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52・嘘をつく人は多いですが。
しおりを挟むあれこれ考えても仕方ありません。
「エドに直接、聞けば済む事ね」
「え~!」
リリアが胸を抑えて呻き出しました!
なーるほど、口でアレコレ言うより、直接『エドに合う』のが、リリアにとって一番、堪えるようです。
「『え~!』じゃ、ないわよ。合わずにどうするのよ」
「それは……そうなのですが」
リリア、消えてしまいそうです。
面白いから、消し去ってやりましょうか。
「それじゃあ、別にリリアは行かなくてもいいわ」
「何を言っているのですか、お嬢は!『全権代理人』の私が行かなくて、如何するというのですか! 勿論、行きますよ、えぇ、行きますとも。当たり前じゃないですか!」
おお! 消え去るどころか、もの凄い剣幕でよみがえってきました。
「でもなぁ……」
あれ? また、しぼんでしまいました。
乙女心は複雑なようです。
「ほら、しっかりしなさいよ。エドに合う前に色々と準備しなければならない事があるでしょ。投資総額は幾らになるの? 私の蓄財で賄える?」
「ええ、大丈夫です」
最愛のお母さまが、私の為に莫大な金塊を残してくれていますので、資金的には余裕のようです。
「契約的には?」
「かなりの好条件だと思いますが、投資概要と契約書は、後で家令長に確認を取って頂きます。エドアルド商会に出向くとなると、正式な儀礼手続きもしなくてはなりませんね。訪問なさるのは早ければ早い方がよろしいのでは?」
「ええ、そうね、早い方が良いわ。どうせ、『あまりにも急過ぎます』とか、わずらわしい事を言ってくる輩が居るでしょうから、私からお父様に根回ししておくわ」
不便な事に、私は無論、リリアも私の近侍という職務上、煩瑣な手続きを踏んだうえでなければ、おいそれとは城館外に出ることができません。
お父様に泣きついても『危険すぎるから』と、許してもらえませんでした。
「販売計画の方は、どのような?」
「悪くは無いのだけれど、う~ん、少し考えてみたいわね。リリアも後で目を通しておいてくれる」
「ん? 今では無くて? それに、お嬢は投資概要と契約書に目を通さないのですか?」
実務的な話を始めると、それまでの浮ついた気分はどこへやら、文武に秀でた優秀な近侍の顔を覗かせますので、頼もしい事この上なしです。
「書類の数字は嘘をつかないからね。おかしな点が無いのなら、それでいいわ」
「しかし……」
「リリア、が、読んだのよ。リリア、が」
「はい!」
返事をするリリアは、と、いえば。
とびっきりの笑顔でした。
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