6 / 11
6. おかしな言動
しおりを挟む
兄さんが家を出ていく前のこと。おねしょが治らないオレは、夜にオムツをしていた。
その日のオレはご機嫌斜めで、なかなか穿こうとしなかった。だから、兄さんは怒ってあんなことをしたのだろうと思っていた。
「全部脱げ、素っ裸で今日は寝てろ。そうすりゃ洗うものが布団だけで済む」
低い声を出し、オレに馬乗りになって身ぐるみを剥がしてきたのだ。すっかり怯え、「ご、ごめんなさい…ちゃんとオムツ穿くから許して」とオレは許しを請うた。
「そうか、じゃあはい」
オムツを手渡され、ありがとうと言うべきなのか妙に迷ってしまう。もたもたしていると、「チャユ、兄ちゃん眠いんだけど」とせかされ、結局言わないままにあわててそれを身につけた。
「ん、良い子だ…ほらおいで」
兄さんは横になり、両手をひらひらさせてそばに来るよう促してきた。オレは恐る恐る「あの…パジャマは…」と尋ねる。それに対する兄さんの返答はというと、「俺があっためてやるからいらないよ、そんなの」だった。
有無を言わせない雰囲気に、これはまだ相当怒っているのだと思い、ビクビクしながら大人しく身を任せる。「チャユ…お前は聞き分けがよくて助かる。自慢の弟だよ」と口にする兄さんの声は、慈愛に満ち溢れていた。
また、ある時のこと。病弱だったオレはしょっちゅう学校を休んでいて、それをクラスメイトに揶揄われたことがあった。
しょんぼりして帰ってくると、兄さんが「どこのどいつだ?」と笑顔で尋ねてくる。兄さんの知らない相手だし、「えっと…ん、と…」と口籠もってしまう。兄さんはそんなオレをジーッと見つめ、やがて何か閃いたように、オレの勉強机の引き出しをガサゴソと漁り出した。
「ほら、この中のどいつだ?」
手渡されたのは…クラス写真。オレが端っこの方で、なんともいえない顔で写っている。「チャユが一番かっこいいな。他は茄子のヘタみたいだ」なんて兄さんが言っていたような気がする。
オレはおずおずと、その写真の中の何人かを指差した。すると兄さんは「そうか」と。そうして、今度はクローゼットの中から……なんと金属バットを取り出してきたではないか。
「に、兄さん…?」
「あぁ、そいつらと野球でもしてくるよ。そうすりゃ、よくわかるだろう」
オレはなんだか寒気がした。「に、兄さん…オレ、また具合が悪くなってきたかも」と口にすれば、兄さんはバットを放り投げ、慌てた様子でオレをベッドまで運んでくれた。
次に学校へ行くと、オレが指差したクラスメイト達はみんないなくなっていた。どうやら転校していったようだった。
その日のオレはご機嫌斜めで、なかなか穿こうとしなかった。だから、兄さんは怒ってあんなことをしたのだろうと思っていた。
「全部脱げ、素っ裸で今日は寝てろ。そうすりゃ洗うものが布団だけで済む」
低い声を出し、オレに馬乗りになって身ぐるみを剥がしてきたのだ。すっかり怯え、「ご、ごめんなさい…ちゃんとオムツ穿くから許して」とオレは許しを請うた。
「そうか、じゃあはい」
オムツを手渡され、ありがとうと言うべきなのか妙に迷ってしまう。もたもたしていると、「チャユ、兄ちゃん眠いんだけど」とせかされ、結局言わないままにあわててそれを身につけた。
「ん、良い子だ…ほらおいで」
兄さんは横になり、両手をひらひらさせてそばに来るよう促してきた。オレは恐る恐る「あの…パジャマは…」と尋ねる。それに対する兄さんの返答はというと、「俺があっためてやるからいらないよ、そんなの」だった。
有無を言わせない雰囲気に、これはまだ相当怒っているのだと思い、ビクビクしながら大人しく身を任せる。「チャユ…お前は聞き分けがよくて助かる。自慢の弟だよ」と口にする兄さんの声は、慈愛に満ち溢れていた。
また、ある時のこと。病弱だったオレはしょっちゅう学校を休んでいて、それをクラスメイトに揶揄われたことがあった。
しょんぼりして帰ってくると、兄さんが「どこのどいつだ?」と笑顔で尋ねてくる。兄さんの知らない相手だし、「えっと…ん、と…」と口籠もってしまう。兄さんはそんなオレをジーッと見つめ、やがて何か閃いたように、オレの勉強机の引き出しをガサゴソと漁り出した。
「ほら、この中のどいつだ?」
手渡されたのは…クラス写真。オレが端っこの方で、なんともいえない顔で写っている。「チャユが一番かっこいいな。他は茄子のヘタみたいだ」なんて兄さんが言っていたような気がする。
オレはおずおずと、その写真の中の何人かを指差した。すると兄さんは「そうか」と。そうして、今度はクローゼットの中から……なんと金属バットを取り出してきたではないか。
「に、兄さん…?」
「あぁ、そいつらと野球でもしてくるよ。そうすりゃ、よくわかるだろう」
オレはなんだか寒気がした。「に、兄さん…オレ、また具合が悪くなってきたかも」と口にすれば、兄さんはバットを放り投げ、慌てた様子でオレをベッドまで運んでくれた。
次に学校へ行くと、オレが指差したクラスメイト達はみんないなくなっていた。どうやら転校していったようだった。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
48
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる