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結局、太郎くんはオレの泣き顔を見て笑いながら達した。それからオレをうつ伏せにすると、寝バックの体勢でまた侵入してくる。
オレはもうされるがままで、どこにも力が入らず、朦朧とした頭でただ快楽だけを受け入れていた。
「あっあっあっ」
突き上げる動きにあわせて押し出される、とけた鳴き声。
ガラス製のおもちゃで遊ばれたときのように、力の入らない後ろはただ出入りを繰り返すだけで気持ちいい。不定期にびくびくっと身体が震えて、それで自分が達していることを知る。じわりと溢れた涙は太郎くんが舐めとってくれた。
「かわいいなあ、尚人」
シーツの上はどこもいろんな液体でぬるぬるで、太郎くんは虚脱したオレを逃がさないよう、腕やら足やらを絡めて抱き寄せてくる。不安定な場所と姿勢でこれだけ動けるんだから、この人、体幹やばすぎる。
そういう太郎くんも肌は熱く汗ばんでいて、時折甘く吐息を漏らす。オレの中に入っているものはまだガチガチで、いっしょに気持ちよくなってるのはうれしいなあ…なんて。
「た、ろくん…」
「ん?」
もう喉が潰れて掠れた声しか出ないけど、太郎くんはすぐにわかってくれた。顔を寄せられ、オレは動かない身体をわずかに浮かせて唇を寄せる。あ、ほっぺたに掠っただけだった。失敗した。
「きもちー、ね?」
太郎くんはひゅっと息を飲んで、それからがくんとオレの肩口に顔を伏せた。
「尚人……おまえ……」
太郎くんの広い肩がふるふる震えている。
「――お前、オレを煽るとはいい度胸してんなぁ。もうこの辺で終わりにしてやろうと思ってたのに、手加減はいらねえって?ああそうかよ?」
ゆらりと顔を上げた太郎くんは血走った目をしており、がつん、と強く奥を突き上げられて「ぎゃっ」と潰れた悲鳴が漏れた。
「ああなあ?気持ちいいな?たまんねーよ、最高だよお前。だからもうちょっとがんばってくれよ、なっ!」
「あ―――!!!」
言うや否や、胸に腕を回され抱き起こされて、背面座位の体勢で太郎くんの上に落とされる。
あまりの衝撃で萎えた前からしょわわと流れる熱い何か。
これもう潮じゃない、おしっこだ。
「あーもう、しょうがねえなあ、尚人。変な癖つけんなよ?」
防水シーツでよかったな、と指先で弄ぶように掴んだそれを上下に振りながら、下からぱつぱつと突き上げられる。
「んっ、ああっ、あっ、あぐ…っ!」
「次は風呂場でしような、また漏らすかもしれないもんな」
「や…っ、もうむり、ほんと死ぬ……っ!」
壊れたおもちゃのようにびくびく身体が跳ねるのを自分で制御できない。
太郎くんは鬼で悪魔で絶倫だった。
体力あるのは前から知ってたけど、これはちょっと無理すぎる。
オレは朦朧としたまま、腹の奥で太郎くんの熱が大量に吐き出されるのをどうにか待って、そこでようやく意識を失った。
***
「――尚人の声がすごくてなあ、あの日の客はみんな触らずにイったってよ」
まあ、従業員の女も同じだったらしいが。
くつくつ笑う太郎くんを恨めしい目で見上げる。
あの夜、太郎くんとエッチしたのはどこだったか。
いかがわしいピンクのお店の個室のひとつだ。個室といえど、パーテーションとカーテンで仕切られただけの空間で声なんて丸聞こえ。むしろ防犯上それが当たり前の店である。
あんな全力の絶叫を店中の人に聞かれていたなんて、恥ずかしすぎて死ねる。無理。
シーツを頭からかぶって丸くなるオレの頭を太郎くんがぐりぐり撫でてくる。ぐりぐり、ぐりぐり。太郎くんは上機嫌だ。
「…太郎くん、ねえ、ここどこ?」
シーツから目だけ出して問いかけた。
あの日、絶倫の太郎くんに抱かれたまま意識を失って、目が覚めたらこのベッドの上だった。ふわふわのふかふか。清潔でさらさらのシーツ。
あの店を出た記憶がないのは幸いだったかもしれない。
「ん?オレの家」
「……えっ、太郎くんの!?」
オレはがばりと飛び起きた。
「じゃあ奥さんは!?娘さんは!?オレ、ここで寝てるわけにいかないじゃん!」
忘れちゃいけない、太郎くんは既婚者なのだ。妻子持ちなのだ。
「おい、どこに行くんだ。嫁も子供もここにはいないぞ」
「へ?」
きょとんと目を瞬かせる。
「まあいろいろあってな、別のとこにいるんだ」
太郎くんは渋い顔で言う。
なるほど別居婚ってやつ?
太郎くんいろいろ事業抱えてるみたいだし、あり得る。
「そうなんだ」
「そうなんだよ。だからお前は気にせずここにいろ」
「へ?」
「だからここに住めって言ってんの。どうせお前の家賃はオレが払ってるようなもんなんだから構わないだろ」
「んー、まあそうなんだけど」
オレは無職で、太郎くんからもらったお金で生活している。たしかにオレの家の家賃は太郎くんが支払っているようなものだ。
しばらく考えてから太郎くんを見た。
「ここに住んでもエッチしたらお金くれる?」
「セックスしなくても小遣いほしかったらやるよ」
「ほんと?やったー!じゃあ住む住む!」
両手を上げて「わーい!」と喜ぶオレを見て溜息をつく太郎くん。
「バイト辞めたのは知ってるし、また変な気でも起こされたら堪ったもんじゃねえしな」
「変な気?」
「ああ」
太郎くんの声がどんどん低くなって、がしっと大きな手で頭をわし掴まれる。
「尚人、お前よお、たまたまうちの店だったけど、よそだったらどうしてたよ。どっかに逃げて戻ってこないつもりだったか?今回みたいに捕まってたらどう落とし前つける気だった?あ?」
ぐらぐら前後に揺すられてされるがままになる。
「…………?」
どうするつもりだったって、そんなの。
「なんにも考えてなかったよ」
太郎くんはオレの答えを聞いて――にっこり笑った。
「よし、尚人、脱げ」
「えー!?なんで?嘘でしょ、無理だよ太郎くんんん」
「無理じゃない。いいから脱げ」
「うわわわわ」
太郎くんの長い腕が伸びてきて、オレはベッドの上を転がってなんとか逃げる。
本当に無理です!
「ごめんなさい、太郎くんんん!!」
オレはもうされるがままで、どこにも力が入らず、朦朧とした頭でただ快楽だけを受け入れていた。
「あっあっあっ」
突き上げる動きにあわせて押し出される、とけた鳴き声。
ガラス製のおもちゃで遊ばれたときのように、力の入らない後ろはただ出入りを繰り返すだけで気持ちいい。不定期にびくびくっと身体が震えて、それで自分が達していることを知る。じわりと溢れた涙は太郎くんが舐めとってくれた。
「かわいいなあ、尚人」
シーツの上はどこもいろんな液体でぬるぬるで、太郎くんは虚脱したオレを逃がさないよう、腕やら足やらを絡めて抱き寄せてくる。不安定な場所と姿勢でこれだけ動けるんだから、この人、体幹やばすぎる。
そういう太郎くんも肌は熱く汗ばんでいて、時折甘く吐息を漏らす。オレの中に入っているものはまだガチガチで、いっしょに気持ちよくなってるのはうれしいなあ…なんて。
「た、ろくん…」
「ん?」
もう喉が潰れて掠れた声しか出ないけど、太郎くんはすぐにわかってくれた。顔を寄せられ、オレは動かない身体をわずかに浮かせて唇を寄せる。あ、ほっぺたに掠っただけだった。失敗した。
「きもちー、ね?」
太郎くんはひゅっと息を飲んで、それからがくんとオレの肩口に顔を伏せた。
「尚人……おまえ……」
太郎くんの広い肩がふるふる震えている。
「――お前、オレを煽るとはいい度胸してんなぁ。もうこの辺で終わりにしてやろうと思ってたのに、手加減はいらねえって?ああそうかよ?」
ゆらりと顔を上げた太郎くんは血走った目をしており、がつん、と強く奥を突き上げられて「ぎゃっ」と潰れた悲鳴が漏れた。
「ああなあ?気持ちいいな?たまんねーよ、最高だよお前。だからもうちょっとがんばってくれよ、なっ!」
「あ―――!!!」
言うや否や、胸に腕を回され抱き起こされて、背面座位の体勢で太郎くんの上に落とされる。
あまりの衝撃で萎えた前からしょわわと流れる熱い何か。
これもう潮じゃない、おしっこだ。
「あーもう、しょうがねえなあ、尚人。変な癖つけんなよ?」
防水シーツでよかったな、と指先で弄ぶように掴んだそれを上下に振りながら、下からぱつぱつと突き上げられる。
「んっ、ああっ、あっ、あぐ…っ!」
「次は風呂場でしような、また漏らすかもしれないもんな」
「や…っ、もうむり、ほんと死ぬ……っ!」
壊れたおもちゃのようにびくびく身体が跳ねるのを自分で制御できない。
太郎くんは鬼で悪魔で絶倫だった。
体力あるのは前から知ってたけど、これはちょっと無理すぎる。
オレは朦朧としたまま、腹の奥で太郎くんの熱が大量に吐き出されるのをどうにか待って、そこでようやく意識を失った。
***
「――尚人の声がすごくてなあ、あの日の客はみんな触らずにイったってよ」
まあ、従業員の女も同じだったらしいが。
くつくつ笑う太郎くんを恨めしい目で見上げる。
あの夜、太郎くんとエッチしたのはどこだったか。
いかがわしいピンクのお店の個室のひとつだ。個室といえど、パーテーションとカーテンで仕切られただけの空間で声なんて丸聞こえ。むしろ防犯上それが当たり前の店である。
あんな全力の絶叫を店中の人に聞かれていたなんて、恥ずかしすぎて死ねる。無理。
シーツを頭からかぶって丸くなるオレの頭を太郎くんがぐりぐり撫でてくる。ぐりぐり、ぐりぐり。太郎くんは上機嫌だ。
「…太郎くん、ねえ、ここどこ?」
シーツから目だけ出して問いかけた。
あの日、絶倫の太郎くんに抱かれたまま意識を失って、目が覚めたらこのベッドの上だった。ふわふわのふかふか。清潔でさらさらのシーツ。
あの店を出た記憶がないのは幸いだったかもしれない。
「ん?オレの家」
「……えっ、太郎くんの!?」
オレはがばりと飛び起きた。
「じゃあ奥さんは!?娘さんは!?オレ、ここで寝てるわけにいかないじゃん!」
忘れちゃいけない、太郎くんは既婚者なのだ。妻子持ちなのだ。
「おい、どこに行くんだ。嫁も子供もここにはいないぞ」
「へ?」
きょとんと目を瞬かせる。
「まあいろいろあってな、別のとこにいるんだ」
太郎くんは渋い顔で言う。
なるほど別居婚ってやつ?
太郎くんいろいろ事業抱えてるみたいだし、あり得る。
「そうなんだ」
「そうなんだよ。だからお前は気にせずここにいろ」
「へ?」
「だからここに住めって言ってんの。どうせお前の家賃はオレが払ってるようなもんなんだから構わないだろ」
「んー、まあそうなんだけど」
オレは無職で、太郎くんからもらったお金で生活している。たしかにオレの家の家賃は太郎くんが支払っているようなものだ。
しばらく考えてから太郎くんを見た。
「ここに住んでもエッチしたらお金くれる?」
「セックスしなくても小遣いほしかったらやるよ」
「ほんと?やったー!じゃあ住む住む!」
両手を上げて「わーい!」と喜ぶオレを見て溜息をつく太郎くん。
「バイト辞めたのは知ってるし、また変な気でも起こされたら堪ったもんじゃねえしな」
「変な気?」
「ああ」
太郎くんの声がどんどん低くなって、がしっと大きな手で頭をわし掴まれる。
「尚人、お前よお、たまたまうちの店だったけど、よそだったらどうしてたよ。どっかに逃げて戻ってこないつもりだったか?今回みたいに捕まってたらどう落とし前つける気だった?あ?」
ぐらぐら前後に揺すられてされるがままになる。
「…………?」
どうするつもりだったって、そんなの。
「なんにも考えてなかったよ」
太郎くんはオレの答えを聞いて――にっこり笑った。
「よし、尚人、脱げ」
「えー!?なんで?嘘でしょ、無理だよ太郎くんんん」
「無理じゃない。いいから脱げ」
「うわわわわ」
太郎くんの長い腕が伸びてきて、オレはベッドの上を転がってなんとか逃げる。
本当に無理です!
「ごめんなさい、太郎くんんん!!」
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