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自ら歩むのは死
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14節「自ら歩む死」
緩やかに流れる川。
炭で焼いた魚が音を立て、香ばしい香りを放っていた。
この日、ノ音夢(のねむ)は自宅の近くの川で娘とバーベキューをしていた。
「パパ?遊んできてもいい?」
「深いとこには言っちゃダメだぞ。麻也はまだ危ないから約束だぞ。」
「わかってるよ!行ってくるね!」
麻也の母親は麻也を産んで直ぐに亡くなっていた。
ノ音夢は張り詰めた仕事の合間に休日を取り、娘の為に時間を空けていた。
そして、川の浅瀬で遊ぶ娘を見てノ音夢は呟いた。
「本当に…大きくなったな…もう麻也も7歳か…。」
麻也は小学校に入学し、新生活を謳歌(おうか)し、毎日を楽しんでいた。
「ん?おっと…ビールが切れたか…。」
ノ音夢は麻也を1人置いて買いに行くのを悩んだ。
「…。」
近くのコンビニにまで行って帰ってきても3分程度だった。
「麻也ももう大きいし…大丈夫だろ。」
麻也の日々の私生活を考えても言いつけを守らない子では無かった。
ノ音夢はそう判断した。
「麻也!パパ!コンビニ行ってくるから危ない事はするんじゃないぞぉ!」
「はぁい!気をつけてねぇ!」
ノ音夢は安心してその場を後にした。
「ん?」
その時、麻也は泣いてる女の子に気づいた。
麻也は駆け寄り、少女に聞いた。
「どうしたの?」
少女は泣きながら川に指を刺した。
そこには少女のサンダルが川に浮いていた。
「お姉ちゃんが取ってくるから待っててね!」
麻也は川へと入っていった。
そして、ノ音夢が帰ってきた時には麻也は川で身動きもせず浮いていた。
麻也は無呼吸状態が続いた影響で植物人間になってしまった。
ノ音夢は延命処置を願った。
そこからノ音夢は娘を救う為、自分の研究でもあった脳の記憶に没頭した。
麻也が脳死していない可能性、更に脳のインパルスへのアプローチ。
脳内部からの活動ではなく、外部からの刺激で植物人間の状態を回復させると言うものだった。
その実験は順調だった。
7歳に至るまでの麻也の記憶の材料は直ぐにデータ化に成功した。
脳の研究は政府からの案件だった為に麻也の記憶と共に研究データは日本政府のサーバーに保存されていた。
しかし、日本政府のサーバーが攻撃を受け、そのデータは丸々ウィルスに持っていかれた。
そして、政府からの協力要請(ヴァイラスデリート)がノ音夢の所へと来た。
ノ音夢は没頭した。
娘を救う為に度重なる命を引き換えに実験を重ねてきた。
この日は死刑囚を最後に実験した日だった。
特別な電球で眩く照らされ、白を基調とした手術室。
床はケーブルで埋め尽くされ、ケーブルの先は実験体(にんげん)の脳へと接続されていた。
脳外科医2人と共に脳科学研究のノ音夢が脳にワイヤーを更に刺そうとしていた。
「これ以上の脳への負担は危険です。」
「…だが、もう少しニューロンの計算が必要だ。」
「…わ…わかりました……。」
その場の全員が息を殺し、慎重に作業していた。
しかし、ワイヤーを刺したその瞬間だった。
「脳圧上昇しました!とても危険な状態です!」
「マンニトール投与っ!急げっ!」
「出血が止まりませんっ!」
「VADだっ!早くっ!」
「ピピピピピピピピッ……ピーーーーーーー…。」
「…。」
機械の音が響く中、その場の全員は沈黙した。
「…はぁ…。」
男性は溜息をつき、隣の女性が言葉を発した。
「…ノ音夢(のねむ)さん…実験失敗です。」
「……片付けてくれ。」
「はい。」
男は沢山のケーブルをまたぎ実験室を後にした。
休憩室の自動販売機で購入したコーヒーを手に、目の前の椅子へと腰掛けた。
「…クソ…また失敗した…。」
男は疲労と精神的苦痛から目の下に隈を作り、消耗していた。
「…インプラントを増やし、ニューロンをもっと多く解析しなければ…それに…脳に繋ぐケーブルも増やさないとデータの処理が全然追いつかない…しかし…人体が耐えられないか……一度開けた頭を塞いで、治療期間を間に入れれば……いや…そんな時間はない…。」
その時、1人の男性が話しかけてきた。
「だいぶ切羽詰(せっぱつ)まってんな。」
その男は脳科学研究所の同期で友人だった。
「お前か…。」
「ノ音夢さぁ……顔…ひでぇぞ。」
「あぁ…自分でもそう思う。」
「で?……BMIの進行はどうなの?」
「全然ダメだ…人体が持たない…。」
「だよなぁ…。」
「…そう言えば…お前のところって、人工の脳を作ってたよな…?」
「そうだけど?…でも使えないよ?人体実験が許されてるのはそっちだけだもん。こっちは動物で実験してるけど会話ができる訳じゃないしね。」
「一応でいい…き…聞かせてくれ。」
「いいけど…こっちは自然則に乗って動いてるんだけど……要するに脳を半分切って、片方の脳が無くなった脳を補(おぎな)おうとする反応なんだけど、そこに人工意識の機械を接続するんだ。」
「DCの仮説理論だな。俺もその論文は読んだ。」
「じゃぁ…情報のニ相理論はわかるよね?…ニューロンの発火と非発火がまた難しいんだけど、「フェーディング・クオリア」でアプローチをかけている。」
それを聞いた瞬間にノ音夢は何かに気付き、立ち上がった。
「…っ!?…そうかっ!その方法ならまだいけるかもしれないっ!!」
「なんだよ…急に立ち上がって…。」
「それを「デジタル・フェーディング・クオリア」にしたら…意識を保たせる事が可能なんじゃないのかっ!?」
「…確かに…理論的には…しかし…それをやったら…」
「…あぁ…実験体(それ)はもう人間じゃない。」
「わかってるなら…」
男は友人の言葉を遮り、言葉を続けた。
「なぁ…。」
「なんだ?」
「…俺が…人間をやめると言ったら?」
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「ノネムさんっ!ノネムさん!大丈夫ですかっ!?」
ナリムはノーネームの回復を終え、意識が戻らないノーネームに何度も呼びかけていた。
「…な…ナリムか…戦況はどうなってる?」
ノーネームは夢から目が覚めた。
「そんなことよりっ!気をつけてくださいっ!あなたはここで命を落としてはいけないんですよっ!?」
「わかっている。」
ノーネームのその言葉にナリムは怒鳴り声を上げた。
「わかってませんっ!!」
「…。」
「周りの皆さんとは違ってあなたは鬼説(ここ)で死ぬ事になれば現実世界のあなたは本当に死ぬんですよっ!?……娘の麻也(まなり)を救いたい気持ちはわかります…しかし…麻也が目覚めた時にあなたが居なかったらそれは…麻也が可哀想です…。」
「…。」
ノーネームは沈黙の後に口を開いた。
「すまないな…だが…俺はもう人間じゃない。」
ナリムはまた更に怒鳴り声を上げた。
「それでもですっ!!」
「…。」
ノーネームは返す言葉も出なかった。
更にナリムは言葉を続けた。
「もう…絶対に無茶はやめてください…。」
「…努力しよう…。」
その時、空間が赤の眩い光に染まり始めた。
「なんだ…あれは…」
ノーネームは赤く発光するヴァイラスを見て驚いた。
「いったい何が起こっている…。」
ナリムが答えた。
「ヴァイラスは鬼説(ここ)のラストボスのデータを自分のデータと融合させた様です。」
「…なんだと…そんな事が…いや…奴なら…可能なのか……クソ…。」
更にノーネームはナリムに聞いた。
「為心達は奴とどう闘っていた?」
「どうやら記憶を媒介に力に変換したみたいです。」
「…なんだって?…たしか…彼らのデータは個体づつに容量が用意されていた…記憶のデータを消去した事で容量を空け、自らバトルステータスのデータを構築してると言うのか…。」
ノーネームは少し考えてから気づいた。
「……っ!?……ナリム…。」
「はい。」
ノーネームは立ち上がりナリムに言った。
「先程の約束は守れなくなった。」
「っ!?なっ何故ですかっ!?」
「彼らが記憶を消す事がどういう事かわかるか?」
「……いえ、わかりません。」
「彼らが記憶を消すと言うことは自分を消去しているのと一緒だ。」
「それは…つまり…自殺と同じという事ですか?」
「自らを殺すと書けば一緒かもな…しかし…彼らの自殺(それ)は意味が大きく違い過ぎる……自己犠牲では表せない……きっとそんな生やさしい言葉じゃ釣り合わない何かだ。……私は今の彼らを表現出来る言葉を知らない……だが……彼らが自分自身(クオリア)を犠牲にしてまで闘ってくれているんだ……」
ノーネームは沈黙を置いてまた口を開いた。
「俺の命をかけないでどうやって彼達(あそこ)に並べると言うんだ…。」
「…それでも…私は反対です。」
「お前にはいつも迷惑をかけるな…。」
ノーネームは刀を取り出し、スキルを唱えた。
「心魂…累減…。」
ノーネームは亜鬼人状態へと形を変え、為心達に向かった。
そして、残されたナリムは決意を決めた。
「…私は…あなたの為に…作戦(あれ)を使わなければ…。」
そして、ノーネームが為心達に話しかけた。
「すまない…遅くなった。」
それに対し、リタが答えた。
「もうちょっと寝てても良かったんじゃないか?」
「奴(あれ)を目の前にして寝てはいられないな。」
「だな。」
そして、後に続きナリムも姿を現した。
「遅くなりました。」
その時、ヴァイラスが口を開いた。
「どうやら…役者は揃ったようだな…では…こちらから行こう。」
その瞬間だった。
リタが激声を上げた。
「っ!?為心危ねぇっ!!」
リタは左手で為心を押し退けた。
その時、急にリタの左手は切断された。
「ぐっ!?」
「リタっ!?」
そして、為心は耳元でヴァイラスの声が聞こえた。
「反応が遅いぞ。」
気づけば為心の真後ろにヴァイラスはいた。
「クッソっ!!閃光っ!」
為心は咄嗟に閃光スキルを使いヴァイラスから離れた。
しかし。
「それで逃げたつもりか?」
ヴァイラスはまだ為心の背後に張り付いていた。
「っ!?夢幻刹那っ!!」
為心は瞬時に記憶も消し、律加でのステータスをスピードに割り振り、攻撃に転じた。
為心はヴァイラスを振り切ろうと激しく移動しながら、更に攻撃を繰り返す。
しかし、それに対してヴァイラスは受け止める必要が無い程に為心の斬撃を軽々避けていた。
「私が君を殺せた回数は何回だと思う?」
「っ!?クソっ!」
為心は更に記憶を消した。
「うおぉぉぉぉぉおおおおおおっ!」
為心はスピードを上げ、凄まじい速さで斬撃を繰り出した。
しかし。
「つまらないな。」
ヴァイラスは凄まじい速さで、手を槍の様に変形させ為心に向け攻撃をした。
「絶っ!」
その時、会長が間に入りヴァイラスの攻撃を受け止めた。
為心は間一髪の所で助けられた。
そして、会長の攻撃防御(それ)を見て為心は聞いた。
「会長っ!?奴の攻撃が見えるのか!?」
「全然見えんっ!リタの指示じゃっ!」
それを聞きいたヴァイラスは標的を変えた。
「ほう?…ではあの者から先に片付けるとしよう。」
そう言ってヴァイラスは目の前から消えた。
「っ!?リタぁっ!危ないっ!」
為心は瞬時に叫んだが、もう既にリタは片手でヴァイラスの攻撃を受け止め、鬩(せめ)ぎ合いになっていた。
そして、ヴァイラスはリタに向かって口を開いた。
「ほう…これを止めるか…やはり貴様から死んでもらおう。」
その時、ヴァイラスの後ろからノーネームが斬りかかった。
「そう簡単にはさせんぞっ!」
しかし、ノーネームの攻撃は空を切った。
それと同時にリタが叫んだ。
「為心っ!2時の方向だっ!!」
ヴァイラスはノーネームの攻撃を回避し、リタが指示を出した所に現れた。
そして、為心は力一杯に双月(かたな)を振るった。
「食らえっ!!」
ヴァイラスは右腕で為心の攻撃を止め言葉を口にした。
「こんなものが食らうか。」
「…当たっただけでも進歩だろっ!!」
為心は更に2撃目3撃目とヴァイラスに受け止められるが、ヴァイラスは避ける事は出来ていなかった。
そして、為心に隙が生まれた瞬間にヴァイラスは攻撃に転じようとしていた。
しかし。
リタから指示が飛んだ。
「ノーネーム防御っ!ナリムバックアタックっ!」
ノーネームはヴァイラスの攻撃を刀で受け止め、ナリムが後ろから攻撃し、初めてヴァイラスに攻撃が当たった。
それに対しヴァイラスは口を開いた。
「ほう…これはなかなか…言われるがまま動けると言うのは信じていないと出来ない動きだ。」
更にリタは指示を出す。
「会長!為心に壁っ!為心はアタック!」
しかし、指示が早すぎた為にヴァイラスは為心への攻撃をしようと振りかぶった瞬間に消え、リタの目の前に現れ攻撃をした。
「クッソっ!」
リタは自分に来る可能性を捨てては居なかった。
間一髪でヴァイラスの攻撃を受け止めてる事ができた。
そして、ナリムがヴァイラスに向け遠距離攻撃を放った。
「水光弾っ!」
ヴァイラスはまた、それを回避した。
「ノーネームっ!ナリムの背後へっ!」
気づけばヴァイラスはナリムの背後へと移動していた。
更にノーネームがヴァイラスに攻撃を仕掛けるが、ヴァイラスはノーネームの攻撃を受け止めナリムに槍のような腕を突き刺した。
「がっはっ!」
「ナリムっ!!」
しかし、ヴァイラスはノーネームの攻撃で邪魔された為に攻撃は急所を外れ、ナリムの肩を貫(つらぬ)き、致命傷には至らなかった。
更にヴァイラスはノーネームの2撃目を回避するべく少し離れた所へと移動した。
そして、為心がリタに聞いた。
「リタっ!次はどこだっ!?」
「いや…詰(つ)んだかもしれない…。」
その言葉に会長が聞く。
「いったいどういうことじゃっ!?」
気づけばヴァイラスは少し遠くの上空へと移動し、槍の様な鋭い腕をこちらに向け、雷炎を生成していた。
「これはどう対処するのかな…?」
その瞬間、ヴァイラスの溜めていた雷炎が急激に大きくなった。
その場の全員が、見たことないあまりの大きさの雷炎に驚愕(きょうがく)した。
その中でリタが口遊んだ。
「あんなの…避ける隙も無ければ止められもしねぇよ…。」
しかし、リタは絶望(その)中でも1番可能性がある未来に賭けた。
「…全員…覚悟を決めろ…対処(これ)が1番増しだ。」
その言葉に為心は答えた。
「もうこの状況で文句はねぇよ…リタ…指示を頼む。」
そして、全員が頷いた。
「ノーネームと為心は雷炎を限界まで溜めろっ!更に俺と会長は絶でカバー!ナリムは心魂とバフを頼むっ!」
その言葉に為心とノーネームは雷炎を溜め始めた。
その後ろでリタと会長が待機し、更に後ろでナリムが待機した。
それを見ていたヴァイラスが口を開く。
「さて…生き残れるかな…?」
そして、ヴァイラスは雷炎を放ち、凄まじい轟音(ごうおん)と共に為心達に雷炎は迫ってきた。
「今だっ!放てっ!!」
「雷炎っ!」
「雷炎!」
リタの指示でノーネームと為心はヴァイラスの雷炎程ではないが最大限まで溜めた雷炎を放った。
そして。
雷炎が着弾し、凄まじい衝撃音が辺りを轟かせ全員の耳を打った。
その時、ヴァイラスの雷炎に変化があった。
ノーネームと為心の雷炎は押し負けているものの、ヴァイラスの雷炎は小さくなっていた。
そして、ノーネームと為心の雷炎は消滅し、ヴァイラスの雷炎は迫って来た。
更にリタから指示が飛んだ。
「会長っ!今だっ!」
「神氣っ!起死回生っ!」
会長は神氣を発動し、防御力を高めた。
「…絶っ!」
「絶!」
迫り来る雷炎に向け会長とリタはシールドを張った。
着弾と同時に凄まじい火花が舞い、会長とリタは全力でヴァイラスの雷炎の威力を減らしていた。
「会長っ!ここが重要だっ!止められるだけ死ぬ気で止めろぉっ!!」
「くっ!?これはきついのうっ!…心魂っ!挽回っ!!」
会長の挽回は少しだけ雷炎を縮めた。
「ちっ…意味無かったかっ!」
そして、更にリタから指示が飛んだ。
「ノーネームと為心は雷炎を再度溜めろっ!そしてナリム!シールドが弾けたと同時に心魂で全員をフル回復しろっ!」
「え?そのタイミングでするんですか?」
「いいから言うことをきけっ!」
その時、「絶」のシールドが弾けた。
「雷炎放てっ!」
「雷炎っ!!」
「雷炎。」
雷炎が着弾し、ナリムはリタに言われるがままに心魂を使った。
「心魂…閼伽っ!」
全員が淡い光に包まれ、HPが全回復した。
そして、ノーネーム、為心の雷炎はヴァイラスの雷炎を更に縮め、消滅した。
「全員防御態勢っ!!…歯食いしばれっ!!!!」
ヴァイラスの雷炎が全てを飲み込んだ。
凄まじい轟音と共に激しい爆発を起こし、辺り一帯はライトエフェクトの光で何も見えない状態になり、全て光の中へと消えた。
緩やかに流れる川。
炭で焼いた魚が音を立て、香ばしい香りを放っていた。
この日、ノ音夢(のねむ)は自宅の近くの川で娘とバーベキューをしていた。
「パパ?遊んできてもいい?」
「深いとこには言っちゃダメだぞ。麻也はまだ危ないから約束だぞ。」
「わかってるよ!行ってくるね!」
麻也の母親は麻也を産んで直ぐに亡くなっていた。
ノ音夢は張り詰めた仕事の合間に休日を取り、娘の為に時間を空けていた。
そして、川の浅瀬で遊ぶ娘を見てノ音夢は呟いた。
「本当に…大きくなったな…もう麻也も7歳か…。」
麻也は小学校に入学し、新生活を謳歌(おうか)し、毎日を楽しんでいた。
「ん?おっと…ビールが切れたか…。」
ノ音夢は麻也を1人置いて買いに行くのを悩んだ。
「…。」
近くのコンビニにまで行って帰ってきても3分程度だった。
「麻也ももう大きいし…大丈夫だろ。」
麻也の日々の私生活を考えても言いつけを守らない子では無かった。
ノ音夢はそう判断した。
「麻也!パパ!コンビニ行ってくるから危ない事はするんじゃないぞぉ!」
「はぁい!気をつけてねぇ!」
ノ音夢は安心してその場を後にした。
「ん?」
その時、麻也は泣いてる女の子に気づいた。
麻也は駆け寄り、少女に聞いた。
「どうしたの?」
少女は泣きながら川に指を刺した。
そこには少女のサンダルが川に浮いていた。
「お姉ちゃんが取ってくるから待っててね!」
麻也は川へと入っていった。
そして、ノ音夢が帰ってきた時には麻也は川で身動きもせず浮いていた。
麻也は無呼吸状態が続いた影響で植物人間になってしまった。
ノ音夢は延命処置を願った。
そこからノ音夢は娘を救う為、自分の研究でもあった脳の記憶に没頭した。
麻也が脳死していない可能性、更に脳のインパルスへのアプローチ。
脳内部からの活動ではなく、外部からの刺激で植物人間の状態を回復させると言うものだった。
その実験は順調だった。
7歳に至るまでの麻也の記憶の材料は直ぐにデータ化に成功した。
脳の研究は政府からの案件だった為に麻也の記憶と共に研究データは日本政府のサーバーに保存されていた。
しかし、日本政府のサーバーが攻撃を受け、そのデータは丸々ウィルスに持っていかれた。
そして、政府からの協力要請(ヴァイラスデリート)がノ音夢の所へと来た。
ノ音夢は没頭した。
娘を救う為に度重なる命を引き換えに実験を重ねてきた。
この日は死刑囚を最後に実験した日だった。
特別な電球で眩く照らされ、白を基調とした手術室。
床はケーブルで埋め尽くされ、ケーブルの先は実験体(にんげん)の脳へと接続されていた。
脳外科医2人と共に脳科学研究のノ音夢が脳にワイヤーを更に刺そうとしていた。
「これ以上の脳への負担は危険です。」
「…だが、もう少しニューロンの計算が必要だ。」
「…わ…わかりました……。」
その場の全員が息を殺し、慎重に作業していた。
しかし、ワイヤーを刺したその瞬間だった。
「脳圧上昇しました!とても危険な状態です!」
「マンニトール投与っ!急げっ!」
「出血が止まりませんっ!」
「VADだっ!早くっ!」
「ピピピピピピピピッ……ピーーーーーーー…。」
「…。」
機械の音が響く中、その場の全員は沈黙した。
「…はぁ…。」
男性は溜息をつき、隣の女性が言葉を発した。
「…ノ音夢(のねむ)さん…実験失敗です。」
「……片付けてくれ。」
「はい。」
男は沢山のケーブルをまたぎ実験室を後にした。
休憩室の自動販売機で購入したコーヒーを手に、目の前の椅子へと腰掛けた。
「…クソ…また失敗した…。」
男は疲労と精神的苦痛から目の下に隈を作り、消耗していた。
「…インプラントを増やし、ニューロンをもっと多く解析しなければ…それに…脳に繋ぐケーブルも増やさないとデータの処理が全然追いつかない…しかし…人体が耐えられないか……一度開けた頭を塞いで、治療期間を間に入れれば……いや…そんな時間はない…。」
その時、1人の男性が話しかけてきた。
「だいぶ切羽詰(せっぱつ)まってんな。」
その男は脳科学研究所の同期で友人だった。
「お前か…。」
「ノ音夢さぁ……顔…ひでぇぞ。」
「あぁ…自分でもそう思う。」
「で?……BMIの進行はどうなの?」
「全然ダメだ…人体が持たない…。」
「だよなぁ…。」
「…そう言えば…お前のところって、人工の脳を作ってたよな…?」
「そうだけど?…でも使えないよ?人体実験が許されてるのはそっちだけだもん。こっちは動物で実験してるけど会話ができる訳じゃないしね。」
「一応でいい…き…聞かせてくれ。」
「いいけど…こっちは自然則に乗って動いてるんだけど……要するに脳を半分切って、片方の脳が無くなった脳を補(おぎな)おうとする反応なんだけど、そこに人工意識の機械を接続するんだ。」
「DCの仮説理論だな。俺もその論文は読んだ。」
「じゃぁ…情報のニ相理論はわかるよね?…ニューロンの発火と非発火がまた難しいんだけど、「フェーディング・クオリア」でアプローチをかけている。」
それを聞いた瞬間にノ音夢は何かに気付き、立ち上がった。
「…っ!?…そうかっ!その方法ならまだいけるかもしれないっ!!」
「なんだよ…急に立ち上がって…。」
「それを「デジタル・フェーディング・クオリア」にしたら…意識を保たせる事が可能なんじゃないのかっ!?」
「…確かに…理論的には…しかし…それをやったら…」
「…あぁ…実験体(それ)はもう人間じゃない。」
「わかってるなら…」
男は友人の言葉を遮り、言葉を続けた。
「なぁ…。」
「なんだ?」
「…俺が…人間をやめると言ったら?」
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「ノネムさんっ!ノネムさん!大丈夫ですかっ!?」
ナリムはノーネームの回復を終え、意識が戻らないノーネームに何度も呼びかけていた。
「…な…ナリムか…戦況はどうなってる?」
ノーネームは夢から目が覚めた。
「そんなことよりっ!気をつけてくださいっ!あなたはここで命を落としてはいけないんですよっ!?」
「わかっている。」
ノーネームのその言葉にナリムは怒鳴り声を上げた。
「わかってませんっ!!」
「…。」
「周りの皆さんとは違ってあなたは鬼説(ここ)で死ぬ事になれば現実世界のあなたは本当に死ぬんですよっ!?……娘の麻也(まなり)を救いたい気持ちはわかります…しかし…麻也が目覚めた時にあなたが居なかったらそれは…麻也が可哀想です…。」
「…。」
ノーネームは沈黙の後に口を開いた。
「すまないな…だが…俺はもう人間じゃない。」
ナリムはまた更に怒鳴り声を上げた。
「それでもですっ!!」
「…。」
ノーネームは返す言葉も出なかった。
更にナリムは言葉を続けた。
「もう…絶対に無茶はやめてください…。」
「…努力しよう…。」
その時、空間が赤の眩い光に染まり始めた。
「なんだ…あれは…」
ノーネームは赤く発光するヴァイラスを見て驚いた。
「いったい何が起こっている…。」
ナリムが答えた。
「ヴァイラスは鬼説(ここ)のラストボスのデータを自分のデータと融合させた様です。」
「…なんだと…そんな事が…いや…奴なら…可能なのか……クソ…。」
更にノーネームはナリムに聞いた。
「為心達は奴とどう闘っていた?」
「どうやら記憶を媒介に力に変換したみたいです。」
「…なんだって?…たしか…彼らのデータは個体づつに容量が用意されていた…記憶のデータを消去した事で容量を空け、自らバトルステータスのデータを構築してると言うのか…。」
ノーネームは少し考えてから気づいた。
「……っ!?……ナリム…。」
「はい。」
ノーネームは立ち上がりナリムに言った。
「先程の約束は守れなくなった。」
「っ!?なっ何故ですかっ!?」
「彼らが記憶を消す事がどういう事かわかるか?」
「……いえ、わかりません。」
「彼らが記憶を消すと言うことは自分を消去しているのと一緒だ。」
「それは…つまり…自殺と同じという事ですか?」
「自らを殺すと書けば一緒かもな…しかし…彼らの自殺(それ)は意味が大きく違い過ぎる……自己犠牲では表せない……きっとそんな生やさしい言葉じゃ釣り合わない何かだ。……私は今の彼らを表現出来る言葉を知らない……だが……彼らが自分自身(クオリア)を犠牲にしてまで闘ってくれているんだ……」
ノーネームは沈黙を置いてまた口を開いた。
「俺の命をかけないでどうやって彼達(あそこ)に並べると言うんだ…。」
「…それでも…私は反対です。」
「お前にはいつも迷惑をかけるな…。」
ノーネームは刀を取り出し、スキルを唱えた。
「心魂…累減…。」
ノーネームは亜鬼人状態へと形を変え、為心達に向かった。
そして、残されたナリムは決意を決めた。
「…私は…あなたの為に…作戦(あれ)を使わなければ…。」
そして、ノーネームが為心達に話しかけた。
「すまない…遅くなった。」
それに対し、リタが答えた。
「もうちょっと寝てても良かったんじゃないか?」
「奴(あれ)を目の前にして寝てはいられないな。」
「だな。」
そして、後に続きナリムも姿を現した。
「遅くなりました。」
その時、ヴァイラスが口を開いた。
「どうやら…役者は揃ったようだな…では…こちらから行こう。」
その瞬間だった。
リタが激声を上げた。
「っ!?為心危ねぇっ!!」
リタは左手で為心を押し退けた。
その時、急にリタの左手は切断された。
「ぐっ!?」
「リタっ!?」
そして、為心は耳元でヴァイラスの声が聞こえた。
「反応が遅いぞ。」
気づけば為心の真後ろにヴァイラスはいた。
「クッソっ!!閃光っ!」
為心は咄嗟に閃光スキルを使いヴァイラスから離れた。
しかし。
「それで逃げたつもりか?」
ヴァイラスはまだ為心の背後に張り付いていた。
「っ!?夢幻刹那っ!!」
為心は瞬時に記憶も消し、律加でのステータスをスピードに割り振り、攻撃に転じた。
為心はヴァイラスを振り切ろうと激しく移動しながら、更に攻撃を繰り返す。
しかし、それに対してヴァイラスは受け止める必要が無い程に為心の斬撃を軽々避けていた。
「私が君を殺せた回数は何回だと思う?」
「っ!?クソっ!」
為心は更に記憶を消した。
「うおぉぉぉぉぉおおおおおおっ!」
為心はスピードを上げ、凄まじい速さで斬撃を繰り出した。
しかし。
「つまらないな。」
ヴァイラスは凄まじい速さで、手を槍の様に変形させ為心に向け攻撃をした。
「絶っ!」
その時、会長が間に入りヴァイラスの攻撃を受け止めた。
為心は間一髪の所で助けられた。
そして、会長の攻撃防御(それ)を見て為心は聞いた。
「会長っ!?奴の攻撃が見えるのか!?」
「全然見えんっ!リタの指示じゃっ!」
それを聞きいたヴァイラスは標的を変えた。
「ほう?…ではあの者から先に片付けるとしよう。」
そう言ってヴァイラスは目の前から消えた。
「っ!?リタぁっ!危ないっ!」
為心は瞬時に叫んだが、もう既にリタは片手でヴァイラスの攻撃を受け止め、鬩(せめ)ぎ合いになっていた。
そして、ヴァイラスはリタに向かって口を開いた。
「ほう…これを止めるか…やはり貴様から死んでもらおう。」
その時、ヴァイラスの後ろからノーネームが斬りかかった。
「そう簡単にはさせんぞっ!」
しかし、ノーネームの攻撃は空を切った。
それと同時にリタが叫んだ。
「為心っ!2時の方向だっ!!」
ヴァイラスはノーネームの攻撃を回避し、リタが指示を出した所に現れた。
そして、為心は力一杯に双月(かたな)を振るった。
「食らえっ!!」
ヴァイラスは右腕で為心の攻撃を止め言葉を口にした。
「こんなものが食らうか。」
「…当たっただけでも進歩だろっ!!」
為心は更に2撃目3撃目とヴァイラスに受け止められるが、ヴァイラスは避ける事は出来ていなかった。
そして、為心に隙が生まれた瞬間にヴァイラスは攻撃に転じようとしていた。
しかし。
リタから指示が飛んだ。
「ノーネーム防御っ!ナリムバックアタックっ!」
ノーネームはヴァイラスの攻撃を刀で受け止め、ナリムが後ろから攻撃し、初めてヴァイラスに攻撃が当たった。
それに対しヴァイラスは口を開いた。
「ほう…これはなかなか…言われるがまま動けると言うのは信じていないと出来ない動きだ。」
更にリタは指示を出す。
「会長!為心に壁っ!為心はアタック!」
しかし、指示が早すぎた為にヴァイラスは為心への攻撃をしようと振りかぶった瞬間に消え、リタの目の前に現れ攻撃をした。
「クッソっ!」
リタは自分に来る可能性を捨てては居なかった。
間一髪でヴァイラスの攻撃を受け止めてる事ができた。
そして、ナリムがヴァイラスに向け遠距離攻撃を放った。
「水光弾っ!」
ヴァイラスはまた、それを回避した。
「ノーネームっ!ナリムの背後へっ!」
気づけばヴァイラスはナリムの背後へと移動していた。
更にノーネームがヴァイラスに攻撃を仕掛けるが、ヴァイラスはノーネームの攻撃を受け止めナリムに槍のような腕を突き刺した。
「がっはっ!」
「ナリムっ!!」
しかし、ヴァイラスはノーネームの攻撃で邪魔された為に攻撃は急所を外れ、ナリムの肩を貫(つらぬ)き、致命傷には至らなかった。
更にヴァイラスはノーネームの2撃目を回避するべく少し離れた所へと移動した。
そして、為心がリタに聞いた。
「リタっ!次はどこだっ!?」
「いや…詰(つ)んだかもしれない…。」
その言葉に会長が聞く。
「いったいどういうことじゃっ!?」
気づけばヴァイラスは少し遠くの上空へと移動し、槍の様な鋭い腕をこちらに向け、雷炎を生成していた。
「これはどう対処するのかな…?」
その瞬間、ヴァイラスの溜めていた雷炎が急激に大きくなった。
その場の全員が、見たことないあまりの大きさの雷炎に驚愕(きょうがく)した。
その中でリタが口遊んだ。
「あんなの…避ける隙も無ければ止められもしねぇよ…。」
しかし、リタは絶望(その)中でも1番可能性がある未来に賭けた。
「…全員…覚悟を決めろ…対処(これ)が1番増しだ。」
その言葉に為心は答えた。
「もうこの状況で文句はねぇよ…リタ…指示を頼む。」
そして、全員が頷いた。
「ノーネームと為心は雷炎を限界まで溜めろっ!更に俺と会長は絶でカバー!ナリムは心魂とバフを頼むっ!」
その言葉に為心とノーネームは雷炎を溜め始めた。
その後ろでリタと会長が待機し、更に後ろでナリムが待機した。
それを見ていたヴァイラスが口を開く。
「さて…生き残れるかな…?」
そして、ヴァイラスは雷炎を放ち、凄まじい轟音(ごうおん)と共に為心達に雷炎は迫ってきた。
「今だっ!放てっ!!」
「雷炎っ!」
「雷炎!」
リタの指示でノーネームと為心はヴァイラスの雷炎程ではないが最大限まで溜めた雷炎を放った。
そして。
雷炎が着弾し、凄まじい衝撃音が辺りを轟かせ全員の耳を打った。
その時、ヴァイラスの雷炎に変化があった。
ノーネームと為心の雷炎は押し負けているものの、ヴァイラスの雷炎は小さくなっていた。
そして、ノーネームと為心の雷炎は消滅し、ヴァイラスの雷炎は迫って来た。
更にリタから指示が飛んだ。
「会長っ!今だっ!」
「神氣っ!起死回生っ!」
会長は神氣を発動し、防御力を高めた。
「…絶っ!」
「絶!」
迫り来る雷炎に向け会長とリタはシールドを張った。
着弾と同時に凄まじい火花が舞い、会長とリタは全力でヴァイラスの雷炎の威力を減らしていた。
「会長っ!ここが重要だっ!止められるだけ死ぬ気で止めろぉっ!!」
「くっ!?これはきついのうっ!…心魂っ!挽回っ!!」
会長の挽回は少しだけ雷炎を縮めた。
「ちっ…意味無かったかっ!」
そして、更にリタから指示が飛んだ。
「ノーネームと為心は雷炎を再度溜めろっ!そしてナリム!シールドが弾けたと同時に心魂で全員をフル回復しろっ!」
「え?そのタイミングでするんですか?」
「いいから言うことをきけっ!」
その時、「絶」のシールドが弾けた。
「雷炎放てっ!」
「雷炎っ!!」
「雷炎。」
雷炎が着弾し、ナリムはリタに言われるがままに心魂を使った。
「心魂…閼伽っ!」
全員が淡い光に包まれ、HPが全回復した。
そして、ノーネーム、為心の雷炎はヴァイラスの雷炎を更に縮め、消滅した。
「全員防御態勢っ!!…歯食いしばれっ!!!!」
ヴァイラスの雷炎が全てを飲み込んだ。
凄まじい轟音と共に激しい爆発を起こし、辺り一帯はライトエフェクトの光で何も見えない状態になり、全て光の中へと消えた。
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