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聖女、失恋する
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テオ王子殿下がいない隙に交換日記を届けにきて去っていくミレーヌ王女殿下と交換日記をしながら、儀式をときどきする毎日。儀式がない日は暇も暇で、テオ王子殿下に気まぐれに余計な回数祈りを捧げたりしていた。だってあの人、俺のこと好きになったりしないもん。聖女の力っていっても、無理があるでしょー。
そんなふうに思っていた時期が、俺にもありました。なんだか、数日前からテオ王子殿下の様子がおかしい。嫌ってるのは確かなんだけど、体調を気にしてきたりとか、肩についたゴミを取ってくれたりとか、なんとなく優しい。
いやいや待て待て。祈り効いちゃってるじゃん! ミレーヌ王女殿下が、最近テオお兄様が貴方の話をするようになったのよ、なんて交換日記に書いてあったけど、ガチじゃん! 困る、すげー困る。でも仲良くなることがミレーヌ王女殿下との結婚の近道だし、まあいっか!
そのことを交換日記に書いて渡すと、ミレーヌ王女殿下は次の日顔を真っ赤にさせて部屋にやってきた。計画通り。
「ほ、本当に愛し合うようになるなんて……。わたし、夢のようですわ」
「え?」
「同性愛! 禁断の愛! 頭ではいけないとわかっていてももうわたしを止められる者は誰もおりませんわ! さあ、テオお兄様と結婚の契りを……」
いやいや待て待て待て待て! 盛り上がるのはいいけどそっちじゃないだろ!? 俺はミレーヌ王女殿下と結婚したくているのに、テオ王子殿下はノーサンキューなんだけど! いきなり聖女として連れてこられたんだから、恋する人ぐらい自分で選びたい……。
「ま、待ってくださいミレーヌ王女殿下! お、俺はミレーヌ王女殿下が……」
「ん?」
「い、いや、なんでも……」
「ミレーヌがどうしたって?」
げっ、と言わなかっただけ自分を褒めてあげたい。テオ王子殿下は俺たちに歩み寄ってくると、ノートを見つけてひょいと取り上げる。まずい。これには、俺たちの計画のすべてが……!
中身を見ようとしたテオ王子殿下に、俺はウィンクする。嫌がってくれると信じて。するとテオ王子殿下は手を止めた。よ、よし、とりあえず動きを止めることには成功したぞ。ノートから意識を逸らすんだ。
「い、いやー、テオ王子殿下。いいお天気ですねー!」
「……テオでいい」
「え?」
「呼び捨てでいいと言ったんだ」
まずい。やっぱり余計に祈ったぶん効いてるよコレ! クーデレの男とかいりません! ぺっ! ぺっ!
「て、テオ様? そうおっしゃられましても……」
「なんだ、俺では嫌だというのか?」
「そ、そうではないですけど……」
困り果ててミレーヌ王女殿下に助けを求めても、ミレーヌ王女殿下は目の前で繰り広げられる展開にめろめろで目がハートになっている。だめだ、俺を見ているようで見ていない。BLに脳を焼かれてやがる、早すぎたんだ。
こうなったら俺自身が取り返すしかない。俺はにっこり笑ったふりをして、テオ様に近づく。テオ王子の視線がずいぶん背丈に違いのある俺の頭に降りる。
「そのノート、返してほしいなあって思うんですけど。だめですか?」
「……なにを書いているんだ?」
「そりゃ……ミレーヌ王女殿下の秘密とか……。いいんですか? 兄が妹の秘密見ちゃって」
「他人のお前がなぜこんなことをしている」
「それは、仲がいいからです」
胸を張って答える。いいだろー、羨ましいだろー! 肝心のミレーヌ王女殿下はBLにメロメロだけどな……。で、でも! 俺も見てくれてるってことだし!
テオ様はノートと下にいる俺とを見比べて、ノートをあっさり返してくれた。ありがとうございますと言う前に、頭に手が乗せられる。
「……小さいな」
前言撤回。この人は俺の身長を刺激してくる悪い人だ。反論しようと口を開いたところで、頭を撫でられる。
「ちゃんと食べているか? 栄養不足は身長に響くぞ。この城にいる限り、そういった思いはしていないはずなんだが。歳は?」
「に、二十六ですけど」
「俺の四つ上か。俺にこんな世話を焼かせるな。大人なら大人らしくしろ」
な、なにを言いだすんだ……。俺は好き好んでアンタに祈ってたわけじゃないし、それで嫌いって感情が歪んでしまっても、俺の責任じゃ……いや、俺の責任か。ミレーヌ王女殿下に目がくらんだのが運の尽きだ。煮るなり焼くなり、好きにしてくれ。
俺が覚悟を決めると、テオ様は黙って俺を見ていた。そして頭を撫でていた手をどけて、捨て台詞を吐く。
「せいぜい自分を大事にすることだ」
「してますっ!」
「ならいい。ミレーヌ、帰るぞ」
「は、はい! ……タケル、この後も、期待してますからねっ」
ミレーヌ王女殿下は愛らしい笑顔とウィンクだけ残して去ってしまった。え、ご褒美なし? 頬にキスは? かわいいけど、ウィンクだけ? マジで?
しかもテオ様が二十二歳だってのも衝撃だし……。あえて歳は聞いてなかったけど、想像以上に若かった。俺より背が高いくせに。俺より背が高いくせに! むきー!
背が小さいからって振られたことがある俺は顔もよければ背も高いテオ王子に嫉妬する。ミレーヌ王女殿下が振り向いてくれないのも、テオ様のせいだ。そうだ、きっとそうだ。祈りを捧げたからとか、そんなことじゃない。優しくなったのも俺の力のせいだし……あれ、なんかそう思うとちょっと悲しい。嫌われたのが最初あんなに怖かったのに、いざそうじゃなくなってきたら恋しくなるって……俺ってマゾ?
とにかく、この思いを届かなくなる前にミレーヌ王女殿下に伝えないと。インクとやっと書くのに慣れてきた羽ペンを取り出して、必死に勉強したこの世界の言葉を書いていく。記号みたいな感じで、英語に近い感じがある。そんなこの世界の言語を書きながら、なんか俺は逆に奮起していた。
こうなったら、ミレーヌ王女殿下を絶対に振り向かせてやる。テオ様じゃなくて、ミレーヌ王女殿下を! 絶対に手に入れるったら手に入れるんだ!
翌日。テオ様は結局ちょっと優しいままだった。触れてきたのはたまたまだったらしく、しばらく俺の観察をすると帰っていった。セイラがお茶の片づけをしているとき、ミレーヌ王女殿下がノックをして部屋に入ってくる。俺はぱあっと顔を明るくさせた。
「ミレーヌ王女殿下……!」
「どうですか? お兄様とはうまくいきましたか?」
「そ、それより! これ、読んでください!」
「交換日記……? ええ、読みますけど……どうかしたの?」
「どうしても、伝えたくて……!」
俺の心臓はばっくばく。パラパラとページをめくって俺の思いをつづった日記を読んだミレーヌ王女殿下が、交換日記を落とした。ひ、引かれた? と思ったら真っ赤になって震えだして、俺に抱き着いてくる。こ、この世の春がきたあ!
「テオお兄様にこんなに思いを抱いていたなんて! わたし、感動してしまいましたわ!」
「……え?」
「もう、恥ずかしがらないで。あなたの熱い思い、確かに受け止めました。交換日記はもうやめにしましょう。お兄様に勘づかれたら大変なことになるわ。これはわたしが預かっておきます。ふふふ、これから毎日楽しみが増えるわ!」
るんるんで去っていくミレーヌ王女殿下に手を伸ばしても、彼女は気付かない。そして部屋の扉が閉まった。一部始終を見ていたセイラは、気まずそうに声をかけてくる。
「その……タケル様」
「……今話しかけないで。さすがの俺でも、折れそう」
ポジティブが売りの俺だけど、クソ上司に一時間半説教されたときくらい落ちこんでる。ここに来て一ヶ月。そう、たった二週間だ。ミレーヌ王女殿下の部屋に行くわけでもなかった俺が振り向いてもらえるはずがなかった。
今は外の空気に触れたい。セイラを連れて、三階内を散歩することにした。どこもかしこもメイドさんや侍女さん、衛兵さんがいるから襲われる心配もないし。どんよりした空気で歩いていると、階段がある方向から歩いてくる人物が見えた。他でもない、テオ様だ。この人のせいで、俺は失恋して……。ああ、やめよう。当たってもなんにもならないし。通り過ぎようとすると、振り返られて声をかけられる。
「どうした、タケル。元気がないようだが」
「テオ様に関係ありませんよ」
「……どうした? 前からつっかかってはきていたが……なにか悪いことでもあったなら聞くぞ」
偽の好意を刻みつけられたテオ様は俺に優しい。そう、俺が優しくした。こんなの、テオ様でもなんでもない。でも、今はその偽りの優しさに触れたかった。
「失恋しちゃって……」
「ああ、ミレーヌか。言っただろう、あれは小悪魔だと。どうせ、俺との同性愛がどうのと言われていたんだろう?」
「それ、知って……」
振り返ると、テオ様が表情が変わらないながらも俺をまっすぐに見ていた。作られた感情、それで、俺を慰める。
「あれのことは気にするな。父上も母上も手を焼いているんだ。婚約者を作る時期だというのに、まったく」
「う……うわあ……」
「ど、どうした? 泣くことはないだろう。とにかくタケルの部屋に戻るぞ」
セイラが背中を撫でてくれながら、テオ様の先導で俺の部屋に逆戻りする。そして部屋についた途端、失恋した悲しみがどっとわいてきて俺はテオ様の前だというのに泣いてしまった。
「ミレーヌめ、タケルが恋に疎そうなのを利用して……。心配するな、相手はいずれ見つかるだろう」
「いつですか!? テオ様が約束してくれるんですか!?」
「お前が引っかかったのがいけないんだろう。しかしまあ、考えてやらんでもない。今は泣け。セイラもついている」
その言葉がなんだかすごくあったかく感じて、俺はわんわん泣いた。そして収まったところでテオ様は帰っていって、これじゃ慰められたみたいじゃんか。実際慰められとるやないかい! ミレーヌ王女殿下の傷、テオ様に癒されちゃったよ……。
ミレーヌ王女殿下は諦めるにしても、これから先、どうすればいいんだろう。まあ、仕事はするけどね。セイラさんと話して女性成分を補おう……。それでも、一応お礼はしなきゃな。なにをすれば喜んでくれるだろう。
そんなふうに思っていた時期が、俺にもありました。なんだか、数日前からテオ王子殿下の様子がおかしい。嫌ってるのは確かなんだけど、体調を気にしてきたりとか、肩についたゴミを取ってくれたりとか、なんとなく優しい。
いやいや待て待て。祈り効いちゃってるじゃん! ミレーヌ王女殿下が、最近テオお兄様が貴方の話をするようになったのよ、なんて交換日記に書いてあったけど、ガチじゃん! 困る、すげー困る。でも仲良くなることがミレーヌ王女殿下との結婚の近道だし、まあいっか!
そのことを交換日記に書いて渡すと、ミレーヌ王女殿下は次の日顔を真っ赤にさせて部屋にやってきた。計画通り。
「ほ、本当に愛し合うようになるなんて……。わたし、夢のようですわ」
「え?」
「同性愛! 禁断の愛! 頭ではいけないとわかっていてももうわたしを止められる者は誰もおりませんわ! さあ、テオお兄様と結婚の契りを……」
いやいや待て待て待て待て! 盛り上がるのはいいけどそっちじゃないだろ!? 俺はミレーヌ王女殿下と結婚したくているのに、テオ王子殿下はノーサンキューなんだけど! いきなり聖女として連れてこられたんだから、恋する人ぐらい自分で選びたい……。
「ま、待ってくださいミレーヌ王女殿下! お、俺はミレーヌ王女殿下が……」
「ん?」
「い、いや、なんでも……」
「ミレーヌがどうしたって?」
げっ、と言わなかっただけ自分を褒めてあげたい。テオ王子殿下は俺たちに歩み寄ってくると、ノートを見つけてひょいと取り上げる。まずい。これには、俺たちの計画のすべてが……!
中身を見ようとしたテオ王子殿下に、俺はウィンクする。嫌がってくれると信じて。するとテオ王子殿下は手を止めた。よ、よし、とりあえず動きを止めることには成功したぞ。ノートから意識を逸らすんだ。
「い、いやー、テオ王子殿下。いいお天気ですねー!」
「……テオでいい」
「え?」
「呼び捨てでいいと言ったんだ」
まずい。やっぱり余計に祈ったぶん効いてるよコレ! クーデレの男とかいりません! ぺっ! ぺっ!
「て、テオ様? そうおっしゃられましても……」
「なんだ、俺では嫌だというのか?」
「そ、そうではないですけど……」
困り果ててミレーヌ王女殿下に助けを求めても、ミレーヌ王女殿下は目の前で繰り広げられる展開にめろめろで目がハートになっている。だめだ、俺を見ているようで見ていない。BLに脳を焼かれてやがる、早すぎたんだ。
こうなったら俺自身が取り返すしかない。俺はにっこり笑ったふりをして、テオ様に近づく。テオ王子の視線がずいぶん背丈に違いのある俺の頭に降りる。
「そのノート、返してほしいなあって思うんですけど。だめですか?」
「……なにを書いているんだ?」
「そりゃ……ミレーヌ王女殿下の秘密とか……。いいんですか? 兄が妹の秘密見ちゃって」
「他人のお前がなぜこんなことをしている」
「それは、仲がいいからです」
胸を張って答える。いいだろー、羨ましいだろー! 肝心のミレーヌ王女殿下はBLにメロメロだけどな……。で、でも! 俺も見てくれてるってことだし!
テオ様はノートと下にいる俺とを見比べて、ノートをあっさり返してくれた。ありがとうございますと言う前に、頭に手が乗せられる。
「……小さいな」
前言撤回。この人は俺の身長を刺激してくる悪い人だ。反論しようと口を開いたところで、頭を撫でられる。
「ちゃんと食べているか? 栄養不足は身長に響くぞ。この城にいる限り、そういった思いはしていないはずなんだが。歳は?」
「に、二十六ですけど」
「俺の四つ上か。俺にこんな世話を焼かせるな。大人なら大人らしくしろ」
な、なにを言いだすんだ……。俺は好き好んでアンタに祈ってたわけじゃないし、それで嫌いって感情が歪んでしまっても、俺の責任じゃ……いや、俺の責任か。ミレーヌ王女殿下に目がくらんだのが運の尽きだ。煮るなり焼くなり、好きにしてくれ。
俺が覚悟を決めると、テオ様は黙って俺を見ていた。そして頭を撫でていた手をどけて、捨て台詞を吐く。
「せいぜい自分を大事にすることだ」
「してますっ!」
「ならいい。ミレーヌ、帰るぞ」
「は、はい! ……タケル、この後も、期待してますからねっ」
ミレーヌ王女殿下は愛らしい笑顔とウィンクだけ残して去ってしまった。え、ご褒美なし? 頬にキスは? かわいいけど、ウィンクだけ? マジで?
しかもテオ様が二十二歳だってのも衝撃だし……。あえて歳は聞いてなかったけど、想像以上に若かった。俺より背が高いくせに。俺より背が高いくせに! むきー!
背が小さいからって振られたことがある俺は顔もよければ背も高いテオ王子に嫉妬する。ミレーヌ王女殿下が振り向いてくれないのも、テオ様のせいだ。そうだ、きっとそうだ。祈りを捧げたからとか、そんなことじゃない。優しくなったのも俺の力のせいだし……あれ、なんかそう思うとちょっと悲しい。嫌われたのが最初あんなに怖かったのに、いざそうじゃなくなってきたら恋しくなるって……俺ってマゾ?
とにかく、この思いを届かなくなる前にミレーヌ王女殿下に伝えないと。インクとやっと書くのに慣れてきた羽ペンを取り出して、必死に勉強したこの世界の言葉を書いていく。記号みたいな感じで、英語に近い感じがある。そんなこの世界の言語を書きながら、なんか俺は逆に奮起していた。
こうなったら、ミレーヌ王女殿下を絶対に振り向かせてやる。テオ様じゃなくて、ミレーヌ王女殿下を! 絶対に手に入れるったら手に入れるんだ!
翌日。テオ様は結局ちょっと優しいままだった。触れてきたのはたまたまだったらしく、しばらく俺の観察をすると帰っていった。セイラがお茶の片づけをしているとき、ミレーヌ王女殿下がノックをして部屋に入ってくる。俺はぱあっと顔を明るくさせた。
「ミレーヌ王女殿下……!」
「どうですか? お兄様とはうまくいきましたか?」
「そ、それより! これ、読んでください!」
「交換日記……? ええ、読みますけど……どうかしたの?」
「どうしても、伝えたくて……!」
俺の心臓はばっくばく。パラパラとページをめくって俺の思いをつづった日記を読んだミレーヌ王女殿下が、交換日記を落とした。ひ、引かれた? と思ったら真っ赤になって震えだして、俺に抱き着いてくる。こ、この世の春がきたあ!
「テオお兄様にこんなに思いを抱いていたなんて! わたし、感動してしまいましたわ!」
「……え?」
「もう、恥ずかしがらないで。あなたの熱い思い、確かに受け止めました。交換日記はもうやめにしましょう。お兄様に勘づかれたら大変なことになるわ。これはわたしが預かっておきます。ふふふ、これから毎日楽しみが増えるわ!」
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「その……タケル様」
「……今話しかけないで。さすがの俺でも、折れそう」
ポジティブが売りの俺だけど、クソ上司に一時間半説教されたときくらい落ちこんでる。ここに来て一ヶ月。そう、たった二週間だ。ミレーヌ王女殿下の部屋に行くわけでもなかった俺が振り向いてもらえるはずがなかった。
今は外の空気に触れたい。セイラを連れて、三階内を散歩することにした。どこもかしこもメイドさんや侍女さん、衛兵さんがいるから襲われる心配もないし。どんよりした空気で歩いていると、階段がある方向から歩いてくる人物が見えた。他でもない、テオ様だ。この人のせいで、俺は失恋して……。ああ、やめよう。当たってもなんにもならないし。通り過ぎようとすると、振り返られて声をかけられる。
「どうした、タケル。元気がないようだが」
「テオ様に関係ありませんよ」
「……どうした? 前からつっかかってはきていたが……なにか悪いことでもあったなら聞くぞ」
偽の好意を刻みつけられたテオ様は俺に優しい。そう、俺が優しくした。こんなの、テオ様でもなんでもない。でも、今はその偽りの優しさに触れたかった。
「失恋しちゃって……」
「ああ、ミレーヌか。言っただろう、あれは小悪魔だと。どうせ、俺との同性愛がどうのと言われていたんだろう?」
「それ、知って……」
振り返ると、テオ様が表情が変わらないながらも俺をまっすぐに見ていた。作られた感情、それで、俺を慰める。
「あれのことは気にするな。父上も母上も手を焼いているんだ。婚約者を作る時期だというのに、まったく」
「う……うわあ……」
「ど、どうした? 泣くことはないだろう。とにかくタケルの部屋に戻るぞ」
セイラが背中を撫でてくれながら、テオ様の先導で俺の部屋に逆戻りする。そして部屋についた途端、失恋した悲しみがどっとわいてきて俺はテオ様の前だというのに泣いてしまった。
「ミレーヌめ、タケルが恋に疎そうなのを利用して……。心配するな、相手はいずれ見つかるだろう」
「いつですか!? テオ様が約束してくれるんですか!?」
「お前が引っかかったのがいけないんだろう。しかしまあ、考えてやらんでもない。今は泣け。セイラもついている」
その言葉がなんだかすごくあったかく感じて、俺はわんわん泣いた。そして収まったところでテオ様は帰っていって、これじゃ慰められたみたいじゃんか。実際慰められとるやないかい! ミレーヌ王女殿下の傷、テオ様に癒されちゃったよ……。
ミレーヌ王女殿下は諦めるにしても、これから先、どうすればいいんだろう。まあ、仕事はするけどね。セイラさんと話して女性成分を補おう……。それでも、一応お礼はしなきゃな。なにをすれば喜んでくれるだろう。
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