11 / 11
第11話*お姫様抱っこ、そして――。
しおりを挟む
輪島優勝おめでとう会から一ヶ月後。
今日は学校が休みで、朝から部活動。
今、体育館から持ってきたマット十枚ぐらいの上に、俺とお揃いの筋肉最強Tシャツを着た輪島が、仰向けになってゴロンしている。輪島の頭の方には秦が、脚の方には青木副部長がいつでも支え補助が出来るように立っていた。そして俺は、輪島の中心部の前にいた。
「背中は伸ばせ、曲げるな!」
「腕だけに頼らない!」
輪島と森部長の指導声が部室内に響く。
俺は〝お姫様抱っこ強化トレーニング〟を受けていた。
俺が振られた日には、続きがあった。
*
「だって先輩、お姫様抱っこがまだできないじゃないですか」
あの日、輪島は俺の手首を掴みながら悲しそうな表情でそう言った。
「なんだよ、それ、今関係ないじゃん!」
「あるんだ……あるんすよ……俺も、恋人になりたいんすよ、グスン」
「わ、輪島も恋人になりたいと? 嘘だ、じゃあなんで今『なれない!』って言い切った?」
「……『好きな人をお姫様抱っこしたい』という夢が、先輩にあるからだ」
話によると、輪島も俺に告白しようとずっと考えていたらしい。「もしも恋人になれば、本当に一生、先輩から離れるつもりはない」と、輪島は言い切った。でも輪島の中では恋人以外をお姫様抱っこした時点で浮気で。もしもお姫様抱っこできないのが耐えられなくなった俺が他の人をお姫様抱っこしてしまったら、ふたりの関係は気まずくなる。でも俺の夢は好きな人をお姫様抱っこすることで。でも俺は輪島をお姫様抱っこできないから、このままの関係でいる方がいいのかと考えていたらしい……。
――輪島の考えが分かるような、ぐちゃぐちゃぐるぐるしていて、よく分からんような。そして俺は、輪島をお姫様抱っこできなくても浮気しないし。なんならできなくても別にいい。
「長いし、でもでも言いすぎててよく分からん。短くまとめると、どうなる?」
「先輩が俺のことをお姫様抱っこできるようになったら、恋人になってほしいと直接先輩に言うつもりでいた!」
――輪島からの恋人になろう!
やっぱり、輪島から告白されたい。その方が安心が増す。
――だって、人から愛されてるって、思ったことがなかったから。輪島から〝恋人になりたい〟って言われて、さらに繋ぎ止められたい。
「よし、お姫様抱っこできるように、俺はなる!」
と、そんなこんながありまして、今これ。
「いくぞっ! よいしょー」
「矢萩、もっと、もっと密着しろ!」
俺の気合い声と森部長の指導声が交わる。
左右の補助を受けながら、少しだけ輪島が浮かび上がる。
「よし、今日はここまでだ!」
森部長の声を合図に今日のトレーニングは終わった。
「矢萩くん、いい感じだったよ!」
トレーニングを応援してくれていた中谷から、
お茶のペットボトルをもらった。
「でもひとりだとまだ全然で……俺も筋トレ結構しているんだけどな」
「大丈夫だよ! この調子だと、もう少しで輪島くんと恋人になれそうだね!」
「本当に恋人になれるのかな……俺と輪島、似合う?」
「似合うし、恋人になれるよ! もう雰囲気がそんな感じだし。密着取材の番組を昨日観たけど、特に牛乳ヒゲのシーンが恋人みたいだったよ。とにかく、あとはお姫様抱っこだね!」
「あの牛乳ヒゲシーン、カットしてって取材の男にあの時、目で合図したのにな……」
――はぁ、早くお姫様抱っこができるようになって、輪島から告白されたい。
そしてそして、三日後の夜、ついに運命の日が!
*
「なんか、今日は力がみなぎっている気がする。輪島も、そんな日はないか?」
「特にないな」
部屋で夜、ふたりそれぞれ机に向かい勉強をしている時だった。ちなみに俺は、スマホで色々なお姫様抱っこの画像を眺める勉強をしていた。
「輪島、ベッドに横になってみろ!」
頷くと輪島は、自分のベッドにゴロンした。
俺は輪島をお姫様抱っこできる位置に移動した。
「これから、お姫様抱っこチャレンジをしてみます」
両腕は、輪島とベッドの間に挟まれた。背中はまっすぐ、腕だけに頼らず色々なところの筋肉を意識して、上半身を輪島に密着させ歯を食いしばる。
俺は全ての神経筋肉をお姫様抱っこに集中させた。そして――。
「ふんぬ!」
普段出さないような呪文が俺の口から出てきて……な、なんと輪島が一瞬だけど浮かび上がった。
「や、やったぞ、輪島! 今、浮いたよな? どうだった?」
俺は興奮しすぎて、ゴロンしている輪島を抱きしめた。
「先輩……合格だ!」
「やった、やったぞー!」
「先輩、姿勢を整えたい」
輪島の言葉で、俺は思い切り輪島に抱きついていたことに気がつき、照れながら離れた。
「だ、抱きついて、ごめん」
輪島はベッドの上で正座をする。俺も輪島のベッドの上に乗り、向かい合わせになるように正座した。
ドキドキドキドキ……真面目な表情で見つめてくる輪島と見つめ合うと、すごく緊張してきた。
「先輩、付き合ってくれ!」
「うん!」
俺は、全力で頷いた。
ついに俺たちは、恋人になった。
「先輩……抱きしめていいか?」
「うん!」
輪島が俺を優しく抱きしめてきた。俺は輪島の背中に手をまわす。
「先輩……いいか?」
「うん!」
恋人になったからなのか、輪島が何をしたいのかすぐに分かった。それは、俺もしたいと思っていたこと。
輪島の顔が近づいてきた。そして――。
☆。.:*・゜
俺たちは、筋トレのお陰で、結ばれた――。
☆。.:*・゜
今日は学校が休みで、朝から部活動。
今、体育館から持ってきたマット十枚ぐらいの上に、俺とお揃いの筋肉最強Tシャツを着た輪島が、仰向けになってゴロンしている。輪島の頭の方には秦が、脚の方には青木副部長がいつでも支え補助が出来るように立っていた。そして俺は、輪島の中心部の前にいた。
「背中は伸ばせ、曲げるな!」
「腕だけに頼らない!」
輪島と森部長の指導声が部室内に響く。
俺は〝お姫様抱っこ強化トレーニング〟を受けていた。
俺が振られた日には、続きがあった。
*
「だって先輩、お姫様抱っこがまだできないじゃないですか」
あの日、輪島は俺の手首を掴みながら悲しそうな表情でそう言った。
「なんだよ、それ、今関係ないじゃん!」
「あるんだ……あるんすよ……俺も、恋人になりたいんすよ、グスン」
「わ、輪島も恋人になりたいと? 嘘だ、じゃあなんで今『なれない!』って言い切った?」
「……『好きな人をお姫様抱っこしたい』という夢が、先輩にあるからだ」
話によると、輪島も俺に告白しようとずっと考えていたらしい。「もしも恋人になれば、本当に一生、先輩から離れるつもりはない」と、輪島は言い切った。でも輪島の中では恋人以外をお姫様抱っこした時点で浮気で。もしもお姫様抱っこできないのが耐えられなくなった俺が他の人をお姫様抱っこしてしまったら、ふたりの関係は気まずくなる。でも俺の夢は好きな人をお姫様抱っこすることで。でも俺は輪島をお姫様抱っこできないから、このままの関係でいる方がいいのかと考えていたらしい……。
――輪島の考えが分かるような、ぐちゃぐちゃぐるぐるしていて、よく分からんような。そして俺は、輪島をお姫様抱っこできなくても浮気しないし。なんならできなくても別にいい。
「長いし、でもでも言いすぎててよく分からん。短くまとめると、どうなる?」
「先輩が俺のことをお姫様抱っこできるようになったら、恋人になってほしいと直接先輩に言うつもりでいた!」
――輪島からの恋人になろう!
やっぱり、輪島から告白されたい。その方が安心が増す。
――だって、人から愛されてるって、思ったことがなかったから。輪島から〝恋人になりたい〟って言われて、さらに繋ぎ止められたい。
「よし、お姫様抱っこできるように、俺はなる!」
と、そんなこんながありまして、今これ。
「いくぞっ! よいしょー」
「矢萩、もっと、もっと密着しろ!」
俺の気合い声と森部長の指導声が交わる。
左右の補助を受けながら、少しだけ輪島が浮かび上がる。
「よし、今日はここまでだ!」
森部長の声を合図に今日のトレーニングは終わった。
「矢萩くん、いい感じだったよ!」
トレーニングを応援してくれていた中谷から、
お茶のペットボトルをもらった。
「でもひとりだとまだ全然で……俺も筋トレ結構しているんだけどな」
「大丈夫だよ! この調子だと、もう少しで輪島くんと恋人になれそうだね!」
「本当に恋人になれるのかな……俺と輪島、似合う?」
「似合うし、恋人になれるよ! もう雰囲気がそんな感じだし。密着取材の番組を昨日観たけど、特に牛乳ヒゲのシーンが恋人みたいだったよ。とにかく、あとはお姫様抱っこだね!」
「あの牛乳ヒゲシーン、カットしてって取材の男にあの時、目で合図したのにな……」
――はぁ、早くお姫様抱っこができるようになって、輪島から告白されたい。
そしてそして、三日後の夜、ついに運命の日が!
*
「なんか、今日は力がみなぎっている気がする。輪島も、そんな日はないか?」
「特にないな」
部屋で夜、ふたりそれぞれ机に向かい勉強をしている時だった。ちなみに俺は、スマホで色々なお姫様抱っこの画像を眺める勉強をしていた。
「輪島、ベッドに横になってみろ!」
頷くと輪島は、自分のベッドにゴロンした。
俺は輪島をお姫様抱っこできる位置に移動した。
「これから、お姫様抱っこチャレンジをしてみます」
両腕は、輪島とベッドの間に挟まれた。背中はまっすぐ、腕だけに頼らず色々なところの筋肉を意識して、上半身を輪島に密着させ歯を食いしばる。
俺は全ての神経筋肉をお姫様抱っこに集中させた。そして――。
「ふんぬ!」
普段出さないような呪文が俺の口から出てきて……な、なんと輪島が一瞬だけど浮かび上がった。
「や、やったぞ、輪島! 今、浮いたよな? どうだった?」
俺は興奮しすぎて、ゴロンしている輪島を抱きしめた。
「先輩……合格だ!」
「やった、やったぞー!」
「先輩、姿勢を整えたい」
輪島の言葉で、俺は思い切り輪島に抱きついていたことに気がつき、照れながら離れた。
「だ、抱きついて、ごめん」
輪島はベッドの上で正座をする。俺も輪島のベッドの上に乗り、向かい合わせになるように正座した。
ドキドキドキドキ……真面目な表情で見つめてくる輪島と見つめ合うと、すごく緊張してきた。
「先輩、付き合ってくれ!」
「うん!」
俺は、全力で頷いた。
ついに俺たちは、恋人になった。
「先輩……抱きしめていいか?」
「うん!」
輪島が俺を優しく抱きしめてきた。俺は輪島の背中に手をまわす。
「先輩……いいか?」
「うん!」
恋人になったからなのか、輪島が何をしたいのかすぐに分かった。それは、俺もしたいと思っていたこと。
輪島の顔が近づいてきた。そして――。
☆。.:*・゜
俺たちは、筋トレのお陰で、結ばれた――。
☆。.:*・゜
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
悋気応変!
七賀ごふん
BL
激務のイベント会社に勤める弦美(つるみ)は、他人の“焼きもち”を感じ取ると反射的に号泣してしまう。
厄介な体質に苦しんできたものの、感情を表に出さないクールな幼なじみ、友悠(ともひさ)の存在にいつも救われていたが…。
──────────
クール&独占欲強め×前向き&不幸体質。
◇BLove様 主催コンテスト 猫野まりこ先生賞受賞作。
◇プロローグ漫画も公開中です。
表紙:七賀ごふん
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸Twitterもぜひ遊びに来てください🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
【完結】俺とあの人の青い春
月城雪華
BL
高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。
けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。
ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。
けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。
それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。
「大丈夫か?」
涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる