ただ痛い目に合うんだぞ?≫
「だいじょうぶ、です。たたかう、です」
≪……はぁ≫
彼女には強い決意の色を見せる彼の瞳を見て、これ以上言っても無駄だと知って猛大な溜息を吐き出したんだろう。
それに吊られて辛そうな顔で、それでも笑顔を見せて、彼女は決めた。
≪わかった。暫くここで待っておれ。直ぐに連れてくる≫
そうして彼女は門番のトリギガを連れて来る為に、ここからいったん離れる。
≪ねぇ、ロスト。大丈夫なの?≫
「だいじょうぶ、です。いっぱい、ためしたい、です」
試したい?ああ、なるほど。
彼は子供の姿でどれぐらい戦えるのか知りたいんだ。
けどあの聖剣アロンダイト、物凄く辛そうな顔だったな
まるで今までロストのような人達を見て来て、彼らにどれほど理不尽な人生が待っているのかを知っていた。
そしてロストに才能が無いとはっきり言って、希望を壊してしまった罪悪感。
でもそれは彼女なりの優しさかもしれない。
私にも、その辛い優しさがわかる。
初めからはっきり言わないと、ただ待っているのは絶望だけだから。
ロストは前世では本当に何も才能を持っていなくて、それに悩んでずっと苦しんでいた。この世界へ生まれ変わっても、彼にはなんも特殊な能力や、才能なんてなかった。
イナイカに転生しても同じ。
しかも実は彼が成人イナイカになるまで、他の皆よりも十年掛かったと、里親に言われた。ある意味ロストがイナイカの転生手術を乗り越えて、成人イナイカまで成れたの奇跡だって。
でも納得がいかない部分がいろいろとある。
彼は【ひまわりの騎士】部、【ひまわりの王様】、部のトップ。
もしもロストに才能が無ければ本当に上まで登りつめただろうか?
それに彼には戦闘の才能がある。
その証拠は彼が一週間前初めて出会った人達と戦って。
……私はロストの事を初めから知っている筈なのに、彼の事が全く知らない。
この四百年、本当に彼に何が起こったのか。
やっぱりそれは私がこれからの旅で謎を解かないといけないんだね。
◇
≪ほれ、連れて来たぞ≫
暫くするアロンダイトはトリギガを連れて戻ってきたんだけど……。
≪何で三体もゴーレムがいるの?≫
彼女が連れて来たトリギガとは全長二メートル、白と黒で混じった岩石で集結された人型、紫色に淡く輝くモノアイをしたゴーレム。
そして、それは三体もいた。
≪その理由はもちろん、三体のギガントゴーレム、略してトリギガだからじゃよ。フッフッフ、ここへ挑む者はたった一体の門番が待ち受けていると思うが、実際は三体おった!というとんでもサプライズが待っておるのじゃ。どうじゃ、巧妙じゃろ?これならば相応しい者にしか妾のダンジョンを乗り越えないのじゃぁ!ワーハッハッハ!≫
≪巧妙よりもインチキでしょ!≫
≪さてと、連れて来たのは良いが、少年よ。お主は本当にこやつらを見ても闘いと考えておるのか?≫
「はい、です」
彼女は得意げな顔から真面目な表情でロストに問いかけるけど、ロストの応えは同じだった。
彼女はしばらく沈黙を保った後、覚悟を決める。
≪よかろう。しかしお主、武器は持っておるか?見るからには手ぶらのようなのじゃが?≫
ロストは顔を横に振って武器を持っていない事を彼女に教える。
いや、実際はあるんだけど、子供の姿で【収穫の偉大剣】を使うのは無理がある。あれはかなり重くて、剣のエンジンを起動すればかなりの腕力が無ければ振動を抑えきれない。それは一回ロストが子供の姿で仮面を付けたまま試しても、剣の振動を抑えきれず、扱えなかった。
しかも子供の姿のロスト、伸長百二十センチと【収穫の偉大剣】、片手型でも二メートル三十センチのあまりにもの体格差があるからバランスが悪い。だから今の所ロストは子供の姿で武器は持っていない。
≪そうか。ならばこの剣を使うと良い≫
と、彼女がロストに渡したのは長さ八十センチの細長いショートソード。
でもロストがそれを手にするとロングソード並みだった。
見た目はただの剣だけど、特殊な能力でもあるのかな?
≪お主はその剣に特殊な能力があると期待しているようだが残念じゃがそれはただの鉄製の剣じゃ。しかしよく聞け。その剣ではゴーレムの硬い体を斬る事はできないが目にある紫色のコアを破壊することはできる。今まで妾を握ったものはその剣でゴーレムの体を斬れなかったものの、全員目のコアを破壊して勝てた。お主もトリギガに勝ちたければ目のコアを狙うのじゃ≫
つまりこれは剣の性能に頼らず、使い手の能力を見極める試練。
この試練を乗り越える事ができなければアロンダイトの所有者として相応しくないと。
ロストはアロンダイトから説明を聞いた後、剣を両手に握りしめてゴーレムの所まで向かう。けど子供の姿でも剣が重かったのか、彼はよろよろしながら剣を抱えてゴーレムの所まで向かった。
そんな彼を見てハラハラする私。
一方、三体の内たった一体のゴーレムが彼の前に出て、ロストに目掛けて腕を振り下ろした。
ロストはよろよろしながらもゴーレムの攻撃を避けたけど、ゴーレムの腕は地面に届くととんでもない威力を生み出した。
ドォン!
「きゃぅ!?」
数トンもするゴーレムが地面を叩くとその威力に大地が激しく揺れて、衝撃波を生む。
そしてロストは衝撃はに呑まれて飛ばされてしまった。
「きゅぅ~……」
≪ロスト、大丈夫!?≫
彼の所まで駆けつけた私は彼の容体を調べて、彼がどこにもケガを負っていなくてほっとする。
≪予想通りじゃな≫
そんな私達の所へアロンダイトがやって来た。
≪これで満足したか、少年よ?まあ、そなたはまだ子供である故、少々大人げなかったな。しかしこれで理解するが良い。お主がどれだけ頑張っても、このゴーレムを倒すことはできない。ここでこれ以上時間を無駄にすることも無い。今転移してや―≫
「まだ、です。マスク、オン、です!」
彼は途中で彼女を阻んで立ち上がり、再度挑戦する為に彼はゴーレムの所へと向かった。
仮面を付けて。
≪……どうやらまだ諦めたくないようじゃな。その根性は認めるが、諦めるのも肝心なのじゃぞ?お主が何度やっても結果は同じじゃ。しかしそなたが満足するまで必死に戦うが良い。トリギガ達よ、少々荒くなっても構わん。そやつに痛い思いをさせろ≫
彼女の命令に応じて同じ一体がまたロストに攻撃してくる。
その動きはさっきと同じで、また彼を吹き飛ばすつもりでいた。
結果が見えてアロンダイトは目を瞑るけど、彼女は本当の結果を知らない。
これから起こる事に彼女は、ゴーレムも予想できるだろうか?
私の場合、ロストが早く皆にギャフンと言わせたくてハラハラ待っていた。
「“Waltz of the Lonely Knight”」
(孤独な騎士のワルツ)
そしてそれは起こった。
ゴーレムの一撃を容易く避けてロストは、ぶれる速度でゴーレムの懐に入って硬い腕を、綺麗な線を描いて斬り落した。
ドォン!
斬り落された腕は地面に落下して先ほどと同じように衝撃波が生じるけど、ロストは涼風にあたるように気にせずゴーレムに告げた。
「掛かって来い、です」
片手でクルリと剣を回して彼は肩上に剣を構えた。
目を瞑っていたアロンダイトは目玉が飛び出そうな程開いてて、あんぐりと口も大きく開いていた。
そんな彼女を見て、自慢で私の胸がいっぱいになる。
腕を斬り落されたゴーレムは速やかに残ってる腕でロストを攻める。
何度もロストに目掛けて振るう一撃はどれもこれも重い。
一回でもロストゴーレムの重い一撃を喰らえばただじゃ済まないだろう。
でもゴーレムの攻撃は一度もロストにあたる事は無かった。
ロストは踊るようにゴーレムの攻撃を次々と避けては隙を見つけて攻撃を入れる。
そしてさっきまで攻めていたゴーレムは攻撃を止め、防御へ移った。
しかしゴーレムが防御に移ってもロストの攻撃を防げる事はできず、また懐に入られた今度は脚を斬り落された。
脚を失って体勢を崩したゴーレムは苦し紛れに地面をバンバン何度も強く叩く。
地面は激しく揺れて衝撃波が何度も生じる。
それはロストの身動きを封じる為にしたことだが、生憎通用しなかった。
ロストは衝撃波を利用して宙に飛び上がり、空中でアクロバットをこなしてからゴーレムの真上で落下し始める。
ゴーレムは斬り落された脚を地面から広い上げて真上にいるロストへ投げた。
彼が空中にいるから避けられないと考えていたんだろう。
でも、これも残念ながらゴーレムの思惑通りにはいかなかい。
空中にいながらもロストは回転して投げられた腕を避け、そのまま剣を逆手に、ゴーレムのモノアイを狙って一気に降下する。
「あうっ?!」
けれど剣がゴーレムのコアに突き刺さる寸前横からもう一体のゴーレムの拳に殴られて、彼は直撃を喰らって遠ざけられた。
新たに乱入したゴーレムはそのままロストへ追撃を入れるべく突進していくが、直撃を喰らいながらも平然としていたロストは体勢を立て直して二体を迎えるべくまた攻めに入った。
踊り子のように、ロストは身軽にゴーレムの攻撃を全て躱して、バトンを振り回すように、剣を回してゴーレム二体を攻撃する。
新に乱入したゴーレムもロストに圧倒されて徐々に肢体を失い、最初のゴーレムと同じように体勢を崩して、最初のゴーレムと肩を並べる。
そんな二体にロストは止めに入った。
肩を並べたゴーレム二体の肩に乗り、最初のコアを剣で突き刺した後、もう一体のにも直ぐに突き刺して、二体を同時に倒した。
そして倒された二体のゴーレムは後ろに倒れ、ロストは反対側に飛んで地面に着地する。
≪な、なんと言う事……なのじゃ≫
アロンダイトはやっと現実に追いついたのかあんぐりと開けてた口を動かせた。
≪へっへ~ん!これが私のロストよ!私のロストは本当は強いんだよ。才能が無いなん―≫
≪凄いのじゃ!!≫
≪うわっ?!≫
≪何なのじゃ、あの少年の動きは?!今までに見たことが無いぞ!まるで聖夜に踊る、そう、愛しい人と踊っていたように美しかったぞ。クソォッ!!彼に握られているあの剣が羨ましい、羨ましすぎるんじゃぁ!妾も握られてあのように振り回されたいぃ!≫
私の服の襟を掴みながらぶんぶん振り回さないでもらえる?
そ、それに、なんか卑猥っぽく聞こえるんですけど。
危なくなってきてない、この人?
≪ぐえっ、ちょ、ちょっと、落ち着いてもらえ―≫
≪おい、お主よ!今度は妾を使ってくれ!≫
≪きゃぁ?!≫
彼女は私を放り投げて、台座に差し込んであった剣を……彼女は引き抜いてロスト所へと向かった。
≪アンタ何してんのよ!?誰かに抜いてもらうのが普通でしょ?!それに自由に剣ごと動けるんなら勝手に外へ出掛ければ良いじゃない!≫
≪いちいち細かい事を気にするな。別に良いじゃろ、そんなの。それに妾が自由に動けるのもこの聖域とダンジョンの中だけなのじゃ。それより、お主ぃ!!≫
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる