トマトジュースは弟の味

ななな

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6. おかしな言動

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 兄さんが家を出ていく前のこと。おねしょが治らないオレは、夜にオムツをしていた。
 その日のオレはご機嫌斜めで、なかなか穿こうとしなかった。だから、兄さんは怒ってあんなことをしたのだろうと思っていた。

「全部脱げ、素っ裸で今日は寝てろ。そうすりゃ洗うものが布団だけで済む」
 低い声を出し、オレに馬乗りになって身ぐるみを剥がしてきたのだ。すっかり怯え、「ご、ごめんなさい…ちゃんとオムツ穿くから許して」とオレは許しを請うた。

「そうか、じゃあはい」
 オムツを手渡され、ありがとうと言うべきなのか妙に迷ってしまう。もたもたしていると、「チャユ、兄ちゃん眠いんだけど」とせかされ、結局言わないままにあわててそれを身につけた。

「ん、良い子だ…ほらおいで」
 兄さんは横になり、両手をひらひらさせてそばに来るよう促してきた。オレは恐る恐る「あの…パジャマは…」と尋ねる。それに対する兄さんの返答はというと、「俺があっためてやるからいらないよ、そんなの」だった。
 有無を言わせない雰囲気に、これはまだ相当怒っているのだと思い、ビクビクしながら大人しく身を任せる。「チャユ…お前は聞き分けがよくて助かる。自慢の弟だよ」と口にする兄さんの声は、慈愛に満ち溢れていた。

 
 また、ある時のこと。病弱だったオレはしょっちゅう学校を休んでいて、それをクラスメイトに揶揄われたことがあった。

 しょんぼりして帰ってくると、兄さんが「どこのどいつだ?」と笑顔で尋ねてくる。兄さんの知らない相手だし、「えっと…ん、と…」と口籠もってしまう。兄さんはそんなオレをジーッと見つめ、やがて何か閃いたように、オレの勉強机の引き出しをガサゴソと漁り出した。

「ほら、この中のどいつだ?」

 手渡されたのは…クラス写真。オレが端っこの方で、なんともいえない顔で写っている。「チャユが一番かっこいいな。他は茄子のヘタみたいだ」なんて兄さんが言っていたような気がする。
 オレはおずおずと、その写真の中の何人かを指差した。すると兄さんは「そうか」と。そうして、今度はクローゼットの中から……なんと金属バットを取り出してきたではないか。

「に、兄さん…?」

「あぁ、そいつらと野球でもしてくるよ。そうすりゃ、よくわかるだろう」

 オレはなんだか寒気がした。「に、兄さん…オレ、また具合が悪くなってきたかも」と口にすれば、兄さんはバットを放り投げ、慌てた様子でオレをベッドまで運んでくれた。
 次に学校へ行くと、オレが指差したクラスメイト達はみんないなくなっていた。どうやら転校していったようだった。
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