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46・お願いだから、そんな事気にしないで。
しおりを挟む本気で心配してしまいました。
「如何したの、リリア! 具合でも悪いの!?」
「ええ、最悪です」
リリアはこめかみに指を当てて、小さく頷きました。
「これ、返すわね」
リリアに宛てた封筒を取り上げて、はしゃいでいるとは、悪ふざけが過ぎました。
反省はしているのですが、封筒を差し出しだす手が僅かに震えるのを、止めることはできませんでした。
リリアは私の方を向く事も無く、その手を弱々しく押し返し、消え入りそうな声で言います。
「いえ、お嬢が開けて下さい」
「何言ってるの? この『恋……』ケホン、封筒はリリアに宛てた物よ。私が開けられるはず無いじゃない」
「いいえ、お嬢に開けてもらわなければ、いけないのですよ」
「……?」
とっさには、リリアの言葉の意味を、うかがい知ることが出来ませんでした。
幾ら、私宛の書簡の中にあった物とはいえ、リリアに宛てた封筒を、ましてや『恋文』を、私が開ける訳にはいきません。
私が少し間を開けて、何も答えずにいると、リリアが何か吹っ切れたかのように、顔をゆっくりとこちらに向け、大きく頷き、強い口調で同じ言葉を繰り返します。
「お嬢に開けてもらわなければ、いけないのですよ」
何故でしょう、リリアの言葉、そして瞳には、否応を言わせぬ強い意思が有りました。
『何故?』と、問い掛ける言葉を飲み込みました。
(あ~あ、くだらねー!)
そうです。
リリアは私の公爵令嬢という立場を、重んじているという事です。
リリアは、ただ、あの可愛らしい封筒、さらには、あて名を見て、単に半ば反射的に隠してしまったに違いありませんが、私宛の書簡に入っていた封筒をリリアが隠し、それを私が見咎めたという事実が重大なのです。
勿論、私は何一つリリアを疑ってはいません。
しかし、うがった見方をすれば、エドが何かしらの密か事を封書に認めたとか、リリアにとって不利益になる物を隠したとか、思われてしまいかねません。
リリアの今にも倒れてしまいそうな蒼ざめた表情は、私に封筒を奪われたとかでは無く、この、下らない事に気付いたからに他なりません。
リリアとしては、その疑念を晴らすためのケジメとして、封筒の中身を私に確認させざるを得ないのです。
熱に浮かされ『恋文』などと、舞い上がり、うろたえていた私が迂闊過ぎました。
私に知られずにリリアに封筒を渡したかったエドの思惑、冷静に考えてみれば、ただ、驚かせたかっただけの悪戯に過ぎません。
こんな下らない事で、リリアを困らせてしまうとは、情けない。
(こりゃあ、笑うしかねー!)
「エドがどんな顔してこの封筒を選んでいたのか、是非、見てみたかったわ」
私が殊更に声を弾ませて、リリアの前に丁寧に封筒を置くと。
リリアも微笑んでくれました。
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