公爵令嬢走る!/恋の闘争・正義は我にあり 序章

ペンギン饅頭

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53・思いでの中で、思いだしました。

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 まったく、もー!

 リリアにはエドアルド商会へ向かう準備をして貰い、私は例の香草の事を調理長ならば、知っているかと思い、調理場にお伺いしようとして、香草を手にしようとすると、リリアが猛反発でした。

「私の宝物をどーする、おつもりですか!」

 宝物とまで言いますか!

 でも、確かにそうかもしれません。
 見る人によっては取るに足らない、吹けば飛ぶような、ただの押し花ですが、リリアにとっては、目の前の扉を開ける鍵にも見えるのかもしれません。

 何だか、とても羨ましくて。

 羨ましい宝物……。
 あぁ、昔の事を思い出してしまいました。

 リリアが正式に私の近侍に任命された時の事です。
 仰々しい任命式典に、私もリリアもうんざりしていたのですが、お父様から短剣を下賜されて、リリアは大喜びでした。
 高名な刀鍛冶が鍛えた刀身に、柄は金で出来ており、宝玉で彩られ眩い輝きを放つ短剣、というよりも、正に宝剣です。
 二人で部屋に戻ると、リリアは早速、鞘から抜いてみせます。
『見て下さいお嬢、髪の毛が触れただけで、真っ二つです。凄い切れ味ですね』
 顔を紅潮させて、興奮気味のリリアでした。
 柄の握り具合を何度か確かめて、納得がいったのか、二度三度と前に向かって突き出します。
 その美しい所作と、宝剣の美しさが見事に調和して、見とれてしまっていました。
 すると、リリアは突然、宝剣をマジマジと見つめると、小首を傾げ、唇を歪めて不満げな表情を浮かべます。
『お嬢、コレ、どう思います?』
『え! もの凄く、綺麗で、もの凄く、羨ましいよ』
『下賜された物を、誰かに譲り渡すなど不敬にも程がありますが、お嬢になら何の問題もありませんね。コレ、差し上げます。お嬢にお似合いですよ』
 私が言葉に出さずとも、さも羨まし気に見ていた所為もあるのでしょう、リリアは剣を見事な手捌きで鞘に納めると、無造作に差し出してきました。
 剣の価値など良く分かりませんが、大変、価値のある物だということ位は見ただけで分かります。
『……』
 私は唖然としてしまい、言葉もありませんし、ましてや、差し出された剣を、手を伸ばし受け取ることなどできませんでした。
『私にはこれが有りますから』
 そう言ってリリアは、まるで手品師のように、何処から取り出したのか、まったく分かりませんでしたが、いつの間にか、小さなナイフを手にしていました。
 煤ぼけ、貧相な、とても剣とは呼べない、果物ナイフの出来損ないのような……。

(あぁ、あのナイフは……) 
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