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第二十八章 異星の十二君主
しおりを挟むかつては比類なき輝きを放っていた第十二星殿主殿のホールだったが、今は死が充満していた。地上は星殿の戦士の死体で覆われている。彼らはかつて第十二星殿の名誉と人類の尊厳を守るために戦ったが、今では虫けらのように、雑然とそこに横たわっていた。ホール上方の殿主が座る玉座の前で、謎めいた人物が後ろ手にし、玉座に向かって立っていた。
寒河江(さがえ)金(きん)滋(じ)は一人主殿のホールに入り、歩きながら周りを見た。
「これは一体どういうことなんだ」
死体が次々と視界に入り、金滋は心痛の余りそう口にした。
いつの間にか、金滋はホールの中央まで来ていた。彼は歩みを止めると、玉座の前にいる謎めいた人物に向かって叫んだ。
「何者だ!?」
謎めいた人物はゆっくりと振り返り、奇妙で醜悪なタコのような顔を露わにし、軽快な口調で笑った。
「寒河江殿主、待ちかねましたよ!」
奇妙で恐ろしい顔を突然目にし、金滋は驚きの余り後ずさりし、大声で叫んだ。
「異星の第十二君主!」
しかしなんといっても人類が誇る第十二星殿の殿主だ。金滋はすぐに冷静になり、手を伸ばして握り締めると、手のひらから冷気が発せられ、即座に凝縮して氷の球となった。金滋は憎々しげに行った。
「君主レベルがどうやって封印を破ったんだ?」
金滋はホールをぐるっと見回すと、冷ややかに尋ねた。
「私の妻と子供は?」
異星の第十二君主は怪しく微笑み、静かに金滋に言った。
「寒河江殿主、落ち着いてください。ロナにリリア、出てきなさい」
その言葉が終わらないうちに、紫の薄絹を纏(まと)ったロナと赤いローブを着たリリアが金滋の三人の夫人と一人息子の金剛(こんごう)を連れ、傍らからゆっくりと歩み出てきた
金剛は金滋を見た途端、すぐに彼に向かって「父上!」と叫び、三人の夫人も「旦那様!」と涙声で叫んだ。
金滋は怒りを抑えられず、すぐさまロナたちに向かって大声を張り上げた。
「お前たち、私を騙したのだな、切り刻んでくれる!」
リリアは口を押さえて笑った。
「殿主様、奥様たちと御子息は確かに解放いたしましたが、再び捕らえないという約束はいたしておりませんよ!クククク!」
金滋は目を大きく見開き、胸は怒りで埋め尽くされた。彼は指の関節をピンと伸ばすと、氷の球は手のひらで回転し始め、その回転速度はどんどん上がっていった。金滋がにわかに手を上げると、氷の球をそのまま放り投げながら叫んだ。
「卑劣な獣め!」
氷の球が迫り来るのを見て、ロナたちは即刻防御の構えを取った。
バンッ!
氷の球が音を立てて砕け散り、無数の氷の欠片が舞い上がった瞬間、突然太くねばねばしたタコの足が出現した。
異星の第十二君主は、本来金滋の座るべき殿主の玉座にゆっくりと腰を下ろすと、得意げに忠告した。
「寒河江殿主にはやはり軽はずみな行いは避けられるよう御忠告申し上げる。あなたの身内の命は私の一存に委ねられている。それに…」
彼は少し目を細めると、脅すように言った。
「あなたが封印を違法に解いたことを流布するよう命じてあります。あなたはもう全人類の敵なのですよ!」
金滋は少しうろたえ、叫んだ。
「デタラメだ!私は少しひびを入れただけだ!Aランク以上の異星生物は出て来れない!」
「そんなことどうでもいいのです」
異星の第十二君主は顔を上げて笑うと、さらに得意げに言った。
「あなたの言葉を信じる人間がいると思いますか?人々にとってあなたはすでに裏切り者なんですよ!」
彼は急に口調を穏やかにし、誘惑するように言った。
「あなたはもう後戻りできません。臣下として私に仕えれば、これからも殿主の地位を保ち、あなたの身内も無事にあなたのもとへ帰ってきますよ」
金滋は苦渋に満ちた表情で、ゆっくりと手のひらを下に下ろした。
異星の第十二君主は満足げに微笑んだ。
「よろしい、時勢を知る者こそが傑出した人物だ!」
しかしこの時、金滋の目が一瞬冷たく光った。金滋はにわかに跳び上がると、風雪衝撃波を放った。ロナたちは虚を突かれて防ぐことができず、衝撃波に吹き飛ばされた。金滋はさらに攻撃を仕掛け「寒(かん)氷(ひょう)急(きゅう)凍(とう)!」と叫ぶと、異星の第十二君主にビンタを喰らわした。白い光を纏(まと)った金滋の手のひらからは、糸のように細い冷気が立ち上っていた。
ピキッ!
異星の第十二君主は一瞬にして氷に封じ込められた。
金滋は振り向き、大声で金剛へ叫んだ。
「早く彼女たちを連れてここから離れろ!」
そして激しく足を踏みならすと、「ブーン」という音とともにたちまちホールの床に白い魔法印が出現した。
金剛は三人の夫人を守りながら身を翻して逃げ出した。ロナたちは立ち上がり、金剛たちを追いかけようとした。
金滋は両手を握り絞め、空へ向かって伸ばすと「天(てん)地(ち)寒(かん)霜(そう)!」と大声で怒鳴った。
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