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それは芽でも蕾でもなく花開いている

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 大人の背の、実に何倍もの高さに達する巨大な書棚には、上下左右に移動できる搭乗かごがくっついている。かごの隅には光を放つランタンが置かれていて、そのそばでうごめく影から、かごの中にひとがいることがわかる。ランタンの光を受けて浮かび上がったひとの形は、小さい。それを見た、あまり書棚に出入りしない別部署の職員は、文書局には座敷童がいるとか、ブラウニーがいるとか、好き勝手な噂を口にする。

 もちろんその人影は座敷童でもブラウニーでもなく、れっきとした文書局の職員である。けれどもその見た目は、どう見たってミドルスクールに通っている女の子だったので、そのような噂を立てられるのも無理からぬことであった。

 そんな噂の主である彼女の名前はシーヤと言う。恐らくシーヤは、すべての部署の職員たちの中で、もっとも背が低い。大きな瞳にまろい頬、華奢で小柄な肩のまわり……。シーヤの実年齢はとっくに成人に達していたが、その見た目は幼いままだった。シーヤはそういった種族なのだ。幼形のまま成熟するから、背も低くて体のラインも平坦で、顔立ちもあどけないのである。


 昼休憩の時間を告げる鐘が鳴ると、シーヤが働く文書局のオフィスルームからもぞろぞろとひとが出て行く。扉からひとが出て行く流れに逆らって、文書局に訪れる影がひとつ。周囲の職員たちよりも、頭ひとつぶんは高い背丈だから、ひとの流れの中にあっても顔がよく見える。

「シーヤ!」

 オフィスルームにシーヤの姿を見つけた背の高い男性――ササガは、途端に顔をほころばせてシーヤのもとへと向かう。その手には、ひとりぶんにしては随分と大きなランチボックスがぶらさがっている。

 ササガは、シーヤが働く文書局の一階下にオフィスルームがある事務局の職員である。しかしこうして勤務日が重なった日の昼休憩の時間には、必ずシーヤを迎えにくるのが恒例だった。ササガが持ってくるランチボックスが大きいのは、その中にシーヤのぶんの昼食も収められているからだった。

 シーヤが席から立ち上がっても、ササガのほうがもちろんずっと背が高くて、お互いに見つめ合うと首を痛めそうになる。シーヤの腕二本を合わせても、ササガの腿のほうが太いくらいの体格差がふたりのあいだにはあった。さながら巨人と小人といった感じである。

 ササガに連れられて、オフィスルームを出て行くシーヤ。ふたりの背中に注がれる視線はあたたかい。生真面目なシーヤと、そんなシーヤにササガが尽くしているという構図は、文書局内では知れ渡っていることだ。歳の差があることもあって、ふたりは仲のよい親子か兄妹のようなものという、微笑ましい目で見られているのだった。

 シーヤもササガも、自分たちの関係性については進んで吹聴したことはなかった。それでもふたりがお互いに想い合っていることは明らかで、そのどろどろとした情熱からはほど遠い、穏やかな関係性は一種羨望の的であった。ふたりが恋人同士であるかどうかはたいして重要ではなく、ただ互いが互いを大切にしていることがにじみ出るようなやり取りに、一部の職員は癒されているのであった。

 シーヤを見守るササガの目の穏やかなこと。背の高いササガを見上げるシーヤの視線の健気なこと。そんなふたりは――間違いなく恋人同士だった。……けれども、そのようにハッキリと言葉で定義できる関係であるふたりのあいだは、未だまったく清いものであった。


 ……シーヤは、今のままではダメだと思った。そう思ったのはお風呂から上がったシーヤの、濡れた髪に香りのよいヘアオイルをササガが塗り込んでいるときのことだった。ササガのそれは、まったく庇護すべき子供に対するような態度だと思ったわけである。

 けれどもここで「自分でやる」だなんて言い出せば、ササガが悲しそうな顔をすることは見えていて、シーヤは黙り込むほかなかった。けれども内心では、「今のままではダメだ」と思ったのである。それは、お菓子をたらふく食べてからダイエットを決意することと似ていた。

 ササガはシーヤの恋人だったが、その態度はシーヤの職場の同僚たちが思うように、親が子にするような、兄が妹にするような、そういった穏やかな慈愛に満ちたものである。心臓を焦がすような情熱を、シーヤがササガから感じることはない。

 恋の形はひとそれぞれ。そうわかってはいても、シーヤはササガのそんな穏やかな態度に不満……というよりは、不安を覚えてしまう。ササガがせっせと手ずからお菓子を作ってくれるたびに、「わーい!」と無邪気に喜んでたいらげてしまう自分にも問題があるのかもしれないとシーヤは思い悩む。自分の見た目も中身も子供っぽいから、ササガもそれ相応の、そういう態度を取るのかもしれない、と思った。

 ササガが持つドライヤーの騒々しい音を聞きながら、シーヤは悩む。濡れた髪を触らせて、乾かさせる。しかしその行為に色っぽさは皆無で、やはりどこか親が子にするような、兄が妹にするような、そういう雰囲気を感じ取ってしまうのだ。

 そして実際に、シーヤとササガのあいだは清いものだった。性的な接触はキスまで。しかも舌を絡ませるようなキスはしたことがない。もちろんそれから先――セックスするどころか、そのような空気になったことすら、ない。

 恋の形はひとそれぞれ。ササガがシーヤとまったくそういうことをする気になれなくても、別れたいだとか、別れるという選択肢はシーヤの中にはなかった。――しかしシーヤは恋人であるササガとセックスしたくて悶々としている。シーヤは見た目こそ子供のままだったが、性的には完全に成熟した成人である。性欲も人並みにあるのだった。

「ねえササガ……今日はササガといっしょに寝たい。……ほら、今日はちょっと寒いから。わたしの部屋、ヒーターもうしまっちゃったし」

 シーヤがそうねだると、ササガは嫌な顔ひとつせずに「いいよ」と言ってくれる。そう言ってくれることは、わかりきっていたことだったが、シーヤはササガが断らなかったことでほっと一度、胸をなでおろした。実際に今夜は寒いと予報でも言われていたし、ここ数日の温暖な気温からシーヤがさっさとヒーターをしまってしまったことも、事実だった。

 しかしそれを口にしたシーヤには、一〇〇パーセントの下心しかなかった。

「もう、そんな風に無防備に転がって……」

 ササガの部屋にあるベッドへ、早速寝転がってみたシーヤを見下ろし、部屋の主たる恋人はそんな独りごとにも聞こえる言葉を口にする。そこには「しょうがないな」という優しい呆れと、少しの動揺が同居しているようにシーヤには感じられた。

「……わざとだよ」

 シーヤはしどけなさを意識しながら、ベッドに体を預けたままササガを見上げた。ササガと視線が合えば、彼は目元をゆるめて微笑んでくれる。シーヤはそんなササガの表情に喜びを覚えると同時に、でも自分が今欲しいのはそんな穏やかさではないのだと、わがままにも強く思った。

「そんな子には……こうだ!」

 やにわにササガが、シーヤが寝転がっているベッドに膝をつく。体格のよい成人男性の加重によって、ベッドのマットレスが深く沈みこむ。そのまま、ササガはシーヤの上に覆いかぶさると、すぐにその小さな体を抱き寄せた。自然、シーヤは期待に胸を高鳴らせる。

 けれどもササガの先の言葉に、どこか軽い雰囲気があった通り、ササガがシーヤにしたのは、その背骨をなぞるように背中を指で撫でるという、シーヤが望んだものからはほど遠い行為だった。

 シーヤの口から、反射的に笑うような声が出る。それに釣られて、ササガが笑ったのがわかった。

 しばらく、ササガのベッドの上でふたりはじゃれ合う。ぎゅっと隙間もないほどに抱き合って、シーヤがササガの肩口に額をすりつければ、ササガは優しくシーヤの、まだ少しだけしっとりとした髪を撫でる――。

 ……やがて、ふたりの視線が交わった。バチッと音でもしそうなほどに、しっかりと視線がかち合って――シーヤは、ササガの唇にそのまま突撃するようにしてキスをした。シーヤのしっかりと見開いた視界の端で、ササガが目をまん丸にしているのがなんとなくわかった。

 シーヤは小さな体ぜんたいを、ササガの体に押しつけるようにしてすり寄った。それが、今のシーヤができる精一杯の「誘惑」だった。そしてダメ押しとばかりに、シーヤはそっとササガの下ばえのあたりを、スウェットの上から撫でてみた。シーヤの心臓は、破裂しそうなほどに脈打っている。

 シーヤのそんな、いつになく大胆な行いに、ササガが息を吞むのがわかった。ササガが動揺しているのが、シーヤには手に取るようにわかる。

「シーヤ……こんなことして……」

 ササガの瞳がわずかに潤んでいる。その唇から漏れる吐息も、どこか熱い。ササガの興奮を感じ取って、シーヤもまた体に切なく甘いしびれが走るのがわかった。

「……ぜんぶ、わかってるよ? だってわたし子供じゃないし……」
「シーヤ。それは、私もわかっているけれど。君の体はとても小さいから」
「見た目は子供みたいでも……わたし、ちゃんと大人だから。だ、だからちゃんとササガのことだって、受け止められる」

 なおササガのためらいを感じ取ったシーヤは、ササガの耳元に唇を寄せた。

「ササガ……欲しいよ……。……ササガの、わたしに入れて欲しい……」

 勇気を振り絞ったシーヤの健気な懇願に、堅牢だったササガの理性の城塞も、さすがに崩れ落ちたらしい。やおら、密着していたシーヤから体を離したササガは、かすかに朱色に染まった頬を持つ顔をシーヤに向けたまま、着ていたスウェットを脱ぎ捨てて、その眼前に上裸を晒した。


 *


 じっくりと唇同士を擦り合わせる、こちらを安心させるようなキスのあと、シーヤはすっかりササガの手で寝間着を脱がされた。体が興奮に火照っているからなのか、部屋内の気温の低さをことさら感じるような気がしたものの、身震いするほどではなかった。

 ササガのベッドに寝そべったシーヤの両膝の内側に、ササガの指先が滑る。潤んだササガの瞳に見つめられたまま、「……いい?」と問いかけられたシーヤに否やはなかった。それでも気恥ずかしさゆえに、ためらいがちに首肯することになる。それを見届けたササガは、シーヤの小さな膝をつかんで、緩慢に両脚を開かせる。

 隠すものもなく、ササガの眼前に晒される、シーヤの秘所。シーヤ自身、すでにそこが愛液で潤んでいることを自覚していて、だからなおさら、ササガの目の前に差し出すような状況に、とめどない羞恥心が湧き上がる。これからする行為に対する興奮と、恥ずかしさから、シーヤは自分の頬がかっかと熱くなっていくのがわかった。

 自然と息を止めたり、浅くなっていた呼吸に気づいて、シーヤは深く息を吸い込んで、吐いてみる。体から、少しだけ力が抜けた。

「……触るね? 嫌だったり、痛かったりしたら言ってね?」

 シーヤが少しだけ落ち着きを取り戻したのを見ていたのか、ササガは次の段階へ進もうとする。「したい」と誘ったのはシーヤからであったものの、今では少々恥ずかしさのほうが上回っていた。普段、絶対に他人に見せない、隠している箇所を、自らの意思でさらけ出している。それが奇妙なほどに恥ずかしかった。

 妙な気まずさゆえにササガからわずかに視線を外したシーヤは、濡れそぼった秘所に吐息がかかる感覚で、あわてて自らの下半身へと目を向ける。ササガが「触る」と言ったから、てっきり指で秘裂を愛撫されるのだと思っていた。しかしつい先ほど、シーヤと口づけを交わしたササガの唇は、シーヤの陰核へと寄せられたのだ。

 ちゅ、とまだ柔らかい陰核へとササガの唇が当たる。すると次にはざらりとした、肉厚の舌が皮をかき分けるような動きをして、シーヤの陰核を撫でた。今までに感じたことのない感覚に、シーヤは一瞬息を詰める。しかし、戸惑いはあれども嫌悪や苦痛の感情はなく、次第にとろとろと、ササガから与えられる快楽に脳が中心部からとろけていくようだった。

 じゅっ、とササガが唇全体でシーヤの陰核を吸い上げる。シーヤは白い太ももの内側を震わせて、まだ男を知らない蜜口からどろりとした愛液をしたたらせる。びくり、びくりと不随意に下半身が動いてしまうのが、止められなかった。気がつけばシーヤの両手指はシーツをしっかりとつかんでいて、その口からは自分でも聞いたことのない嬌声が漏れ出て止まらなかった。

 視界がかすかに潤んで、胸にあるふたつの突起は触られてもいないのに、痛いほど勃起している。ササガの唇で快楽を与えられるたびに、はくはく、と蜜口はわなないて、まだ一度として触れられていないにもかかわらず、すっかり濡れそぼっているのが、ハッキリとわかった。

 ササガの唾液にまみれたシーヤの陰核は、硬くなって、朱色を強めている。そこにふーっとササガがいたずらな吐息を吹きかける。たったそれだけでも、シーヤの体は顕著な反応を見せた。太ももの内側を震わせて、もうずっと半開きの唇からは情けなく甘い声が出る。

「シーヤ……」

 ササガの熱心な愛撫に、何度か甘イキを経験して既に息も絶え絶えなシーヤ。ササガはシーヤの股の間から顔を上げ、今度はシーヤに覆いかぶさるような体勢になる。そんなシーヤを見下ろすササガの目には、いつもの凪いだ穏やかな海のような情景はない。シーヤはそれを見て、腰から背筋にかけて甘いしびれが走るのを感じた。

 ――求めている。ササガは、シーヤにねだられたから仕方なく付き合ってあげているのではないのだ。そのことにシーヤは安堵を覚えると同時に、どうしようもなく興奮をかき立てられるのを感じた。下腹部がきゅんとわななき、子宮へと繋がる隧道が中を締めつけるような動きをしたのが、わかった。

「大丈夫?」
「ん……だいじょうぶ」

 シーヤは荒く熱い息を吐きながら、なんとか答える。それにササガは目元を少しだけゆるめたのがわかった。

 しかしそんなササガの下半身では、体格に見合ったものがしっかりとそそり立っている。常夜灯の明かりを受けて、つるりとした先端がカウパーで濡れているのは、シーヤにもわかった。

「今から、ここに入れたいんだけど……」

 ササガのごつごつとした指の、その先がシーヤのすっかり濡れそぼった蜜口を探るように愛撫する。シーヤはたまらずまた甘い声を出す。同時に、蜜口からまたどろりと愛液がこぼれ出るのがわかった。

「大丈夫かな……」

 シーヤとササガの体格差は、並べるまでもなく決定的だ。シーヤの体は、ササガに覆いかぶさればすっかり隠されてしまうくらいに小さく、股の間にあるその出入り口も、ササガからすると不安を抱くくらいに狭いのだろう。くちゅくちゅ、とシーヤの蜜口を拡げるようにして、ササガが指先を動かす。確認のための動きだと理解しながらも、シーヤの口からは媚びるような甘い声が漏れ出た。

「だ、だいじょうぶ。赤ちゃんが出てくるところなんだよ? ササガのも……ちゃんと受け止められる」
「それは、そうなんだけど。もう少し時間をかけて慣らしてからでも――」
「や、やだ」
「シーヤ?」

 シーヤの頭の中はササガとすることでいっぱいになっていた。体だって、すでに出来上がっている状態だ。シーヤの蜜口はササガを求めてびくりびくりとわなないているのに――。

「ササガぁ……」

 シーヤはササガの名前を呼んだ。そしてシーヤの体の脇に手を置いて覆いかぶさっているササガの、太い腕にそっと触れる。ササガの立派な喉仏が、上下したのがわかった。

「おねがい……ササガがほしい……」

 途端に、ふたりの体のあいだにあった、湿っぽく熱い空気が圧縮されるような錯覚があった。ササガの体がぐっとシーヤに近づいたのだ。それに伴って、ササガの完全に勃起したものが、シーヤの下腹部に当たった。それはごつごつとしていて硬く、ぬめりけを帯びていて、そして熱かった。シーヤはそのことにどきまぎするよりも先に、激しく脈打つ心臓の音が聞こえてしまうのではないかと、気恥ずかしくなった。

「……優しくする」

 「痛くしない」とは言わなかったのは、ササガの誠意の表れだろう。シーヤはそれにうなずきで答える。

 ササガの指が、再びシーヤの蜜口をまさぐる。ササガのごつごつとした、筋張った指がシーヤの中へと潜り込む。根元まで入れば、今度はシーヤの隧道を拡げるような動きになった。自分の指すら入れたことのない箇所をじっくりと愛撫され、シーヤはまた息も絶え絶えに嬌声を上げる。びくびくと太ももの内側が、腰が震えるのが止められなかった。

 蜜口を責め立てられるのと同時に、ササガの唇がシーヤの胸の突起を含んだ。あたたかい肉厚の舌先が、柔らかい突起の周囲の皮膚をなぞる。そうしてにわかに硬く立ち上がった突起の先端を、ササガの舌が撫でる。唾液が混ざる、ぴちゃぴちゃという音がして、シーヤの顔は快楽と気恥ずかしさで真っ赤だった。

 気がつけばシーヤの蜜口は、ササガの節くれだった男の指を、三本も飲み込んでいた。

 ササガの顔が、シーヤの胸から離れる。ほとんど同時にシーヤの蜜口からも、ササガの指が引き抜かれた。ササガから与えられる快楽が途切れて、シーヤは思わず物欲しそうな目を恋人に向けてしまう。

「私も、もう限界だ」

 ササガの頬もほのかに赤く染まっているのが、シーヤの目にもわかった。

「……入れるよ」
「ん……」

 ササガが避妊具をつけるわずかな時間さえ、シーヤには長く感じられた。しかしそうやって、待ち望んだササガのものを、ようやくシーヤは迎え入れることになる。ササガの亀頭が、シーヤの蜜口に潜り込む。出張ったカリが、ぐっとシーヤの隧道を押し拡げて行く。淫らな水音を立てながら、ササガのものはシーヤの子宮へと目がけて前進する。

 なにかを引き裂かれるような、引きちぎられるような感覚と、わずかな痛みにシーヤは思わず息を詰めた。しかしその痛みは、シーヤにとっては幸福なものだった。

「シーヤ? 大丈夫?」
「うん……だいじょうぶ、だから」

 無理矢理にではなく、心からの微笑み。シーヤのそんな表情を見て、ササガが明らかに強張っていた顔をゆるめて、安堵した様子を見せる。

 ササガのものがゆっくりと、シーヤの中へと収められる。臓器への圧迫感、圧倒的な異物感。しかし、それを上回ったのは、充足感だった。

 シーヤが軽く腰を動かすと、それを合図と見たのか、ササガがシーヤに覆いかぶさるようにして抱きすくめて、ピストン運動を開始する。シーヤの臀部の肉に、ササガの下ばえや下腹部の肉が当たる。シーヤの肉襞はササガのものを抱きしめて、熱くとろとろの愛液を絶えず分泌した。ササガの腰の動きに合わせ、シーヤの蜜口からは淫音が立つ。

 じっとりとした、湿度のある熱い空気が、ふたりの周囲に立つのがわかる。限界まで重ねられた肌と肌が、すり合う感覚は、心地よさと同時にどうしようもなく快楽を喚起する。

 ササガに抱きしめられた状態のシーヤは、ほとんど身動きが取れない状態だ。腰を抱き込まれて、ぐりぐりと最奥に亀頭を押しつけられる。そんな状態のまま、逃げ場もなく激しく腰を打ちつけられて、嬌声を上げ続けることしかできない。脳が焼かれてしまいそうな、快楽。しかし自然と腰が逃げを打っても行き場がないどころか、ササガの手に阻まれて、ぐいと元の位置に戻されてしまう。

「好き、好きだシーヤ。好きだ……」

 ぴったりと重なり合った体。シーヤは耳元で、うわごとのように繰り返されるササガの低い声を聞かされる。それは脳髄をしびれさせるような甘い響きを伴っていて、加えて自分の下半身から発せられる淫らな水音もあり、シーヤはどうにかなってしまいそうだった。

「シーヤ、シーヤ……。シーヤも『好き』って言って……?」

 ササガにねだられたシーヤは、喘ぎ声の合間に、なんとか「ササガ、好き」と言うことに成功する。しかしそうやって言葉として発した途端、シーヤの体は正直な反応を見せる。自分の中に深々と突き入れられたササガのものを、きゅんと締めつけたのだ。

 しかしそれに気恥ずかしさを感じる暇もなく、ササガの動きに翻弄され、シーヤは終わりの見えない快楽の渦へと突き落とされる。


 そんなふたりの関係性は親子でもきょうだいでもなく、間違いなく恋人同士で――。それを実感しながら、シーヤは心地のよい絶頂に身を任せるのだった。
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