トマトジュースは弟の味

ななな

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8. 自慢の息子

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 兄さんは病院に入ることになった。どこの病院かは知らない。
 当分の間、オレは兄さんに会わない方が良いと言われ、「はい」と答えた。

「兄さんはね…昔のチャユと同じ、調子を崩しているの。母さんが悪いのよ…気がついてあげられなかったから。本当にごめんなさい」

 どうして母さんが謝るんだろう。けど、そんな母さんだからオレは大好きだ。
 兄さんには良くなって欲しいと、ゆっくりでいいから……元気になって欲しいと思った。







カヌ…突然こんなところに放り込んでごめんなさいね。調子はどうですか?

「…最悪ですね。チャユがいませんから」

そう…今日は色々と美味しそうなものを買ってきたのよ。ほら、カヌもこれ好きでしょう

「俺が好きなのはチャユだけです。母さんも好きだったけど、俺とチャユを引き離したから嫌いです」

もう、チャユチャユチャユ…あの子の何がそんなに良いんです?彼女でもつくったらどう?

「そんなものいりません。あの子は俺の生きる理由だ。
 でも、この前は不甲斐ないところを見せてしまった…あぁ、かっこ悪い…かっこ悪い…かっこ、悪い。……俺、チャユの前ではかっこいい兄でありたいんです。でも、チャユが俺のことを…大嫌いだなんて…俺は、俺は……
 母さん、チャユに会わせて下さい。謝って、許してくれるまで謝りたいんです。チャユに嫌われたままじゃあ、俺は居ても立っても居られない…!」

謝った後はどうするの。許してくれたら、また酷いことをするんですか?

「…酷いこと、なんて言い方…酷いですよ。これは俺の愛なんです。愛しているから、ひとつになりたいんです」

酷なようだけど…はっきり言わせてもらいます。たとえチャユが許しても、私は絶対に許しませんからね

「やっぱり…俺があなたの産んだ子じゃないからか」

それは違います。カヌ…あなたもチャユも、私の可愛い自慢の息子よ。
でも、チャユのことは諦めてちょうだい。あの子を苦しめないで……







「おかえり、母さん…どうでした?」

ただいま、チャユ。差し入れ…喜んでくれていたわよ。でも、会えるのはまだまだ先ね

「そう…ですか」

あら、手紙を書いていたんじゃなかったっけ?

「うん…でも、やっぱりやめたんです。なんか、手が震えちゃって…」

それなら…無理に書くことないわ。母さんもちょっと怖いもの、チャユの手紙を渡すのが

「母さんも?じゃあ…そうします。しばらくは…書きません」

…チャユ、あのね、もし、もしもの話よ?

「はい?」

兄さんとどこかで会ったとしても…あ、いえ…

「?兄さんは病院で拘束されているんでしょう」

そうよ、そうなんだけど…あぁそうね、そうよね、ごめんなさい。なんでもないわ。変なことを言ったわね。
さぁ、おやつにでもしましょうか。あなたの好きなフルーツの盛り合わせよ、沢山食べてね……
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