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1. 付き合っているっていうか
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オレは先生と付き合っている。誰って、糸田川先生 41歳。オレとの歳の差25歳!わぁお。
通称いとやん、みんなそう呼んでいる。
なんでいとやんって、元ヤン疑惑があるから。キレ方が堅気じゃねぇって、みんなヒソヒソ言っている。まさしくその通り。
そういう日は、放課後にちょっと口を尖らせたりしてみる。すると、いとやんは「別に…ツバサに怒ってたわけじゃねぇからいいだろぉ?」とぬかす。ツバサってのはオレのこと。
「そういう問題じゃねぇよ。とにかく、もうあんな怖い声は出すなよな、一生」
「一生って…ツバサちゃんは、一生俺のそばにいてくれるんでちゅかぁ?こーじ、嬉しすぎて泣いちゃうぅぅ」
変顔した いとやんが、ハグしようとしてきた。オレがサッとよけると、「あぁん もうっ、なんで!」って。ムリ、普通に無理。
「いとやんとは、そういうことはしたくない」
「ッッ…その、いとやんって呼ぶのやめろ。ムードが全く出ん。こーじ♡って呼んでみな?」
「んぁ?何言ってんのか全く聞こえねぇ」
ぅっ…ぐっ…ツっ、ツ゛ハ゛サ゛ァァッ!!怒号が理科室中に鳴り響いた。別に、嫌なら別れてくれてぜーんぜん構わない。いとやんのこと、そういう目で見れないし。
でも、そんなことを言ってしまえばきっと、「ツ、ツバサぁ…そんなこと言わないで…俺を捨てないで」ってチワワみたいにしがみついてくるのが目に見えている。雰囲気はドーベルマンだけど。
・
・
・
いとやんは高校の化学の先生だ。フェロモンむんむん、アダルティな色気が堪らない……いとやんとなら間違いがあっても構わん、なんてふざけた話を小耳に挟んだりする。ゲェ。
オレにとってみれば、あんなのただの淫乱教師だ。不純、助平教師でもいい。
きっかけは初めての実験日、日直だったオレは片付けを手伝っていた。その際、いとやんの机の上に、奇妙なものがあることに気づいた。
「これ、なんですか?」
手の平サイズの…白い人型の編みぐるみ。のっぺらぼうだ。机の隅にちょこんとかしこまっている。
つんつん。指先で突っついてみたら、何やらニヤニヤしている いとやんに気がついた。え…な、なに。
「お前…それに触っちまったなぁ」
ひひひひひ……いとやんは薄気味悪く笑う。そんなんだから、「えっ…なっ、えっ?なにっ、なになに」とオレが狼狽えるのは自然のこと。
「それなぁ、俺のばあさんが作った人形なんだ。触った人間の魂の一部が中に入りこむらしい。お前、そいつの腕をちょっと押してみろよ…おんなじところが痛くなるんじゃねぇの…」
ギャアッッ!!オレは恐怖のあまり、人形を放り投げていた。ホラー話は大の苦手だ。
でも、それ以上に恐ろしかったことがある。「クククっ…お前、可愛いなぁ。俺と付き合うか」って唐突な告白を受けたことだった。
オレの返事は「…はぁ?」。いや、当たり前だろ。こいつヤバい…普通にヤバい。
「嫌だって言ったら?」
「きゃっ、こーじ泣いちゃう♡」
いとやんは男の人が好きらしい。でも、オレはそうじゃない。
「一緒にいたら、そんな気分になってくる。だから、なぁ?」とのこと。いやいや、オレ未成年だぞ ーー 年の差なんて今は当たり前だから。俺が守ってやるっ……いとやんの口は減ることを知らない。
延々と続く押し問答。逃げ出そうにも鉄壁のいとやんガードに阻まれ、オレはとうとうキレた。
「しつけぇぞッッ!!」
そう言って…その、ちょっと…押したつもりが、随分と派手に突き飛ばしてしまったらしい。ガシャンッ!ガラガラガラ……しかも場所が悪かった。ここは理科室だ。
フラスコやら試験管なんかが並んでいて、いとやんはそれでザックリ、右腕を何針も縫う大騒ぎになってしまった。
・
・
・
なぁ、ツバサ。俺はお前のことをちーっとも恨んじゃいない。むしろ、消えない傷をつけてもらえて嬉しいよ。
あぁ でもな、しばらくまともに生活できそうにねぇから…助けて欲しい。なに、簡単だ…昼休み、俺の部屋に来てくれ。
「昼飯をあ~んして食べさせて欲しい♡」
ニコニコニコ……満面の笑みのいとやんがそこにはいた。オレはズッコケそうになった。「そ、そんなんでいいのかよ…」と、つい大きなため息が漏れ出る。
「ん?もっとすごいことをしてくれるのか」
なんて陽気に軽口を叩くいとやんに、「…なんで、あんな嘘ついたの」とオレは尋ねた。
「うそ?嘘なんかついたか、俺」
「しらばっくれんな。なにが…けつまずいてしまって、だよ」
後味が悪い…そういうことをされると、責めるに責められない。
「それより、ツバサに怪我がなくて良かったよ。本当に良かった」という いとやんの言葉が耳に痛い。なんだよ、まともなこと言っちゃって……
「先生、本当に…ごめん、なさい」
別に、オレ…悪くないし。元はと言えば、いとやんのせいだ。自業自得…そう、それ。
だけど、涙が止まらなかった。なんでだ。
「ツバサ、泣くな…泣くことない」と、いとやんが抱きしめてきた。それが思っていた程に嫌じゃなくて、困ってしまう。なんか、普通…だ。
「っっオイッ!?調子乗んなッッ!!」
ばかっ、オレのばかっ!やっぱり、いとやんは油断ならない…っ…!
身の程知らずの左腕を、慌てて引っ捕える。しれっと、ケツを撫でられた…!!
「いっ、淫乱教師!不純っ、スケベッ!」
「お前に言われると…興奮するな」
バチンッ!!一度ならず二度も。いとやんの頬を思いっ切り叩いたせいで、オレはオレの首を絞めることになった。そうして今に至る。
付き合っているっていうか、うーん…服役中…?そんな…感じ。
通称いとやん、みんなそう呼んでいる。
なんでいとやんって、元ヤン疑惑があるから。キレ方が堅気じゃねぇって、みんなヒソヒソ言っている。まさしくその通り。
そういう日は、放課後にちょっと口を尖らせたりしてみる。すると、いとやんは「別に…ツバサに怒ってたわけじゃねぇからいいだろぉ?」とぬかす。ツバサってのはオレのこと。
「そういう問題じゃねぇよ。とにかく、もうあんな怖い声は出すなよな、一生」
「一生って…ツバサちゃんは、一生俺のそばにいてくれるんでちゅかぁ?こーじ、嬉しすぎて泣いちゃうぅぅ」
変顔した いとやんが、ハグしようとしてきた。オレがサッとよけると、「あぁん もうっ、なんで!」って。ムリ、普通に無理。
「いとやんとは、そういうことはしたくない」
「ッッ…その、いとやんって呼ぶのやめろ。ムードが全く出ん。こーじ♡って呼んでみな?」
「んぁ?何言ってんのか全く聞こえねぇ」
ぅっ…ぐっ…ツっ、ツ゛ハ゛サ゛ァァッ!!怒号が理科室中に鳴り響いた。別に、嫌なら別れてくれてぜーんぜん構わない。いとやんのこと、そういう目で見れないし。
でも、そんなことを言ってしまえばきっと、「ツ、ツバサぁ…そんなこと言わないで…俺を捨てないで」ってチワワみたいにしがみついてくるのが目に見えている。雰囲気はドーベルマンだけど。
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いとやんは高校の化学の先生だ。フェロモンむんむん、アダルティな色気が堪らない……いとやんとなら間違いがあっても構わん、なんてふざけた話を小耳に挟んだりする。ゲェ。
オレにとってみれば、あんなのただの淫乱教師だ。不純、助平教師でもいい。
きっかけは初めての実験日、日直だったオレは片付けを手伝っていた。その際、いとやんの机の上に、奇妙なものがあることに気づいた。
「これ、なんですか?」
手の平サイズの…白い人型の編みぐるみ。のっぺらぼうだ。机の隅にちょこんとかしこまっている。
つんつん。指先で突っついてみたら、何やらニヤニヤしている いとやんに気がついた。え…な、なに。
「お前…それに触っちまったなぁ」
ひひひひひ……いとやんは薄気味悪く笑う。そんなんだから、「えっ…なっ、えっ?なにっ、なになに」とオレが狼狽えるのは自然のこと。
「それなぁ、俺のばあさんが作った人形なんだ。触った人間の魂の一部が中に入りこむらしい。お前、そいつの腕をちょっと押してみろよ…おんなじところが痛くなるんじゃねぇの…」
ギャアッッ!!オレは恐怖のあまり、人形を放り投げていた。ホラー話は大の苦手だ。
でも、それ以上に恐ろしかったことがある。「クククっ…お前、可愛いなぁ。俺と付き合うか」って唐突な告白を受けたことだった。
オレの返事は「…はぁ?」。いや、当たり前だろ。こいつヤバい…普通にヤバい。
「嫌だって言ったら?」
「きゃっ、こーじ泣いちゃう♡」
いとやんは男の人が好きらしい。でも、オレはそうじゃない。
「一緒にいたら、そんな気分になってくる。だから、なぁ?」とのこと。いやいや、オレ未成年だぞ ーー 年の差なんて今は当たり前だから。俺が守ってやるっ……いとやんの口は減ることを知らない。
延々と続く押し問答。逃げ出そうにも鉄壁のいとやんガードに阻まれ、オレはとうとうキレた。
「しつけぇぞッッ!!」
そう言って…その、ちょっと…押したつもりが、随分と派手に突き飛ばしてしまったらしい。ガシャンッ!ガラガラガラ……しかも場所が悪かった。ここは理科室だ。
フラスコやら試験管なんかが並んでいて、いとやんはそれでザックリ、右腕を何針も縫う大騒ぎになってしまった。
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なぁ、ツバサ。俺はお前のことをちーっとも恨んじゃいない。むしろ、消えない傷をつけてもらえて嬉しいよ。
あぁ でもな、しばらくまともに生活できそうにねぇから…助けて欲しい。なに、簡単だ…昼休み、俺の部屋に来てくれ。
「昼飯をあ~んして食べさせて欲しい♡」
ニコニコニコ……満面の笑みのいとやんがそこにはいた。オレはズッコケそうになった。「そ、そんなんでいいのかよ…」と、つい大きなため息が漏れ出る。
「ん?もっとすごいことをしてくれるのか」
なんて陽気に軽口を叩くいとやんに、「…なんで、あんな嘘ついたの」とオレは尋ねた。
「うそ?嘘なんかついたか、俺」
「しらばっくれんな。なにが…けつまずいてしまって、だよ」
後味が悪い…そういうことをされると、責めるに責められない。
「それより、ツバサに怪我がなくて良かったよ。本当に良かった」という いとやんの言葉が耳に痛い。なんだよ、まともなこと言っちゃって……
「先生、本当に…ごめん、なさい」
別に、オレ…悪くないし。元はと言えば、いとやんのせいだ。自業自得…そう、それ。
だけど、涙が止まらなかった。なんでだ。
「ツバサ、泣くな…泣くことない」と、いとやんが抱きしめてきた。それが思っていた程に嫌じゃなくて、困ってしまう。なんか、普通…だ。
「っっオイッ!?調子乗んなッッ!!」
ばかっ、オレのばかっ!やっぱり、いとやんは油断ならない…っ…!
身の程知らずの左腕を、慌てて引っ捕える。しれっと、ケツを撫でられた…!!
「いっ、淫乱教師!不純っ、スケベッ!」
「お前に言われると…興奮するな」
バチンッ!!一度ならず二度も。いとやんの頬を思いっ切り叩いたせいで、オレはオレの首を絞めることになった。そうして今に至る。
付き合っているっていうか、うーん…服役中…?そんな…感じ。
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