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託されていた希望
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15節「託されていた希望」
しばらくして光が鎮圧し、フィールドは粉々に割れ、彼らは瀕死の状態で倒れていた。
それを見てヴァイラスは地上に降り立ち、彼等を見て言葉を口にした。
「ほう?まだ息があるのか…。」
ヴァイラスはリタの方へ歩き、槍の様に伸ばした腕でリタの肩を刺した。
「ぐぁっ!!」
近くにいた為心は体が動かず、その光景を見てる事しか出来なかった。
「リっ…タ…。」
『くっ……体が…動かない……。』
それでも為心は必死に身体を引きづり、リタの元へと行こうとしていた。
「1人、2人は責めて死ぬ計算だったのだが…全員生き残るとはな。…やはり…お前が1番厄介だ。」
ヴァイラスはそう言って何度もリタを刺し続けた。
「う゛ぁあ゛あああっ!」
リタの悲鳴が辺りに響き渡った。
為心の回復薬は底をつき、それでも為心は足掻(あが)こうと必死だった。
「リタ…。」
『…動けよ…もう…友達の死に際なんて…みたくねぇんだよ…動け…動け……頼むから…動いてくれよ…。』
ヴァイラスは何度も何度もリタを刺し続け、リタの体は穴だらけになり、気づけばリタは悲鳴すら上げられなくなっていた。
為心はそのリタの惨状を見て心が折れてしまった。
足掻(あが)く事を諦めないはずだった。
諦めないを保つ事で自分の心を守ってきた。
しかし、それを支えて来た仲間が今、目の前で殺されようとしている。
その状況に意地も、誇りも、国も、責任も、全て捨てて為心は必死に声を押し出した。
「…や…めろ……もう…やめてくれ…。」
その言葉にヴァイラスは手を止めて言った。
「やめる必要がどこにあると言うのだ?仮にやめたとして、結果は何が残ると言うのだ?」
ヴァイラスが見逃す理由がなかった。
ヴァイラスにとってこの戦いは降りかかる火の粉を払っているだけに過ぎなかった。
自分達がヴァイラスを消去しようと勝手に挑み、そして、負けて命乞いをしている。
その状況は何処からどう見ても、ただの自業自得そのものだった。
「…くっそ…。」
『誰か…助けて……リタを……助けて…。』
為心はもう何かに縋(すが)るしかなかった。
そして、ヴァイラスはまたリタを刺し続け、口を開いた。
「飽きが来てしまった…もう消すとしよう。」
ヴァイラスはリタに向け雷炎を生成し始めた。
その光景に為心は虚な瞳でリタの最後を見届けることしか出来なかった。
「ちく…ちょう…」
『…また…目の前で友達が死ぬ…また死ぬ…また助けられない…あたしには…何も変えられなかった…きっと…これで全てが終わるのか…現実世界でも…きっと哀情(この)感情で埋め尽くされ…たくさんの人が…泣く……ちゃま……ちくちゃん……ごめん……あたし……何も出来なかった……。』
しかし、その時だった。
為心の視界に神氣解放の文字が浮かんだ。
「っ!?」
為心は驚いた。
その神氣はちゃまの神氣だった。
「…そうか…」
ちゃまとの別れ際、最後まで手を握っていたのは為心だった。
気付かぬうちにちゃまの神氣は為心に移動していた。
「……ハハ…まだ…頑張れって…事か…。」
為心は力なく微笑み…目を瞑った。
「…ありがとう…ちゃま……もう一度…頑張ってみるよ…。」
そして、為心は唱えた。
「神氣(じんぎ)……累加万律(るいかばんりつ)。」
突如として、為心自身が眩い光を放った。
ヴァイラスも光(それ)に気づき呟いた。
「今度はいったいなんだという…っ!?…」
その瞬間だった。
ヴァイラスは右頬に凄まじく激しい衝撃を感じたと思ったと同時に、自分が壁に埋まっていることに気づいた。
「な…なんだこれは?」
ヴァイラスは埋まった壁を半壊させ抜け出した時、目の前の光景に理解した。
「お前がやったのか?」
先程、ヴァイラスが立っていた所に為心が拳を握り立っていた。
累加万律(るいかばんりつ)
チーム結成をしている仲間のステータスを調整し割り振ることが出来る。
為心は累加万律を使い、仲間のステータスを自分自身に全て上乗せし、ヴァイラスの右頬目掛けて力一杯に殴った結果だった。
そして、ヴァイラスに向け、為心は言葉を口にした。
「また…仲間に助けられた……あたしはまだ…終わる事は許されてないみたいだ…。」
その時、ヴァイラスは感じた。
今の為心は自分自身に匹敵する強さなのだと。
そして、ヴァイラスは呟いた。
「次から次へと芸がよく出るではないか…。」
ヴァイラスのその言葉に為心は双月(かたな)を取り出し、構えた。
「行くぞ。」
その瞬間、あまりの速さに2人の姿は消え、空中で幾度(いくど)となく凄まじい攻防が繰り広げられ、2人のHPは徐々に互いを減らしていた。
その時、凄まじい斬撃音にナリムの意識が戻った。
「…私…生き…てる……そうだ…みんなを回復させなきゃ…」
這いつくばりながら移動を始めた時だった。
近くで倒れていた会長がナリムに話しかけた。
「ナ…ナリムよ…リタを…先に…。」
そう言われたままリタを確認した。
「っ?!」
ナリムはリタの余りにも悲惨な状態を見て息が詰まった。
「…リ…リタさん……。」
あまりの衝撃に動けなかった。
しかし、会長が言葉を押し出し、言った。
「…は…早くするのじゃっ……リタが死んでしまう…。」
会長も危険な状態のはずだった。
しかし、自分よりもリタを優先させた。
「…は…はい…。」
ナリムはリタに向けて掌を翳(かざ)した。
「水…浄化…。」
リタの真下で魔法陣が浮き上がり…リタを淡く光らせ回復させ、リタは一命を取り留めた…。
「会長さん…しばらく待っててください…後もう少しでフル回復スキル「閼伽」のリミットが解除されます。」
「わかっておる…しかし…リタの判断は正解じゃったのう…雷炎(あれ)を食らって生きているのじゃ……後は……為心が…持つかじゃな…。」
その間、為心はヴァイラスと凄まじい戦闘を繰り広げ、対等に戦っていた。
その中で、ナリムは会長に聞いた。
「会長さん…そこからノネム…さんの…無事は確認できますか?」
「いや…わからん…ここからじゃ確認は出来ん……こんなことなら…赤生水(かいふくざい)と神氣を残しとくんじゃた……。」
会長はナリムに聞き返した。
「…名無しが心配か?」
「はい…皆さんには伏せていたのですが…ノネムさんは鬼説(ここ)で死ねば現実世界(リアル)も死んでしまうのです…。」
「どういうことじゃ…?」
「ノネムさんは娘の記憶をヴァイラスから取り戻す為に自分の脳を切って機械を取り付け、ここに来ています。」
「フルダイブは出来ないと言ってたはずじゃが…。」
「それをノネムさんは隠していました。…皆んなには関係ないと…。」
「……今…それを聞いて…思った……そうか…もう大分思い出せんのじゃが…ワシは多分それを知っとった……。」
「っ!?…ど…どういう事ですか?」
「記憶が大体消えておるから確証はない…ワシは恐らく…主らと同じ脳科学に居たのではないかのう…。」
「も…もしかして…何かの…協力で…?」
「いや…単純に…ゲームが好きなだけだった様にも思える…まぁ…今となっては何もわからない……ただ…主達を助けたいその気持ちだけが強く残っておる……こんな事なら……心魂を使い過ぎてはいけんかったのう…。」
そして、為心はナリムが全員を回復するのを待ち、1人でヴァイラスを抑えていた。
しかし、ヴァイラスも思惑(それ)に気付いていた。
「全員が回復し、戻ってくるのを待っているのか?」
ヴァイラスのその問いに為心は答えた。
「その通りだ。」
「私がそう簡単にさせるとでも思うのか?」
「逆に阻止する事が出来ると思っているのか?」
「…言うではないか。」
ヴァイラスは両手で力一杯に為心を薙(な)ぎ払った。
瞬時に為心は防御を取ったが、後方へと耐えながら吹き飛び、ヴァイラスに距離を取られてしまった。
「君だけで雷炎(これ)が止める事ができるのかな?」
ヴァイラスは空中へ移動し、また莫大な大きさの雷炎を生成し始めた。
その時、為心はステータス画面の累加万律(るいかばんりつ)で仲間の数値と掛け合わせ調整した魔力数値を見て呟いた。
「数値(これ)ならいける。」
為心は双月(かたな)をヴァイラスに向け雷炎を生成し始めた。
為心の雷炎は徐々に大きくなり、気づけばヴァイラスの雷炎と同じ規模の大きさへと膨れ上がった。
「ほう?…試してみるか。」
そう言ってヴァイラスは雷炎を放ち、為心も合わせて雷炎を放った。
「雷炎。」
そして、雷炎同士が衝突と共に凄まじい轟音を発し、激しい鬩ぎ合いになった。
その中で、ナリムの心魂スキル、回復の閼伽が使用可能になった。
「……来たっ!リミット解除完了っ!心魂…使います!…心魂…閼伽。」
その時、為心を含めた全員の体が発光し、全回復した。
そして、ナリムは記憶を確認し、呟いた。
「良かった…まだ…しっかり覚えてる。」
そのナリムの呟きに会長は聞いた。
「どうした?」
「いえ…なんでもありません。」
「そうか…よしっ!全回復っ!ナリムはノーネームの様子をっ!ワシはリタへ行くっ!」
「はいっ!」
そして、為心は自分のHPが回復した事に気づいた。
「意外と早かったな…全員なら確実に倒せる。」
その時。
「そうか…阻止出来なかったか…。」
為心の耳元でヴァイラスの声が聞こえ、為心は背後を取られた。
「っ!?」
『くそっ…やられた…。』
鬩(せめ)ぎ合う雷炎の向こう側に居るはずのヴァイラスが気付けば背後にいた。
そして、ヴァイラスは為心に向けて腕を振りかぶった。
「終わりだ。」
その時だった。
「お前がな。」
ヴァイラスの横でノーネームが攻撃を繰り出していた。
それに対し、ヴァイラスは計算した。
『此奴(こいつ)程度なら片手で十分だ。構わず止(とど)めを刺せば終わりだ。』
ヴァイラスはノーネームの攻撃は防御で十分と判断し、構わず為心に止めを刺そうとした。
そして、ノーネームの力一杯の攻撃がヴァイラスに振り下ろされたその瞬間だった。
ヴァイラスの防御で差し出された腕と、更に為心にとどめを刺す為に伸ばした腕の両腕が切断され吹き飛んだ。
「っ!?なに?!」
『なぜだっ!?此奴(こいつ)にこんな力は無かったはずだっ!?』
その瞬間に鬩ぎ合っていた雷炎が同時に弾け飛び、相打ちに終わった。
その時、ヴァイラスは気づいた。
為心がノーネームに向けて掌を翳(かざ)していた事に。
「貴様の仕業かぁっ!!」
ヴァイラスの言動にようやく怒りが伺えた。
ノーネームが一撃目の遠心力で二撃目の蹴りを入れ、ヴァイラスは地面へと叩きつけられ跳ね上がった。
そのタイミングで間髪入れずに為心が回し蹴りを浴びせた。
しかし、ヴァイラスもただ攻撃を受けてるだけではなかった。
為心の攻撃は寸前の所で腕を再生され、防御されていた。
ヴァイラスはそのまま後方へと吹き飛び、それと同時に為心が叫んだ。
「全員ありったけの記憶を消せっ!あたしを信じて攻撃しろっ!!」
ヴァイラスは吹き飛びながら翼を使い空中へと移動した。
しかし、その後方にはリタが陽刀(かたな)を振り上げていた。
「さっきは随分とやってくれたな。」
「なにっ!?」
ヴァイラスは遅れて気付き防御を取ることしか出来なかった。
リタは力一杯に陽刀(かたな)を振り下ろし、ヴァイラスは凄まじい勢いで地面へと叩きつけられた。
「がはっ!!」
『なんだ!?此奴(こやつ)らのこの力は!?』
ヴァイラスには彼らの急激なステータスの上昇を理解出来ていなかった。
「仮はきっちり返すぜっ!」
更にリタはヴァイラスに向けて落下し、スキルを使った。
「心魂…光剣っ!!」
空中にいたリタは光剣スキルで更にスピードを上げ、床に叩きつけられ跳ね上がったヴァイラスに対し、上から串刺しにした。
「ぐぁあああああっ!!」
ヴァイラスは激しく燃え盛り悲鳴をあげた。
しかし、ヴァイラスはリタへと爪を伸ばし、攻撃をしようとしたが、既にリタは回避していた。
「水光弾っ!」
更にナリムが攻撃をする。
ナリムの攻撃の速度が余りにも早く、ヴァイラスは防御も避ける事も出来なかった。
「くっそっ!何が起きていると言うのだっ!」
ヴァイラスは全員の攻撃力、更にスピード、ありとあらゆるステータスが自分に匹敵する強さなのを理解した。
「くっそがぁっ!」
ヴァイラスはナリムに向け攻撃を繰り出した。
しかし。
「絶っ!!」
会長に阻(はば)まれ、反撃を受けた。
「心魂っ!挽回っ!!」
ヴァイラスは自分の攻撃の更に倍に跳ね上げられた力を受け、吹き飛びながら態勢を変え、壁に着地した。
「ぐっ!?…許さぬ…許さぬぞっ!」
ヴァイラスも反撃に転じた。
その場から力強く踏み込み、壁は半壊し、クレーターを作り、会長目掛けて一直線に攻撃を放った。
しかし、間にリタが入ってきた。
「絶っ!」
ヴァイラスはまたシールドに阻(はば)まれた。
間髪入れずに横から会長が陽刀(かたな)を振り上げ、攻撃しようとしていた。
しかし、その時リタが叫んだ。
「会長っ!危ないっ!」
その言葉に会長は攻撃から防御へと変え、ヴァイラスの薙ぎ払いを受けた。
「ぐっ!?」
会長は耐え兼ねて吹き飛んだ。
更にヴァイラスは瞬間的に移動し、リタの後ろへと回り込んだ。
しかし、リタは鷹の目のスキルでその行動も把握できていた。
リタとヴァイラスの激しい攻防が繰り広げられ、リタは幾つものヴァイラスの動きの中から全てに対応出来るよう計算し、戦っていた。
「ちっ!?」
『先が見えるとはいえ、神経使うっつのっ!』
その時、リタはノーネームが斬り込んでくるのが見えた。
リタは合わせて回避をし、ノーネームが間に入り、ヴァイラスと攻防を繰り広げた。
更にノーネームの攻撃が途切れる間をリタが埋め、ナリムもサポートとして回っていた。
その間、為心はずっと「累加万律」を使い仲間のステータス調整をずっと行なっていた。
その時、ノーネームとリタの攻撃が弾かれ、吹き飛んだ。
「神氣…起死回生…。」
会長がスキルを使用し、埋まってた瓦礫(がれき)が爆散した。
「暇は与えんっ!!」
そして、会長が凄まじいスピードで攻撃を繰り出し、間を埋め、ヴァイラスの苛立ちは更に増した。
何故、思う様にならない。
何故、自分が危機的状況に立たされている。
何故、自分が優位の立場に居ない。
何故、虫達(こいつら)は立ち向かってくるのか。
ヴァイラスは今までに出会ったプレイヤーは命乞いをし、助けを求め、その愁いと言う表情を堪能してきた。
しかし、彼らは違った。
何度も必死に立ち上がり、必死に立ち向かってくる。
ヴァイラスには理解できなかった。
その感情が、その彼らの行動がまたヴァイラスの苛立ちを駆り立てた。
「くそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがぁぁぁぁあああああああ!!!!!!」
ヴァイラスは翼を変形させ刃にし、力一杯に攻撃を繰り出した。
ノーネーム、リタ、会長が防御したが耐え兼ねて吹き飛んだ。
ヴァイラスはそのまま空中へと逃げた。
しかし、下からノーネームとリタが追ってきた。
「全て消してやるぞぉぉおおおっ!!!」
ヴァイラスは追ってきた2人に返り討ちを浴びせようと攻撃を繰り出そうとした。
「神氣っ!!刻溜残っ!!」
しかし、ヴァイラスが居た場所はリタが光剣を使用した道筋だった。
「ぐあっ!!」
ヴァイラスはリタの残した斬撃を受けたその時だった。
もう目の前にはノーネームとリタが刀を振り上げていた。
「くっそっ!!!!」
ヴァイラスはHPもかなり減り、瞬時に翼で自分を包み込み防御をした。
「心魂…鳴神っ!!」
「刻爆炎っ!!」
ノーネームとリタの攻撃を受けながらヴァイラスは翼の中で雷炎を生成し始めた。
リタはそれに気づいた。
「ノーネーム回避っ!!雷炎を溜めろっ!」
リタとノーネームはその場から距離を取り、リタに言われるがままノーネームは雷炎を生成し始めた。
そして、ヴァイラスの雷炎がまた莫大な大きさへと膨れ上がった。
「くそくそくそくそくそくそくそくそっ!!為心(あいつ)が原因なのはわかっている!!…しかし…なぜ奴等は力を急にっ!!…くそっ!…くそっ!…今度こそは全てを吹き飛ばしてやるぞぉ!!」
ヴァイラスは今まで以上に雷炎に力を込めた。
しかし、ノーネームが溜めていた雷炎を見て驚愕した。
「っ!?彼奴(あやつ)もだとっ!?」
ノーネームが溜めた雷炎はヴァイラスが溜めた同じ大きさの雷炎だった。
そして、2人は雷炎を放ったその瞬間だった。
「全員何かを犠牲にして戦ってるんだ。…お前は一体何を犠牲にしてると言うんだ?」
「っ!?」
気づけばヴァイラスの真後ろには為心がいた。
「神氣…漸減(ぜんげん)っ!!」
そして、ノーネームのスキルによってヴァイラスの体は紫色の鎖に縛られ動けなくなった。
「何故だ…何故だ何故だ何故だ何故だ何故だっ!!何故思い通りにならないんだぁあああっ!!!!」
「ヴァイラス。これで終わりだ。」
為心はスキルを使用した。
「…閃光…」
自分自身に稲妻を纏った。
「…やめろ…」
ヴァイラスは怯(おび)えを口にした。
「…心魂…鳴神…」
双月(かたな)に稲妻を纏った。
「夢幻刹那っ!!!!」
「やめろぉぉぉ!!!」
夢幻刹那で空間に稲妻が発生し、鬩ぎ合う雷炎が弾けたとほぼ同時だった。
累加万律でノーネームに割り振っていたステータスをこの瞬間に為心は全て自分に割り振り、凄まじい速度でヴァイラスをありとあらゆる方向から何度も斬り裂き、そして、斬る度に鳴神の雷撃が辺りを轟かせた。
「うぉぉぉおおおおおおおっ!!!!」
一太刀一太刀に力を込め、そして、記憶を支払い、たくさんの想いを乗せた。
斬撃を加える度に消える想い出達に感謝と別れを感じ、為心は涙を流しながらヴァイラスを何度何度も斬る。
溢れる想い、そして感情。
自分自身(クオリア)を構成するのに対して想数(これ)程の記憶と友人、関わった人達、出来事、学び、その全てで自分自身が形成されていたと改めて感じた。
想いを全て支払(かえし)、世界(かぞく)を救う。
それは為心にとって…
「悪くないな。」
為心は空高々に飛び、最後の一撃を放った。
「うぁぁぁああああああああっ!!!!」
上空から凄まじい回転を乗せ、為心は稲妻と共に光の速度で力一杯にヴァイラスの頭頂部から斬り伏せた。
その瞬間、斬撃音が遅れて鳴り響き、ヴァイラスは爆発した。
しばらくして光が鎮圧し、フィールドは粉々に割れ、彼らは瀕死の状態で倒れていた。
それを見てヴァイラスは地上に降り立ち、彼等を見て言葉を口にした。
「ほう?まだ息があるのか…。」
ヴァイラスはリタの方へ歩き、槍の様に伸ばした腕でリタの肩を刺した。
「ぐぁっ!!」
近くにいた為心は体が動かず、その光景を見てる事しか出来なかった。
「リっ…タ…。」
『くっ……体が…動かない……。』
それでも為心は必死に身体を引きづり、リタの元へと行こうとしていた。
「1人、2人は責めて死ぬ計算だったのだが…全員生き残るとはな。…やはり…お前が1番厄介だ。」
ヴァイラスはそう言って何度もリタを刺し続けた。
「う゛ぁあ゛あああっ!」
リタの悲鳴が辺りに響き渡った。
為心の回復薬は底をつき、それでも為心は足掻(あが)こうと必死だった。
「リタ…。」
『…動けよ…もう…友達の死に際なんて…みたくねぇんだよ…動け…動け……頼むから…動いてくれよ…。』
ヴァイラスは何度も何度もリタを刺し続け、リタの体は穴だらけになり、気づけばリタは悲鳴すら上げられなくなっていた。
為心はそのリタの惨状を見て心が折れてしまった。
足掻(あが)く事を諦めないはずだった。
諦めないを保つ事で自分の心を守ってきた。
しかし、それを支えて来た仲間が今、目の前で殺されようとしている。
その状況に意地も、誇りも、国も、責任も、全て捨てて為心は必死に声を押し出した。
「…や…めろ……もう…やめてくれ…。」
その言葉にヴァイラスは手を止めて言った。
「やめる必要がどこにあると言うのだ?仮にやめたとして、結果は何が残ると言うのだ?」
ヴァイラスが見逃す理由がなかった。
ヴァイラスにとってこの戦いは降りかかる火の粉を払っているだけに過ぎなかった。
自分達がヴァイラスを消去しようと勝手に挑み、そして、負けて命乞いをしている。
その状況は何処からどう見ても、ただの自業自得そのものだった。
「…くっそ…。」
『誰か…助けて……リタを……助けて…。』
為心はもう何かに縋(すが)るしかなかった。
そして、ヴァイラスはまたリタを刺し続け、口を開いた。
「飽きが来てしまった…もう消すとしよう。」
ヴァイラスはリタに向け雷炎を生成し始めた。
その光景に為心は虚な瞳でリタの最後を見届けることしか出来なかった。
「ちく…ちょう…」
『…また…目の前で友達が死ぬ…また死ぬ…また助けられない…あたしには…何も変えられなかった…きっと…これで全てが終わるのか…現実世界でも…きっと哀情(この)感情で埋め尽くされ…たくさんの人が…泣く……ちゃま……ちくちゃん……ごめん……あたし……何も出来なかった……。』
しかし、その時だった。
為心の視界に神氣解放の文字が浮かんだ。
「っ!?」
為心は驚いた。
その神氣はちゃまの神氣だった。
「…そうか…」
ちゃまとの別れ際、最後まで手を握っていたのは為心だった。
気付かぬうちにちゃまの神氣は為心に移動していた。
「……ハハ…まだ…頑張れって…事か…。」
為心は力なく微笑み…目を瞑った。
「…ありがとう…ちゃま……もう一度…頑張ってみるよ…。」
そして、為心は唱えた。
「神氣(じんぎ)……累加万律(るいかばんりつ)。」
突如として、為心自身が眩い光を放った。
ヴァイラスも光(それ)に気づき呟いた。
「今度はいったいなんだという…っ!?…」
その瞬間だった。
ヴァイラスは右頬に凄まじく激しい衝撃を感じたと思ったと同時に、自分が壁に埋まっていることに気づいた。
「な…なんだこれは?」
ヴァイラスは埋まった壁を半壊させ抜け出した時、目の前の光景に理解した。
「お前がやったのか?」
先程、ヴァイラスが立っていた所に為心が拳を握り立っていた。
累加万律(るいかばんりつ)
チーム結成をしている仲間のステータスを調整し割り振ることが出来る。
為心は累加万律を使い、仲間のステータスを自分自身に全て上乗せし、ヴァイラスの右頬目掛けて力一杯に殴った結果だった。
そして、ヴァイラスに向け、為心は言葉を口にした。
「また…仲間に助けられた……あたしはまだ…終わる事は許されてないみたいだ…。」
その時、ヴァイラスは感じた。
今の為心は自分自身に匹敵する強さなのだと。
そして、ヴァイラスは呟いた。
「次から次へと芸がよく出るではないか…。」
ヴァイラスのその言葉に為心は双月(かたな)を取り出し、構えた。
「行くぞ。」
その瞬間、あまりの速さに2人の姿は消え、空中で幾度(いくど)となく凄まじい攻防が繰り広げられ、2人のHPは徐々に互いを減らしていた。
その時、凄まじい斬撃音にナリムの意識が戻った。
「…私…生き…てる……そうだ…みんなを回復させなきゃ…」
這いつくばりながら移動を始めた時だった。
近くで倒れていた会長がナリムに話しかけた。
「ナ…ナリムよ…リタを…先に…。」
そう言われたままリタを確認した。
「っ?!」
ナリムはリタの余りにも悲惨な状態を見て息が詰まった。
「…リ…リタさん……。」
あまりの衝撃に動けなかった。
しかし、会長が言葉を押し出し、言った。
「…は…早くするのじゃっ……リタが死んでしまう…。」
会長も危険な状態のはずだった。
しかし、自分よりもリタを優先させた。
「…は…はい…。」
ナリムはリタに向けて掌を翳(かざ)した。
「水…浄化…。」
リタの真下で魔法陣が浮き上がり…リタを淡く光らせ回復させ、リタは一命を取り留めた…。
「会長さん…しばらく待っててください…後もう少しでフル回復スキル「閼伽」のリミットが解除されます。」
「わかっておる…しかし…リタの判断は正解じゃったのう…雷炎(あれ)を食らって生きているのじゃ……後は……為心が…持つかじゃな…。」
その間、為心はヴァイラスと凄まじい戦闘を繰り広げ、対等に戦っていた。
その中で、ナリムは会長に聞いた。
「会長さん…そこからノネム…さんの…無事は確認できますか?」
「いや…わからん…ここからじゃ確認は出来ん……こんなことなら…赤生水(かいふくざい)と神氣を残しとくんじゃた……。」
会長はナリムに聞き返した。
「…名無しが心配か?」
「はい…皆さんには伏せていたのですが…ノネムさんは鬼説(ここ)で死ねば現実世界(リアル)も死んでしまうのです…。」
「どういうことじゃ…?」
「ノネムさんは娘の記憶をヴァイラスから取り戻す為に自分の脳を切って機械を取り付け、ここに来ています。」
「フルダイブは出来ないと言ってたはずじゃが…。」
「それをノネムさんは隠していました。…皆んなには関係ないと…。」
「……今…それを聞いて…思った……そうか…もう大分思い出せんのじゃが…ワシは多分それを知っとった……。」
「っ!?…ど…どういう事ですか?」
「記憶が大体消えておるから確証はない…ワシは恐らく…主らと同じ脳科学に居たのではないかのう…。」
「も…もしかして…何かの…協力で…?」
「いや…単純に…ゲームが好きなだけだった様にも思える…まぁ…今となっては何もわからない……ただ…主達を助けたいその気持ちだけが強く残っておる……こんな事なら……心魂を使い過ぎてはいけんかったのう…。」
そして、為心はナリムが全員を回復するのを待ち、1人でヴァイラスを抑えていた。
しかし、ヴァイラスも思惑(それ)に気付いていた。
「全員が回復し、戻ってくるのを待っているのか?」
ヴァイラスのその問いに為心は答えた。
「その通りだ。」
「私がそう簡単にさせるとでも思うのか?」
「逆に阻止する事が出来ると思っているのか?」
「…言うではないか。」
ヴァイラスは両手で力一杯に為心を薙(な)ぎ払った。
瞬時に為心は防御を取ったが、後方へと耐えながら吹き飛び、ヴァイラスに距離を取られてしまった。
「君だけで雷炎(これ)が止める事ができるのかな?」
ヴァイラスは空中へ移動し、また莫大な大きさの雷炎を生成し始めた。
その時、為心はステータス画面の累加万律(るいかばんりつ)で仲間の数値と掛け合わせ調整した魔力数値を見て呟いた。
「数値(これ)ならいける。」
為心は双月(かたな)をヴァイラスに向け雷炎を生成し始めた。
為心の雷炎は徐々に大きくなり、気づけばヴァイラスの雷炎と同じ規模の大きさへと膨れ上がった。
「ほう?…試してみるか。」
そう言ってヴァイラスは雷炎を放ち、為心も合わせて雷炎を放った。
「雷炎。」
そして、雷炎同士が衝突と共に凄まじい轟音を発し、激しい鬩ぎ合いになった。
その中で、ナリムの心魂スキル、回復の閼伽が使用可能になった。
「……来たっ!リミット解除完了っ!心魂…使います!…心魂…閼伽。」
その時、為心を含めた全員の体が発光し、全回復した。
そして、ナリムは記憶を確認し、呟いた。
「良かった…まだ…しっかり覚えてる。」
そのナリムの呟きに会長は聞いた。
「どうした?」
「いえ…なんでもありません。」
「そうか…よしっ!全回復っ!ナリムはノーネームの様子をっ!ワシはリタへ行くっ!」
「はいっ!」
そして、為心は自分のHPが回復した事に気づいた。
「意外と早かったな…全員なら確実に倒せる。」
その時。
「そうか…阻止出来なかったか…。」
為心の耳元でヴァイラスの声が聞こえ、為心は背後を取られた。
「っ!?」
『くそっ…やられた…。』
鬩(せめ)ぎ合う雷炎の向こう側に居るはずのヴァイラスが気付けば背後にいた。
そして、ヴァイラスは為心に向けて腕を振りかぶった。
「終わりだ。」
その時だった。
「お前がな。」
ヴァイラスの横でノーネームが攻撃を繰り出していた。
それに対し、ヴァイラスは計算した。
『此奴(こいつ)程度なら片手で十分だ。構わず止(とど)めを刺せば終わりだ。』
ヴァイラスはノーネームの攻撃は防御で十分と判断し、構わず為心に止めを刺そうとした。
そして、ノーネームの力一杯の攻撃がヴァイラスに振り下ろされたその瞬間だった。
ヴァイラスの防御で差し出された腕と、更に為心にとどめを刺す為に伸ばした腕の両腕が切断され吹き飛んだ。
「っ!?なに?!」
『なぜだっ!?此奴(こいつ)にこんな力は無かったはずだっ!?』
その瞬間に鬩ぎ合っていた雷炎が同時に弾け飛び、相打ちに終わった。
その時、ヴァイラスは気づいた。
為心がノーネームに向けて掌を翳(かざ)していた事に。
「貴様の仕業かぁっ!!」
ヴァイラスの言動にようやく怒りが伺えた。
ノーネームが一撃目の遠心力で二撃目の蹴りを入れ、ヴァイラスは地面へと叩きつけられ跳ね上がった。
そのタイミングで間髪入れずに為心が回し蹴りを浴びせた。
しかし、ヴァイラスもただ攻撃を受けてるだけではなかった。
為心の攻撃は寸前の所で腕を再生され、防御されていた。
ヴァイラスはそのまま後方へと吹き飛び、それと同時に為心が叫んだ。
「全員ありったけの記憶を消せっ!あたしを信じて攻撃しろっ!!」
ヴァイラスは吹き飛びながら翼を使い空中へと移動した。
しかし、その後方にはリタが陽刀(かたな)を振り上げていた。
「さっきは随分とやってくれたな。」
「なにっ!?」
ヴァイラスは遅れて気付き防御を取ることしか出来なかった。
リタは力一杯に陽刀(かたな)を振り下ろし、ヴァイラスは凄まじい勢いで地面へと叩きつけられた。
「がはっ!!」
『なんだ!?此奴(こやつ)らのこの力は!?』
ヴァイラスには彼らの急激なステータスの上昇を理解出来ていなかった。
「仮はきっちり返すぜっ!」
更にリタはヴァイラスに向けて落下し、スキルを使った。
「心魂…光剣っ!!」
空中にいたリタは光剣スキルで更にスピードを上げ、床に叩きつけられ跳ね上がったヴァイラスに対し、上から串刺しにした。
「ぐぁあああああっ!!」
ヴァイラスは激しく燃え盛り悲鳴をあげた。
しかし、ヴァイラスはリタへと爪を伸ばし、攻撃をしようとしたが、既にリタは回避していた。
「水光弾っ!」
更にナリムが攻撃をする。
ナリムの攻撃の速度が余りにも早く、ヴァイラスは防御も避ける事も出来なかった。
「くっそっ!何が起きていると言うのだっ!」
ヴァイラスは全員の攻撃力、更にスピード、ありとあらゆるステータスが自分に匹敵する強さなのを理解した。
「くっそがぁっ!」
ヴァイラスはナリムに向け攻撃を繰り出した。
しかし。
「絶っ!!」
会長に阻(はば)まれ、反撃を受けた。
「心魂っ!挽回っ!!」
ヴァイラスは自分の攻撃の更に倍に跳ね上げられた力を受け、吹き飛びながら態勢を変え、壁に着地した。
「ぐっ!?…許さぬ…許さぬぞっ!」
ヴァイラスも反撃に転じた。
その場から力強く踏み込み、壁は半壊し、クレーターを作り、会長目掛けて一直線に攻撃を放った。
しかし、間にリタが入ってきた。
「絶っ!」
ヴァイラスはまたシールドに阻(はば)まれた。
間髪入れずに横から会長が陽刀(かたな)を振り上げ、攻撃しようとしていた。
しかし、その時リタが叫んだ。
「会長っ!危ないっ!」
その言葉に会長は攻撃から防御へと変え、ヴァイラスの薙ぎ払いを受けた。
「ぐっ!?」
会長は耐え兼ねて吹き飛んだ。
更にヴァイラスは瞬間的に移動し、リタの後ろへと回り込んだ。
しかし、リタは鷹の目のスキルでその行動も把握できていた。
リタとヴァイラスの激しい攻防が繰り広げられ、リタは幾つものヴァイラスの動きの中から全てに対応出来るよう計算し、戦っていた。
「ちっ!?」
『先が見えるとはいえ、神経使うっつのっ!』
その時、リタはノーネームが斬り込んでくるのが見えた。
リタは合わせて回避をし、ノーネームが間に入り、ヴァイラスと攻防を繰り広げた。
更にノーネームの攻撃が途切れる間をリタが埋め、ナリムもサポートとして回っていた。
その間、為心はずっと「累加万律」を使い仲間のステータス調整をずっと行なっていた。
その時、ノーネームとリタの攻撃が弾かれ、吹き飛んだ。
「神氣…起死回生…。」
会長がスキルを使用し、埋まってた瓦礫(がれき)が爆散した。
「暇は与えんっ!!」
そして、会長が凄まじいスピードで攻撃を繰り出し、間を埋め、ヴァイラスの苛立ちは更に増した。
何故、思う様にならない。
何故、自分が危機的状況に立たされている。
何故、自分が優位の立場に居ない。
何故、虫達(こいつら)は立ち向かってくるのか。
ヴァイラスは今までに出会ったプレイヤーは命乞いをし、助けを求め、その愁いと言う表情を堪能してきた。
しかし、彼らは違った。
何度も必死に立ち上がり、必死に立ち向かってくる。
ヴァイラスには理解できなかった。
その感情が、その彼らの行動がまたヴァイラスの苛立ちを駆り立てた。
「くそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがぁぁぁぁあああああああ!!!!!!」
ヴァイラスは翼を変形させ刃にし、力一杯に攻撃を繰り出した。
ノーネーム、リタ、会長が防御したが耐え兼ねて吹き飛んだ。
ヴァイラスはそのまま空中へと逃げた。
しかし、下からノーネームとリタが追ってきた。
「全て消してやるぞぉぉおおおっ!!!」
ヴァイラスは追ってきた2人に返り討ちを浴びせようと攻撃を繰り出そうとした。
「神氣っ!!刻溜残っ!!」
しかし、ヴァイラスが居た場所はリタが光剣を使用した道筋だった。
「ぐあっ!!」
ヴァイラスはリタの残した斬撃を受けたその時だった。
もう目の前にはノーネームとリタが刀を振り上げていた。
「くっそっ!!!!」
ヴァイラスはHPもかなり減り、瞬時に翼で自分を包み込み防御をした。
「心魂…鳴神っ!!」
「刻爆炎っ!!」
ノーネームとリタの攻撃を受けながらヴァイラスは翼の中で雷炎を生成し始めた。
リタはそれに気づいた。
「ノーネーム回避っ!!雷炎を溜めろっ!」
リタとノーネームはその場から距離を取り、リタに言われるがままノーネームは雷炎を生成し始めた。
そして、ヴァイラスの雷炎がまた莫大な大きさへと膨れ上がった。
「くそくそくそくそくそくそくそくそっ!!為心(あいつ)が原因なのはわかっている!!…しかし…なぜ奴等は力を急にっ!!…くそっ!…くそっ!…今度こそは全てを吹き飛ばしてやるぞぉ!!」
ヴァイラスは今まで以上に雷炎に力を込めた。
しかし、ノーネームが溜めていた雷炎を見て驚愕した。
「っ!?彼奴(あやつ)もだとっ!?」
ノーネームが溜めた雷炎はヴァイラスが溜めた同じ大きさの雷炎だった。
そして、2人は雷炎を放ったその瞬間だった。
「全員何かを犠牲にして戦ってるんだ。…お前は一体何を犠牲にしてると言うんだ?」
「っ!?」
気づけばヴァイラスの真後ろには為心がいた。
「神氣…漸減(ぜんげん)っ!!」
そして、ノーネームのスキルによってヴァイラスの体は紫色の鎖に縛られ動けなくなった。
「何故だ…何故だ何故だ何故だ何故だ何故だっ!!何故思い通りにならないんだぁあああっ!!!!」
「ヴァイラス。これで終わりだ。」
為心はスキルを使用した。
「…閃光…」
自分自身に稲妻を纏った。
「…やめろ…」
ヴァイラスは怯(おび)えを口にした。
「…心魂…鳴神…」
双月(かたな)に稲妻を纏った。
「夢幻刹那っ!!!!」
「やめろぉぉぉ!!!」
夢幻刹那で空間に稲妻が発生し、鬩ぎ合う雷炎が弾けたとほぼ同時だった。
累加万律でノーネームに割り振っていたステータスをこの瞬間に為心は全て自分に割り振り、凄まじい速度でヴァイラスをありとあらゆる方向から何度も斬り裂き、そして、斬る度に鳴神の雷撃が辺りを轟かせた。
「うぉぉぉおおおおおおおっ!!!!」
一太刀一太刀に力を込め、そして、記憶を支払い、たくさんの想いを乗せた。
斬撃を加える度に消える想い出達に感謝と別れを感じ、為心は涙を流しながらヴァイラスを何度何度も斬る。
溢れる想い、そして感情。
自分自身(クオリア)を構成するのに対して想数(これ)程の記憶と友人、関わった人達、出来事、学び、その全てで自分自身が形成されていたと改めて感じた。
想いを全て支払(かえし)、世界(かぞく)を救う。
それは為心にとって…
「悪くないな。」
為心は空高々に飛び、最後の一撃を放った。
「うぁぁぁああああああああっ!!!!」
上空から凄まじい回転を乗せ、為心は稲妻と共に光の速度で力一杯にヴァイラスの頭頂部から斬り伏せた。
その瞬間、斬撃音が遅れて鳴り響き、ヴァイラスは爆発した。
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