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中編
和巳と英司の性の目覚めは早かったように思う。それはひとえに近所に住んでいた「おにいさん」のせいであった。
「おにいさん」は今思えば当時は大学生くらいであっただろう。しかし大学へ通う様子も、働いている気配もなかった。ただ当時のふたりはそれを問題視したりはしなかった。むろん、「おにいさん」がべたべたと体に触れて来ても、危機感を抱くことはなかった。
「おにいさん」の部屋にはたくさんのビデオがあった。それらの多くは映画とかアニメとかの他愛のないものではあったが、うちの一握りはいわゆるポルノであり、さらに言えば明らかに違法な類いの映像であった。
「おにいさん」はそれを和巳と英司に見せてしきりに感想を聞きたがったが、和巳にはなんと言えば良いのかわからなかった。わかったのはテレビの中で和巳よりいくらか年上の男の子が、すすり泣くような声を上げて男の上に乗って腰を振っていること。そして「おにいさん」が「なにか」を和巳たちに期待していることだけだった。
いっぱいに広がった男の子の排泄器官を、グロテスクな男性器が出入りする様は、性行為という概念すら知らない和巳の脳でも、本能的に「いけないものを観ている」ことを察することは出来た。それに加えて男の子が泣き声に似た高い声を上げるのがなんだか恐ろしく、結局和巳がぐずったので観賞会は途中でお開きになった。
和巳はビデオの内容ばかりが頭に残って、そのとき英司がどういう様子であったかは記憶していない。
「おにいさん」が和巳たちの同級生に「いたずら」をして捕まったのはそれからすぐあとのことであった。
「あんたたち、変なことされなかった?」
馬鹿正直に「おにいさん」を知っていると口を滑らせた和巳を捕まえて、母は怖い顔をしてそう問うた。
「別に。ちょっと話したことがあるだけだよ」
和巳がなんと答えようか迷っているうちに、隣にいた英司がこともなげに嘘をつく。
「そうだよね、和巳」
「……うん」
英司の尻馬に乗って、結局和巳も嘘をついた。母親が「知らない人とは話さない」と口を酸っぱくして注意して台所に戻ったあと、和巳は英司と顔を見合わせた。自分と同じ顔をした弟が、悪戯っぽく笑っていた。
一卵性双生児でありながら、昔から和巳より英司のほうが世渡りは上手かった。
他人の感情に敏感なのは同様であったが、和巳はそれを対人関係に活かせることはなく、ただ他人の負の感情に触れたくなくて孤立することを好んだ。対する英司は機微に敏い感覚のままに他人の懐に入り込み、年下や同年代の人間からは人望を集め、年上からは可愛がられた。
同じなのは顔だけだとは、昔から良く言われていた。
けれども英司は和巳をないがしろにすることはなく、むしろいっしょにいることを好んだ。和巳の狭い人間関係はすべて把握したがったし、和巳が遊びに行こうとすれば必ずそれについて行こうとした。性質の悪いことに英司は和巳にわがままを言うときは、大抵人の目があるところでする。そうやって和巳がいやがっても、周囲の人間が「いいじゃないか」となだめてくれて、最終的に押しに弱い和巳が折れることを英司は知っていたからだ。
そうやって英司はいつも和巳に様々なものをあきらめさせて、根こそぎ奪って行く。
数少ない友人も気さくで楽しい英司といっしょにいることを自然と選んでしまうし、母親は内向的な和巳を見て、英司みたいにしたらと言う。
最初にバスケットボールを始めたのは和巳だったが、じきに英司が入りこんで、あとの流れはいつもと同じだった。
英司はいつだってだれかのアイドルで、そして人気者だった。
「和巳っ、和巳……あう、はっ、ん、気持ちいいっ……」
そんな彼がまさか双子の兄と近親相姦の関係にあるとは、だれも思いはしないだろう。それも精通を迎えるか迎えないかのころから、兄を抱いて、腰を振って、快楽を貪っているとは。
年ごろを迎えれば性行為に興味を示すのはごく自然な流れである。そしてごく当たり前のことのように、英司は和巳を求めた。
当然和巳はいやがったが、最後にはほとんど強姦と同じ形で英司を受け入れた。それを母親に言わなかったのは、幼心に「言ってはいけないこと」だという認識があったからである。そして和巳がそう考えていることを、英司は見抜いていた。そして和巳もそれをわかっていた。
まだひとつの部屋の同じベッドで寝ていた和巳を、英司はなわとびで縛り上げて、強引に行為に及んだ。
和巳は何度もいやだと言ったが、和巳に対しては非常にわがままな英司が受け入れようはずもなく、どこで得た知識なのか和巳のすぼまりにたっぷりと軟膏を塗って、英司は思いを遂げた。
幸いだったのは和巳と同様に英司の性器がまだ未発達であったことで、おかげでそれを受け入れた場所がひどく傷つくことはなかった。ただ排泄器官を行き来する異物の感覚は和巳にとって違和しかなく、かなり気分の悪い行いであったことも事実だ。それに英司も始めは特に快楽を得ている様子はなかったと和巳は記憶している。
それでも英司は親の目を盗んで繰り返し和巳を犯した。ある程度和巳たちが大きくなると母親はパートタイムの仕事に出るようになったので、そうなるとほとんど毎日英司は和巳とまぐわった。そして日々成長する体は次第に明確にその行為の中で快楽を見出してしまう。
先に精通を迎えたのは英司だった。そうなると彼は和巳との行為中に射精するという最終的な目標を持つようになる。それは今までの行為がほとんど児戯に等しかったことを意味していた。
この変化は和巳にとってはかなりいやなものだった。それまでの英司の行為は快楽を得るという目標のないものだったから、そう長いものではなかった。それが快楽を得て射精することを覚えてしまったのだ。英司は和巳の排泄器官を使って行為に耽溺した。そのころの英司は遠慮なく和巳の腸内に射精したから、行為のあとで腹の調子が悪くなるのも和巳はいやで仕方なかった。
けれども慢性的な行為はまた、和巳の体を作り変えてしまう。すぼまりは英司の成長に合わせて拡張され、英司がろくでもない知識を得るごとに和巳は性感帯を開発された。胸の突起で快楽を得ることを覚えるようになると、和巳は我慢ならなくてあちらこちらで自慰に耽った。ときにはそこに英司が加わって、学校のトイレの個室でうしろから犯されたこともある。
そうなってくるともう、和巳は英司に排泄器官を犯されることで射精するようになっていた。途切れなく拡張され、開発されたそこは完全な性感帯と化して和巳を快楽へと導く。
このころにはもう、和巳は英司との行為をいやがらなくなった。なにを言っても無駄だと悟ったこともあるし、私生活においてなにごとも和巳より要領良くこなす彼を前に卑屈になって行ったこともある。
「和巳……こんなにおいしそうにチンコ咥えこめちゃうんだから、もう女とヤったって満足できないよ」
「んっ、あっ、ああっ、は、えい、えいじっ……あ、あっ」
「和巳はっ、弟ちんぽ大好きな、ヘンタイだもんね?」
和巳の足を肩にかけて、英司は深く兄と繋がる。そこには後ろめたさも罪悪感もなく、ただ目の前の同じ顔をした兄を求める獣の顔をしていた。
そんな弟の顔を見上げながら、和巳は目を閉じる。
川田と付き合ったのは、逃げ出したかったからだ。終わりがなく、そして未来もないこの閉塞感しかない関係から、和巳は逃げ出したかった。だから川田と恋人という関係を持つことで「まとも」になろうとした。
けれどもそうするには、どうにも遅すぎたらしい。
結局、すべては無駄だったのだ。
和巳はもう堕ちるところまで堕ちていて、英司がその純然たる事実を彼の前につきつける。
「えいじっ、えいじ、いっちゃ、あっ、ああっ……も、だめっ、あう、ぐうっ、ん、いぐっいぐううぅっ――!」
下腹部と太ももの内側ががくがくと震える。張り詰めた熱は外へと解放されて腹を白く汚し、英司をしっかりと咥えこんだすぼまりも、びくびくと痙攣するようにわなないた。まるで子種を欲しがる雌のような蠕動に英司の顔が歪む。
「はあっ、あっ……ううっ、くっ、オレもっ、オレもイくよっ」
「んあっ、ああっ、あーっ、あううっ……! うご、うごいちゃっ、ああああっ――!」
もはや性器も同然となった排泄器官を容赦なく動き回る英司に、和巳は気をやりそうになる。口をだらしなく開き、今や体全体をがくがくと震わせながら英司が射精するまで、繰り返し熱い杭を突き入れられる。
英司が動くたびに、どうしようもできない、むずがゆいような快感が体の先端まで駆けめぐり、和巳はそれから逃げ出そうとする。けれども腰はしっかりと英司に抱えられていたから、結局は彼が射精して気の済むまで、和巳は泣かされることになった。
「もう彼女作ったりしないでね?」
「……なんで」
ぐったりとベッドに体を預ける和巳の横で、英司がささやくように言う。今の和巳は英司にすっかりと抱きしめられていた。バスケットボール部に所属する英司のほうがずっと体は鍛えられていたから、体力を使い果たした和巳には弟をどうこうできる余力はない。たとえ万全だとしても、特に運動をしていない和巳には無理な話かもしれないが。
英司は和巳の手のひらに自身の手のひらを重ね、強くにぎる。
「オレがいやだからだよ!」
「……なんで?」
「だって彼女作るなんて浮気じゃん? オレと和巳はさー、ずっといっしょにいるんだから。これって事実婚と同じでしょ?」
「意味わかんない……そもそも俺たち兄弟だし」
「別にいいじゃん。オレたちが兄弟だからって、だれが困るの?」
「親とか、さ」
「親は親、子供は子供なんだからさー。関係ないよ」
英司は本気でそう思っているらしく、和巳はいつものことながら強い脱力感を覚えた。
「今どき独身の兄弟で暮らしてるなんて珍しくないよ」
「……そうかな」
「そうだよ。だからゼッタイ二人暮らし、しようね?」
無邪気に笑う弟を前に、和巳はなにも言えなかった。
「そしたらさー、毎日ヤれるじゃん?」
「……それは、ヤダ」
「えー?! なんで?!」
「疲れるから」
「んー、じゃあ二日に一回で……」
「多いよ……」
声音だけ聞けば他愛ない兄弟の会話は、日暮れまでしばらく続いた。
「おにいさん」は今思えば当時は大学生くらいであっただろう。しかし大学へ通う様子も、働いている気配もなかった。ただ当時のふたりはそれを問題視したりはしなかった。むろん、「おにいさん」がべたべたと体に触れて来ても、危機感を抱くことはなかった。
「おにいさん」の部屋にはたくさんのビデオがあった。それらの多くは映画とかアニメとかの他愛のないものではあったが、うちの一握りはいわゆるポルノであり、さらに言えば明らかに違法な類いの映像であった。
「おにいさん」はそれを和巳と英司に見せてしきりに感想を聞きたがったが、和巳にはなんと言えば良いのかわからなかった。わかったのはテレビの中で和巳よりいくらか年上の男の子が、すすり泣くような声を上げて男の上に乗って腰を振っていること。そして「おにいさん」が「なにか」を和巳たちに期待していることだけだった。
いっぱいに広がった男の子の排泄器官を、グロテスクな男性器が出入りする様は、性行為という概念すら知らない和巳の脳でも、本能的に「いけないものを観ている」ことを察することは出来た。それに加えて男の子が泣き声に似た高い声を上げるのがなんだか恐ろしく、結局和巳がぐずったので観賞会は途中でお開きになった。
和巳はビデオの内容ばかりが頭に残って、そのとき英司がどういう様子であったかは記憶していない。
「おにいさん」が和巳たちの同級生に「いたずら」をして捕まったのはそれからすぐあとのことであった。
「あんたたち、変なことされなかった?」
馬鹿正直に「おにいさん」を知っていると口を滑らせた和巳を捕まえて、母は怖い顔をしてそう問うた。
「別に。ちょっと話したことがあるだけだよ」
和巳がなんと答えようか迷っているうちに、隣にいた英司がこともなげに嘘をつく。
「そうだよね、和巳」
「……うん」
英司の尻馬に乗って、結局和巳も嘘をついた。母親が「知らない人とは話さない」と口を酸っぱくして注意して台所に戻ったあと、和巳は英司と顔を見合わせた。自分と同じ顔をした弟が、悪戯っぽく笑っていた。
一卵性双生児でありながら、昔から和巳より英司のほうが世渡りは上手かった。
他人の感情に敏感なのは同様であったが、和巳はそれを対人関係に活かせることはなく、ただ他人の負の感情に触れたくなくて孤立することを好んだ。対する英司は機微に敏い感覚のままに他人の懐に入り込み、年下や同年代の人間からは人望を集め、年上からは可愛がられた。
同じなのは顔だけだとは、昔から良く言われていた。
けれども英司は和巳をないがしろにすることはなく、むしろいっしょにいることを好んだ。和巳の狭い人間関係はすべて把握したがったし、和巳が遊びに行こうとすれば必ずそれについて行こうとした。性質の悪いことに英司は和巳にわがままを言うときは、大抵人の目があるところでする。そうやって和巳がいやがっても、周囲の人間が「いいじゃないか」となだめてくれて、最終的に押しに弱い和巳が折れることを英司は知っていたからだ。
そうやって英司はいつも和巳に様々なものをあきらめさせて、根こそぎ奪って行く。
数少ない友人も気さくで楽しい英司といっしょにいることを自然と選んでしまうし、母親は内向的な和巳を見て、英司みたいにしたらと言う。
最初にバスケットボールを始めたのは和巳だったが、じきに英司が入りこんで、あとの流れはいつもと同じだった。
英司はいつだってだれかのアイドルで、そして人気者だった。
「和巳っ、和巳……あう、はっ、ん、気持ちいいっ……」
そんな彼がまさか双子の兄と近親相姦の関係にあるとは、だれも思いはしないだろう。それも精通を迎えるか迎えないかのころから、兄を抱いて、腰を振って、快楽を貪っているとは。
年ごろを迎えれば性行為に興味を示すのはごく自然な流れである。そしてごく当たり前のことのように、英司は和巳を求めた。
当然和巳はいやがったが、最後にはほとんど強姦と同じ形で英司を受け入れた。それを母親に言わなかったのは、幼心に「言ってはいけないこと」だという認識があったからである。そして和巳がそう考えていることを、英司は見抜いていた。そして和巳もそれをわかっていた。
まだひとつの部屋の同じベッドで寝ていた和巳を、英司はなわとびで縛り上げて、強引に行為に及んだ。
和巳は何度もいやだと言ったが、和巳に対しては非常にわがままな英司が受け入れようはずもなく、どこで得た知識なのか和巳のすぼまりにたっぷりと軟膏を塗って、英司は思いを遂げた。
幸いだったのは和巳と同様に英司の性器がまだ未発達であったことで、おかげでそれを受け入れた場所がひどく傷つくことはなかった。ただ排泄器官を行き来する異物の感覚は和巳にとって違和しかなく、かなり気分の悪い行いであったことも事実だ。それに英司も始めは特に快楽を得ている様子はなかったと和巳は記憶している。
それでも英司は親の目を盗んで繰り返し和巳を犯した。ある程度和巳たちが大きくなると母親はパートタイムの仕事に出るようになったので、そうなるとほとんど毎日英司は和巳とまぐわった。そして日々成長する体は次第に明確にその行為の中で快楽を見出してしまう。
先に精通を迎えたのは英司だった。そうなると彼は和巳との行為中に射精するという最終的な目標を持つようになる。それは今までの行為がほとんど児戯に等しかったことを意味していた。
この変化は和巳にとってはかなりいやなものだった。それまでの英司の行為は快楽を得るという目標のないものだったから、そう長いものではなかった。それが快楽を得て射精することを覚えてしまったのだ。英司は和巳の排泄器官を使って行為に耽溺した。そのころの英司は遠慮なく和巳の腸内に射精したから、行為のあとで腹の調子が悪くなるのも和巳はいやで仕方なかった。
けれども慢性的な行為はまた、和巳の体を作り変えてしまう。すぼまりは英司の成長に合わせて拡張され、英司がろくでもない知識を得るごとに和巳は性感帯を開発された。胸の突起で快楽を得ることを覚えるようになると、和巳は我慢ならなくてあちらこちらで自慰に耽った。ときにはそこに英司が加わって、学校のトイレの個室でうしろから犯されたこともある。
そうなってくるともう、和巳は英司に排泄器官を犯されることで射精するようになっていた。途切れなく拡張され、開発されたそこは完全な性感帯と化して和巳を快楽へと導く。
このころにはもう、和巳は英司との行為をいやがらなくなった。なにを言っても無駄だと悟ったこともあるし、私生活においてなにごとも和巳より要領良くこなす彼を前に卑屈になって行ったこともある。
「和巳……こんなにおいしそうにチンコ咥えこめちゃうんだから、もう女とヤったって満足できないよ」
「んっ、あっ、ああっ、は、えい、えいじっ……あ、あっ」
「和巳はっ、弟ちんぽ大好きな、ヘンタイだもんね?」
和巳の足を肩にかけて、英司は深く兄と繋がる。そこには後ろめたさも罪悪感もなく、ただ目の前の同じ顔をした兄を求める獣の顔をしていた。
そんな弟の顔を見上げながら、和巳は目を閉じる。
川田と付き合ったのは、逃げ出したかったからだ。終わりがなく、そして未来もないこの閉塞感しかない関係から、和巳は逃げ出したかった。だから川田と恋人という関係を持つことで「まとも」になろうとした。
けれどもそうするには、どうにも遅すぎたらしい。
結局、すべては無駄だったのだ。
和巳はもう堕ちるところまで堕ちていて、英司がその純然たる事実を彼の前につきつける。
「えいじっ、えいじ、いっちゃ、あっ、ああっ……も、だめっ、あう、ぐうっ、ん、いぐっいぐううぅっ――!」
下腹部と太ももの内側ががくがくと震える。張り詰めた熱は外へと解放されて腹を白く汚し、英司をしっかりと咥えこんだすぼまりも、びくびくと痙攣するようにわなないた。まるで子種を欲しがる雌のような蠕動に英司の顔が歪む。
「はあっ、あっ……ううっ、くっ、オレもっ、オレもイくよっ」
「んあっ、ああっ、あーっ、あううっ……! うご、うごいちゃっ、ああああっ――!」
もはや性器も同然となった排泄器官を容赦なく動き回る英司に、和巳は気をやりそうになる。口をだらしなく開き、今や体全体をがくがくと震わせながら英司が射精するまで、繰り返し熱い杭を突き入れられる。
英司が動くたびに、どうしようもできない、むずがゆいような快感が体の先端まで駆けめぐり、和巳はそれから逃げ出そうとする。けれども腰はしっかりと英司に抱えられていたから、結局は彼が射精して気の済むまで、和巳は泣かされることになった。
「もう彼女作ったりしないでね?」
「……なんで」
ぐったりとベッドに体を預ける和巳の横で、英司がささやくように言う。今の和巳は英司にすっかりと抱きしめられていた。バスケットボール部に所属する英司のほうがずっと体は鍛えられていたから、体力を使い果たした和巳には弟をどうこうできる余力はない。たとえ万全だとしても、特に運動をしていない和巳には無理な話かもしれないが。
英司は和巳の手のひらに自身の手のひらを重ね、強くにぎる。
「オレがいやだからだよ!」
「……なんで?」
「だって彼女作るなんて浮気じゃん? オレと和巳はさー、ずっといっしょにいるんだから。これって事実婚と同じでしょ?」
「意味わかんない……そもそも俺たち兄弟だし」
「別にいいじゃん。オレたちが兄弟だからって、だれが困るの?」
「親とか、さ」
「親は親、子供は子供なんだからさー。関係ないよ」
英司は本気でそう思っているらしく、和巳はいつものことながら強い脱力感を覚えた。
「今どき独身の兄弟で暮らしてるなんて珍しくないよ」
「……そうかな」
「そうだよ。だからゼッタイ二人暮らし、しようね?」
無邪気に笑う弟を前に、和巳はなにも言えなかった。
「そしたらさー、毎日ヤれるじゃん?」
「……それは、ヤダ」
「えー?! なんで?!」
「疲れるから」
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「多いよ……」
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