突然結婚したわたしの話

あせき

文字の大きさ
上 下
14 / 15

閑話7

しおりを挟む
「髪を、乾かしたい?」

「はい、いいですか?」

「そんなことしなくても……」

「したいんです。やらせてください。ドライヤーって重いじゃないですか。乾かし終えるまで持ってるのちょっと辛いなって思うことありませんか?この際思ったことがなくてもいいんです。祥子さん髪長いし、長時間両手が拘束されるのは目に見えてわかります。今日も夜遅くまで働いて、大変お疲れなんですからそれくらいやらせてください」

「そ……それくらいって……ご飯も作ってもらって食器の片付けまでしてもらったのよ?そんなことまでやらせられないわ」

「なにを言ってるんですか祥子さん。俺たち夫婦になったんですよ?共に支え助け合うのが夫婦ですよ?俺はまだ学生でしかも春休み中。対する祥子さんは仕事で今日も明日も家を出て行くんですよ?確かに俺はこの家に住所登録していない今はまだ別居中の夫ですけど、祥子さんを心配して甘やかして気遣って全力を持って尽くして健やかな日々を過ごせるようにサポートする権利が有ります。もちろん触られるのが嫌だと言うことであればドライヤーを抱えるだけでもいいんです。少しでも祥子さんの負担を減らしたいんです。でも出来る事なら風を当てる角度や時間の調整の為にも是非、その髪に触れる許可を頂けませんか?一回お試しでということでもいいんです。できる限り直接触れないように手袋を付けてほしいのであればそうしましょう、とりあえずドライヤー貸してください」

「……え、えっと?」

「乾かすの手伝うので、ドライヤーを貸してください」

「えっ、だ、だから、そこまでさせられないって言ってるのよ?」

「どうしてダメなんですか?」

「どうしてって……そこまでしてもらうわけには」

「どうしてですか」

「えっ?だ、だから、自分でできる些細なことなのに、そんなことまで頼むのは悪いから……」

「全く悪くないです。さっきも言いましたけどやりたいんです。寧ろやらせて欲しいんです。対価が必要なら支払うのでして欲しいことか欲しいもの、なにかありますか?」

「えっ?」

「それとも、俺がドライヤーを持つのも、髪に触るの嫌ですか?それなら諦めます」

「えっ、そ、そんなことは……ないけど……」

「じゃあいいですよね?ドライヤー貸してください」

「う、うん……」

「ありがとうございます。それでは髪を乾かしている間に欲しい物か、して欲しいことが決まったら教えてくださいね?」

「う、うん……、えっ……あれ!?」

しおりを挟む

処理中です...