エロビッチ淫魔と社畜

つむぎみか

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出会い篇-2

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「だぁから、さっきから言ってるじゃん! 俺は淫魔なの! 淫魔のリリアーシュちゃんなの!」

「はいはいはい。変態淫魔コスプレイヤーのリリアーシュちゃん。分かったからもう帰ってくんねぇかな? 俺は明日も仕事なの」


 もー!コスプレイヤーって何だよ?!と地団駄を踏む青年を見て、太朗は何回目になるかわからない溜息を吐く。

「ほんと、どんな手品で来たのか知らないけど、いたいけなオッサンを揶揄わないで欲しいね」
「揶揄ってなんていないってば! ちゃんと聞けよっ」



 宙に浮いているように見えたその青年が、5階から落ちてしまったら溜まったもんじゃない。そんな現場を目の前で見てしまったら一生忘れることなんて出来ないだろう。
 サーーっと頭から血の気が引き、気付いた時にはその細い腕を掴んで自身の腕の中へと引き込んでいた。


「ぁんッ♡ 思ったより良い躰してるじゃーん♡ 超ラッキー」


 命の危険と隣り合わせだったとは思えない程に、自らを抱き込んだ胸板を、つつつ、と意味深に指先で撫でながら感触を楽しむその様子に、コイツは頭のねじの飛んだヤバいやつなのでは?と違う意味で青くなる。
 実際にリリアーシュは命の危険には隣り合っていなかったし、事実頭のねじが緩んだ青年ではあるのだが。

 太朗が自身のテリトリーに自ら導いてしまったが故に、リリアーシュは強気だった。初めて触れた人間の雄の身体に、本能が「精気が欲しい」と全力で求めていたのだ。

 しかし、太朗は頑なで、いくらリリアーシュが懇切丁寧に説明をしたところで、頭ごなしに否定し一切受け入れようとしてくれない。


(もぉ~~~~ッ! こうなったら仕方がない)


 もう後先考えていられない。
 リリアーシュは何がなんでもこの男の精気を吸わなければいけないのだから。

 ……勿論真実はそんな事なく、別に他の人間でも一切構わないのだが、何故だかリリアーシュはこの男が気に入ってしまったのだから仕方がないのだ。


「お兄さん……お兄さんが悪いんだよ」

「は? 何が………」


 そう言われて見遣ったリリアーシュの瞳が、元の紫から金色へと変化していく様を目の当たりにする。その瞳を見詰めるうちに頭の中がぼんやりとし、キィン……と耳鳴りがしたような気がした。


「お前……それ………」
「お兄さん、お部屋に入れて欲しいな♡」
「………。わかった………」


 今まであんなに拒んでいたのが嘘かのように、太朗はすんなりとベランダの窓を開けて、リリアーシュを部屋に招いた。

(わぁい♡ これで魔力はほぼゼロだけど、中にさえ入れれば後はこちらのもんよっ)

 残り僅かの魔力を掻き集め「ただ家の中入れるのを拒否しない」という事だけを太朗に命令する。
 無事成功した作戦に喜び躍る。
 どういう仕組みなのか、大きく広げていた翼を何処かへと収め、ぴょんと部屋に飛び込むとその中を見回す。

「なんっていうか、何もない部屋だねー」
「うるせぇな、って俺はなんでこんな奴を家に入れてんだ?」
「えへ♡ そんなのどうでもいいじゃん」

 それよりも、とリリアーシュは太朗の首に細腕を回しその身体を抱き寄せる。


「こんなに魅力的な俺が誘ってるのに、キス、してくれないの?」
「………はぁ、悪い夢かよ。これは………」
「そう、悪い夢♡ だから何もかも忘れて、気持ちぃことだけ、シよ?」


 リリアーシュは淫魔らしく、自身の持つ魅力を最大限に活かして男を誘う。そして、その人智を超えた最上級の誘いを断れる程に強靭な精神を持つ人間はその場に居なかった。


「っ、くそ……」

「んっ……ふふ、ふぁ…っん……」


 くちゅり、


 待ちに待った口付けの時間が始まる。
 焦らされて、我慢して、ようやく手に入れた甘美な時間は、耐え難いほどに快感を誘う。


(あぁっ…流れ込む精気に溶けちゃいそう……)




 始めは優しく、ぬるま湯のように心地の良いキスだった。揺蕩うように快楽に浸かり、ただただその気持ち良さに酔いしれる。
 しかし与えられる口付けにより、枯渇していた魔力が少しずつ満たされていったリリアーシュから漏れ出る淫気に当てられ始めた太朗は、徐々にその行為を深く、激しいものへと変化させていく。

 喉の奥まで犯されるように、口の中を分厚い舌が蹂躙する。唇の端からはもはや飲み込み切れない唾液が糸を引いて滾れ落ち、無理やり上を向かせるように押さえられた、細い顎を掴む指先にすら快感を拾う。

「んぁ…ん、く……はぁ、は……ッ」
「おい。息上がってんぞ、淫魔さんよ」

 ついでのように腰を力強く引き寄せられ、兆し始めた小さなペニスが男の硬い太ももに押し付けられる。

 リリアーシュは、分かりやすい刺激にびくりと大きく身体を震わせて、熱いため息を吐き出した。


「ん……ら、らって…俺、初めてだし………」


 はぁはぁと肩で息をしながらそう告げるリリアーシュに、太朗は思わず目を瞠る。

「はぁ?! 初めてだと?」
「そうだけど? 俺の初めてなんて超貴重。良かったね、お兄さん♡」

 初めてのくせにあんな誘い方してきたのかよ……と、遠い目をし出した太朗を尻目にリリアーシュは妙にすっきりした顔をして腰に回された腕に手を掛けた。


「リリアーシュ?」

「お兄さんありがと♡ もうね、本当に幸せだった!」
「んん?」
「人間の精気がこんなに濃厚で美味しいだなんて… 俺、こんなに満たされた事なんてないよ」
「…………」
「超超超、大満足! 感謝してるよぉ~♡」


「おい。何もう終わりみたいなこと言ってんだ」
「え、みたいなんじゃなくて終わりだけど?」
「あ"ぁ?!」


 なに言ってるの?と言わんばかりのきょとん顔をしたリリアーシュに、地の底から出た様な低い声が太朗の口から飛び出したのは致し方の無い事だろう。


「え、だって俺まだ幼魔だし。そもそもの魔力のキャパが小さいから、キスだけで充分お腹いっぱいになるんだもん」

 当たり前でしょと言うように笑いながら、帰り支度をするかの様に再び翼を拡げだす。

「じゃあお兄さん、またいつかッ~~~」

 会えたらいいねと続ける予定だった言葉は太朗の口の中へと消えた。

「………は、お前ふざけんなよ。俺をここまでヤル気にさせといて。こんな一瞬のキスだけで終わりとか、ふざけてんのかよ」
「全然ふざけてないし! そもそもお兄さん乗り気じゃなかったくせに、急にどうしたんだよ」
「男はなぁ! 一度スイッチ入ったら止まれねぇんだよッ」
「んんっ! ん~~~~……ふ、ぅん…ん」


「だから、な?」
「…っぁ……」


 するりと晒された喉元を撫ぜる。



「良い子だからこの翼しまえよ?」




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