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2. オレと兄さん、昔の話
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「チャユ、ほら 箸貸して」
席に着くなり、それだった。オレがびっくりして目をパチパチさせていると、「カヌ、チャユはもう14歳よ。あんまり子供扱いしないであげてはどう?」と母さんが助け舟を出してくれた。
「でも、この肉なんかは…俺が食べさせてやらないと、食べないんじゃないですか?」
兄さんの言葉に、あぁ なるほど…そういうことね、と思う。
悔しくなって、目の前の肉をポイッと口へ放り込んだ。兄さんはポカンとして、くすくすと母さんが笑う。
「少しは食べられるようになったのよ、少しはね。それに身体の調子も良くなって、友達の家へ遊びに行ったりしてるわ」
「へぇ…驚いた。チャユ、すごいじゃないか」
兄さんはそう言い、オレの頭の辺りに手を伸ばしてきた。オレはあわててそれを掴み、「いっ、いいから」と押し戻す。やっぱり、そういうのはちょっと恥ずかしい年頃になったわけだ。
ご飯を食べ終わった後も、兄さんとはずっと一緒だった。父さんや母さんのこと、学校での生活、兄さんの話…沢山喋って、沢山笑った。ゲームで盛り上がっては、母さんの一言で勉強を見てもらうはめになったり…すごく楽しかった。
これからは、ずっと兄さんがそばにいてくれるんだ。そう思うとウキウキして、小躍りしたもんだ。
その夜、風呂から出てくると、兄さんが手招きしていた。そろそろ布団に入る頃合いだった。
オレと兄さんは、昔から同じ部屋で寝ている。いずれは壁を仕切って別々の部屋にするつもりが、兄さんがどうしても一緒がいいと言って聞かなかったらしい。身体の弱いオレの面倒をみるためなんだろうけど…兄さんってやっぱり、兄さんっぽくない。もはや母さんだ。
「この家を出て行く時はさぁ、お前と離れるのが辛くて辛くて…男泣きしたんだぞ?」
二つのベッドは、ぴったりと横並びになっていた。その上で、オレたちは寝っ転がりながら話をする。これだって最初は離していたような気がするが、いつの間にかこうなっていた。
「オレと離れるのが嫌で?おいおい兄さん、それはやばいでしょ、ははっ」
「本当だよ。だって、ずっと一緒だったのに突然いなくなるなんてさぁ」
「兄さんって…意外と寂しがりやなんだ。それなら何で、一度も帰って来てくれなかったのさ」
「そりゃあ、決心が揺らいじゃうからな。うっかり帰ってきて、チャユの顔を見たりしてみろ。ずっとここにいたくなる」
兄さんは優しい顔をして、手の甲でそっと額を撫ぜてきた。オレはなんともむず痒くなってしまい、それをどうにか発散させようと、そばに置いてあった怪獣の抱き枕に助けを求めた。これはオレの趣味じゃなくて、母さんが勝手に買ってきたものだ。
「ん、なんだよ そいつは」
「兄さんに似てるから、って母さんがね。漫画を読む時の肘置きにちょうどいいんだ」
「お前…俺の分身をぞんざいに扱うなよなぁ。それのどこが俺に似てるんだ?」
「えぇ、見て分かんない?母さんに聞かれた時、すぐわかっちゃったよ」
「…わからん」
「目だよ、目。この光のない濁ったような目元が兄さんそっくり」
「チャユ…それに母さんもだ。俺のことをそんな風に思っていたのか…?」
ワァッ!逃げようとしたら、背中からガッチリ固め込まれた。
「ごめんっごめんってば!あははっ」
「うるさいっ、そんな抱き枕捨ててやる!俺は一人で十分だ!」
「えぇ!やだよ、結構気に入っているんだってぇ」
「じゃあ、今日から兄ちゃんが肘置きになってやるから、それで勘弁しろっ」
次の日の朝。起きると早々に、「チャユ、寝相良くなったなぁ」だった。昔のオレは、布団の上を縦横無尽に動き回っていた。目を覚ますと、兄さんの領域に侵入していた…なんてのはしょっちゅうのこと。
「そういえばお前…おねしょ癖がなかなか直らなくって、俺が出て行く時になってもオムツをつけてたろ。どれ、濡れてないだろうな」
そう言って兄さんが手を伸ばしてきたから、「だっ、大丈夫だから!もうオムツは取れたよっ!」なんて不名誉極まりない報告をするはめになった。
「クククっ そうか、そりゃ残念だ。またオムツ姿のお前を拝みたかったのにねぇ。俺が履かせてやってたんだぞ?バブちゃん」
あんまり腹が立ったので、バブちゃんはプロレス技をかけてやった。この前テレビで見たやつだ。
といっても、もやしはもやし。ふにゃふにゃと絡みついたようにしかならなくて、「おいおい、戯れてんのか。はははっ」って笑われてしまった。
席に着くなり、それだった。オレがびっくりして目をパチパチさせていると、「カヌ、チャユはもう14歳よ。あんまり子供扱いしないであげてはどう?」と母さんが助け舟を出してくれた。
「でも、この肉なんかは…俺が食べさせてやらないと、食べないんじゃないですか?」
兄さんの言葉に、あぁ なるほど…そういうことね、と思う。
悔しくなって、目の前の肉をポイッと口へ放り込んだ。兄さんはポカンとして、くすくすと母さんが笑う。
「少しは食べられるようになったのよ、少しはね。それに身体の調子も良くなって、友達の家へ遊びに行ったりしてるわ」
「へぇ…驚いた。チャユ、すごいじゃないか」
兄さんはそう言い、オレの頭の辺りに手を伸ばしてきた。オレはあわててそれを掴み、「いっ、いいから」と押し戻す。やっぱり、そういうのはちょっと恥ずかしい年頃になったわけだ。
ご飯を食べ終わった後も、兄さんとはずっと一緒だった。父さんや母さんのこと、学校での生活、兄さんの話…沢山喋って、沢山笑った。ゲームで盛り上がっては、母さんの一言で勉強を見てもらうはめになったり…すごく楽しかった。
これからは、ずっと兄さんがそばにいてくれるんだ。そう思うとウキウキして、小躍りしたもんだ。
その夜、風呂から出てくると、兄さんが手招きしていた。そろそろ布団に入る頃合いだった。
オレと兄さんは、昔から同じ部屋で寝ている。いずれは壁を仕切って別々の部屋にするつもりが、兄さんがどうしても一緒がいいと言って聞かなかったらしい。身体の弱いオレの面倒をみるためなんだろうけど…兄さんってやっぱり、兄さんっぽくない。もはや母さんだ。
「この家を出て行く時はさぁ、お前と離れるのが辛くて辛くて…男泣きしたんだぞ?」
二つのベッドは、ぴったりと横並びになっていた。その上で、オレたちは寝っ転がりながら話をする。これだって最初は離していたような気がするが、いつの間にかこうなっていた。
「オレと離れるのが嫌で?おいおい兄さん、それはやばいでしょ、ははっ」
「本当だよ。だって、ずっと一緒だったのに突然いなくなるなんてさぁ」
「兄さんって…意外と寂しがりやなんだ。それなら何で、一度も帰って来てくれなかったのさ」
「そりゃあ、決心が揺らいじゃうからな。うっかり帰ってきて、チャユの顔を見たりしてみろ。ずっとここにいたくなる」
兄さんは優しい顔をして、手の甲でそっと額を撫ぜてきた。オレはなんともむず痒くなってしまい、それをどうにか発散させようと、そばに置いてあった怪獣の抱き枕に助けを求めた。これはオレの趣味じゃなくて、母さんが勝手に買ってきたものだ。
「ん、なんだよ そいつは」
「兄さんに似てるから、って母さんがね。漫画を読む時の肘置きにちょうどいいんだ」
「お前…俺の分身をぞんざいに扱うなよなぁ。それのどこが俺に似てるんだ?」
「えぇ、見て分かんない?母さんに聞かれた時、すぐわかっちゃったよ」
「…わからん」
「目だよ、目。この光のない濁ったような目元が兄さんそっくり」
「チャユ…それに母さんもだ。俺のことをそんな風に思っていたのか…?」
ワァッ!逃げようとしたら、背中からガッチリ固め込まれた。
「ごめんっごめんってば!あははっ」
「うるさいっ、そんな抱き枕捨ててやる!俺は一人で十分だ!」
「えぇ!やだよ、結構気に入っているんだってぇ」
「じゃあ、今日から兄ちゃんが肘置きになってやるから、それで勘弁しろっ」
次の日の朝。起きると早々に、「チャユ、寝相良くなったなぁ」だった。昔のオレは、布団の上を縦横無尽に動き回っていた。目を覚ますと、兄さんの領域に侵入していた…なんてのはしょっちゅうのこと。
「そういえばお前…おねしょ癖がなかなか直らなくって、俺が出て行く時になってもオムツをつけてたろ。どれ、濡れてないだろうな」
そう言って兄さんが手を伸ばしてきたから、「だっ、大丈夫だから!もうオムツは取れたよっ!」なんて不名誉極まりない報告をするはめになった。
「クククっ そうか、そりゃ残念だ。またオムツ姿のお前を拝みたかったのにねぇ。俺が履かせてやってたんだぞ?バブちゃん」
あんまり腹が立ったので、バブちゃんはプロレス技をかけてやった。この前テレビで見たやつだ。
といっても、もやしはもやし。ふにゃふにゃと絡みついたようにしかならなくて、「おいおい、戯れてんのか。はははっ」って笑われてしまった。
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