【ピュア青春BL】筋トレするふたりが結ばれる日まで~今日も輪島はあたたかい。

立坂雪花

文字の大きさ
2 / 11

第2話*筋肉部

しおりを挟む
 お姫様抱っこされてから数日が過ぎた。
 今日は学校が休みだ。

 俺と輪島は最近、朝昼晩のご飯を一緒に食べている。「先輩の筋肉のために、先輩が食べるものを全て知りたいから」と言われてからだ。そこまで俺の筋肉について考えてくれているんだと、胸の辺りが熱くなる。

 今日も朝飯を食堂ですまして、ふたり一緒に部屋に戻った。それからすぐに机に向かって勉強をしている輪島と、部屋の角で体育座りをしながら輪島の背中を眺めている俺。

 輪島をお姫様抱っこする!なんて、強気な発言をしてみたけれど、無理だな。〝ひとまわり大きい〟がどのくらい大きいのかは一切分からんけど、ひとまわりかふたまわりか、もしかしてさんまわりな可能性もあり?なぐらい大きい輪島を隅から隅までみて悟った。

――もっと、筋トレ時間を増やせばいいのか?

「なぁ、輪島」
「なんだ?」

 俺に背中を向けながら勉強を続ける輪島。

「明日、筋肉部見学しに行ってもいいか?」
「部活をか? 何故見学したいと思った?」

 輪島が勢いよく振り向き、俺と目が合う。

――輪島は、筋肉の話になると食いつき違うな。

「俺の筋トレ、今は夜にこの部屋でやるだけじゃん? 筋トレの時間が足りないのかなって思ってよ」
「何故そう考えた?」
「俺、輪島にお姫様抱っこするって言ったじゃん? そもそも輪島をお姫様抱っこするなんてムリな話なんだけど……」
「諦めるな!」

 輪島は勢いよく立ち上がった。

「今から、部室にいくぞ!」
「今からかよ」
「なんだ? 今からじゃ、嫌なのか?」
「いや、急だなって思って」

 もうちょっと部屋で輪島とのんびりしたいなぁ。ふたり同じ空間でのんびりしている時間も好き。せめて午後からがいいな。

「部室でトレーニングすることになれば、今よりもトレーニングがキツくなる。先輩には難しい、か……」

 目を細めながら見てくる輪島。
 俺には無理だとすでに諦めている言い方がなんかイラッとするな。

「いや、難しくねーし。余裕だ!」

 部室はどんな感じか、どんなトレーニングをするのか全く知らんけどな。

「よし、その気持ちが大事だ! じゃあ、いつものTシャツを着ろ! 部室行くぞ!」
「リョーカイッ!」

 俺たちはニヤッと笑い合うと着替えた。
 そして寮を出て部室がある学校に向かった。

 墨で『筋肉部』と書かれた白い紙が、ドアに強めにドドンと貼ってあった。ドアを開けると四人の部員と思われる筋肉もりもりな男たちがそれぞれ筋トレをしている。

 想像よりも広い部室。色々な筋トレグッズがある。走るやつや、ぶらさがるやつも。中に入った瞬間、熱気がむんむんした。

「お疲れ様です。今日は、見学者が来た!」

 輪島が『果たし状を持ってきた!』みたいに、はっきり大きな声でそう言うと、部員たちは筋トレをやめて集まってきた。じろじろと見られる俺。
「新人?」
「やる気はあるのか?」
 見学なのにもう入部する雰囲気が漂っている。いつもは絶対にありえないのに、なんか体全体がもじもじしてきた。それはどう見ても自分よりも強そうな奴らに囲まれたからなのか?

「じゃあ、まずは目指したい体型のものを自分に当てて、全身鏡でチェックしてみて?」と、細い体型の筋肉もりもりイケメンが顔出し全身パネルを三種類、壁に立てかけた。

 三種類とも白Tシャツ紺色短パンの姿で、右腕を曲げ筋肉もりもりのポーズをしている。だけど、体型が全て違う。とにかくでかくて筋肉もりもりな体型と、ほどほどの大きさな筋肉もりもり体型、そして細くて筋肉もりもり体型なやつ。

 でかいのとか目指すの、無理じゃね?
 俺は、とりあえず細いのを選んで自分に当て、丸い穴のところから顔を出してみた。そして鏡で全身を見た。

「何これすげー! 本当に筋肉もりもりになったみてえだ!」
「このパネルの体型を僕たちはSサイズ筋肉、略してエスキンと呼んでいる。僕と目指す筋肉が一緒だね! 頑張っていこうね!」

 細い筋肉イケメンがさわやかに言う。

「でも、俺……今日は見学でまだ入部するわけじゃなくて……」

「先輩にとって、筋肉部で活動するのは大変で無理かもしれないから、入部しなくてもいい」

 腕を組みながらそう言う輪島。

 そうやっていつも輪島は煽ってきて、俺に勝負を仕掛けてくるんだ。その勝負、乗るぜ!

「無理じゃねーし!」

 そうして俺は筋肉部で活動することになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話

日向汐
BL
「好きです」 「…手離せよ」 「いやだ、」 じっと見つめてくる眼力に気圧される。 ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26) 閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、 一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨ 短期でサクッと読める完結作です♡ ぜひぜひ ゆるりとお楽しみください☻* ・───────────・ 🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧 ❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21 ・───────────・ 応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪) なにとぞ、よしなに♡ ・───────────・

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

【完結】番になれなくても

加賀ユカリ
BL
アルファに溺愛されるベータの話。 新木貴斗と天橋和樹は中学時代からの友人である。高校生となりアルファである貴斗とベータである和樹は、それぞれ別のクラスになったが、交流は続いていた。 和樹はこれまで貴斗から何度も告白されてきたが、その度に「自分はふさわしくない」と断ってきた。それでも貴斗からのアプローチは止まらなかった。 和樹が自分の気持ちに向き合おうとした時、二人の前に貴斗の運命の番が現れた── 新木貴斗(あらき たかと):アルファ。高校2年 天橋和樹(あまはし かずき):ベータ。高校2年 ・オメガバースの独自設定があります ・ビッチング(ベータ→オメガ)はありません ・最終話まで執筆済みです(全12話) ・19時更新 ※なろう、カクヨムにも掲載しています。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

処理中です...