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バトル祭1回戦 後編
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7 バトル祭1回戦 後編
『…スー……ハァー…。』
神鳥 切は大きく深呼吸を一回した。
さらに。
『スー…。』
大きく空気を吸い切ったところで目を見開いた。そして鋭い眼つきへと変わった。
周りより少し遅れてカット工程に勢い良く入り、頭の頂点に位置する半径7㎝ぐらいを左手に持つクシで上に引き上げ、30㎝ある髪の長さを半分の15㎝までバッサリ切り落とし、鋏を持つ右手にクシを持ち変えた時
『パァーン!!』
鋏とクシが当たり、弾けた様な音が鳴った。
それがスイッチなのか、合図なのか、神鳥 切は無意識にあの空間へと入って来た。
もう何も聞こえていなかった。
周りも見えていなかった。
ただひたすらに集中していた。
感覚を研ぎ澄ましていた。意識が鮮明であった。
真っ白な世界。
自分だけがその中心にいる。
また自分自身を外から操作している感覚。
そして工程を進めていく。
1つ1つ、丁寧に。
『アンダーを床と平行に…そして、縦をグラで繋げ、フォルム形成、表面にレイヤーでここを…繋げるっ!!』
ウィッグの頭から毛束を取り、クシで良くとかし、右手に持つ鋏が髪に触れ、床に落ちていく。
その世界では動作がとても丁寧で、ゆっくりなはずなのに。
外の世界での神鳥 切はとてつもないスピードの速さでカットしていた。
それを見た隣の須堂 恵、そして目の前の敵、河大道 健も理解した。
神鳥 切が勝負をわかっていた事に。
怒りなど、感情に任せてスタイルを作った所で繊細な技術ができなくなってしまうことを。
だから整えた。
感情を、意識を。
しかし、闘志は崩さない。
プライドは捨てない。
神鳥 切はそれを感覚で行なっていた。
一方…。1階フロアでそれを見ていた咲ヵ元 広幸が隣に居る鷹柱 為心に話しかけた。
「切って…あんなに楽しそうにカットするんだね。」
「え?…私には凄く真剣に見えるんですが…あれは楽しんでいるんですか?」
「俺にはそう見えるんだよね。つか、思ってたより皆んなレベル高いのと、切があんなにカット出来るとは思ってなかったわ。」
「ほんとですよね。私もびっくりしてます。下手したら私よりもカット出来るんじゃないですかね。」
「確かに…ただ、あの対戦相手のガタイが良い子も見た目の割に相当繊細なカットするね。初戦からちょっと面白いのが見れそうだな。」
「オーナーってそんな事までわかるんですか?」
「んー…ここから見える程度だとなんとなくではあるけど…例えば、あのガタイの良い子のスライスでパネルが細かいのがその理由だね。」
「スライスとパネルですか?」
「そう。スライスは毛束を取る工程で髪の量を調整した事を言って、それで引き出した毛束をパネルって言うんだ。それが細かいって所が繊細って事。でもその分スピードは遅くなるけどクオリティは上がるんだよね。」
「あぁ…なるほど…。」
そして、鷹柱 為心はそれを神鳥 切のカットと比べた。
「じゃースライスを細く取ってない切くんはカットが良くないって事になるのですか?」
「んー…実はそうではないんだよね。スライスを大きく取る事で、カットし過ぎてしまう部分をカットさせないってメリットとか、さっき言ったみたいにスピードが上がる分、バトルだとスピードの速さはチームのムードにも関わるから、そこでもメリットがあるね。きっと切やあのガタイの子も、他の皆も、感覚でカットの仕方の良さを理解して実行してるんだと思う。」
「へぇ…みんな凄いですね。……私なんかがここに居て本当に良いのかな…。」
鷹柱 為心は思い詰めた顔で、聞こえない声で小さく呟いた。
「ん?いねちゃんなんか言った?」
「あ!なんでもないです!みんな凄いなって言っただけですよ!」
「30分経過です!」
時間報告のアナウンスが流れた。
そして、地下1階では。
『ちくしょう…なんなんだよ。あいつのあのスピードは…あのパネルの束でカットして、どうやってスタイルを作れるって言うんだよ!』
河大道 健は神鳥 切のスピードの速さに焦っていた。
目の前いる神鳥 切はもうスタイルが完成しつつあったのに対し、河大道 健は後ろ側のスタイル、バックスタイルの刈り上げが完成し、横側のサイドに移った状態であった。
『やばいな。ショートスタイルを作ろうって思ったのが間違いだったか?…だがもう、スタイルチェンジは出来ねぇ。ならクオリティを更に上げるしかねぇ。…こいつを使うか…。』
主将のテーマはフリースタイル。
出場者がその時の判断で好きなスタイル、得意なスタイルを作る事が可能の為、全力を出す事が出来る。
河大道 健が選んだのはショートスタイル。神鳥 切が選んだのはボブスタイルであった為、長さが違う分カットする多さでスピードに影響するのもあるのだが、それにしても神鳥 切は速かった。
そして、河大道 健はさらにクオリティ、完成度、精密なカットをする為に
「あのガタイの子…わかってるね。」
咲ヵ元 広幸が河大道 健の異変に気づいた。
「え?どいうことですか?」
鷹柱 為心は河大道 健を見ても何も分からなかった。
「今、見てなかった?あのガタイの子が鋏を変えたの。」
そう。
河大道 健は刈り上げの時に使っていた刃が長い鋏、床屋さんや指が長い人などが好んで使う刃先が普通の鋏より2㎝から3㎝長い鋏と17㎝あるコーム言わゆるクシも片付け、逆に3㎝から5㎝は短いであろうコームと鋏を取り出した。
「すっごい小さいのわかる?あのガタイだから余計にオモチャみたいに見えちゃうけど、あの子がこれから重視する事に当たって理に叶ってる鋏なんだ。さっき言ったみたいに、パネルを細かく取るとスピードが出せないって言ったでしょ?」
「はい。言ってましたね。」
「俺自身も切のスピードには驚いてるけど、あまりにも速すぎてガタイの子はスピードを落とす代わりにクオリティを重視して切に対応する事を選んだ。それに対して、大きい鋏より、もっと、もっと繊細な技術工程をする為に毛先の質感や、毛量調整など、小回りがよく効く鋏に変えてきたんだ。」
「ただ長さがちがうだけで使い方が全然違うんですね。」
「ちなみに、あの子がガタイが良すぎて刈り上げしてた時の鋏がもうすでに普通の鋏より長い鋏だったのには俺も全く気づいてなかったけどね。ただ、求めるクオリティに対して使う鋏を的確に選んできてる。クオリティはかなり上がるね。ただ、スピードを捨てた事は少し痛いね。さぁ…どうなるか。」
主将の勝利ポイントは2ポイント、早い段階で魅力あるスタイルを披露してしまえば相手のモチベーション、チームのムードに影響を与える為、主将は何を考慮するかをカットしながら考えなければならない。
その為、河大道 健は感性と絶対的なクオリティで打って出る事を決めた。
そして、
神鳥 切が大詰めに入っていた。
『スタイルは完成…後は、仕上げに…毛束、動き、クオリティを高める為、ここで…スライドカットを…入れるっ!』
「切にあのスキルあったんだ!?」
咲ヵ元 広幸が神鳥 切のカットの技法を見て驚いていた。
「なんですか?切くん…あれ…なにやってるんですか?」
鷹柱 為心は全く理解出来ないでいた。
「一般的にはセニング、言わばすき鋏で、ある程度毛束感とか先細りの毛先を作る事が出来るし、セットをすれば再現可能なんだけど、どうしても本当の毛束感を作り出す事は出来ないんだ。」
「ん?要するにどういう事ですか?」
「…要するに毛束の動きを出す為に習字の筆の様な毛先を作るのに当たってセニングだと完璧な再現が難しい、だから普通の鋏、シザーで毛先に向かって鋏を流す様に切ると毛先をハネさねたり、横に動かしたり、本当の毛束の動きを作る事ができるんだ。」
「なるほど!でも切くんってどこでそんな技術覚えてるんですかね?誰かに教えてもらってるとかですかね?」
「多分、美容師の本とかだと思うけど、自分1人で理解するのって意外と難しいはずなんだよね。それか、相当練習したか。それにしても日本全国のスタイリストが全員やってるかって言ったら、どちらかと言えば親しみが少ない珍しい技術だね。」
「確かに…切くんいつもお店に残って練習してますよね。なんで、そこまで頑張れるんですかね?」
「…約束なんだって話だよ。」
咲ヵ元 広幸の顔が少し暗くなった。
だが、鷹柱 為心は気づかなかった。
「誰かとですか?」
「んー…ゆくゆくは、いねちゃんも知ると思うけど…俺の口からは言えないな。ただ切にも聞かないであげて。時が来れば多分、自分で話すと思うよ。」
「そうなんですね。きっと素敵な約束なんだろうな。」
鷹柱 為心は妄想を膨らませては更に自己嫌悪になっていた。
『…こんな中途半端な私が一緒のお店で働いてて本当にいいのかな…。』
「終わりました!審査お願いします!」
神鳥 切のスタイルが完成した。
その声に河大道 健が神鳥 切の完成したスタイルを遠目で確認した。
『おいおい!…ちょっと待てよ!なんだよそのスタイル!須堂 恵より魅力あるスタイル作りやがった!もしかしてこいつ、須堂 恵と同等のスキルを…?いや、…もしかしたら……それ以上なのか?』
河大道 健は声には出さないが、驚きを隠せないでいた。
この時、河大道 健が神鳥 切を認めた瞬間だった。
「切ってすげーな!びっくりだわ!」
「…本当に…凄い…。」
1階フロアで咲ヵ元 広幸、鷹柱 為心の2人も神鳥 切のスタイルを見て驚いていた。
「切の奴、ボブの発想を壊しやがったな。」
「それ、どういう意味ですか?」
「世間一般が言う所のボブってわかるよね?」
「オーナー!失礼なこと言わないでください!一応私も美容師でこれからカットの練習入りますぅ!!バカにしてるんですか!?」
「いやいやいや!バカにしてない!ただ、確認!……ボブは普通1番上の毛、表面の毛が長くて、モミアゲや、襟足が短くて45度のカットラインで繋がってるからボブなんだ。」
「だから!そんなことわかってますって!」
「じゃー切が作ったのは何?」
「ボブですよね?」
「あの表面の毛の短さでぇ?」
「………っ!!!」
鷹柱 為心はようやく気づいた。
神鳥 切は1番始めに頭の天辺付近である表面の毛をバッサリカットしていたのだ。
そして完成しているスタイルには1番上から自在に動く毛束が無造作にセットされている。だが、1番下で形成してある形はボブそのものであった。
「オーナー…あれってボブですよね?」
「あれは、言うならボブonレイヤーだね。」
「ボブonレイヤー?」
「ボブの形の上にレイヤーが乗っかってるそのままの意味なんだけど、ただ、切の場合レイヤーがハイレイヤーって言って通常のボブonレイヤーより上の毛が短いからハイレイヤーなんだよね。」
「でも…あれって…アシンメトリーでもありますよね?」
「そうだね。きっと切は、得意なボブスタイルの理屈を崩し、独創性や発想の転換、それを感性として表したんじゃないかな?」
神鳥 切が作り上げたスタイルは、左側が顎下ぐらいから螺旋階段の様に後ろを周り、右側は頬の高さで左と右の長さの違いをボブで表してあり、そのまま螺旋状は続き斜めに前髪が切ってある為、右目は隠れ、左目は見えている。
そして、植物の蔓の様な毛束が動きを出しながら螺旋状に、トップ…1番上まで繋がっていた。
ボブとは通常、表面の髪が長く、かぶさる様になっているスタイルである。が、神鳥 切はそれにレイヤー、言わゆる段を入れた。だが、レイヤーの入れ具合でアンダー…言わゆる下側で作った土台がボブでは無く、段が入り過ぎるとショート風に変わってしまう為、レイヤーのバランス、それに繋がる段のグラデーションの設定がとても難しいスタイルを作り上げたのだ。
「切くんって…こんなに凄かったんですね。」
「俺も今日初めて知ったよ。あんな感性の繋げ方があるんだな。」
「感性の繋げ方ですか?」
「例えば…一見ただのアシンメトリーではあるけども、そのアシンメトリーからの螺旋状に渦巻く様に作ってる。アシンメトリーも1つの感性として入る。が、それがメインじゃない。多分今回のメインは螺旋。その過程にアシンメトリーを持ってきたところが独創性を出している。パッと見た時のインパクトをアシンメトリーに。だが、分析すればするほどそれは螺旋状のグラデーションのレイヤーカットでしかない。それが狙い。1つの感性に繋がる2つ目、3つ目まで全て美味い具合に繋がってる。」
「なるほど…感性を1つ1つ個別に出すんじゃ無くて、1つの感性の中に2つ3つの感性を織り交ぜたってことですね。」
「そう言うこと!いねちゃんもいい勉強になるね!」
「はい。…そうです…ね。」
鷹柱 為心にとって、その言葉は少し重かった。
「終わりました!審査お願いします!」
河大道 健のスタイルもようやく完成した。
「あのガタイの良い子もかなり良いの持ってきたね!あれは…確か…なんだっけ……そう!ネープレスバングか!」
咲ヵ元 広幸が河大道 健の完成したスタイルに目を奪われた。
「ネープレスバングって言うんですか?」
「色んな言い方があるけど、俺はネープレスバングって聞いたんだよね。バック…後ろの刈り上げからソフトモヒカンみたいにつむじ辺りに鋭角のボリュームを作れるほど短くして、前髪に向かって徐々に長くしていくスタイルだね。それに、あのバング…言わゆる前髪をあえて目より下でパッツンに切ることでナチュラルさを消して、クリエイティブ感を出してきたんだね。」
「なるほど…でもなんか…勝手なイメージですけど、刈り上げのショートスタイルって男性的なカットのはずなのになんであれは女性にちゃんと見えるんですか?」
「良いとこ気づいたね!それを見せてるのがバングの艶だね。男性の髪型で多いのが毛束と軽さなんだよね。でもそれを逆にすると、前髪の毛量をフルで重くして、艶を限界まで出してきてるから女性的に見えるんだよね。そこがガタイの良い子の意外性って感じなんじゃないかな?」
「…。バトル祭のレベルって…こんなに高いんですね。」
「んー多分あそこの2人が化け物なんだと俺は思うけどね。でも…確かに凄いよ。ただ…切はもっと凄くなれる。あいつに頼むかな…。」
「それはどういう意味ですか?あいつ?って?」
「まー…そのうちね。」
咲ヵ元 広幸は言わない方が面白いと思い鷹柱 為心をはぐらかした。
『よし。負ける気がしないクオリティをかなり出すことが出来た…。だが、神鳥 切のスタイルはマジで感性がやばい。俺の作ったスタイルがどれだけ通用するか…。だが今までよりかなり良いと言える作品だ。あとは審査員の見どころか…。』
河大道 健はクオリティ高いスタイルを作り上げた。後ろの刈り上げの面の良さ、そしてそこから繋がり、後頭部のボリューム、前髪に続くレイヤーの段が綺麗にグラデーションになっていてる。
河大道 健は予想していなかった神鳥 切のスキル力を侮っていたが、途中で実力を認め、全力を注ぎ、その結果の作品だった。
そして、
審査員がボードを手に持ちそこに評価を記入していく。
2人のウィッグを審査する。
評価の仕方は1人持ち点100点与えられている。
項目に応じてそれをマイナスにしていく。
そして、点の残りが多かった方が勝者となる。
2人は審査を待つ。ただひたすら待つ。
「オーナーはどっちだと思いますか?」
鷹柱 為心が、我慢できず、オーナーの評価を求めた。
「んー俺審査員じゃないしなー…でも…切かな?」
とその時。
「勝者…神鳥 切!!」
審査員が神鳥 切側の右腕をあげ勝者を言葉にあげた。
「オーナーなんでわかったんですか?」
鷹柱 為心が食い入るように咲ヵ元 広幸に聞いた。
「でも、単純に切のスタイルがガタイの良い子より好きだったってのもあるけど…1番は感性の数が切の方が多かったところかな!」
「なるほど…。」
その頃、地下1階では。
『くそっ。負けた…。侮ってた。須堂 恵じゃなければ勝てるって、何処かで思っていた。この神鳥 切って奴本気にさせると、マジでやべぜぇ。…ちくしょぅ…あいつに報告しないとな…。』
河大道 健は負けた。と同時に、神鳥 切を完全に認めざる終えなかった。
「よしっ!」
神鳥 切はガッツポーズをとった。
『主将の俺が2ポイント先制したのは大きい。後は恵がいるし、問題ない。恵の状態は今どうなって…』
神鳥 切は隣の須堂 恵の作るスタイルの状態を見た時、自分の目を疑い、驚きで…
「え…嘘…だろ…?」
小さく声を漏らした。
神鳥 切が目撃したのは、残り時間に見合わないスタイルの完成度だった。
セットや、仕上げを入れても、これから最速でカットをしても、明らかに間に合わない状態。
そして…
須堂 恵はカットしていた両腕を降ろし…
それ以上カットするのをやめた。
その光景に須堂 恵の対戦相手が、神鳥 切が、河大道 健が、千場 流が、全員須堂 恵のその行為に驚いた。
須堂 恵はうつむいたまま動かない。
神鳥 切の思い過ごしではなかった。
腑に落ちなかった訳が繋がった。
違和感の正体、納得のいかなかった自分、須堂 恵の不穏な空気、全てが今繋がった。
そして、
神鳥 切の視線をわかっているはずなのに、須堂 恵は俯いたままそれ以上動こうとしなかった…。
『…スー……ハァー…。』
神鳥 切は大きく深呼吸を一回した。
さらに。
『スー…。』
大きく空気を吸い切ったところで目を見開いた。そして鋭い眼つきへと変わった。
周りより少し遅れてカット工程に勢い良く入り、頭の頂点に位置する半径7㎝ぐらいを左手に持つクシで上に引き上げ、30㎝ある髪の長さを半分の15㎝までバッサリ切り落とし、鋏を持つ右手にクシを持ち変えた時
『パァーン!!』
鋏とクシが当たり、弾けた様な音が鳴った。
それがスイッチなのか、合図なのか、神鳥 切は無意識にあの空間へと入って来た。
もう何も聞こえていなかった。
周りも見えていなかった。
ただひたすらに集中していた。
感覚を研ぎ澄ましていた。意識が鮮明であった。
真っ白な世界。
自分だけがその中心にいる。
また自分自身を外から操作している感覚。
そして工程を進めていく。
1つ1つ、丁寧に。
『アンダーを床と平行に…そして、縦をグラで繋げ、フォルム形成、表面にレイヤーでここを…繋げるっ!!』
ウィッグの頭から毛束を取り、クシで良くとかし、右手に持つ鋏が髪に触れ、床に落ちていく。
その世界では動作がとても丁寧で、ゆっくりなはずなのに。
外の世界での神鳥 切はとてつもないスピードの速さでカットしていた。
それを見た隣の須堂 恵、そして目の前の敵、河大道 健も理解した。
神鳥 切が勝負をわかっていた事に。
怒りなど、感情に任せてスタイルを作った所で繊細な技術ができなくなってしまうことを。
だから整えた。
感情を、意識を。
しかし、闘志は崩さない。
プライドは捨てない。
神鳥 切はそれを感覚で行なっていた。
一方…。1階フロアでそれを見ていた咲ヵ元 広幸が隣に居る鷹柱 為心に話しかけた。
「切って…あんなに楽しそうにカットするんだね。」
「え?…私には凄く真剣に見えるんですが…あれは楽しんでいるんですか?」
「俺にはそう見えるんだよね。つか、思ってたより皆んなレベル高いのと、切があんなにカット出来るとは思ってなかったわ。」
「ほんとですよね。私もびっくりしてます。下手したら私よりもカット出来るんじゃないですかね。」
「確かに…ただ、あの対戦相手のガタイが良い子も見た目の割に相当繊細なカットするね。初戦からちょっと面白いのが見れそうだな。」
「オーナーってそんな事までわかるんですか?」
「んー…ここから見える程度だとなんとなくではあるけど…例えば、あのガタイの良い子のスライスでパネルが細かいのがその理由だね。」
「スライスとパネルですか?」
「そう。スライスは毛束を取る工程で髪の量を調整した事を言って、それで引き出した毛束をパネルって言うんだ。それが細かいって所が繊細って事。でもその分スピードは遅くなるけどクオリティは上がるんだよね。」
「あぁ…なるほど…。」
そして、鷹柱 為心はそれを神鳥 切のカットと比べた。
「じゃースライスを細く取ってない切くんはカットが良くないって事になるのですか?」
「んー…実はそうではないんだよね。スライスを大きく取る事で、カットし過ぎてしまう部分をカットさせないってメリットとか、さっき言ったみたいにスピードが上がる分、バトルだとスピードの速さはチームのムードにも関わるから、そこでもメリットがあるね。きっと切やあのガタイの子も、他の皆も、感覚でカットの仕方の良さを理解して実行してるんだと思う。」
「へぇ…みんな凄いですね。……私なんかがここに居て本当に良いのかな…。」
鷹柱 為心は思い詰めた顔で、聞こえない声で小さく呟いた。
「ん?いねちゃんなんか言った?」
「あ!なんでもないです!みんな凄いなって言っただけですよ!」
「30分経過です!」
時間報告のアナウンスが流れた。
そして、地下1階では。
『ちくしょう…なんなんだよ。あいつのあのスピードは…あのパネルの束でカットして、どうやってスタイルを作れるって言うんだよ!』
河大道 健は神鳥 切のスピードの速さに焦っていた。
目の前いる神鳥 切はもうスタイルが完成しつつあったのに対し、河大道 健は後ろ側のスタイル、バックスタイルの刈り上げが完成し、横側のサイドに移った状態であった。
『やばいな。ショートスタイルを作ろうって思ったのが間違いだったか?…だがもう、スタイルチェンジは出来ねぇ。ならクオリティを更に上げるしかねぇ。…こいつを使うか…。』
主将のテーマはフリースタイル。
出場者がその時の判断で好きなスタイル、得意なスタイルを作る事が可能の為、全力を出す事が出来る。
河大道 健が選んだのはショートスタイル。神鳥 切が選んだのはボブスタイルであった為、長さが違う分カットする多さでスピードに影響するのもあるのだが、それにしても神鳥 切は速かった。
そして、河大道 健はさらにクオリティ、完成度、精密なカットをする為に
「あのガタイの子…わかってるね。」
咲ヵ元 広幸が河大道 健の異変に気づいた。
「え?どいうことですか?」
鷹柱 為心は河大道 健を見ても何も分からなかった。
「今、見てなかった?あのガタイの子が鋏を変えたの。」
そう。
河大道 健は刈り上げの時に使っていた刃が長い鋏、床屋さんや指が長い人などが好んで使う刃先が普通の鋏より2㎝から3㎝長い鋏と17㎝あるコーム言わゆるクシも片付け、逆に3㎝から5㎝は短いであろうコームと鋏を取り出した。
「すっごい小さいのわかる?あのガタイだから余計にオモチャみたいに見えちゃうけど、あの子がこれから重視する事に当たって理に叶ってる鋏なんだ。さっき言ったみたいに、パネルを細かく取るとスピードが出せないって言ったでしょ?」
「はい。言ってましたね。」
「俺自身も切のスピードには驚いてるけど、あまりにも速すぎてガタイの子はスピードを落とす代わりにクオリティを重視して切に対応する事を選んだ。それに対して、大きい鋏より、もっと、もっと繊細な技術工程をする為に毛先の質感や、毛量調整など、小回りがよく効く鋏に変えてきたんだ。」
「ただ長さがちがうだけで使い方が全然違うんですね。」
「ちなみに、あの子がガタイが良すぎて刈り上げしてた時の鋏がもうすでに普通の鋏より長い鋏だったのには俺も全く気づいてなかったけどね。ただ、求めるクオリティに対して使う鋏を的確に選んできてる。クオリティはかなり上がるね。ただ、スピードを捨てた事は少し痛いね。さぁ…どうなるか。」
主将の勝利ポイントは2ポイント、早い段階で魅力あるスタイルを披露してしまえば相手のモチベーション、チームのムードに影響を与える為、主将は何を考慮するかをカットしながら考えなければならない。
その為、河大道 健は感性と絶対的なクオリティで打って出る事を決めた。
そして、
神鳥 切が大詰めに入っていた。
『スタイルは完成…後は、仕上げに…毛束、動き、クオリティを高める為、ここで…スライドカットを…入れるっ!』
「切にあのスキルあったんだ!?」
咲ヵ元 広幸が神鳥 切のカットの技法を見て驚いていた。
「なんですか?切くん…あれ…なにやってるんですか?」
鷹柱 為心は全く理解出来ないでいた。
「一般的にはセニング、言わばすき鋏で、ある程度毛束感とか先細りの毛先を作る事が出来るし、セットをすれば再現可能なんだけど、どうしても本当の毛束感を作り出す事は出来ないんだ。」
「ん?要するにどういう事ですか?」
「…要するに毛束の動きを出す為に習字の筆の様な毛先を作るのに当たってセニングだと完璧な再現が難しい、だから普通の鋏、シザーで毛先に向かって鋏を流す様に切ると毛先をハネさねたり、横に動かしたり、本当の毛束の動きを作る事ができるんだ。」
「なるほど!でも切くんってどこでそんな技術覚えてるんですかね?誰かに教えてもらってるとかですかね?」
「多分、美容師の本とかだと思うけど、自分1人で理解するのって意外と難しいはずなんだよね。それか、相当練習したか。それにしても日本全国のスタイリストが全員やってるかって言ったら、どちらかと言えば親しみが少ない珍しい技術だね。」
「確かに…切くんいつもお店に残って練習してますよね。なんで、そこまで頑張れるんですかね?」
「…約束なんだって話だよ。」
咲ヵ元 広幸の顔が少し暗くなった。
だが、鷹柱 為心は気づかなかった。
「誰かとですか?」
「んー…ゆくゆくは、いねちゃんも知ると思うけど…俺の口からは言えないな。ただ切にも聞かないであげて。時が来れば多分、自分で話すと思うよ。」
「そうなんですね。きっと素敵な約束なんだろうな。」
鷹柱 為心は妄想を膨らませては更に自己嫌悪になっていた。
『…こんな中途半端な私が一緒のお店で働いてて本当にいいのかな…。』
「終わりました!審査お願いします!」
神鳥 切のスタイルが完成した。
その声に河大道 健が神鳥 切の完成したスタイルを遠目で確認した。
『おいおい!…ちょっと待てよ!なんだよそのスタイル!須堂 恵より魅力あるスタイル作りやがった!もしかしてこいつ、須堂 恵と同等のスキルを…?いや、…もしかしたら……それ以上なのか?』
河大道 健は声には出さないが、驚きを隠せないでいた。
この時、河大道 健が神鳥 切を認めた瞬間だった。
「切ってすげーな!びっくりだわ!」
「…本当に…凄い…。」
1階フロアで咲ヵ元 広幸、鷹柱 為心の2人も神鳥 切のスタイルを見て驚いていた。
「切の奴、ボブの発想を壊しやがったな。」
「それ、どういう意味ですか?」
「世間一般が言う所のボブってわかるよね?」
「オーナー!失礼なこと言わないでください!一応私も美容師でこれからカットの練習入りますぅ!!バカにしてるんですか!?」
「いやいやいや!バカにしてない!ただ、確認!……ボブは普通1番上の毛、表面の毛が長くて、モミアゲや、襟足が短くて45度のカットラインで繋がってるからボブなんだ。」
「だから!そんなことわかってますって!」
「じゃー切が作ったのは何?」
「ボブですよね?」
「あの表面の毛の短さでぇ?」
「………っ!!!」
鷹柱 為心はようやく気づいた。
神鳥 切は1番始めに頭の天辺付近である表面の毛をバッサリカットしていたのだ。
そして完成しているスタイルには1番上から自在に動く毛束が無造作にセットされている。だが、1番下で形成してある形はボブそのものであった。
「オーナー…あれってボブですよね?」
「あれは、言うならボブonレイヤーだね。」
「ボブonレイヤー?」
「ボブの形の上にレイヤーが乗っかってるそのままの意味なんだけど、ただ、切の場合レイヤーがハイレイヤーって言って通常のボブonレイヤーより上の毛が短いからハイレイヤーなんだよね。」
「でも…あれって…アシンメトリーでもありますよね?」
「そうだね。きっと切は、得意なボブスタイルの理屈を崩し、独創性や発想の転換、それを感性として表したんじゃないかな?」
神鳥 切が作り上げたスタイルは、左側が顎下ぐらいから螺旋階段の様に後ろを周り、右側は頬の高さで左と右の長さの違いをボブで表してあり、そのまま螺旋状は続き斜めに前髪が切ってある為、右目は隠れ、左目は見えている。
そして、植物の蔓の様な毛束が動きを出しながら螺旋状に、トップ…1番上まで繋がっていた。
ボブとは通常、表面の髪が長く、かぶさる様になっているスタイルである。が、神鳥 切はそれにレイヤー、言わゆる段を入れた。だが、レイヤーの入れ具合でアンダー…言わゆる下側で作った土台がボブでは無く、段が入り過ぎるとショート風に変わってしまう為、レイヤーのバランス、それに繋がる段のグラデーションの設定がとても難しいスタイルを作り上げたのだ。
「切くんって…こんなに凄かったんですね。」
「俺も今日初めて知ったよ。あんな感性の繋げ方があるんだな。」
「感性の繋げ方ですか?」
「例えば…一見ただのアシンメトリーではあるけども、そのアシンメトリーからの螺旋状に渦巻く様に作ってる。アシンメトリーも1つの感性として入る。が、それがメインじゃない。多分今回のメインは螺旋。その過程にアシンメトリーを持ってきたところが独創性を出している。パッと見た時のインパクトをアシンメトリーに。だが、分析すればするほどそれは螺旋状のグラデーションのレイヤーカットでしかない。それが狙い。1つの感性に繋がる2つ目、3つ目まで全て美味い具合に繋がってる。」
「なるほど…感性を1つ1つ個別に出すんじゃ無くて、1つの感性の中に2つ3つの感性を織り交ぜたってことですね。」
「そう言うこと!いねちゃんもいい勉強になるね!」
「はい。…そうです…ね。」
鷹柱 為心にとって、その言葉は少し重かった。
「終わりました!審査お願いします!」
河大道 健のスタイルもようやく完成した。
「あのガタイの良い子もかなり良いの持ってきたね!あれは…確か…なんだっけ……そう!ネープレスバングか!」
咲ヵ元 広幸が河大道 健の完成したスタイルに目を奪われた。
「ネープレスバングって言うんですか?」
「色んな言い方があるけど、俺はネープレスバングって聞いたんだよね。バック…後ろの刈り上げからソフトモヒカンみたいにつむじ辺りに鋭角のボリュームを作れるほど短くして、前髪に向かって徐々に長くしていくスタイルだね。それに、あのバング…言わゆる前髪をあえて目より下でパッツンに切ることでナチュラルさを消して、クリエイティブ感を出してきたんだね。」
「なるほど…でもなんか…勝手なイメージですけど、刈り上げのショートスタイルって男性的なカットのはずなのになんであれは女性にちゃんと見えるんですか?」
「良いとこ気づいたね!それを見せてるのがバングの艶だね。男性の髪型で多いのが毛束と軽さなんだよね。でもそれを逆にすると、前髪の毛量をフルで重くして、艶を限界まで出してきてるから女性的に見えるんだよね。そこがガタイの良い子の意外性って感じなんじゃないかな?」
「…。バトル祭のレベルって…こんなに高いんですね。」
「んー多分あそこの2人が化け物なんだと俺は思うけどね。でも…確かに凄いよ。ただ…切はもっと凄くなれる。あいつに頼むかな…。」
「それはどういう意味ですか?あいつ?って?」
「まー…そのうちね。」
咲ヵ元 広幸は言わない方が面白いと思い鷹柱 為心をはぐらかした。
『よし。負ける気がしないクオリティをかなり出すことが出来た…。だが、神鳥 切のスタイルはマジで感性がやばい。俺の作ったスタイルがどれだけ通用するか…。だが今までよりかなり良いと言える作品だ。あとは審査員の見どころか…。』
河大道 健はクオリティ高いスタイルを作り上げた。後ろの刈り上げの面の良さ、そしてそこから繋がり、後頭部のボリューム、前髪に続くレイヤーの段が綺麗にグラデーションになっていてる。
河大道 健は予想していなかった神鳥 切のスキル力を侮っていたが、途中で実力を認め、全力を注ぎ、その結果の作品だった。
そして、
審査員がボードを手に持ちそこに評価を記入していく。
2人のウィッグを審査する。
評価の仕方は1人持ち点100点与えられている。
項目に応じてそれをマイナスにしていく。
そして、点の残りが多かった方が勝者となる。
2人は審査を待つ。ただひたすら待つ。
「オーナーはどっちだと思いますか?」
鷹柱 為心が、我慢できず、オーナーの評価を求めた。
「んー俺審査員じゃないしなー…でも…切かな?」
とその時。
「勝者…神鳥 切!!」
審査員が神鳥 切側の右腕をあげ勝者を言葉にあげた。
「オーナーなんでわかったんですか?」
鷹柱 為心が食い入るように咲ヵ元 広幸に聞いた。
「でも、単純に切のスタイルがガタイの良い子より好きだったってのもあるけど…1番は感性の数が切の方が多かったところかな!」
「なるほど…。」
その頃、地下1階では。
『くそっ。負けた…。侮ってた。須堂 恵じゃなければ勝てるって、何処かで思っていた。この神鳥 切って奴本気にさせると、マジでやべぜぇ。…ちくしょぅ…あいつに報告しないとな…。』
河大道 健は負けた。と同時に、神鳥 切を完全に認めざる終えなかった。
「よしっ!」
神鳥 切はガッツポーズをとった。
『主将の俺が2ポイント先制したのは大きい。後は恵がいるし、問題ない。恵の状態は今どうなって…』
神鳥 切は隣の須堂 恵の作るスタイルの状態を見た時、自分の目を疑い、驚きで…
「え…嘘…だろ…?」
小さく声を漏らした。
神鳥 切が目撃したのは、残り時間に見合わないスタイルの完成度だった。
セットや、仕上げを入れても、これから最速でカットをしても、明らかに間に合わない状態。
そして…
須堂 恵はカットしていた両腕を降ろし…
それ以上カットするのをやめた。
その光景に須堂 恵の対戦相手が、神鳥 切が、河大道 健が、千場 流が、全員須堂 恵のその行為に驚いた。
須堂 恵はうつむいたまま動かない。
神鳥 切の思い過ごしではなかった。
腑に落ちなかった訳が繋がった。
違和感の正体、納得のいかなかった自分、須堂 恵の不穏な空気、全てが今繋がった。
そして、
神鳥 切の視線をわかっているはずなのに、須堂 恵は俯いたままそれ以上動こうとしなかった…。
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