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第4章:焔を持たぬ子

第15話:焔を持たぬ勇気

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その日の夕暮れ。

村を囲む森の奥から、低い唸り声が響いた。
獣の群れ――飢えに駆られ、畑を荒らしに出てきたのだ。

「く、来たぞ! またあの獣どもだ!」

村人たちが怯えた声を上げ、家の中へと逃げ込んでいく。
リオはすぐに駆け出した。

掌に炎を宿し、森の入り口で立ちはだかる。
ミナの風が草を揺らし、リサが背後を固める。

だが、群れの数は予想以上に多かった。
鋭い牙をむき出しにし、獣たちは一斉に飛びかかってくる。

「くっ――!」

炎で牽制し、風で弾き、灰の記憶で敵を惑わせる。
三人は必死に食い止めるが、それでも数の圧力がじわじわと迫ってきた。

そのとき。

「やめろおおっ!」

叫び声とともに、ひとりの小さな影が獣の前に飛び出した。
――カイだった。

「カイ! 下がれ!」

リオが叫ぶ。
だが、カイは後退しなかった。

彼の手には、昼間の稽古で握っていた小枝。
それを必死に構え、獣の前に立ちふさがる。

「僕は……逃げない! 母さんを、村を、守りたいんだ!」

獣が唸り声を上げ、飛びかかる。
その瞬間――リオの炎が走り、ミナの風が軌道を逸らし、リサの灰が視界を覆った。

カイは倒れ込んだが、枝を離さなかった。
その姿に、リオの胸が熱くなる。

「……見たか、アウラ」

『うん。彼の中に“火”は確かにある』

リオは立ち上がり、炎を大きく広げた。
仲間と共に反撃し、ついに獣たちを森へと追い払う。

静けさが戻った畑に、リオは膝をつき、カイの肩を抱いた。

「よくやった、カイ。君は……“焔を持たぬ子”じゃない」

カイは荒い息を吐きながらも、笑った。

「……僕、守れた……?」

「ああ。勇気で、みんなを守ったんだ」

ミナが優しく微笑み、リサもそっと頷いた。
村人たちも戸口から顔を出し、その光景を呆然と見つめていた。

――焔を持たずとも、勇気は人を照らす。

その夜から、カイは“外れ者”ではなく、胸を張れるひとりの村の子となった。

そして、リオにとっては――初めての弟子であり、師としての第一歩を踏み出させてくれた存在となった。
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