FLARE

GenerativeWorks

文字の大きさ
17 / 69
第5章:水底に響く歌

第17話:水底の守り人

しおりを挟む
水面を裂いて現れた赤黒い炎の影――イフリート。
その咆哮が湖全体を震わせ、空気までも焦がす。

「……っ!」

リオは掌に焔を宿し、仲間を庇うように前に立った。
だが次の瞬間、別の光が水底から立ち上がった。

――蒼。

冷たいはずの水を透き通るように、澄んだ青白い輝き。
それは炎の影を押し返すように湖面を覆い、やがて人の形を取った。

『……止まれ、イフリート』

響いた声は、湖そのものが語っているかのように深く広がった。
水の幕の中に立っていたのは、蒼い衣をまとう女性の姿。

長い髪が水流のように揺れ、瞳は泉の底の光を宿している。

「だ、誰……?」

ミナが声を震わせる。

『わたしはリュシア。水底を守るもの。この都が沈んだ日から、イフリートの封印を見届けてきた』

リサが息を呑む。

「じゃあ、この水に沈んだ街は……」

『炎に焼かれたのだ。イフリートが暴れ、都を灰に変えた。人々は命を賭して水の精霊と契約し、この街ごと湖に沈めた――それが、この“沈む都”の真実』

リオは拳を握った。
イフリート。

炎の異形。
自分と同じ「炎」を持ちながら、暴走の果てに街を滅ぼした存在。

「じゃあ……僕は、どうすればいい?」

リオの問いに、リュシアは真っ直ぐに彼を見つめる。
その瞳は湖面のように揺らがず、ただ冷たく静かだった。

『――封印を強めよ。お前の炎で。そうすれば再びイフリートは眠り、この都は守られる』

だが、イフリートの咆哮がそれを否定するかのように響いた。
赤黒い炎が水面を焦がし、歌声が再び仲間たちの心を蝕んでいく。

「……う、うう……」

ミナが頭を押さえ、リサも膝をついた。
歌声は恐怖と絶望を増幅させ、心を飲み込もうとしている。

ただ一人、リオの炎だけが抵抗していた。
胸の奥でアウラが囁く。

『リオ、選ばなければならない。炎を封じるのか、それとも――向き合うのか』

リオは仲間を振り返った。

震えるミナ、涙をこぼすリサ、必死に立ち上がろうとするカイ。
彼らの姿が、リオの胸を焼く。

「……僕は――」

炎と水の狭間で、リオの選択が迫られていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

処理中です...