男の性春

はりお

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第四章 夢中になる少年(中学校3年編)

4-9 晴れ舞台での涙

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翌日から遂に地方大会が始まった。この日は予選リーグである。各県から数校ずつ全部で24チームがこの大会に出場しているが、3チーム×8に分けられリーグ戦を戦い、1位となったチームが決勝トーナメントに進む。決勝トーナメントで1勝すれば全国大会出場だ。
予選リーグはくじ運にも恵まれ、そんなに強いチームではなかった。1試合目は4-1で、2試合目も2-0と順調に勝ち、無事にリーグは通過することができた。俺はいずれの試合でもほとんどのゴールに絡んでいる。
これで全国大会まで王手となったが次の相手が難敵である。次は吉田くんの学校の県で優勝したチームだ。1日目が終わって宿舎に戻ると吉田くんにあった。吉田くんのチームは惜しくも2位でリーグ戦敗退となったが、俺らの相手校が「嫌らしいサッカーをする」と教えてもらった。カウンター主体でゴリゴリくるチームらしい。ヨーロッパに例えるとアトレティコ・マドリードのようなチームだとか。吉田くんからは明日見に行くから頑張ってと応援してもらった。
この日のお風呂の時、翼は同級生と一緒に入りに行ったため、俺は安心して部屋のメンツと入った。蒼も裕翔も中1のときに一緒に入ってるため、そんなに俺も気にしなかった。ただ、お風呂から出てちょうどパンツを履き終わったあたりで、藤田たちの部屋メンバーが来たため非常に危なかった。
「うわ、壮太ちょうど終わっちゃったのか」
と藤田が悔しがっている。幸運に助けられた。

翌日の決勝トーナメント初戦、準々決勝は予想通り難しい展開となった。相手は守備的なチームであるため、ずっと自陣に引いて守っている。俺らのほうがボールは支配しているが、もたされているというような展開だ。
俺もボールには触れているが、2,3人で守られ縦にも中にもなかなか切り崩せない。いつものごとく攻撃参加してくれる、サイドバックの翼を使って上手くクロスを上げても、裕翔ら味方はゴリゴリのディフェンダーにマークされシュートまで持ってけない。
おまけに鋭いカウンターを打ってきて何度か危ない場面もあったが、何とか翼の驚異的な戻りにより事なきを得ていた。まさに吉田くんの言う嫌らしいチームであった。
後半途中から、流れを変えられる秀才一輝らも投入したが、なかなか崩すことはできずあっという間に延長戦まで終わってしまいPK戦となった。
PKについては俺は大の苦手である。PK戦のキッカー5人は挙手制となったが、誰も1人目に手を挙げようとしなかった。いつも試合でPKを獲得したときに蹴るのは裕翔だが、延長戦中に足をつって交代してしまってた。そうなると、攻撃の核で副キャプテン兼エースの俺が行かなくてはいけないと思ってビクビクしていた。
だがその時、
「先輩たち誰も行かないなら僕が行きます」
と翼が手を挙げてくれた。翼はPKがとても上手である。小学生の頃から自分の代のチームではフォワードを差し置いて蹴っている。外したところを見たことがない。俺も適任だと思った。

PK戦は後攻となった。まず相手の1人目がキーパーの藤田の逆を突いて決める。
続いてこっちの1人目の翼の番。俺は絶対決めると思って安心して見ていた。しかし、彼がゆっくり助走をとって蹴ったボールはいいコースに行ったと思ったがポストに跳ね返されてしまう。彼が外してしまったのだ。翼は天を見上げている。すぐさまキャプテンが翼を迎えに行き、ゴールキーパーの藤田も声をかけに行ってる。だが、翼の表情はもう真っ青だ。
その後、2人目以降はお互い落ち着いて決めていった。俺らはメンタルの強い一輝と、キャプテンの健太が2人、3人目と決め、結局俺は4人目で蹴って何とか決めた。
だが、相手の5人目、これを決められたら負けが確定する。俺は藤田に託したが、相手が蹴ったボールに対し、藤田は見事コースは読んだが、最後藤田のキーパーグローブを弾きゴールに吸い込まれてしまった。
俺らの戦いは終わってしまったのだ。30年ぶりの全国出場とはならなかった。終わった時から藤田が悔しそうに地面を何度も叩いている。
そして、翼の方を見るとその場で泣き出していた。翼の貢献を見ると誰も責めはしないであろう。実際この試合も彼がいたから無失点で試合を進められていた。
俺はその泣きじゃくる姿を見て本当に申し訳なくなった。翼はきっと俺のために1人目に挙手してくれたのだ。彼は俺がPKが苦手なのをしっている。小学生の頃の大会で一緒に出た時も、PK戦で俺が外してチームが負けたことがあった。彼は誰も名乗り出なかったら立場上俺が1人目で蹴らなきゃいけなくなると思い、名乗り出てくれたのだと思う。実際PKに自信があったのは確かであろうが。
俺は泣きじゃくる翼の元に向かった。
「ごめんよ。1人目で蹴らせちゃって」
そう彼に伝えたら俺の目にも涙が溢れてしまった。大体俺はこの日何もできなかった。俺がもっと相手を崩してれば、もっと強引にシュートを打ってればと自責の念がこみ上げてきた。悔しいし、情けない。後輩をこんなに泣かせてしまった自分が情けなかった。
俺は悔しさ、情けなさ、後輩へのいじらしさを込めて、翼の事を抱きしめた。彼は俺の胸元に顔を埋めてひたすら涙している。俺も呆然とした気持ちで彼の頭に手を当てながら、2人でしばらく泣き続けてしまった。
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