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21.恋敵の存在
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(言うべき、だよね……?)
間違えていたのはこの一問だけだった。漢字のつくりの部分を書き間違えていて、書こうとした答えそのものは合っていた。だから、正直に話しても『ねがいごと』を叶えてくれるかもしれない。
いや、先生とはそもそも満点という約束だった。そして先生が見回りに来たときに、間違えるよりは平仮名の方がいいと言っていたから、きっとこれは誤答と判断されてなかったことになるだろう。
だけど先生の採点ミスだし、ガッカリさせられたお詫びで聞いてくれるかもしれない。でも、そんな保証はどこにもない。
頭の中で、自問自答が繰り返される。
「答え合わせは以上! ……解答について質問ある奴はこい!」
「せんせー! ここ~」
「俺も俺も」
数人の生徒が先生の所に行く。
「ったく、順番だ、順番」
(行くなら今だ! ほら『先生!』って)
「あといないか?」
(葵!)
「いないな! 少し早いけど終わりにするぞ! 他のクラスに邪魔になんないよう騒ぎすぎんなよ!」
(行っちゃった……)
「夏休みの計画たてよー」
「倉田でラッキーだったなー」
みんなが喜んでいる中、反対に私は気が沈んでいく。
このまま『ねがいごと』を叶えてもらっていいのだろうかと、その答えが見つからないまま気がつけば放課後になっていた。
満点のテストを見つめながら、屋上で一人物思いにふける。
(他の教科のテスト結果も高得点だったけど、全く喜べなかったな……)
当初の目的である勉強を頑張るということは達成できた。でも、いまの私は『誇れる自分』なのだろうか。
「うわ、百点!?」
突然後ろから声がして振り向くと、そこに居たのは森田さんだった。
「それ、保健体育のテストでしょ? 難しかったのに満点とか、すごいのね」
そう口にして横に立つ彼女を唖然として見つめていると、私のことを軽く睨みながら声を尖らせる。
「何よ! あたしが来ちゃいけないわけ?」
「そんなことない……けど、なんで……」
「『なんであたしが?』って? ……あたしもそう、思うわ」
「知ってるかもしれないけど……あたし、振られたのよね」
「……」
「でも、先生真剣に応えてくれたし、もういいかなって思ってる。で、ひとつ聞きたいんだけど、アンタは先生のことどう思ってんの?」
「!」
「別にアンタが先生に告白して振られようがどうでもいいんだけどさ、本気で好きなら——」
「好きだよ。先生のこと」
彼女の目を真っすぐ見据えて答える。
好きな気持ちを誤魔化してはいけないと感じたから。
彼女にも、そして自分にも。
「そう……じゃあ、謝るわ」
「謝る?」
「先生のアドレスのことだけど……あれ、嘘だから」
「あ……」
「アンタが先生と仲良くしてたから、ムカついて意地悪したの! アンタも先生のこと好きなんだろうと思ったし!」
ばつが悪そうな顔をして言い切ったあと、少しだけ悲しそうにして。
「ほんとは……知らないの」
(そっか……嘘だったんだ)
先生からアドレスは出回っていないと聞いて、嘘かもしれないと思ってはいたけれど、彼女の口から聞くまで確信はなかった。
「……なんで教えてくれたの?」
言わなくても彼女にとって悪いことなんてないはずなのに。
「苦しかったから」
「え……?」
「嘘をついたあと、後悔した。嘘で優位に立って何になるんだろうって」
「……っ」
「まぁ、言いたいこと言えてスッキリしたし、帰るわ」
「お、教えてくれてありがとう!」
背を向けて歩き出した彼女にお礼を告げると、彼女は振り返ることなくそのまま屋上を後にした。
(私、なにを悩んでたんだろう)
森田さんに言われて、自分のすべきことが分かった。
『女』として好かれなくても『人』として好かれるよう頑張る、と決めた筈だ。
ごまかして『ねがいごと』を叶えてもらっても、それは『誇れる自分』なんかではない。そんな当たり前のことにすぐ気がつけないなんて、まだまだだなと思う。
(先生……帰ってないよね?)
間違えていたのはこの一問だけだった。漢字のつくりの部分を書き間違えていて、書こうとした答えそのものは合っていた。だから、正直に話しても『ねがいごと』を叶えてくれるかもしれない。
いや、先生とはそもそも満点という約束だった。そして先生が見回りに来たときに、間違えるよりは平仮名の方がいいと言っていたから、きっとこれは誤答と判断されてなかったことになるだろう。
だけど先生の採点ミスだし、ガッカリさせられたお詫びで聞いてくれるかもしれない。でも、そんな保証はどこにもない。
頭の中で、自問自答が繰り返される。
「答え合わせは以上! ……解答について質問ある奴はこい!」
「せんせー! ここ~」
「俺も俺も」
数人の生徒が先生の所に行く。
「ったく、順番だ、順番」
(行くなら今だ! ほら『先生!』って)
「あといないか?」
(葵!)
「いないな! 少し早いけど終わりにするぞ! 他のクラスに邪魔になんないよう騒ぎすぎんなよ!」
(行っちゃった……)
「夏休みの計画たてよー」
「倉田でラッキーだったなー」
みんなが喜んでいる中、反対に私は気が沈んでいく。
このまま『ねがいごと』を叶えてもらっていいのだろうかと、その答えが見つからないまま気がつけば放課後になっていた。
満点のテストを見つめながら、屋上で一人物思いにふける。
(他の教科のテスト結果も高得点だったけど、全く喜べなかったな……)
当初の目的である勉強を頑張るということは達成できた。でも、いまの私は『誇れる自分』なのだろうか。
「うわ、百点!?」
突然後ろから声がして振り向くと、そこに居たのは森田さんだった。
「それ、保健体育のテストでしょ? 難しかったのに満点とか、すごいのね」
そう口にして横に立つ彼女を唖然として見つめていると、私のことを軽く睨みながら声を尖らせる。
「何よ! あたしが来ちゃいけないわけ?」
「そんなことない……けど、なんで……」
「『なんであたしが?』って? ……あたしもそう、思うわ」
「知ってるかもしれないけど……あたし、振られたのよね」
「……」
「でも、先生真剣に応えてくれたし、もういいかなって思ってる。で、ひとつ聞きたいんだけど、アンタは先生のことどう思ってんの?」
「!」
「別にアンタが先生に告白して振られようがどうでもいいんだけどさ、本気で好きなら——」
「好きだよ。先生のこと」
彼女の目を真っすぐ見据えて答える。
好きな気持ちを誤魔化してはいけないと感じたから。
彼女にも、そして自分にも。
「そう……じゃあ、謝るわ」
「謝る?」
「先生のアドレスのことだけど……あれ、嘘だから」
「あ……」
「アンタが先生と仲良くしてたから、ムカついて意地悪したの! アンタも先生のこと好きなんだろうと思ったし!」
ばつが悪そうな顔をして言い切ったあと、少しだけ悲しそうにして。
「ほんとは……知らないの」
(そっか……嘘だったんだ)
先生からアドレスは出回っていないと聞いて、嘘かもしれないと思ってはいたけれど、彼女の口から聞くまで確信はなかった。
「……なんで教えてくれたの?」
言わなくても彼女にとって悪いことなんてないはずなのに。
「苦しかったから」
「え……?」
「嘘をついたあと、後悔した。嘘で優位に立って何になるんだろうって」
「……っ」
「まぁ、言いたいこと言えてスッキリしたし、帰るわ」
「お、教えてくれてありがとう!」
背を向けて歩き出した彼女にお礼を告げると、彼女は振り返ることなくそのまま屋上を後にした。
(私、なにを悩んでたんだろう)
森田さんに言われて、自分のすべきことが分かった。
『女』として好かれなくても『人』として好かれるよう頑張る、と決めた筈だ。
ごまかして『ねがいごと』を叶えてもらっても、それは『誇れる自分』なんかではない。そんな当たり前のことにすぐ気がつけないなんて、まだまだだなと思う。
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