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◆第二章◆ プロセス。
キエタモノ。
しおりを挟む「光明閃光の雷!!」
理巧の声に間も無く反応を示したのは清兵衛だった。
理巧が叫ぶ少し前、清兵衛は将成と十兵衛、そして松風と共に隣国へ飛んでいた。
それは、隣国へ流れ着いたと噂される『草薙の剣』と、時信を取り戻すためだった。
「おい将、今夜のオークションは何時からだった? 」
ホテルの一室で十兵衛は自分のスーツケースをごそごそと漁りながら将成に質問する。
将成は相変わらず不機嫌に答えた。
「21時っ言ったろ!?何度も聞くな!お前は大人しく表で待機しろ!何かあったら直ぐに飛び出せるようにな!会場には俺と松風が入る!清兵衛は裏で待機だ、いいな!さて、もう一度図面を見て確認だ! 」
将成はテーブルの上にオークション会場付近の地図を広げ念には念を入れ計画の再確認を始めた。そんな時刻は18時を回った所だった。
「……っ… 」
突然、清兵衛は膝から崩れ、力が抜けた様に両腕をダランと垂らした。
「!?っ!おい!?清兵衛!?どうした!? 」
「清兵衛殿!? 」
「清ちゃん!? 」
3人が3様に驚き清兵衛に駆け寄った。
「あっ……うっ…うっうぅ… うぁー!! 」
すると清兵衛は、今度は苦しそうに首に手をやりもがき始めた。
「清兵衛!?しっかりしろ!おい!清兵衛!? 」
もう、将成達の声は聞こえない様子で、毒でも飲まされたかの様に喉を掻きむしる。
「ああぁーあー…うわぁーくっ!あー! 」
もがく指の隙間から何かの光が漏れる。そう、それは理巧が清兵衛の首に付けた勾玉だった。
勾玉の光は始めは小さく脈打つように光、次第に強く点灯し、終いには落雷が起こったかの様に清兵衛に閃光が走り強く輝くと、一同はその眩しさから眼を背けた。
そして、光が収まりゆっくり眼を開け、清兵衛が居た場所に振り返るとその姿はもう無かった…。
「なっ!?何!?清兵衛!清兵衛は何処に行った!?」
将成は眼を見開き辺りを隅々まで探し、十兵衛は突然の事に呆然と清兵衛の居た場所を見詰めている。
松風は直ぐに辺りを確認し、居ないのが分かると部屋を出てあちらこちら探して回った。
「な……何だったんだ…清兵衛は…光って消えた…何が起きたんだ!? 」
将成は一旦落ち着き、頭の中を整理する。
「清ちゃんの首の石が光った様に見えたが、アレの仕業なのか?」
十兵衛は意外にもしっかり見ていた様で石が光った…と言った。
すると、バタバタと部屋に戻って来るなり、清兵衛が何処にも見当たらないと汗を拭う。
「いったいどうなってんだ!?ここで清ちゃんが消えたら…しかし元々清ちゃんはこの世の人間では無かった…こんな事もあろうかと、覚悟をしなければいけないところだが、普通に接してきちまった。う……ん…清ちゃん……、やっと会えたのに…まだ話したいこともあったのに… 」
十兵衛が目に涙を溜めながら呟いた。
「うじうじとうるさい!!清兵衛が消えた事はおおごとだが、今はもっと先を見なければならない!悲しむのもまだ先だ!気持ちを切り替えろ!大丈夫だ!清兵衛はまだ成仏しちゃいない!きっと戻ってくる!俺たちは信じて行動するだけだ!」
将成は気持ちを奮い立たせ、あと、数時間と迫ったオークションに集中した。
「そうですよ、信じましょう!まだ成仏したとは決めつけないで、清兵衛はこの世に未練ばかりだろう、だからきっとまた会えます!帰ってきます!さぁ、作戦の練り直しです! 」
「あぁ!松風!お前は頼みの綱だ!十兵衛!お前はずっと布団の端噛んで泣いてろ!! 」
「そ……そんな事言うなよ!悪かった…俺も混ぜてくれよ! 」
そして3人になったメンバーで今夜の作戦を練り始めた。消えた清兵衛の事に動揺が隠しきれないが…。
しかし、国宝級の宝の剣を競り落とせる程、将成達には資金は無い為、剣が本物なのか見分け、競り落とした人間を確認しそこから、剣をどうするか…と言う事だ。
簡単に言うと剣を奪う…いや、すり替える…。
あと、尊富と同行している時信を取り返す事が今回の目的だ。
作戦はこうだ!
まずは、会場に入りオークションに参加する。
そして、剣を確認した後、松風は剣を競り落とした人間をマークする。
将成と十兵衛は、尊富に近づき、時信を返してもらう…と言う簡単で簡単には行かないであろう作戦を立てた。
「しかしよぉ、また尊富があの手この手で暴れ出したら会場内は大パニックだぜ…来賓のお偉いさんだって無傷ではいられんだろうよ…」
「お前はバカか!会場で暴れてどうする!なるべく被害は最小限で済むように…作戦を練っているんだろうが!!お前の脳ミソは団子で出来てんのか!! 」
将成は十兵衛に嫌みをぶつけると十兵衛は悲しい顔をした。
「……ひ…ひどい…貴方、ひどい人… 」
「うるさい!遊んでる暇は無いんだ!清兵衛が居なくなって作戦を変えなければいけないのに、冗談を言うな!! 」
「は…はい!親方!」
「分かれば良いんだ…で、どこで尊富をヤルのか… 」
将成は腕組みをし、ホテルの部屋から見えるオークション会場に視線を落とした時だった。
「おっ…おい!!大変だ!か…会場が!! 」
将成を押し退け十兵衛と松風も窓の外を見た。
「な!!?なんなんだ!?ありゃ!? 」
何と会場が燃えているではないか、会場周辺には物々しい程に数多くの緊急車両がサイレンを鳴らし、ライトを光らせながら消化活動をしている。
「おい!行くぞ! 」
将成の一声で一斉に現場へ急いだ。
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