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Lv.15-2
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不安な面持ちでお伺いを立てていた今までとは違う、何か確信を持った言い方だ。
俺は自分の表情筋が硬くなったのを感じた。
「初めて麻央と体を重ねた時、俺が焦ってしまってうまく出来なかったことを半年間ずっと気に病んでたんだ。
でも帰国してすぐ、今度は絶対に失敗しないようにと細心の注意を払っていたんだけど。思った以上に麻央の反応が良くてね。正直、浮気を疑ったよ」
俺の喉が自然と動き、ごくりと唾を飲み込んだ。
「でも麻央のこと信じたくて、弟であるキミに聞いてみたり、半年間の麻央がしてた生活について本人に直接聞いてみたりして。
他の男の陰は一切感じられないのに、明らかに麻央はセックスに前向きになってたんだ。あんなに恐怖心のある顔を見せてた麻央が、久しぶりに会ったらすごくとろけた目をしてさ。
あるわけないって思ってたけど、どれだけ考えても振り払おうとしても、1人だけ、拭うに拭えない可能性がずっと頭の中にチラついててさ。
───キミなら、生活の一部になるよねって」
疑いから始まってはいるものの、何故か確信を持っているように思えるのは何故だ。
誰かから話が漏れた? 和葉?
「何で、そう思うんですか」
否定すれば済むかも知れないのに、そんなことを聞いていた。
「麻央がね。終わった直後、寝そうな時に触ったら言ったんだ。〝もうイッたから、待ってよたっちゃん〟って。寝ぼけてたにしてはやけにハッキリね」
脳裏に過ぎるのは、麻央がイッた直後に2度イキできるタイプかどうか試そうとした時の情景である。そうだ、そんなこと言われた。
「まさかなって思ったけど、血の繋がりがないって聞いてからずっと気に掛かってて。
そしたら和葉ちゃんから達也くんは女の子とよく遊んでるらしいとか、すぐ女性に手を出すとか聞いて、余計に疑いが晴らせなくなった」
圭人さんから目が離せないのは、嘘をついた時に見破られないようにだ。
真面目な顔で、真面目なトーンで、真剣な表情を作って訴えればそれを真実だと思ってくれるかもしれない。
でも、俺の口から嘘は出てこなかった。
「本番は、してない」
落ち着いた雰囲気を纏っていたが、実際は圭人さんの顔は強張っていたらしい。
今、少し緩んだことでそれが分かった。
「そう……そうか、やっぱり……キミが」
「麻央を怒らないで。俺がしたくて麻央を無理やり襲っただけだから」
事実がどうであれ、今、圭人さんの気持ちを麻央から引き離すわけにはいかない。
麻央のお腹には子どもが居るのだ。
でも圭人さんは笑った。
「違うだろ? 麻央がキミに頼んだとか、麻央から迫ったとか。キミからじゃないだろ?」
「何で? 俺からだし」
「それで本番ナシってあり得ないよ。達也くんの場合は最後までやり切るはずだよ。知った風な口を聞いて悪いけど、キミはそうだろ?」
手に取るように分かる、とでも言いたそうだ。
「大丈夫。俺は真実を知ったからって麻央と別れる気はないよ。子どももできたしね」
「……許せるの?」
「許すも何も、浮気じゃなくて安心した。いや、弟でもこの場合は浮気かな?」
ふっと笑ったその顔は、むしろ肩の荷が降りた時のそれに見えた。
何でだ?
「何で怒らないの?」
「本当は俺が、開発してやりたかったけどね。麻央が〝もっと焦らして欲しい〟って言ってきた時、誰かの入れ知恵だとは思ったけど。まさか弟に相談してたとはね。逆に健気だとさえ思えたよ」
何かを悟ったような、諦めとは違う晴れ晴れとした表情。
圭人さん、なんか仙人みたいだ。
「アニキ。俺、麻央のことは好きだけど、男としてじゃなく弟としてだから」
「分かってるよ」
「アニキのことも好きだから」
「はは。俺が知ってるってことは、麻央には言わないでおいてくれるかな?」
俺は力強く頷いた。
普通なら1人の女を巡って、修羅場を迎える状況だったが事なきを得た。
こんな終わり方に納得していいのか甚だ疑問だが、1番の被害者と言っても過言ではない圭人さん自身がそう言ったのだ。
逆に申し訳ない気持ちになって、もう2度と麻央からの無茶な頼みは聞かないようにしようと心に決めた。
俺は自分の表情筋が硬くなったのを感じた。
「初めて麻央と体を重ねた時、俺が焦ってしまってうまく出来なかったことを半年間ずっと気に病んでたんだ。
でも帰国してすぐ、今度は絶対に失敗しないようにと細心の注意を払っていたんだけど。思った以上に麻央の反応が良くてね。正直、浮気を疑ったよ」
俺の喉が自然と動き、ごくりと唾を飲み込んだ。
「でも麻央のこと信じたくて、弟であるキミに聞いてみたり、半年間の麻央がしてた生活について本人に直接聞いてみたりして。
他の男の陰は一切感じられないのに、明らかに麻央はセックスに前向きになってたんだ。あんなに恐怖心のある顔を見せてた麻央が、久しぶりに会ったらすごくとろけた目をしてさ。
あるわけないって思ってたけど、どれだけ考えても振り払おうとしても、1人だけ、拭うに拭えない可能性がずっと頭の中にチラついててさ。
───キミなら、生活の一部になるよねって」
疑いから始まってはいるものの、何故か確信を持っているように思えるのは何故だ。
誰かから話が漏れた? 和葉?
「何で、そう思うんですか」
否定すれば済むかも知れないのに、そんなことを聞いていた。
「麻央がね。終わった直後、寝そうな時に触ったら言ったんだ。〝もうイッたから、待ってよたっちゃん〟って。寝ぼけてたにしてはやけにハッキリね」
脳裏に過ぎるのは、麻央がイッた直後に2度イキできるタイプかどうか試そうとした時の情景である。そうだ、そんなこと言われた。
「まさかなって思ったけど、血の繋がりがないって聞いてからずっと気に掛かってて。
そしたら和葉ちゃんから達也くんは女の子とよく遊んでるらしいとか、すぐ女性に手を出すとか聞いて、余計に疑いが晴らせなくなった」
圭人さんから目が離せないのは、嘘をついた時に見破られないようにだ。
真面目な顔で、真面目なトーンで、真剣な表情を作って訴えればそれを真実だと思ってくれるかもしれない。
でも、俺の口から嘘は出てこなかった。
「本番は、してない」
落ち着いた雰囲気を纏っていたが、実際は圭人さんの顔は強張っていたらしい。
今、少し緩んだことでそれが分かった。
「そう……そうか、やっぱり……キミが」
「麻央を怒らないで。俺がしたくて麻央を無理やり襲っただけだから」
事実がどうであれ、今、圭人さんの気持ちを麻央から引き離すわけにはいかない。
麻央のお腹には子どもが居るのだ。
でも圭人さんは笑った。
「違うだろ? 麻央がキミに頼んだとか、麻央から迫ったとか。キミからじゃないだろ?」
「何で? 俺からだし」
「それで本番ナシってあり得ないよ。達也くんの場合は最後までやり切るはずだよ。知った風な口を聞いて悪いけど、キミはそうだろ?」
手に取るように分かる、とでも言いたそうだ。
「大丈夫。俺は真実を知ったからって麻央と別れる気はないよ。子どももできたしね」
「……許せるの?」
「許すも何も、浮気じゃなくて安心した。いや、弟でもこの場合は浮気かな?」
ふっと笑ったその顔は、むしろ肩の荷が降りた時のそれに見えた。
何でだ?
「何で怒らないの?」
「本当は俺が、開発してやりたかったけどね。麻央が〝もっと焦らして欲しい〟って言ってきた時、誰かの入れ知恵だとは思ったけど。まさか弟に相談してたとはね。逆に健気だとさえ思えたよ」
何かを悟ったような、諦めとは違う晴れ晴れとした表情。
圭人さん、なんか仙人みたいだ。
「アニキ。俺、麻央のことは好きだけど、男としてじゃなく弟としてだから」
「分かってるよ」
「アニキのことも好きだから」
「はは。俺が知ってるってことは、麻央には言わないでおいてくれるかな?」
俺は力強く頷いた。
普通なら1人の女を巡って、修羅場を迎える状況だったが事なきを得た。
こんな終わり方に納得していいのか甚だ疑問だが、1番の被害者と言っても過言ではない圭人さん自身がそう言ったのだ。
逆に申し訳ない気持ちになって、もう2度と麻央からの無茶な頼みは聞かないようにしようと心に決めた。
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