普通、ファミレスで子連れの男をナンパするか⁈〜Oh,my little boy〜

SA

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「大丈夫ですか。水、飲んでください」
ソファにだらしなく身体を預けている俊哉に能條がグラスを差し出した。
それを受け取り、冷たい水を飲む。
少し気分がスッキリしたが、まだ頭はぼんやりしている。
久しぶりに飲み過ぎてしまった。
不覚にも飲み過ぎてしまったのは、料理が美味しかったのもあるが、この男のせいでもある。
ひとりでボトル二本は空けたくせに、ふらつきもせず平然と立っている能條を見上げる。
どうやらこの男は酒豪で、しかもめっぽう強いらしい。
そんなやつのペースに合わせて、勧められるままに飲んでしまったのだ。
もちろん、そんなことは言い訳にもならないことは分かっている。
結局、飲み過ぎたのは自制できなかった己のせいなのだから。
俺はなにをやってるんだ。料理を食べたらすぐに帰るつもりだったのに。普段は足元がふらつくまで飲み過ぎたりしないのに...。
なんだか今夜は判断能力ばかになっている。
俺はばかだ...。ばか、ばか、ばか...。
「ばか?」
「え?」
「今、ばかって言いましたよ。俺のことですか」
いつに間にか隣りに座っていた能條が笑う。
知らずに口に出していたようだ。
なにがおかしいのか分からないが、俊哉も笑ってしまう。
自分の言動と意識が乖離しているのは、だいぶ酔っている証しだろう。
やばいな。
制御できない自分を自覚し、焦る。
早く帰らないと。
俊哉は水を飲み干すと、空になったグラスをテーブルに置いて、腕時計で時間を確認する。
十一時過ぎていた。聡も家に帰っているはずだ。
「あの、そろそろ失礼します」
「まだ足元がふらついてるし、危ないですよ。もう少し休んで」
「いえ、大丈夫ですから」
引き止めようとしてくる能條を制し、俊哉は立ち上がる。
そして、そのまま玄関に直行する。つもりだったのだが、一歩踏み出すと、視界が大きく揺れた。
「あっ」
倒れそうになった瞬間、腕を掴まれる。が、バランスを崩したまま、能條の上に倒れ込んだー。

ソファのクッションがあったとはいえ、俊哉の全体重を受け止めた能條が「うっ」と呻いた。
「す、すみません。ちょっとふらついちゃって...」
すぐに立ちあがろうとしたが、まだ頭が揺れて、平衡感覚が戻らない。
「無理しないで。もう少しこのままで...」
能條が耳元で囁く。
背中に能條の両手が回されている。抱き締められていると意識したのは、少し遅れてからだった。
「こんな身体で帰らせるわけにはいきませんよ」
熱い息が耳にかかり、背筋が震える。
微かな震えは瞬く間に全身に広がったー。

「...っ」
唐突に起きた自身の肉体の変貌をどうすることもできなかった。
硬くなった股間は能條の太ももにしっかり当たっている。
咄嗟に腰を引こうとしたが、能條はその動きを封じるように背中に回した両腕をきつく締め付けてくる。そして、あろうことか、股間に当たっている太ももをぐいっと押し付けてきたのだ。
「んっ」
それだけで過敏になっているそこから甘い刺激が派生し、思わず身体から力が抜ける。
その隙を狙っていたかのように、能條は素早かった。
俊哉はくるりと反転させられ、ソファに押し倒されていた。
「やっぱり、こんな身体で帰らせるわけにはいきませんね...」
能條はそう繰り返して、メガネを外した。
俊哉を見つめる黒い瞳は妖しく光っている。
言い逃れることはできない。言い訳もできない。分かっているが、俊哉はこう言うしかなかった。
「ち、違うんです」
「これのなにが違うんですか」
能條はスラックスの前のボタンを外しにかかる。
もちろん、それを阻止しなければという意志はあるのだが、なぜか行動に繋がらない。
結局、チャックまで開けられ、下着の薄い生地に張り付いた欲望の形が丸出しになる。
「これのなにが違うんですか」
能條はしつこく訊いてくる。
もう言い逃れはできない。もう隠しようもない。
「ち、違うんです」
それでも俊哉はそう言っていた。
それはわずかに残っている理性の最後の抵抗だった。体面を保つために口だけが意味のない抵抗をしているのだ。
「往生際が悪いですよ」
その虚しい保身を見抜いているかのように能條はそう言うと、下着の前部分のゴムを指に引っかけ、そのまま下に引っ張った。
下品で淫らな欲望そのものが能條の眼前に晒されてしまった。
「こっちは素直でいい子なのに」
股間から突き出ている性器を能條はそう揶揄し、大きな手で掴んだ。
そのままゆっくりと指を絡ませる。
「あっはあ...っ」
断続的に送られてくる愉悦の波に溺れそうになり、思わず声を上げてしまう。
「あ...やめっ...」
「ええ、もちろんあなたが本気でやめて欲しいのであればやめますよ」
能條は淡々とそう言う。
まるで、本当はやめて欲しくない、と俺が思ってるようじゃないか。
でも...。
そうだ。
俺は望んでいた。
浴室でこの男の指を想像しながら自慰行為に耽ったのは、紛れもない事実。
俺は...。
本当は望んでいた...だから...。
だから、ここまで来た...。

突然、性器に絡みついていた指が離れた。
甘い熱の余韻を追いかけて、腰が勝手に浮いてしまう。
まるで自ら誘うように。
それがこの男の魂胆なのだ。
狡い。
俊哉は目で訴える。
能條はなにも言わず、ただ見つめ返してくるだけだった。

どうして...。
どうしてだろう。どうして、そんな優しい眼差しを向けてくるのか。
まるでこっちが大人に諭される聞き分けのない子供みたいだ。
身勝手で強引で、翻弄しているのはそっちなのに。
でも、そんな男に抗えずにここまで流されてきたのは紛れもなく自分の意思だ。
そう、全部見透かされている。
もう観念するしかないのか...。
能條は黙ったままだ。待っているのだ。
ずっと...。

「...やめ...ないで」

よくできました。と言うように、能條は目を細める。
そして、顔を近付け、口唇を重ねてきた。

口先で翻弄してきた男の口付けはやはり身勝手で、強引な舌が口内を蹂躙する。
同時に指も挿入され、上と下の粘膜をグチュグチュと掻き回され、頭の芯まで混濁していく。
指の先まで力が入らない。身体が言うことを聞かない。
もう完全に欲情の波に流されていた。

スラックスも下着も脱がされ、裸の脚が開かされる。
能條が腰を押し付けてきた。

徐々に熱の尖りが侵入してくる。
一番張り出した部分が通り、目いっぱい拡げられた襞がひきつれを起こす。
やはり痛みはあった。結婚してから未使用だったのだ。
それでも受け入れることを知っている器官は順応するのが早かった。
狭い入り口を通過すると、摩擦から派生する熱に溶かされながら、異物を飲み込んでいく。
そのまま腹の奥まで挿入された。が、充足感に浸る間もなく、ゆっくりと引き出される。
「んっ」
やっと収めた異物を引き留めるように、粘膜が収斂する。
「そんなに急かさないで...」
能條は内部の忙しない欲動を嗜めると、こう続けた。
「今からたっぷりあげますから」
そして、荒い息を吐きながら、入り口付近で止めた自身を一気に突き入れてきた。
「あっ...っ」
俊哉は思わずのけ反ってしまう。
ただ、奥まで奔った衝撃はすぐに快感に変わり、「...もっと」と淫らな声を漏らしていた。
能條はその要求に応えるように、腰を動かし始めた。
「あっんっ...ん」
律動的になった腰に脚を絡めて、俊哉も動きを合わせる。
能條の腰のピストンも速く深くなっていく。
奥を突かれる度、快感が増幅していく。
「あっあっん...あっ」
激しくなった責めに、上に下に翻弄され、能條の背中にしがみつく。
より密着した二人は、まるで磁石が引かれ合うように口唇を重ねていた。

お互いの舌を絡みつかせながら、二人はしばらく抱き合った。
快感のマグマが最高潮に達し、全てが真っ白に弾け飛ぶまでー。
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