二人の転生悪女 ー偽聖女のヒロイン成り代わり作戦を防げー

炭田おと

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「・・・・私が信頼してもらっているかどうかはわかりませんが、殿下にヴュートリッヒが主犯だと信じてもらう方法なら、考えてあります」


 気を取り直して、私は自分の考えを二人に伝えることにした。



「ーーーーヴュートリッヒの名前を伝えるだけじゃなく、ヴュートリッヒが主犯だという証拠を、殿下に提示すればいいんです」



 私がそう言うと、二人は顔を見合わせる。


「そんな方法があるのか? あるのなら、もちろん賛成だが・・・・」


「ヨルグ殿下は、襲撃犯の顔を覚えていると言っていました。あの混乱の中で、襲撃犯の顔を見たようです」


 二人が息を呑んだのがわかった。


「確か前にクリストフが、襲撃の実行犯だったエベラルドを見つけ出して、監視していると言ってましたよね?」

「ああ、ボリスと接触するかもしれないと思ったから、すぐには捕まえず、泳がせていたんだ。だが、接触する気配がないな」


 暗殺を失敗したあと、エベラルドはこのままでは自分が消されると思ったのか、皇都を離れていたようだった。でも皇都を生活圏にしていた彼が、郊外で生きていけるはずもなく、すぐに舞い戻ってきたらしい。

 それでヴォルケが、エベラルドの居場所を突き止めてくれたけれど、クリストフは捕まえろという指示は出さなかった。エベラルドが、報酬の件でボリスの部下と接触する可能性を考えて、あえて泳がせるためだった。


 それに、エベラルドは暗殺未遂事件のことを証言できる、大事な証人でもある。だからボリス達がエベラルドを消さないよう、守る必要もあった。


「ヨルグ殿下が彼の顔を覚えているのなら、エベラルドを捕まえて、殿下の前に連れて行きましょう」

「ふむ・・・・」


 二人は、納得してくれた様子だった。


「しかしエベラルド本人は、暗殺の主犯がボリス・フォン・ヴュートリッヒだとは知らないだろう。ボリスははじめから、エベラルドを捨て駒にするつもりだったから、自分達の情報は一切わたしていないはずだ」

「ええ、その通りです。おそらくエベラルドは、ボリスを見たこともないでしょう。でも依頼を引き受けているわけですから、仲介役には会っているはずです。ですからエベラルドを囮にして、仲介役を引きずり出しましょう」

「なるほど」


 ボリスとエベラルド、その間に何人の仲介役が挟まっているのかわからないけれど、それをたどっていけば、いずれ二つは繋がるはずだ。


「エベラルドを脅迫し、彼に、酒場などで酔っ払い相手に、暗殺の依頼を受けたことを吹聴させればいいんです。酔っ払いの中から、情報を売ろうとする者が現れるはずですから。いずれその話は、仲介役の耳に入るでしょう。報告を受けたボリスは、エベラルドの始末を命じるはずです。はじめから、殺すつもりだったんですから」

「なるほどね」


 続きが読めたのか、クリストフはにやりと笑った。


「エベラルドを確実に始末するために、ボリスは信頼できる殺し屋を送ってくるだろう。エベラルドを餌にして殺し屋を呼び寄せ、その殺し屋達を捕まえて、ボリスが主犯だと自白してもらう。それが君の計画なんだな?」

「そうです。・・・・ヨルグ殿下は短気で短絡的なように見えて、実は賢い人だし、物事の核心を見抜くことにも長けています。私達が自分達の主張だけじゃなく、第三者の証言を用意すれば、殿下はそれらの証拠も、客観的に熟考じゅっこうしてくれるはずです」

「殿下に、クロイツェルの裏切り者のことを知らせたのも、殿下の判断力を信じたからなのか?」

「ええ、そうです。殿下を守るために、私達がクロイツェルの裏切り者を消すよりも、殿下が彼自身の判断で、裏切り者を処断するほうがいいと思ったんです。あの方はいずれ、この大国を導く人になるのですから、内部の裏切りに対応できないようでは、国を動かすことなどできないでしょう」


 それが、わずかな期間ではあるものの、ヨルグ殿下という人と接し、観察してきた、私の結論だった。


「ヨルグ殿下は、しっかりとした判断力を持っています。短絡的に見えるふるまいは、殿下がまわりの目を欺くために、あえてしていたことじゃないでしょうか? 侮られているほうがきっと、まわりの思惑を読み取りやすかったんだと思いますから」

「・・・・本当にそうか? あの獰猛さは、素の部分も大きいと思うんだが」


 ここでまた、クリストフの疑り深い面が顔を出した。


「ま、まあ、素の部分もあるにはあると思うんですが・・・・」

「そうだろう!?」


 ちょっと同意してみると、クリストフはびっくりするぐらい食いついてきた。


「クリストフ、色々と疑いすぎですよ。そんなに疑って、今後どうするつもりなんですか? 私達はあの方に、未来を託すしかないんですよ?」


「だって・・・・」


「だってじゃありません」


「・・・・はい」


 クリストフがしょんぼりとうなだれた後ろで、バルドゥールさんが笑いをこらえていた。


 私は咳払いして、緩んだ空気を引きしめようとした。


「・・・・とにかく、私達は殿下に命運を賭けているのですから、彼を信じてみましょう。ーーーーきっとヨルグ殿下なら、最善の方法を選び取ってくれるはずです」



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