【ピュア青春BL】筋トレするふたりが結ばれる日まで~今日も輪島はあたたかい。

立坂雪花

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第11話*お姫様抱っこ、そして――。

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 輪島優勝おめでとう会から一ヶ月後。
 今日は学校が休みで、朝から部活動。

 今、体育館から持ってきたマット十枚ぐらいの上に、俺とお揃いの筋肉最強Tシャツを着た輪島が、仰向けになってゴロンしている。輪島の頭の方には秦が、脚の方には青木副部長がいつでも支え補助が出来るように立っていた。そして俺は、輪島の中心部の前にいた。

「背中は伸ばせ、曲げるな!」
「腕だけに頼らない!」

 輪島と森部長の指導声が部室内に響く。

 俺は〝お姫様抱っこ強化トレーニング〟を受けていた。

 俺が振られた日には、続きがあった。


 
「だって先輩、お姫様抱っこがまだできないじゃないですか」

 あの日、輪島は俺の手首を掴みながら悲しそうな表情でそう言った。

「なんだよ、それ、今関係ないじゃん!」
「あるんだ……あるんすよ……俺も、恋人になりたいんすよ、グスン」
「わ、輪島も恋人になりたいと? 嘘だ、じゃあなんで今『なれない!』って言い切った?」
「……『好きな人をお姫様抱っこしたい』という夢が、先輩にあるからだ」

 話によると、輪島も俺に告白しようとずっと考えていたらしい。「もしも恋人になれば、本当に一生、先輩から離れるつもりはない」と、輪島は言い切った。でも輪島の中では恋人以外をお姫様抱っこした時点で浮気で。もしもお姫様抱っこできないのが耐えられなくなった俺が他の人をお姫様抱っこしてしまったら、ふたりの関係は気まずくなる。でも俺の夢は好きな人をお姫様抱っこすることで。でも俺は輪島をお姫様抱っこできないから、このままの関係でいる方がいいのかと考えていたらしい……。

――輪島の考えが分かるような、ぐちゃぐちゃぐるぐるしていて、よく分からんような。そして俺は、輪島をお姫様抱っこできなくても浮気しないし。なんならできなくても別にいい。

「長いし、でもでも言いすぎててよく分からん。短くまとめると、どうなる?」
「先輩が俺のことをお姫様抱っこできるようになったら、恋人になってほしいと直接先輩に言うつもりでいた!」

――輪島からの恋人になろう!

 やっぱり、輪島から告白されたい。その方が安心が増す。

――だって、人から愛されてるって、思ったことがなかったから。輪島から〝恋人になりたい〟って言われて、さらに繋ぎ止められたい。

「よし、お姫様抱っこできるように、俺はなる!」

 と、そんなこんながありまして、今これ。

「いくぞっ! よいしょー」
「矢萩、もっと、もっと密着しろ!」

 俺の気合い声と森部長の指導声が交わる。

 左右の補助を受けながら、少しだけ輪島が浮かび上がる。

「よし、今日はここまでだ!」

 森部長の声を合図に今日のトレーニングは終わった。

「矢萩くん、いい感じだったよ!」

 トレーニングを応援してくれていた中谷から、
お茶のペットボトルをもらった。

「でもひとりだとまだ全然で……俺も筋トレ結構しているんだけどな」
「大丈夫だよ! この調子だと、もう少しで輪島くんと恋人になれそうだね!」
「本当に恋人になれるのかな……俺と輪島、似合う?」

「似合うし、恋人になれるよ! もう雰囲気がそんな感じだし。密着取材の番組を昨日観たけど、特に牛乳ヒゲのシーンが恋人みたいだったよ。とにかく、あとはお姫様抱っこだね!」
「あの牛乳ヒゲシーン、カットしてって取材の男にあの時、目で合図したのにな……」


――はぁ、早くお姫様抱っこができるようになって、輪島から告白されたい。

 そしてそして、三日後の夜、ついに運命の日が!



「なんか、今日は力がみなぎっている気がする。輪島も、そんな日はないか?」
「特にないな」

 部屋で夜、ふたりそれぞれ机に向かい勉強をしている時だった。ちなみに俺は、スマホで色々なお姫様抱っこの画像を眺める勉強をしていた。

「輪島、ベッドに横になってみろ!」

 頷くと輪島は、自分のベッドにゴロンした。
 俺は輪島をお姫様抱っこできる位置に移動した。
 
「これから、お姫様抱っこチャレンジをしてみます」

 両腕は、輪島とベッドの間に挟まれた。背中はまっすぐ、腕だけに頼らず色々なところの筋肉を意識して、上半身を輪島に密着させ歯を食いしばる。

 俺は全ての神経筋肉をお姫様抱っこに集中させた。そして――。

「ふんぬ!」

 普段出さないような呪文が俺の口から出てきて……な、なんと輪島が一瞬だけど浮かび上がった。

「や、やったぞ、輪島! 今、浮いたよな? どうだった?」

 俺は興奮しすぎて、ゴロンしている輪島を抱きしめた。

「先輩……合格だ!」
「やった、やったぞー!」
「先輩、姿勢を整えたい」

 輪島の言葉で、俺は思い切り輪島に抱きついていたことに気がつき、照れながら離れた。

「だ、抱きついて、ごめん」

 輪島はベッドの上で正座をする。俺も輪島のベッドの上に乗り、向かい合わせになるように正座した。

 ドキドキドキドキ……真面目な表情で見つめてくる輪島と見つめ合うと、すごく緊張してきた。

「先輩、付き合ってくれ!」
「うん!」

 俺は、全力で頷いた。
 ついに俺たちは、恋人になった。

「先輩……抱きしめていいか?」
「うん!」

 輪島が俺を優しく抱きしめてきた。俺は輪島の背中に手をまわす。

「先輩……いいか?」
「うん!」

 恋人になったからなのか、輪島が何をしたいのかすぐに分かった。それは、俺もしたいと思っていたこと。

 輪島の顔が近づいてきた。そして――。

 


 ☆。.:*・゜


 俺たちは、筋トレのお陰で、結ばれた――。


☆。.:*・゜
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