ひまわりの王様 ~友達を作りに行ってきます!~

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第二章:聖剣との付き合い

八話:才能無しの踊り

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≪アンタねぇ!!これ以上私のロストに近付くかないでよ!! ≫

≪モチモチすべすべな肌にサラサラな髪。実に心地が良かったのだぞ≫

≪シャァッ!!≫

 かれこれ数分間掛けて私は駄目剣からロストを引き離した。

 私のロストをよくも汚してくれちゃって。
 ロストもほら。
 いきなり変態に抱かれたからぶるぶる震えているじゃない。

≪おおよしよし、大丈夫だよ~ロスト。怖くないよぉ~≫

≪まあ、いきなりそなたに触れた事を詫びよう。しかし、お主に伝えたいことがあるのじゃ≫

 彼女を鋭く睨む私をほっといて、彼女は真面目な表情でそれを告げた。

≪少年よ、残念ながら、全くの才能がないんじゃ≫

≪……は?何いきなり失礼な事を言うのよ?それに才能が無い?何を言っているの?どうしてそんな事がわかるのよ?≫

≪ああそう怖い顔をするでない。それに妾には長い経験でわかるんじゃよ。今まで妾に触れた者、握られた者にどんな才能が秘めてあるか、どれだけ頑張れば強くなれるかわかるんじゃ。しかしだな、妾が少年に触れたらなんも感じなかった≫

≪ちょっと待って。才能ってどういう才能よ?≫

 才能と言ってもいろんな事がある。
 例えば剣の才能、勉学の才能、その他。

≪全部じゃ。所謂、なんも才能や能力を秘めていないただの人間でしかない。本当に残念じゃ。こやつはこれからどれだけ頑張っても、一生才能が開花する事は無い≫

≪それっておかしいよ≫

≪おかしくはない。事実じゃ。もしも少年に永遠と自らの才能を追及する時間があれば才能や特殊な能力が見つかるかもしれないが、人間の寿命は我ら永遠に生きられる精霊と違ってとても短い。しかし、その短い時間で終わりまで、彼は人生を注げる好きな事を探せば良い≫

 そう言って、彼女はロストの所までしゃがんで彼の頭を優しく撫でた。
 普通ならロストを彼女から遠ざけるけど、彼女は真面目に、本当に申し訳ない顔でロストを撫でていたから私はロストの事を考えている彼女からうかつに遠ざけなかった。

 むしろ、ロストの事を思っているから少しだけ共感する。
  
 ロストも、彼女に撫でられてもあまり怯える様子は見せなかった。

≪すまなかった。お主らへ無理に妾の我儘を言って。素直にお主らをダンジョンの入り口まで転移させようぞ≫

「まって、です?」

 でも人見知りのロストは珍しく前に出て、彼女を止める。

「とりぎが、たたかう、です」

≪……お主、本気なのか?≫

 強く頷く彼を見て彼女は何やら罪悪感で顔を顰めた。

≪お主、妾の話を聞いておらなかったのか?お主が戦っても、なんも意味も無く、ただ痛い目に合うんだぞ?≫

「だいじょうぶ、です。たたかう、です」

≪……はぁ≫

 彼女には強い決意の色を見せる彼の瞳を見て、これ以上言っても無駄だと知って猛大な溜息を吐き出したんだろう。
 それに吊られて辛そうな顔で、それでも笑顔を見せて、彼女は決めた。

≪わかった。暫くここで待っておれ。直ぐに連れてくる≫

 そうして彼女は門番のトリギガを連れて来る為に、ここからいったん離れる。

≪ねぇ、ロスト。大丈夫なの?≫

「だいじょうぶ、です。いっぱい、ためしたい、です」

 試したい?ああ、なるほど。
 彼は子供の姿でどれぐらい戦えるのか知りたいんだ。

 けどあの聖剣アロンダイト、物凄く辛そうな顔だったな
 まるで今までロストのような人達を見て来て、彼らにどれほど理不尽な人生が待っているのかを知っていた。

 そしてロストに才能が無いとはっきり言って、希望を壊してしまった罪悪感。

 でもそれは彼女なりの優しさかもしれない。
 私にも、その辛い優しさがわかる。
 初めからはっきり言わないと、ただ待っているのは絶望だけだから。

 ロストは前世では本当に何も才能を持っていなくて、それに悩んでずっと苦しんでいた。この世界へ生まれ変わっても、彼にはなんも特殊な能力や、才能なんてなかった。

 イナイカに転生しても同じ。
 しかも実は彼が成人イナイカになるまで、他の皆よりも十年掛かったと、里親に言われた。ある意味ロストがイナイカの転生手術を乗り越えて、成人イナイカまで成れたの奇跡だって。

 でも納得がいかない部分がいろいろとある。

 彼は【ひまわりの騎士】部、【ひまわりの王様】、部のトップ。
 もしもロストに才能が無ければ本当に上まで登りつめただろうか?
 それに彼には戦闘の才能がある。
 その証拠は彼が一週間前初めて出会った人達と戦って。

 ……私はロストの事を初めから知っている筈なのに、彼の事が全く知らない。
 この四百年、本当に彼に何が起こったのか。
 やっぱりそれは私がこれからの旅で謎を解かないといけないんだね。



≪ほれ、連れて来たぞ≫

 暫くするアロンダイトはトリギガを連れて戻ってきたんだけど……。

≪何で三体もゴーレムがいるの?≫

 彼女が連れて来たトリギガとは全長二メートル、白と黒で混じった岩石で集結された人型、紫色に淡く輝くモノアイをしたゴーレム。
 そして、それは三体もいた。

≪その理由はもちろん、三体トリプルのギガントゴーレム、略してトリギガだからじゃよ。フッフッフ、ここへ挑む者はたった一体の門番が待ち受けていると思うが、実際は三体おった!というとんでもサプライズが待っておるのじゃ。どうじゃ、巧妙じゃろ?これならば相応しい者にしか妾のダンジョンを乗り越えないのじゃぁ!ワーハッハッハ!≫

≪巧妙よりもインチキでしょ!≫

≪さてと、連れて来たのは良いが、少年よ。お主は本当にこやつらを見ても闘いと考えておるのか?≫

「はい、です」

 彼女は得意げな顔から真面目な表情でロストに問いかけるけど、ロストの応えは同じだった。
 彼女はしばらく沈黙を保った後、覚悟を決める。

≪よかろう。しかしお主、武器は持っておるか?見るからには手ぶらのようなのじゃが?≫

 ロストは顔を横に振って武器を持っていない事を彼女に教える。

 いや、実際はあるんだけど、子供の姿で【収穫の偉大剣ハーベスター】を使うのは無理がある。あれはかなり重くて、剣のエンジンを起動すればかなりの腕力が無ければ振動を抑えきれない。それは一回ロストが子供の姿で仮面を付けたまま試しても、剣の振動を抑えきれず、扱えなかった。
 
 しかも子供の姿のロスト、伸長百二十センチと【収穫の偉大剣ハーベスター】、片手型でも二メートル三十センチのあまりにもの体格差があるからバランスが悪い。だから今の所ロストは子供の姿で武器は持っていない。

≪そうか。ならばこの剣を使うと良い≫

 と、彼女がロストに渡したのは長さ八十センチの細長いショートソード。
 でもロストがそれを手にするとロングソード並みだった。
 見た目はただの剣だけど、特殊な能力でもあるのかな?

≪お主はその剣に特殊な能力があると期待しているようだが残念じゃがそれはただの鉄製の剣じゃ。しかしよく聞け。その剣ではゴーレムの硬い体を斬る事はできないが目にある紫色のコアを破壊することはできる。今まで妾を握ったものはその剣でゴーレムの体を斬れなかったものの、全員目のコアを破壊して勝てた。お主もトリギガに勝ちたければ目のコアを狙うのじゃ≫

 つまりこれは剣の性能に頼らず、使い手の能力を見極める試練。
 この試練を乗り越える事ができなければアロンダイトの所有者として相応しくないと。

 ロストはアロンダイトから説明を聞いた後、剣を両手に握りしめてゴーレムの所まで向かう。けど子供の姿でも剣が重かったのか、彼はよろよろしながら剣を抱えてゴーレムの所まで向かった。

 そんな彼を見てハラハラする私。

 一方、三体の内たった一体のゴーレムが彼の前に出て、ロストに目掛けて腕を振り下ろした。
 ロストはよろよろしながらもゴーレムの攻撃を避けたけど、ゴーレムの腕は地面に届くととんでもない威力を生み出した。

ドォン!

「きゃぅ!?」

 数トンもするゴーレムが地面を叩くとその威力に大地が激しく揺れて、衝撃波を生む。
 そしてロストは衝撃はに呑まれて飛ばされてしまった。

「きゅぅ~……」

≪ロスト、大丈夫!?≫

 彼の所まで駆けつけた私は彼の容体を調べて、彼がどこにもケガを負っていなくてほっとする。

≪予想通りじゃな≫

 そんな私達の所へアロンダイトがやって来た。

≪これで満足したか、少年よ?まあ、そなたはまだ子供である故、少々大人げなかったな。しかしこれで理解するが良い。お主がどれだけ頑張っても、このゴーレムを倒すことはできない。ここでこれ以上時間を無駄にすることも無い。今転移してや―≫

「まだ、です。マスク、オン、です!」

 彼は途中で彼女を阻んで立ち上がり、再度挑戦する為に彼はゴーレムの所へと向かった。

 仮面を付けて。

≪……どうやらまだ諦めたくないようじゃな。その根性は認めるが、諦めるのも肝心なのじゃぞ?お主が何度やっても結果は同じじゃ。しかしそなたが満足するまで必死に戦うが良い。トリギガ達よ、少々荒くなっても構わん。そやつに痛い思いをさせろ≫

 彼女の命令に応じて同じ一体がまたロストに攻撃してくる。
 その動きはさっきと同じで、また彼を吹き飛ばすつもりでいた。

 結果が見えてアロンダイトは目を瞑るけど、彼女は本当の結果を知らない。
 これから起こる事に彼女は、ゴーレムも予想できるだろうか?
 私の場合、ロストが早く皆にギャフンと言わせたくてハラハラ待っていた。

「“Waltz of the Lonely Knight”」
(孤独な騎士のワルツ)

 そしてそれは起こった。

 ゴーレムの一撃を容易く避けてロストは、ぶれる速度でゴーレムの懐に入って硬い腕を、綺麗な線を描いて斬り落した。

ドォン!
 
 斬り落された腕は地面に落下して先ほどと同じように衝撃波が生じるけど、ロストは涼風にあたるように気にせずゴーレムに告げた。

「掛かって来い、です」

 片手でクルリと剣を回して彼は肩上に剣を構えた。

 

 目を瞑っていたアロンダイトは目玉が飛び出そうな程開いてて、あんぐりと口も大きく開いていた。
 そんな彼女を見て、自慢で私の胸がいっぱいになる。

 腕を斬り落されたゴーレムは速やかに残ってる腕でロストを攻める。
 何度もロストに目掛けて振るう一撃はどれもこれも重い。
 一回でもロストゴーレムの重い一撃を喰らえばただじゃ済まないだろう。

 でもゴーレムの攻撃は一度もロストにあたる事は無かった。
 ロストは踊るようにゴーレムの攻撃を次々と避けては隙を見つけて攻撃を入れる。
 そしてさっきまで攻めていたゴーレムは攻撃を止め、防御へ移った。
 しかしゴーレムが防御に移ってもロストの攻撃を防げる事はできず、また懐に入られた今度は脚を斬り落された。

 脚を失って体勢を崩したゴーレムは苦し紛れに地面をバンバン何度も強く叩く。
 地面は激しく揺れて衝撃波が何度も生じる。
 それはロストの身動きを封じる為にしたことだが、生憎通用しなかった。

 ロストは衝撃波を利用して宙に飛び上がり、空中でアクロバットをこなしてからゴーレムの真上で落下し始める。

 ゴーレムは斬り落された脚を地面から広い上げて真上にいるロストへ投げた。
 彼が空中にいるから避けられないと考えていたんだろう。
 でも、これも残念ながらゴーレムの思惑通りにはいかなかい。

 空中にいながらもロストは回転して投げられた腕を避け、そのまま剣を逆手に、ゴーレムのモノアイを狙って一気に降下する。

「あうっ?!」

 けれど剣がゴーレムのコアに突き刺さる寸前横からもう一体のゴーレムの拳に殴られて、彼は直撃を喰らって遠ざけられた。

 新たに乱入したゴーレムはそのままロストへ追撃を入れるべく突進していくが、直撃を喰らいながらも平然としていたロストは体勢を立て直して二体を迎えるべくまた攻めに入った。

 踊り子のように、ロストは身軽にゴーレムの攻撃を全て躱して、バトンを振り回すように、剣を回してゴーレム二体を攻撃する。
 新に乱入したゴーレムもロストに圧倒されて徐々に肢体を失い、最初のゴーレムと同じように体勢を崩して、最初のゴーレムと肩を並べる。

 そんな二体にロストは止めに入った。

 肩を並べたゴーレム二体の肩に乗り、最初のコアを剣で突き刺した後、もう一体のにも直ぐに突き刺して、二体を同時に倒した。
 そして倒された二体のゴーレムは後ろに倒れ、ロストは反対側に飛んで地面に着地する。

≪な、なんと言う事……なのじゃ≫

 アロンダイトはやっと現実に追いついたのかあんぐりと開けてた口を動かせた。

≪へっへ~ん!これが私のロストよ!私のロストは本当は強いんだよ。才能が無いなん―≫

≪凄いのじゃ!!≫

≪うわっ?!≫

≪何なのじゃ、あの少年の動きは?!今までに見たことが無いぞ!まるで聖夜に踊る、そう、愛しい人と踊っていたように美しかったぞ。クソォッ!!彼に握られているあの剣が羨ましい、羨ましすぎるんじゃぁ!妾も握られてあのように振り回されたいぃ!≫

 私の服の襟を掴みながらぶんぶん振り回さないでもらえる?
 そ、それに、なんか卑猥っぽく聞こえるんですけど。
 危なくなってきてない、この人?

≪ぐえっ、ちょ、ちょっと、落ち着いてもらえ―≫

≪おい、お主よ!今度は妾を使ってくれ!≫

≪きゃぁ?!≫

彼女は私を放り投げて、台座に差し込んであった剣を……彼女は引き抜いてロスト所へと向かった。

≪アンタ何してんのよ!?誰かに抜いてもらうのが普通でしょ?!それに自由に剣ごと動けるんなら勝手に外へ出掛ければ良いじゃない!≫

≪いちいち細かい事を気にするな。別に良いじゃろ、そんなの。それに妾が自由に動けるのもこの聖域とダンジョンの中だけなのじゃ。それより、お主ぃ!!≫
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