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第1話*出会いと筋トレ
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☆。.:*・゜
高校二年生の春、一年生の輪島浩介と同じ部屋になった。
なぜか、一緒に筋トレに励む日々。
俺は、いつの間にか輪島のことが――。
そして初めて誰かに見守られ、愛されることを知った。
――今日も輪島は、あたたかい。
☆。.:*・゜
輪島は入学した時から周りの新入生たちよりも、ひときわ目立っていた。頭のよさはトップレベル、運動神経も抜群で更に外見は身長も高く、筋肉もありガッチリしている。さらにさらに、顔も整っている。そして俺よりも年下なのに、かなり年上に見えて大人のような風貌。完璧な男でなんでもこなし冷静で、大人たちからも熱い期待を寄せられていた。ここが共学校なら、輪島はかなりモテているだろう。
反対に俺は問題児。すぐに、カッとなって、他の生徒と揉め事を起こしたり、寮の規則を破り夜中に外を徘徊したりもしている。それが理由で、最初はふたり部屋だったものの相手が嫌がり、高校一年生の途中からは、結局ひとり部屋になった。完全に周りからは、ほっとかれている。
まぁ、ふたり部屋なのにひとりで過ごすのは、広く感じたし、気楽だったからそれでも良かったけども――。
そんな日々を過ごしていたが、高校二年生の春、入学したての輪島 浩介と同じ部屋になることに。なぜ同じ部屋になったのかと言うと、他の部屋がひとつも空いていなかったらしい。
部屋の前には名前が貼ってある。空白だった『矢萩 優大(やはぎゆうだい)』の下に『輪島 浩介(わじまこうすけ)』も加わった。
俺と同じ部屋になるなんて、可哀想だな――。
並んだ名前を見つめながら、そう思った。
輪島との共通点はなかったから、必要な時に、何か少し話す程度の関係だった。
輪島は筋肉部に入部した。そして毎日、部屋でも筋トレをしていた。俺は特にそんな真剣に何かをやるなんて経験はないから、よく飽きないでずっとやれるなと、少しだけ興味を持っていた。
暑くなってきた季節の眠る前の時間。
俺はベットでごろごろしながら、相変わらず筋トレをしている輪島に聞いてみた。
「輪島、筋トレって、楽しいの?」
仰向けになって上半身だけを起こしたり倒したりしていた輪島の動きが止まる。輪島は座り、背筋をぴんと伸ばした。
「興味あるの?」
「いや、別にないけど」
「興味、あるんだ?」
普段無表情な輪島はニヤッとした。
俺はなぜか、ニヤッとした輪島を見て、少しドキッとして胸の辺りがざわめいた。
「何事も、やってみればいい」と、俺を手招きしてきた。今過ごしている部屋は余計なものを置いていなく綺麗で、広さもそこそこある。白を基調とした部屋だからか、より広く感じるのだろう。そして両端にそれぞれのベットがあり、真ん中に仕切る用のカーテンはついていたが、使わずにいた。だから真ん中はふたり並んで筋トレできるスペースは十分にある。
「まずは、そうだな、今日は簡単にやろうか」と、輪島は転がって足を上に伸ばしたり座りながら前にぐっとしたり……ストレッチを始めだしたから、俺も自然と身体が動き、とにかく真似をした。
「先輩は、どこを鍛えたい?」と、輪島は立ちあがる。そして腰に手を当て聞いてきた。
輪島は俺を〝先輩〟と呼んではくるが、ずっと出会った時からタメ口だ。だけど輪島の大人びた雰囲気のせいか、全く違和感はなく、俺もすんなり受け入れることができた。
「どこって聞かれても。上半身?」
「分かった。まずはプッシュアップしようか……ついてこれるか?」
まるで、煽られているようだ。
「ついていけるし!」
強気にそう言ったものの、プッシュアップ?ってなんだ、何かを押すのか? もはやハテナだらけの俺。カタカナは苦手だ。
輪島は両手を床につけて、腕立て伏せのポーズになった。
――腕立て伏せか!
「ついてこい。今からやるのは、主に大胸筋、上腕三頭筋、三角筋前部、広背筋を鍛える効果がある」
「なんだそれ、大胸筋しか分からん」
「あとで教えてやる」
「分かった、とりあえずついてく」
そんな感じで、俺が「筋トレ楽しい?」的な質問をした日から、輪島と筋トレをやる日々が。俺は必死に輪島の筋トレについていった。いつも筋トレ中には熱い視線を感じ、俺の動きをずっとチェックしてくれている。
――誰かにこうして見守られるのは初めてで、なんだか気持ちがくすぐったい。
*
季節は移り変わり、涼しくなってきた季節。
相変わらず、俺たちは一緒に部屋で筋トレを続けていた。
輪島から筋トレ用にと、茶色くて耳の垂れ下がった犬の可愛いワンポイントが胸元に入っている、つるつるした触り心地の黒いTシャツもプレゼントされた。洗い替えようにと、二枚も。しかもそのTシャツは輪島とお揃い。
――お揃いのTシャツを着て一緒に筋トレをするのが、なんか嬉しい。
最近はそれを着て一緒に筋トレをしている。輪島とお揃いのTシャツを着ると、筋トレが何倍もはかどる気がしている。
筋トレは基礎代謝が上がり、健康にも頭にも、そして精神にもいいらしい。
テストの成績も少しあがったし、喧嘩もしなくなった。最近はイライラもしない。
――筋トレ、すげーよ!!
だけど、あんまり筋肉の変化は感じない。
「どうしたら輪島みたいに筋肉つくんだろ。あんまり変わらねえ」と俺はいつもの筋トレタイムに呟いた。
「大丈夫だ。徐々に効果は現れている」と、俺の腕を触る輪島。触られると気のせいか、胸の鼓動が早くなった。それはただの筋トレの余韻か、それとも――。胸の鼓動が早くなるのおさまれ!と思っていると「俺のも、触ってみるか?」と輪島は筋肉モリモリポーズをしてアピールしてきた。あらためて見ると、やっぱり輪島の筋肉はすごい。俺の腕とは比べ物にはならない、大きな山がある。俺の筋肉が近所の公園にある山だとしたら、輪島の山は、名前なんだっけな……高くて有名な、カタカナ五文字のところみたいだ。触らせてもらうと、固くて凄かった。
「俺も、そんな風になりたい。カッコイーな!」
俺がそう言うと「そ、そっか?」と、輪島は頬を赤らめる。予想外過ぎる反応に俺の心の中が、たじたじしどろもどろした。
「お、俺もそんなふうになって、軽々と好きになった女の子をお姫様抱っことかしてみてーな」
「好きな女の子をお姫様抱っこか……」
なぜか輪島は少しかなしそうな表情をして、下を向く。
なんでだ?
じっと輪島を眺めていたら、急に俺をじっと見つめてきた。
「先輩!!」
「な、何?」
「先輩は、好きな女の子いるんすか?」
急に敬語になる輪島。
「いや、いないけど……」
「先輩は、好きな子をお姫様抱っこするんですか?」
じりじりと輪島が距離を詰めてくる。
「いや……」
「先輩、失礼します!!」
そう言うと輪島は俺を軽々と持ち上げて、なんとお姫様抱っこしてきた。
「先輩、軽い……。本当に可愛い」
俺が、可愛い?
輪島の顔が急にデレデレしだす。
「その小ささも、明るくてふわふわしてる髪の毛も、可愛い顔も。ちょっと天然な性格も……全部、好き」
言葉を放ったあと、輪島は「はぁ、幸せ」と呟く。なんか、俺の顔が熱くなってきた。そして心臓の鼓動も早くなって――。
「多分、俺も輪島が好きだわ」
「ほ、本当に?」
お姫様抱っこされていた俺を更に強く抱き締めてくる輪島。
「痛い、その分厚い筋肉でそんな強く抱きしめられたら、俺潰れる!!」
「ご、ごめんなさい!!」
焦って俺を降ろす輪島。
輪島は目を輝かせて俺を見て笑った。その笑顔が追い討ちかけるように、更にドキドキしてきて、俺の心臓がうるさくなった。そして俺も勝手に笑顔が込み上げてきた。
――俺は輪島のこと、いつの間にか大好きになっていたな。
「輪島、これからもずっと、筋トレしような」
「先輩……」
「鍛えて、今度は俺が輪島をお姫様抱っこする!」
そう言って、俺は輪島と腕を組み、笑いあった。
高校二年生の春、一年生の輪島浩介と同じ部屋になった。
なぜか、一緒に筋トレに励む日々。
俺は、いつの間にか輪島のことが――。
そして初めて誰かに見守られ、愛されることを知った。
――今日も輪島は、あたたかい。
☆。.:*・゜
輪島は入学した時から周りの新入生たちよりも、ひときわ目立っていた。頭のよさはトップレベル、運動神経も抜群で更に外見は身長も高く、筋肉もありガッチリしている。さらにさらに、顔も整っている。そして俺よりも年下なのに、かなり年上に見えて大人のような風貌。完璧な男でなんでもこなし冷静で、大人たちからも熱い期待を寄せられていた。ここが共学校なら、輪島はかなりモテているだろう。
反対に俺は問題児。すぐに、カッとなって、他の生徒と揉め事を起こしたり、寮の規則を破り夜中に外を徘徊したりもしている。それが理由で、最初はふたり部屋だったものの相手が嫌がり、高校一年生の途中からは、結局ひとり部屋になった。完全に周りからは、ほっとかれている。
まぁ、ふたり部屋なのにひとりで過ごすのは、広く感じたし、気楽だったからそれでも良かったけども――。
そんな日々を過ごしていたが、高校二年生の春、入学したての輪島 浩介と同じ部屋になることに。なぜ同じ部屋になったのかと言うと、他の部屋がひとつも空いていなかったらしい。
部屋の前には名前が貼ってある。空白だった『矢萩 優大(やはぎゆうだい)』の下に『輪島 浩介(わじまこうすけ)』も加わった。
俺と同じ部屋になるなんて、可哀想だな――。
並んだ名前を見つめながら、そう思った。
輪島との共通点はなかったから、必要な時に、何か少し話す程度の関係だった。
輪島は筋肉部に入部した。そして毎日、部屋でも筋トレをしていた。俺は特にそんな真剣に何かをやるなんて経験はないから、よく飽きないでずっとやれるなと、少しだけ興味を持っていた。
暑くなってきた季節の眠る前の時間。
俺はベットでごろごろしながら、相変わらず筋トレをしている輪島に聞いてみた。
「輪島、筋トレって、楽しいの?」
仰向けになって上半身だけを起こしたり倒したりしていた輪島の動きが止まる。輪島は座り、背筋をぴんと伸ばした。
「興味あるの?」
「いや、別にないけど」
「興味、あるんだ?」
普段無表情な輪島はニヤッとした。
俺はなぜか、ニヤッとした輪島を見て、少しドキッとして胸の辺りがざわめいた。
「何事も、やってみればいい」と、俺を手招きしてきた。今過ごしている部屋は余計なものを置いていなく綺麗で、広さもそこそこある。白を基調とした部屋だからか、より広く感じるのだろう。そして両端にそれぞれのベットがあり、真ん中に仕切る用のカーテンはついていたが、使わずにいた。だから真ん中はふたり並んで筋トレできるスペースは十分にある。
「まずは、そうだな、今日は簡単にやろうか」と、輪島は転がって足を上に伸ばしたり座りながら前にぐっとしたり……ストレッチを始めだしたから、俺も自然と身体が動き、とにかく真似をした。
「先輩は、どこを鍛えたい?」と、輪島は立ちあがる。そして腰に手を当て聞いてきた。
輪島は俺を〝先輩〟と呼んではくるが、ずっと出会った時からタメ口だ。だけど輪島の大人びた雰囲気のせいか、全く違和感はなく、俺もすんなり受け入れることができた。
「どこって聞かれても。上半身?」
「分かった。まずはプッシュアップしようか……ついてこれるか?」
まるで、煽られているようだ。
「ついていけるし!」
強気にそう言ったものの、プッシュアップ?ってなんだ、何かを押すのか? もはやハテナだらけの俺。カタカナは苦手だ。
輪島は両手を床につけて、腕立て伏せのポーズになった。
――腕立て伏せか!
「ついてこい。今からやるのは、主に大胸筋、上腕三頭筋、三角筋前部、広背筋を鍛える効果がある」
「なんだそれ、大胸筋しか分からん」
「あとで教えてやる」
「分かった、とりあえずついてく」
そんな感じで、俺が「筋トレ楽しい?」的な質問をした日から、輪島と筋トレをやる日々が。俺は必死に輪島の筋トレについていった。いつも筋トレ中には熱い視線を感じ、俺の動きをずっとチェックしてくれている。
――誰かにこうして見守られるのは初めてで、なんだか気持ちがくすぐったい。
*
季節は移り変わり、涼しくなってきた季節。
相変わらず、俺たちは一緒に部屋で筋トレを続けていた。
輪島から筋トレ用にと、茶色くて耳の垂れ下がった犬の可愛いワンポイントが胸元に入っている、つるつるした触り心地の黒いTシャツもプレゼントされた。洗い替えようにと、二枚も。しかもそのTシャツは輪島とお揃い。
――お揃いのTシャツを着て一緒に筋トレをするのが、なんか嬉しい。
最近はそれを着て一緒に筋トレをしている。輪島とお揃いのTシャツを着ると、筋トレが何倍もはかどる気がしている。
筋トレは基礎代謝が上がり、健康にも頭にも、そして精神にもいいらしい。
テストの成績も少しあがったし、喧嘩もしなくなった。最近はイライラもしない。
――筋トレ、すげーよ!!
だけど、あんまり筋肉の変化は感じない。
「どうしたら輪島みたいに筋肉つくんだろ。あんまり変わらねえ」と俺はいつもの筋トレタイムに呟いた。
「大丈夫だ。徐々に効果は現れている」と、俺の腕を触る輪島。触られると気のせいか、胸の鼓動が早くなった。それはただの筋トレの余韻か、それとも――。胸の鼓動が早くなるのおさまれ!と思っていると「俺のも、触ってみるか?」と輪島は筋肉モリモリポーズをしてアピールしてきた。あらためて見ると、やっぱり輪島の筋肉はすごい。俺の腕とは比べ物にはならない、大きな山がある。俺の筋肉が近所の公園にある山だとしたら、輪島の山は、名前なんだっけな……高くて有名な、カタカナ五文字のところみたいだ。触らせてもらうと、固くて凄かった。
「俺も、そんな風になりたい。カッコイーな!」
俺がそう言うと「そ、そっか?」と、輪島は頬を赤らめる。予想外過ぎる反応に俺の心の中が、たじたじしどろもどろした。
「お、俺もそんなふうになって、軽々と好きになった女の子をお姫様抱っことかしてみてーな」
「好きな女の子をお姫様抱っこか……」
なぜか輪島は少しかなしそうな表情をして、下を向く。
なんでだ?
じっと輪島を眺めていたら、急に俺をじっと見つめてきた。
「先輩!!」
「な、何?」
「先輩は、好きな女の子いるんすか?」
急に敬語になる輪島。
「いや、いないけど……」
「先輩は、好きな子をお姫様抱っこするんですか?」
じりじりと輪島が距離を詰めてくる。
「いや……」
「先輩、失礼します!!」
そう言うと輪島は俺を軽々と持ち上げて、なんとお姫様抱っこしてきた。
「先輩、軽い……。本当に可愛い」
俺が、可愛い?
輪島の顔が急にデレデレしだす。
「その小ささも、明るくてふわふわしてる髪の毛も、可愛い顔も。ちょっと天然な性格も……全部、好き」
言葉を放ったあと、輪島は「はぁ、幸せ」と呟く。なんか、俺の顔が熱くなってきた。そして心臓の鼓動も早くなって――。
「多分、俺も輪島が好きだわ」
「ほ、本当に?」
お姫様抱っこされていた俺を更に強く抱き締めてくる輪島。
「痛い、その分厚い筋肉でそんな強く抱きしめられたら、俺潰れる!!」
「ご、ごめんなさい!!」
焦って俺を降ろす輪島。
輪島は目を輝かせて俺を見て笑った。その笑顔が追い討ちかけるように、更にドキドキしてきて、俺の心臓がうるさくなった。そして俺も勝手に笑顔が込み上げてきた。
――俺は輪島のこと、いつの間にか大好きになっていたな。
「輪島、これからもずっと、筋トレしような」
「先輩……」
「鍛えて、今度は俺が輪島をお姫様抱っこする!」
そう言って、俺は輪島と腕を組み、笑いあった。
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