ひまわりの王様 ~友達を作りに行ってきます!~

Ignidax

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第二章:聖剣との付き合い

七話:聖剣アロンダイト

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 私達は森林の中を歩いてゆっくりと目的地へと向かっている。
 目的地とは、先輩から教えてもらった一番近くにある人が暮らす街。そこで私達はいろいろと情報を集めてからロストが過ごしてきた四百年を辿る旅に出る。

 なんでも先輩は、なるべく彼女に頼らないで私達の力でこれから旅をしなさいと言われた。彼女曰く、そうすればロストは必ず人と話して情報を集めないと駄目だし、私もいろいろと力をつけないと駄目たとか。

 これは私達が成長する為に先輩からもらった試練。
 それに、旅が順調にいけばロストは人見知りを直して友達も作れるし、私は力を得てやっとロストの力になれる。だから私達はこの試練を乗り越えないと駄目。

 気が遠くなるような話しだけど、私は今の所それに感謝している。
 だって。

≪ふふふ、ロストォ~≫

 私は幽霊のように宙に浮きながら、子供の姿で歩いているロストに抱きつく。

「ん?メリー、なに、です?」

≪なんでもないよ~≫

「えへへ~」

 私は彼のモチモチ肌を堪能しながら彼になんでもないと知らせて、彼はお返しとばかり私の頬に頬ずって笑う。子供のロストは本当に無邪気で可愛いなぁ~。

 かれこれ一週間、森林の中で私達はゆっくり移動しているけどお陰で私はこうしてロストと二人っきりに過ごせて、毎日充実した幸せな日々を送っている。
 ただこうして二人で一緒に移動しているだけだけど嬉しい。
 だから旅が長くなってもその分私はロストともっと時間を過ごせる。

 私達は今夢の中にはいないけど、彼には私が見えて声も聞こえる。これを可能にしてくれたのが先輩からもらった説明書だった。

 説明書にはどうやってロストと夢の外でも話せる方法が細かく丁寧に書かれていて、私は直ぐにその方法を会得できた。
 他にも先輩からの指示が書いてあって、私達は先輩が書いた指示通りに動いている。
 実は先輩も四百年の記録を集めるのに忙しくて、私達が単独でも行動できるようにこうして説明書を渡した。そして私達の旅で得た記録で彼女の仕事が減ると。

 ちなみに私達がどうやって近くの街へまでの方向を知っていると聞かれたら、それも先輩からもらった木の箱のお陰。

 箱の中にはいろんな便利な道具が入っていて、その中の一つに万能なコンパス、【放浪灯ワンダラーズ・トーチ】が入っていた。見た目は普通のコンパスと変わらないけど、それは目的地へ示す矢印と情報をホログラムスクリーンのように私達の前に現れる。

 ロスト曰く、コンパスの機能は彼のヘルメットにも搭載されてあると言うから、推測するにきっと箱の中にあるものは全てロストの鎧にも搭載されている道具の数々だと思う。

 彼が子供の姿になっている以上、鎧の機能に頼る事はできない。だから敢えて先輩はいろんな道具が入ってる箱を渡してくれたんだろう。

 そんなこんなで、私達は森林の中を一週間順調に進んでいる。

 コンパスのホログラムに書かれてある情報によれば、後二日で私達は近くの街へ到着する。

 街へ到着すれば忙しくなって、こうやって二人でゆっくりした時間は過ごせないけど、それが良いんだよね。私はロストが過ごして来た四百年の時間を知りたい。
 それに私はもうこうして彼と現実世界でも話せるからある意味二十四時間、彼と付きっ切りになれるから幸せ。

 だからこのまま、こうしてロストとずっと過ごせたら良いな。

 あ、ちなみにこの一週間私とロストは何もしないでいどうしてわけじゃないよ?
 私達は移動しながらいろいろ話して、夢の中では子供のように追いかけっこしながら遊んで、過ごしている。

 ほんと、ロストが子供の姿になると無邪気になって可愛いんだよね~。

 彼とお話をしているときはいつも私の先輩への愚痴話ばかり。例えば私がまだロストといた四百年前、ロストの記録する仕事を取ったり、いきなり言葉で殴って来たり。
 私に優しいロストは毎度私の愚痴を真面目に聞いては宥めたりしてくれて、毎日ロスト補給を十分にできて幸せだよ。

≪にへら~≫

「メリ―きゃうっ!?」

≪ロスト?!≫

 抱いていたロストが突然すぽっといなくなる。
 必死に彼を探すと下ロストの体が丁度入れる穴があった。

 ロストが、落とし穴に落ちてしまった。
 仮面を付けていない、無防備な状態で。

≪ロストォ!!≫



ごろごろごろごろごろごろごろ―

「いぃぃ~やぁぁぁ~~~―」

≪ロストォ!!≫ 

 彼の所へ直ぐにテレポートした私は彼が急斜面の草で覆われた丘を転がっていたのを発見した。

 少しほっとする。落とし穴の下になんも危ない罠が仕掛けていなくて。
 でもそれはほんの少し。
 息が詰まった私はゴロゴロ勢いよく転がっていくロストに叫んだ。

≪ロスト、止まって!前!前!≫

「まぁ~~えぇ~~?」

 ゴロゴロ転がっている彼は自由に身動きができず、そのまま急斜面を転がっていく。
 私が叫んだ理由は、このままだと彼は奈落まで突き落とすような深い崖に落ちてしまうから。

 私は彼に声を掛けたり触れる事はできるけど、直接彼を持ち上げる事はできない。だから転がっている彼に私は何もできなかった。

「あっ」

 よって、私は何もできないままロストは崖から落ちちゃう。

「おおぉ~」

≪そんな呑気に関心しないで早くマスクをつけて!≫

「わかった、です!」
カシャン!

 彼が着ている白いローブのフードが彼の頭に被り、フードから白いのっぺらぼうの仮面が彼の顔に滑り込む。

「皆、追いで、です!」

 彼は命じて、ローブの中から膨れがるように小さな光の鳥が現れて彼の体を覆う。

 子供の姿の彼は仮面を付けると能力が高くなる。それは身体能力、戦闘能力などと。
 元の姿よりは断然に劣るけど、仮面を付けていない子供と比べれば天と地の差。
 そしてこうして彼が身に着けている【|ひまわりの王様の外套(マントル・オブ・ヘリアンサスレックス)】も使えて、光の鳥に覆われた彼は落下速度を落として無事に地面に着地する事ができた。

≪ロストォ!!≫

「メリー、大丈夫、です。心配、無い、です」

 私はロストを強く抱きしめた。
 彼は私を安心させるけど、私は昔の事を思い出してどうしても安心できなかった。

 昔の事とは、彼が昔もあの崖のように落とされて酷くケガをした事。
 この世界で彼がまだ赤ん坊の頃、盗賊に投げ捨てられて頭を打った事。
 それ以外にも嫌な記憶が蘇って、その度に私が何もできなかった事を思い出させて気持ちが悪い。

 だから彼に抱きしめる力が強くなる。

 彼は私に触れる事ができないから何も感じないけど、彼は何度も私に優しく声を掛けて、暫く私が心を落ち着かせるまで付き合ってもらった。



「ここ、何処、です?」

≪ここ?≫

 時間が流れて自然に支配された古代の遺跡。
 とても神聖な雰囲気を出していて、なにかイベントがあるような気がするんだけど……。
 ……って、こんな所ににまさしくファンタジー定番の物が備えられてあったよ。

 遺跡の中で唯一時間の流れに反して豪奢に飾れられた、剣。
 幾年の時を超えても剣の形見はその芸術に思われる美しさは失われておらず、光に照らされて青く、自然の神秘と共に煌いていた。

≪ほほう。私の試練を最初に乗り越えた勇敢な者はお主らか?≫

≪誰!?≫

「??」

 剣を眺めていた私の視界に現れたのは、うっすらぼんやりと剣の真上から現れた綺麗な女の人だった。踊り子のように露出の多い白い服を着た、地面まで届く長い銀髪のと金色の瞳をした柔らかい印象の女性。

≪妾は至高の神々により作られし、数々の英雄に司握られ栄光と勝利への道を開いた聖剣アロンダイト≫

 彼女の金色の瞳は私とロストを捉えて、慈悲深い聖女のように微笑んだ。

≪妾の聖域へ歓迎するぞ、我が新たなる所有者よ≫

 聖剣アロンダイトと名乗る女性。
 ロストの人生をめちゃくちゃにした、神々によって作られた剣。
 剣からゆっくり離れて私達の方へやってくる彼女を私は警戒したまま迎える。

≪しかし、妾の試練を乗り越えた者達にしては随分と貧弱そうに見えるのう。特にそこにいる少年は≫

 彼女の視線は私の横下に向いていて、私もそっちを見ればいつの間にか面を取り外したロストが私の後ろに怯えながら隠れていた。

≪こやつはお主の子供か?そなたはこの子供を抱えながら試練を乗り越えたとでも言うのか?≫

 ロストが……私の子供。
 …………にへら~。

≪お、おい、どうしたのだいきなり?!≫

 おっといけない。人前でこんなだらしない姿を見せちゃ駄目よ。

≪ごほん。彼は(残念ながら)私の子供ではありません。それより、アロンダイトさんが言う試練とは一体何のことですか?≫

≪……へ?≫

≪え?≫

 あれ?

≪いや、お主らはここまで来るのに過酷な試練を乗り越えてきたのだろう?≫

≪いえいえ、私達は試練なんて受けていませんよ≫

≪いやいやいや、試練を乗り越えたのだろ?それとも試練とは思えない程簡単すぎたか?ならばお主はかなりの強者であるのぉ≫

≪いえいえいえいえ、私達は何にもしてませんよ。アロンダイトさんが言う試練とは何のことですか?≫

≪ほれ、至難のダンジョンオレリスクと門を守るエンシェント・ゴーレム、トリギガを倒してやって来たのだろ?≫

≪知りませんよ、そんなの≫

≪……へ?≫

≪え?≫

≪で、では、お主らは一体どうやって?≫

≪どうやってって、崖から落ちてきましたよ≫

≪崖から?≫

 私は彼女に上を指で示して、お互いに上を向く。
 下から見ると崖は三百メートル高かった。
 ここは完全に崖で囲まれているけど、太陽の光がこの奥まで差し込んできて、ここを神秘的に光らせていた。

≪盲点だったぁ!≫

 宙に浮いてた彼女はガクリと地面に落ちた。

≪勇敢で強き英雄しか通れないようにいろいろと手を加えてワクワクして準備してた試練も、上から来ればすんなり試練を越えてここへ来られるじゃろう!≫

 どうやら彼女はちゃんと考えていなかった試練計画が失敗して勝手に落ち込んでいる。でもファンタジーあふれるこの世界で飛べる種族もいるんだから、それも想定して考えないとダメじゃん。

≪せっかくかの至高の神々から許可をもらって好き勝手にダンジョンを作ったのに。気合を入れて一生懸命頑張ったのに。三百年間も、ひたすら私の自慢のダンジョンを乗り越える英雄を待ってきたのに!それを、ただ崖から落ちて妾が作った自慢のダンジョンをすっぽかしてここへ来ただとぉ!!≫

≪あ、あのぉ≫

≪ぬぅおぉぉぉ!!認めん、認めんぞ!≫

 うわっ。なんかややこしい展開になりそう。

≪すみません。ちょっと落ち着いてもらえますか?私達はここから早く出て行きますので、それからまたゆっくりとアナタが望む英雄が来るまで待っててくださいよ≫

≪……いやなのじゃ≫

≪へ?≫

≪嫌なのじゃあぁ!!≫

 地面にじたばたし始める彼女は、美人や色気もすっぽかすだだをこねるような子供だった。

≪妾はもう待つのは飽きたんじゃぁ!≫

≪えぇ?≫


≪毎日ここにいて待つのは退屈で退屈で暇なのじゃ、飽きたのじゃ、嫌なのじゃあ!昔みたいにまた魔王や魔物と戦ったり、人類の命運を掛けた冒険がしたいんじゃあ!≫

 めちゃくちゃな事言っちゃってるよ。

≪あのですね。世の中は今平和なんですから、いちいちそんな闘いが起こってたら皆持ちませんよ?≫

≪ええい!煩い煩い煩ぁい!!妾は三百年も待ったのじゃ。別に我儘を言っても良いじゃろ!?≫

 我儘って、たかが三百年でしょ?
 こっちは四百年も待っていたの。
 あんたの三百年なんて全く大した事……なんて……。
 三百年前?

≪すみません!三百年前の事を少し詳しく聞かせてもらえますか?≫

 ロストは三百年前まではこの世界で深く関わっていた。
 一体それがどういう形でこの世界に残っていったかは知らないけど、この人アロンダイトさんから漏れ出る話しによれば、彼女は三百年前からここでずっと待っていた。
 つまり、その前までは彼女は誰かに使われて世界を見て来たと。

 だったら彼女からいろいろとロストの事が聞けるかもしれない。

≪……嫌じゃ≫

 こ、こいつぅぅっ!

 ふぅ~、駄目よ、私。
 私は彼女のような変人じゃねくて、クールで冷静にいられるできる子。
 彼女と同じレベルになるわけがない。

≪どうしてか聞いても良いですか?≫

≪私の試練を乗り越えたら教えても良いのじゃ!≫

 めんどくさっ!
 それだったら別に彼女から情報を聞き出さなくても、ここから出て近くに街があるんだから、そこでいろいろと情報を聞き出せば良いじゃない。

≪嫌ですよ。教えてくれないのでしたら私達は帰りますよ?≫

≪ワッハッハッハ!残念ながらそれは無理だ≫

≪……どうしてか聞いても?≫

 ま、予想は付くけどね。

≪お主らは崖から落ちてここへ来たのだろう?そしたらここから出られないのだろう?安心するが良い。妾にはダンジョンの入り口まで戻れる転移装置を持っておる。しかしそれは私の試練を乗り越えた者だけにしか発動しない装置なのじゃ。だからここから出ていけたければ素直に妾の試練を乗り越え―≫

≪別に良いです。帰れる方法があるので≫

≪なんじゃと!?≫

 私の予想通り彼女は私達がここから出られないと思っている。
 でも彼女の力を借りなくても私達は十分ここから出られる。
 ロストは着ているローブを使って崖の上まで運んでもらえる。
 私は簡単に空を飛べるからなんも問題無い。

≪それでは。ロスト、行こ≫

≪ま、待って欲しいのじゃ!行かないでなのじゃ!≫

 この人も鬱陶しいくなったな。

≪ヴぁあ?どうしてなの?≫

≪う、うむ、いきなり態度が荒っぽくなったな、お主。だが待って欲しいのじゃ!せめて、妾の願いでせめて、門番のトリギガと戦って欲しい!≫

≪誰がそんな面倒事―≫

「おーけー、です」

≪ロスト?!≫

≪真か、少年よ!?≫

 しっかりと頷いたロストに彼女は彼に飛びついた。

≪おお!ありがとうなのじゃ、勇敢で優しい子よ!≫

≪ああ!?私のロストから離れなさいよ!!≫
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