二人の転生悪女 ー偽聖女のヒロイン成り代わり作戦を防げー

炭田おと

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「アルムガルト侯爵令嬢」



 ティーパーティーからの帰り道、私は一人の令嬢に声をかけられた。




 ーーーーそれがヴュートリッヒ家の令嬢、アリアドナだった。




「三日後、ヴュートリッヒの邸宅でティーパーティーを開く予定なんだけど、あなたも参加してくれない? 私、あなたに興味があって、お話ししたいことがあるの!」


 そう言って、アリアドナは招待状をわたしてきた。


 そのティーパーティーでは、席が離れていたから、アリアドナと一言も話さなかったのに、なぜ彼女が私に興味を持ったのか、不思議だった。


 とはいえ、三大侯爵家の令嬢から誘われたのだから、出席するべきだと思い、三日後、私はヴュートリッヒ邸に向かった。


 ヴュートリッヒの使用人に案内され、花畑のような美しい庭園に案内された時は感動した。



「よく来てくれたわ、アルテ嬢」



 アリアドナは庭園の中に設置されたテーブルで、優雅にお茶を飲んでいた。ティーパーティーと聞いて、他の令嬢も誘われたのだろうと思っていたのに、アリアドナは一人だった。



「二人きりで話がしたかったから、他の令嬢は呼んでないの」


 私が席に座ると、アリアドナはそう説明してくれた。


「どうしてダミアン殿下が、次の皇太子になると思ったの?」

「それが聞きたかったの?」

「うん。だって、確信してるみたいな口ぶりだったじゃない。爵位や土地が割り当てられるって、やけに具体的だったし」

「よくわからないんだけど・・・・ただ、頭にぱっと浮かんだの。皇太子に選ばれるのは、ダミアン殿下だって」


 アリアドナは社交的な子だった。お喋りが上手でそのせいか私は、今まで隠してきた、生まれてからずっと感じてきた違和感のことや、別の土地で別の外見と名前で暮らしている記憶があることを打ち明けてしまった。


「やっぱりそうなのね!」


 話を聞き終えたアリアドナは、ぱっと笑顔の花を咲かせる。


「あなたも私と同じように、前世の記憶を持ってるんだわ!」


「前世の記憶?」


 アリアドナは私の目を覗き込む。



「この世界はね。ーーーー〝花畑の聖女〟っていう題名の、ライトノベルの中の世界なの」



 アリアドナが何を言っているのかわからなくて、私は目を瞬かせた。



 それからアリアドナは、〝花畑の聖女〟の主人公のシュリアが、高い治癒能力を持っていて、やがてモルゲンレーテでただ一人の聖女と呼ばれるようになること、聖女として有名になったことで、皇宮でも注目されるようになり、あるパーティーで出会った皇子と恋に落ちること、最終的には彼女が皇后になるということを、私に教えてくれた。



 それを聞いて、私も少しずつ、前世で呼んだ本の内容を思い出すことができた。


 そして思い出したことで、自分が〝花畑の聖女〟を完読しなかったことも思い出した。あまりにも勧善懲悪の描写が極端だったから、好みに合わなくて、途中で読むのを止めたのだ。


「ええーっ! あの小説面白いのに、最後まで読んでないの!? 信じられない、名作だったのに!」


 そのことを告げると、アリアドナに非難された。


「あなたは好きだったの?」

「大好きだった。何度も何度も読んだわ! だから原作で起こることは、全部暗記済みなの。・・・・あ、でも、ヒロインのシュリアは嫌い。頭お花畑のクソ女だもの! ああいうなよなよした猫被りキャラ、死ぬほど嫌いなのよね」

「ええ・・・・でも、シュリアは女主人公でしょ? 主人公が嫌いだったら、読むのも苦痛だったんじゃない?」

「そんなことないよ! シュリア以外のキャラは、みんな素敵だもん。だから原作のシュリアの部分は読み飛ばして、オリジナルヒロインが出てくる二次創作ばっかり読んでた。原作と違って、シュリアがひどい目に遭うやつ」

「そ、そう・・・・」



 それからアリアドナは、これから起こることをいくつか教えてくれた。



 皇帝がダミアンを皇太子にするために、彼よりも皇位継承の順序が上の第一皇子コルネリウスと第二皇子ヨルグを庶子に落とすこと、けれどダミアンはあまりにも病弱なため、皇太子に選ばれた直後に倒れてしまうこと、などなど。



 ーーーーそしてすべて、アリアドナが言ったとおりになった。





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