ターフの虹彩

おしゃんな猫_S.S

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紫電一閃 最後に咲くのは藤の花

秋華賞 古豪への足掛かりⅢ

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 口取り式の写真も無事に撮れた。私の初めてのお手馬でのG1制覇、そしてシルキーの勝利。これからも沢山、色々なことがあるだろうけどきっと大丈夫と緩く唇の端を上げる。今日はゆっくり休んで明日からまた頑張ろう。
 翌日、いつものように朝起きて軽く走り込む。そして朝食を取ってから今日の調教に向かう準備をする。一頭一頭、丁寧にお世話していき、それぞれの馬の性格にあった乗り方を模索する。

「シルキーはいつもと同じようにね」
『最近、嬉しそうだね。何かあった?』

 今日も元気いっぱいのシルキーモーヴの首筋を軽く叩きながら話しかける。彼女は僅かに首を振るが何か聞きたいのだろうかと思い、続けて口を開きコミニュケーションを取る。シルキーモーヴは私以外の人間に対してはそこまで懐いていない印象を受ける。しかし、私と二人っきりの時は饒舌になるのだ。今も私に撫でられて気持ちよさそうに目を細めている。馬は話さないが、やはりそんな気がする。余談だが、私が乗っている時とそうでない時の彼女の態度の差が激しいことに、他の同期や厩務員さんは驚いていた。

「シルキーは後ろから差す競馬はどう?」
『うーん、やっぱり嫌かな……?でも、前からの競馬の方が好きかも。でも、どっちでも私は出来るよ』

確かに彼女は差しも追込、どちらもこなせそうなくらい器用な馬である。しかし、馬群に飲まれるのは相変わらず嫌なようだ。前に出たいと言うよりは囲まれるのが嫌いなのかもしれない。そんな彼女との時間もあっという間に過ぎていき、気付けば昼休憩の時間になっていた。
 午後からは週末開催のレースへの登録などの手続きをして一日を終える。京都競馬場にてエリザベス女王杯が開催される。出走メンバーは去年よりも豪華になっていて、ティアラ路線経験のある強者達が集結していた。そんな中、一際注目を集めているのがニニアソネットとシルキーモーヴの二頭であった。シトリンアステールも勿論注目されているが、それ以上にこの二頭が注目されているのだ。特にニニアソネットはこの世代最強格の一頭であり、対抗馬としてシルキーモーヴが挙げられることが多い。
そんな某競馬サイトの特集記事を見ながら唸る人物がいた。それは佐藤くんだった。彼は携帯から視線を外し、私に話しかけてくる。お互いの近況を報告したり、雑談をしたりするうちに話題は彼のお手馬、シトリンアステールへと移る。

「シトリンはさ、マイルの方が向いてるんじゃないかって思うんだ」
「あぁ、確かにそうかも。でも、中距離でもやれるんじゃないかな」

彼女の特徴はスタートが良く、スタミナが豊富であること。パワーと賢さが優れていること。挙げるとキリがないが、とにかくスピードがある。そして瞬発力もあるため、短い距離でこそ本領を発揮するタイプだ。そう自身が感じた事を相手に伝える。すると、彼も同意見のようで頷いてくれた。

「なんか自信なくしてたんだけど、ちょっと回復したわ。ありがとう」

そう言って笑う彼の表情は少し晴れやかになったような気がした。
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