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番外3【シロサイとクロサイ】
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正しいアンチ対策とかは今でも分からない。
だが、今回のアンチ野郎〝クロサイ〟はそれだけの事情を抱えていたってことで、俺は許す。
もはや許す以外の選択肢はないし、何なら接触してきてくれてありがとう、の気持ちである。
ペア戦で再度、公開告白されたその日。
付き合い始めた俺たちが人目の少ない場所で繰り返しキスをしていると1人の男が姿を現した。
俺たちの前に立って、じっとこちらを見るのだ。
その気配に気づいた俺たちはそちらに目を向け、反射的に何を見てんだよと威嚇しようとした。
そこに居たのは、警察署で見たあの男。
───クロサイだった。
「おま……」
俺が威嚇しようと口を開いた瞬間、信じられないことが起こった。
シロサイがそいつを相手取って、こう言ったのだ。
「お父さん……」
え? え? お父さん? え?
明らかに見た目は俺らと同世代から少し上。
だが言われてみればシロサイに似ているような、似ていないような。
「采花……ごめん、つい最近まで知らなくて」
俺のことはスルーされているようだ。
シロサイが立ち上がって、クロサイに少しだけ近づいた。
「何で……ここに?」
「采花がこの大会に出てるの知って……」
采花に会いに来たのだと分かったけれど、俺からすれば混乱の種である。
シロサイを騙してるとかシロサイをホテルに連れ込んだとか、散々俺、つまりムジンフリーリィに敵意剥き出しにしてきたのに。
今、俺、シロサイとちゅっちゅしてたよ?
それ見てたよね?
殴ります案件じゃない??
「さ、采花は、このムジン……くんのことが、本当に好きってこと?」
くん付けされた!
この間はムジンこの野郎と罵られたのに!
「うん。付き合うことになった」
「付き合う……のか」
「うん」
「さっきマイク通して言ってたのは、本当なのか」
「うん」
あれ、これって今付き合い始めたって報告だ。
つまりこの間は付き合ってないのにホテルに行ったってことが確定したんだよな?
やっぱり殴ります案件じゃない??
「俺が思ってるような人じゃないならいいんだけど……あまりにも評判が良く……なくて」
「ネットの噂なんて当てにならないよ」
そうだぞ。女関係の噂は実際大体あってるが嘘800も多いんだぞ。もっと言ってやれシロサイ。
「ところでお父さん。なんで私が大会に出てるって知ってたの?」
「それは……」
掻い摘んで話せば、こうだ。
シロ母と別れてからクロサイは家を出て、1人で暮らしていた。
数年経ったある時、街中を歩くシロサイを見つけ声をかけようか迷っているうちにゲーム大会の会場に迷い込んだ。
格闘ゲームで2位になった娘の活躍を嬉しく思っていたある日。
シロサイの名前を検索すると別のゲーム大会に出るらしいではないか。
行ってみたらチーム戦で楽しそうな表情を確認できて安心し、勇気を出して話しかけてみようと後をつけたが、声をかける前に一緒にいた男とホテルに入って行った。
それが俺、ムジンフリーリィ。
ムジンがどういうやつか調べると女関係にだらしない男だという話ばかり。
配信を見てみると「彼女は居ない」と豪語しており、自分の娘が騙されてると危機感を覚えた。
あいつは辞めておけとシロサイ本人に忠告する方法がなく、そこでムジンの配信中にコメント欄を荒らしシロサイが被害者だと周知したかったらしい。
「なのに采花が、ムジンくんのファンに襲われて……もうどうしていいか分からなくなって。
頭ごなしに罵声を浴びせて……あの時は本当に申し訳なかった……」
殴られるどころか、謝られてしまった。
「俺……の方こそ、すみません」
シロサイは俺とクロサイが警察署で接触したことを知らなかったが、何となくで事情を察したようだ。
父が〝クロサイ〟であることもここで理解した。
「お父さんもお母さんも居なくなって絶望してた時、救ってくれたのが高山くん……ムジンくんなんだよ」
「え……」
「〝クロサイ〟のあの書き込みは、本当に腹がたった。何も知らないくせにって」
「ごめん……」
「心配してくれたのは嬉しいけど、これだけは分かって。ムジンくんは噂通りの人じゃない。私が好きになった人を、お父さんも信じて?」
噂通りじゃないの部分を俺が一番否定しきれないのは正直申し訳ないが、今はシロサイの言葉が全てだ。
信じてくれよクロサイ。
いや、訂正! シロ父!
「うん。本当に申し訳なかった。
采花を、頼みます」
深々と頭を下げてくれたクロサイに、俺も同じ角度で頭を下げた。
できたばかりの彼女の父親と、ここで和解が成立したのだった。
時は経ち、俺と采花の結婚式。
クロサイは父として、花嫁姿の采花とバージンロードを歩いた。
「これからも、采花のことをよろしくね。
達也くん」
「はい。必ず幸せにします」
固く握手を交わし、俺に新たな義父ができた。
ちなみに童顔の義父は、16の時に采花の父親になったらしい。
そりゃー若いや。
~Fin~
だが、今回のアンチ野郎〝クロサイ〟はそれだけの事情を抱えていたってことで、俺は許す。
もはや許す以外の選択肢はないし、何なら接触してきてくれてありがとう、の気持ちである。
ペア戦で再度、公開告白されたその日。
付き合い始めた俺たちが人目の少ない場所で繰り返しキスをしていると1人の男が姿を現した。
俺たちの前に立って、じっとこちらを見るのだ。
その気配に気づいた俺たちはそちらに目を向け、反射的に何を見てんだよと威嚇しようとした。
そこに居たのは、警察署で見たあの男。
───クロサイだった。
「おま……」
俺が威嚇しようと口を開いた瞬間、信じられないことが起こった。
シロサイがそいつを相手取って、こう言ったのだ。
「お父さん……」
え? え? お父さん? え?
明らかに見た目は俺らと同世代から少し上。
だが言われてみればシロサイに似ているような、似ていないような。
「采花……ごめん、つい最近まで知らなくて」
俺のことはスルーされているようだ。
シロサイが立ち上がって、クロサイに少しだけ近づいた。
「何で……ここに?」
「采花がこの大会に出てるの知って……」
采花に会いに来たのだと分かったけれど、俺からすれば混乱の種である。
シロサイを騙してるとかシロサイをホテルに連れ込んだとか、散々俺、つまりムジンフリーリィに敵意剥き出しにしてきたのに。
今、俺、シロサイとちゅっちゅしてたよ?
それ見てたよね?
殴ります案件じゃない??
「さ、采花は、このムジン……くんのことが、本当に好きってこと?」
くん付けされた!
この間はムジンこの野郎と罵られたのに!
「うん。付き合うことになった」
「付き合う……のか」
「うん」
「さっきマイク通して言ってたのは、本当なのか」
「うん」
あれ、これって今付き合い始めたって報告だ。
つまりこの間は付き合ってないのにホテルに行ったってことが確定したんだよな?
やっぱり殴ります案件じゃない??
「俺が思ってるような人じゃないならいいんだけど……あまりにも評判が良く……なくて」
「ネットの噂なんて当てにならないよ」
そうだぞ。女関係の噂は実際大体あってるが嘘800も多いんだぞ。もっと言ってやれシロサイ。
「ところでお父さん。なんで私が大会に出てるって知ってたの?」
「それは……」
掻い摘んで話せば、こうだ。
シロ母と別れてからクロサイは家を出て、1人で暮らしていた。
数年経ったある時、街中を歩くシロサイを見つけ声をかけようか迷っているうちにゲーム大会の会場に迷い込んだ。
格闘ゲームで2位になった娘の活躍を嬉しく思っていたある日。
シロサイの名前を検索すると別のゲーム大会に出るらしいではないか。
行ってみたらチーム戦で楽しそうな表情を確認できて安心し、勇気を出して話しかけてみようと後をつけたが、声をかける前に一緒にいた男とホテルに入って行った。
それが俺、ムジンフリーリィ。
ムジンがどういうやつか調べると女関係にだらしない男だという話ばかり。
配信を見てみると「彼女は居ない」と豪語しており、自分の娘が騙されてると危機感を覚えた。
あいつは辞めておけとシロサイ本人に忠告する方法がなく、そこでムジンの配信中にコメント欄を荒らしシロサイが被害者だと周知したかったらしい。
「なのに采花が、ムジンくんのファンに襲われて……もうどうしていいか分からなくなって。
頭ごなしに罵声を浴びせて……あの時は本当に申し訳なかった……」
殴られるどころか、謝られてしまった。
「俺……の方こそ、すみません」
シロサイは俺とクロサイが警察署で接触したことを知らなかったが、何となくで事情を察したようだ。
父が〝クロサイ〟であることもここで理解した。
「お父さんもお母さんも居なくなって絶望してた時、救ってくれたのが高山くん……ムジンくんなんだよ」
「え……」
「〝クロサイ〟のあの書き込みは、本当に腹がたった。何も知らないくせにって」
「ごめん……」
「心配してくれたのは嬉しいけど、これだけは分かって。ムジンくんは噂通りの人じゃない。私が好きになった人を、お父さんも信じて?」
噂通りじゃないの部分を俺が一番否定しきれないのは正直申し訳ないが、今はシロサイの言葉が全てだ。
信じてくれよクロサイ。
いや、訂正! シロ父!
「うん。本当に申し訳なかった。
采花を、頼みます」
深々と頭を下げてくれたクロサイに、俺も同じ角度で頭を下げた。
できたばかりの彼女の父親と、ここで和解が成立したのだった。
時は経ち、俺と采花の結婚式。
クロサイは父として、花嫁姿の采花とバージンロードを歩いた。
「これからも、采花のことをよろしくね。
達也くん」
「はい。必ず幸せにします」
固く握手を交わし、俺に新たな義父ができた。
ちなみに童顔の義父は、16の時に采花の父親になったらしい。
そりゃー若いや。
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