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59・お下品なのは結構好きなのです。
しおりを挟む「リリア笑いすぎ!」
わざと私の思惑を外そうとしているとしか考えられません。
沈痛な面持ちで押し黙って考え込むか、赤髪を燃え上がらせて怒り狂うか、はたまた、冷徹な笑みを浮かべながら『……排除します』とでも言うのかと思っていました。
「だ、だ、だって、お、お嬢、くっは!」
「何よ! リリアは気にならないの?」
「気になるも、ならないも、ひっひ!」
『くっは!』『ひっひ!』!? リリアのこんな笑い声は、初めて聞いたような気がします。
リリアの笑いが収まる前に、カップのお茶が無くなってしまいました。
「リリア、お替わり!」
不貞腐れたように言う私の言葉に、リリアは、やれやれ、といった様子で腰を上げ、カップを手にしました。
お茶を淹れるリリアの背が、ま~だ揺れていやがります。
「普通だったらですよ」
リリアはカップを差し出しながら、腰掛けて、咳払いひとつして言いました。
「『み~ちゃった、み~ちゃった』と、大喜びで、一を百にして言いふらすような話ですよね」
「さすがに私が、そんな下品な事できる筈無いじゃない」
「ごもっとも」
「リリアは、こんな昼日中からそんな事をしていた赤鬼を、不潔だとは思わないの?」
「考え過ぎではありません?」
「どういう事?」
「お嬢の話を聞いて、私、思ったのですけれど、ひとつの情景が浮かんできました。赤鬼付きを命じられた給仕の娘が、何か用を言い使って赤鬼の部屋を訪れて、寝ていた赤鬼を起こしたら、素っ裸で起き上がったので、跳びあがって驚いて、慌てて部屋を出て来た。って、ところですかね」
「ずいぶんと、たくましい想像力ですこと」
「そうですか? 私にはこの方がしっくりきますが。給仕の娘たちの事は、お嬢よりもよく知っていますよ。そんな、ふしだらな娘はいないと思いますけど。よしんば男と女の『想い』が、あっても時と場所を選ぶと思いますよ、犬や猫じゃないのですから」
「それじゃあ、私が、まるで盛りの付いた犬や猫みたいじゃない!」
「お嬢らしくもない、論点が斜めにズレていますよ。そんな事を言うはず無いでしょう。ちょっと落ち着いて下さい」
リリアの手が伸びて、私の手を優しく握り締めたかと思うと、二度三度と軽く揺すりました。
うん、ちょっと落ち着いてきました。
確かに、私の想像が飛躍し過ぎたというか、下品過ぎたというか、リリアの言う通りなのかもしれません。
「ところで、お嬢」
リリアの瞳が怪しく光りました。
何を言い出すか、嫌な予感しかしません。
(おっかねー!)
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